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恋焦がれて

えんだああああああああああああああああああああ

「レンヤくん、モーニングお願い」


 セリアのオーダーを聞き、レンヤは重い腰を上げるとキッチンに立つ。素早く手を動かし作り上げのは新鮮な野菜を挟み込んだサンドイッチにコーヒーだ。


「出来たぞ。持ってけ」

「ありがとう」


 レンヤから受け取った商品を持っていくセリアの後ろ姿を見送ると、レンヤは椅子に腰を下ろし大きな息を吐く。


「お待たせしました。こちらご注文のモーニングセットです」

「あらありがとう。夫婦でお店なんて、仲睦まじくていいわねぇ」

「そ、そうですか? えへへ……」


 聞こえてくる会話の内容に、今度は大きなため息をつく。


「なぜ俺は喫茶店なんてやってるんだ……」


 爽やかな朝の到来を知らせる小鳥のさえずりをBGMに、レンヤはなぜ今の状況になっているのかを思い出していた。



※※※



「ミアから……?」


 里に訪れた日の夜。セリアから渡された手紙の差出人を確認したレンヤは焦る気持ちを押さえて丁寧に封を開ける。


――――――



レンヤくんへ


レンヤくんがこの手紙に目を通している時、きっと私はレンヤくんの傍にはいないでしょう。

私はずっとレンヤくんの傍にいたい、寄り添っていたい。

それでも、時には離れ離れになってしまうことだってあると思います。

だからこそ、その時の為に手紙を記しておきます。


セリアちゃんにサクヤちゃんにアリシアちゃん。リオンくんにメルちゃんに姐さん。他にもロゼッタちゃんやクラスメイトの皆。

レンヤくんを取り巻く環境は変わって、昔からレンヤくんを見てきた私にとってその変化は喜ぶべきことでした。


なのに……この胸騒ぎは一体なんなのでしょうか。

嫌な予感、虫の知らせ。すぐそこまで、影が近付いてきている。

確信はありません。


でも――――


もしも、レンヤくんの身に何かあったとして、それが周りにも影響を及ぼすものだとしたら――――


きっとレンヤくんは昔と変わらず自己犠牲の道を選ぶでしょう。

なぜなら、レンヤくんは優しすぎるから


そして、その時隣にいるのは私ではなくセリアちゃんだということも分かっています。

私はレンヤくんの支えになることは出来ないということも分かっています。


だから――――セリアちゃんの想いを受け止めてあげて欲しいのです。


本当は私だって嫌です。

親友だとしても、レンヤくんを取られると思うと……

それでも、考え抜いた末でのお願いです。


私を救ってくれたように、セリアちゃんを暗闇から救い出してください。

セリアちゃんの願いを、どうか聞いてあげてください。


私は、レンヤくんがいる、皆がいる『今』が好きです。

レンヤくんがいない世界なんて考えられません。


孤児院は私が守ります。だから、かならず帰ってきてください。

帰ってきて、私を強く抱きしめてください。


じゃないと、他の男の人に居場所を求めてしまうかもしれませんよ?


ふふ、この言葉を言ったのは何年ぶりですかね?


愛しています、レンヤくん。


ミクルーア



―――――


「…………」


 レンヤは手紙に目を通し終わると、自然と笑みがこぼれた。そんなレンヤを見て不思議そうに首を傾げるセリアに手紙を渡し、読むように促す。


 そろそろ読み終わるだろうというタイミングで、顔を真っ赤にしていたセリアに問いかける。


「お前の想い、聞かせてくれないか?」

「っ! ………うん」


 親友に背を押されたからか、一瞬たじろいだもののセリアは覚悟を決めた。


「わ、私は……レンヤくんのことが好きです!」

「…………それで?」

「だか、だから……私と付き合ってください!!」


 恥ずかしさからか、目を瞑りぷるぷると震えるセリア。返事を待つ時間がこんなにも苦しいものかと思い始める中で、ポンと頭に軽い衝撃が走る。


「実はな、前にリオンと話したことがあるんだ。もし仮にミアがいない世界でセリアと出会っていたら惚れてたかもしれないってな」


 セリアの頭に手を乗せながらレンヤは言葉を紡いでいく。


「もちろん仮にであって、俺が女性として愛してるのはミアだけだ。もう一人なんて考えたことなかったし、考えようとしたこともなかった」

「それは……」


 普段のレンヤを見ていれば分かることだ。レンヤの瞳に映っているのはいつでもミクルーアだった。


 ここまで聞けば嫌でも答えは察せてしまう。積年の想いが今、崩れ去ろうとしていた。


 

 ――――はずだった。


「だから――――俺は変わろうと思う」

「……へ?」

「一緒の時を過ごして、少しずつ、少しずつセリアを知っていって、好きになれたらってな」


 予想してた答えとは違ったせいで混乱してしまった頭の中を必死に整理していくセリア。次第に理解していくと、体が勝手に動き出していた。


「レンヤくん!!!」


 愛しい人の名を呼び、胸に飛び込む。長年焦がれていた夢がついに叶った瞬間がやってきた。


「これからよろしくな、セリア」

「うん! 大好きだよ、レンヤくん!」


 互いに抱き締めあい、夜は更けていった。


※※※


 ――――そうだ、俺はセリアの気持ちを受け入れて、そのあと願いを聞いて……


 手紙にはセリアの想いだけでなく、願いを聞いてあげて欲しいと記されていた。そしてその願いを聞いてあげたところ


「その、二人でお店を持ちたいです……」


 ということで、こうして喫茶店を経営するに至ったのだ。


 レンヤとしては、働くなんてもってのほかだ。働きたくないと毎日のように思っているほどだ。


 だがしかし、お客さんと楽しそうに会話をしているセリアを見てこう思う。


 ――――こういうのも悪くはない、かもな。


 笑顔で近付いてくるセリアに対応すべく、レンヤはゆっくりと立ち上がった。




 

お読みいただきありがとうございました。


はい、ハーレムです。

この作品を書き始めた当初はヒロインはミクルーアだけで、『一途主人公』ってタグが付いてたりしたのですが、気付いたらハーレムになってました。どうしてだろう……


感想、お待ちしております。


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