また会える日を夢見て
更新予定を伸ばした上に遅刻をするぐらいの難産でした。
遅れてしまい申し訳ありません(土下座)
「フフ……フハハハハハハハハハハ!!!!!!」
静まり返った空間にレンヤの声が響く。
「よい! 実によいぞ人間! 楽しませてくれるではないか!」
「……魔王であることをお認めになると?」
「ああそうだとも。妾が魔王だ」
レンヤは正体を明かしながら、それを証明するかのように漆黒の大鎌『ブラッドサイズ』を顕現する。既に周りを兵に囲まれながらも、その表情には余裕が見て取れた。
「忌まわしきあの男との戦いから数百年、人間共に混ざり過ごしてきたが中々に有意義な時間であったぞ」
「そんな……レンヤくん……」
「む、ミアか。一切の疑いを持たず、妾に献身するその様は見事であったぞ。だがそれも終わりのようじゃな。どれ、最後に――――」
レンヤが突如姿を消し、ミクルーアの前へと瞬時にしていた。空いた左手でミクルーアの顎をそっと上げ―――
キスをした。
「……必ず戻ってくる。待っててくれ」
「!!」
唇を離し、周りにバレぬようにレンヤは囁いた。ミクルーアは目を見開く。
「さらばだ、女」
レンヤが背を向け離れていく。ミクルーアは膝をつき、嗚咽する。
「妾はまだここで止まるわけにはいかぬのでな。少々反抗させてもらおう」
「いいや、止まってもらうよ」
兵士をかきわけ、リオンが立ち塞がる。不敵な笑みを浮かべており、その手には剣が握られていた。
「貴様に止められると思っておるのか?」
「私がいればどうですか?」
「私もね」
リオンの横にサクヤとアリシアが並び、どちらも戦闘態勢に入っている。
「ふむ、ちと厳しいか。ならこうしよう」
レンヤは床に手ををつけ、唱える。
「『闇よ』」
直後、辺りが暗闇に包まれた。レンヤの魔法によって視界を奪われ、成す術がなくなってしまう。
「どれ、お土産でも一つ貰ってこうかの。さらばだ人間共、また会えるといいの」
少しづつ明るさを取り戻し辺りを見回すもレンヤの姿はなかった。そして、姿がなかったのはもう一人いた。
「セリアが連れて行かれたみたいだね」
お土産としてセリアを攫われ、沈黙が場を包む。
魔王の復活に、本人を目の前にしても何も出来なかったこと。今までレンヤの正体に誰も気づかず、ミクルーアにいたっては愛していた者が魔王だったという悲しい現実に打ちのめされ、セリアが連れていかれた。
完全な敗北だ。レンヤの前に立ちふさがった三人はまだしも、国の兵士たちは全く動くことすら出来なかった。
世界は魔王を中心に、新たな局面を迎えることとなる。
※※※
魔王騒動の後、国の重鎮達が緊急招集され会議を行っている。その間、生徒達やリオン達は自室待機を言い渡されていた。
「というわけで皆、演技お疲れさま」
ミクルーアの部屋に『機関』のメンバーが集まると、リオンが労わりの言葉を投げた。
リオンの言う通り、先程の騒動の一連は演技だった。レンヤが魔王だと指摘された際に、本人から飛ばされてきたアイコンタクトでの指示だった。
「とりあえず私達はレンヤと敵対したという姿は見せたし、仲間だと疑われることはないでしょ。もし疑われるようなら魔物の百でも二百でも狩ってくるわよ」
「レンヤに目が向いてるうちに、僕達は下地を整えておかないとね」
レンヤはこの状況を利用することにした。世界は魔王の復活により混乱するだろう。何かを目論んでいるケルベロス騒動などの黒幕にとっては混乱に乗じて色々やりやすい状況だろう。
つまり、正体を掴むチャンスが出来る。レンヤは囮となることで、黒幕をあぶりだそうとしたのだ。
「これで何も分かりませんでしたじゃレンヤに殺されるね。気合入れていこう。ミクルーアは大丈夫かい?」
リオンは先程からずっと黙り込んでいるミクルーアの様子が気になっていた。作戦だとはいえ、夫がいなくなったのだ。気持ちが沈んでしまうのは分かる。だが声をかけられるとミクルーアは笑みを浮かべる。
「心配ないですよ。だって――――」
ミクルーアは愛おしそうに、優しく自身の下腹部を撫でる。
「私はもう、一人ではないですから」
レンヤとセリアの逃亡生活が始まります。というわけでサクヤ編は終わりで次話から新章です。
キーワードは『子供の頃からの夢』で、セリアに焦点を当てていきます。
実はプロットを見直していたらおかしいところを見つけてしまい、それ故の今回の難産でした。急いで修正しますが、更新の間隔が空いてしまう可能性があります。ご了承ください。
次回更新は明後日(9日)17時予定。




