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張り巡らされた罠

実は三か月前ぐらいになんとなく書いたレンヤとミクルーアのいちゃらぶ閑話が在庫に眠っています。投稿するタイミングがいまいち分からない。


後書きに設定のことに関して少し長い後書きがあります。読んでいただけるとありがたいです。

 ケルベロスという脅威を目の当たりにした生徒達の中には戦うことへの恐怖が心に植え付けられてしまった者が多くおり、カウンセリングが行われている。そのため、訓練が実施されることは無くレンヤ達は暇を持て余していた。


 その中でレンヤとミクルーア、それにセリアはシルフィーナの部屋へと度々訪れ、お茶を楽しんでいた。給仕をするメルをレンヤが揶揄ったり、親友同士であるミクルーアとセリアにシルフィーナの三人でスイーツ談議に華を咲かせていたり、各々楽しい時間を過ごしていた。


 しかしそれも、慌ただしく走る足音と扉をノックする音が終わりを告げた。入室を許可すると兵士が一人、疲れからか膝に手をついている。


「み、湊紫苑さんが消息不明に! 今すぐ会議室へ集合とのことです!」

「……分かりました。すぐに向かいます」


 真剣な表情になったシルフィーナの後ろで、レンヤはこっそりため息をついた。


 ※※※


 会議室には関係者一同が集められ、紫苑についての詳細が話された。


 クラスの中心人物である紫苑はクラスメイトのメンタルケアに努めており、多くの生徒の元へと訪れていた。その影響からか一人の時間を欲するようになり、偶に街へと一人で出かけることがあった。


 今回はその最中に攫われたのではないかと国側の方では考えているようだ。路地裏で紫苑が付けていた腕時計が見つかったらしい。


 心の支えでもあった紫苑を失い、生徒達は意気消沈としていた。


「優人、お前が紫苑の代わりになれ」

「え? レンヤさん、どうして……?」

「個々人のことに関してはお前が一番詳しいだろ? 宙ぶらりんのこいつらには支えが必要だ」


 ファンタジー世界というまるで夢のような世界に来たはいいものの、そこで叩きつけられた現実に生徒達は酷く怯えてしまっている。支えを失い、失意の底へと落ちてしまうのを防ぐために対策が必要となる。


「……僕に出来るか不安ですが、やれるだけやってみます」

「こいつらを頼んだぞ」


 今回の事件でレンヤ達と生徒達が関わることは恐らく無くなる。これ以上誰かを攫われても困るため、しばらくは大人しくしているしかないだろう。


 案の定城での待機命令が出され、解散となった。今後について考えることは山積みである。


 ※※※


 誰もが寝静まった深夜。先程までレンヤと愛し合い熱を持った体もだいぶ落ち着いた頃、ミクルーアは机で一人、筆を走らせていた。


 ミクルーアはレンヤが裏で色々と動き回っていることを知っていた。その上で、相手の規模がかなり大きく手練れであることは分かった。


 レンヤは諸刃の剣だ。超越者であるため実力はそれこそ天災級だが、弱点というものももちろんある。それは護るべき対象とされている自分や孤児院の子供達。


 そして、魔王をその身に宿しているということだ。


 魔王は世界を手中に収めようと数々の暴虐非道な行いをしていた。当然その存在は忌み嫌われるものである。それがレンヤの中にいると知られればどうなるのか、想像に難くない。


 だがもう一人、忌み嫌われる存在がミクルーアの周りにはいた。


 その人物――――親友でもある彼女へと向けた手紙をミクルーアは書いているところだ。


 いざという時、レンヤの傍にいられるのは彼女だけだから。


「この胸騒ぎはなんなのでしょうか……」


 ミクルーアは胸を押さえる。


 とてつもなく巨大な闇が、すぐそこまで迫っていた。


 ※※※


 翌日、城のホールへと全員が集められていた。なんでもこの国の宰相から伝えなければならないことがあるようだ。


 少しの間待っていると、呼び出した本人が姿を現した。華美な服装に身を包み、ニコニコと笑みを浮かべ続けている男。第一印象としては温和そうな男といったところか。


 ――――だが、目が笑ってないな。


 仕事で幾度となく見てきた、外面だけの男。あれは他人を侮辱しているからこそ浮かんでくる笑みだ。


「本日はお集まりいただきありがとうございます。私、イクリード王国にて宰相を務めさてていただいております、パオロ=コルナーリと申します。早速ですが本題に入りたいと思います」


 パオロはそう言いパンと手を叩くと、近くに備えていた兵士が一つの模型を取り出し上へと掲げる。


「これは魔王が愛用していたとされる大鎌です。当時、魔王と遭遇し生きて帰ってきた者は英雄以外存在しておりませんでした。当然魔王に関する情報というのは英雄によってもたらされた情報のみであり、それを元に作られたレプリカがこの大鎌ということです」


 ――――まさか!!


 レンヤはパオロの意図を把握し、頭を回転させ始める。どう対処すべきか、最善の手は何か、考え抜く。


「これの特徴といたしまして、人間の血を糧に成長するというものと結界を破壊できるというものがあるそうです。その技術は人間側にはなく、魔王側の技術によって作られたまさに世界で一本の代物でしょう。しかしこの大鎌に関して、数年前にある問題が起きました」

「問題?」

「人間に扱えるものではなかったことと、大鎌が放つ瘴気が人体へと悪影響を及ぼすことから『終焉の森』という場所の奥深くに封印されていましたが、それが無くなっていたのです。現在も見つかっていません」


 魔王を象徴する武器の行方が分からなくなっていたのだから、当時はかなりの騒ぎになっていた。


「しかしついこの間、それらしきものが発見されました。こちらをご覧ください」


 映写の魔道具によって用意されたスクリーンに映像が映る。それは学園祭でのレンヤ対エドガーの試合の映像だった。


「レンヤ殿が持っている武器に注目してください。私にはこれが魔王のものと同一に見えるんですがねぇ」

「あの、似ているだけでは?」

「確かに黒いだけの大鎌など武器屋に行けばあるでしょう。なら実際に試してみればいいのです。お願いできますか? レンヤ殿」


 視線がレンヤへと集まる。パオロはレンヤの持っているものが本物だと知っていてこうして振ってきたのだろう。


 結界の魔道具が着々と用意されていく。これが破壊できれば本物ということだろう。


 大鎌を持っていないと主張するという考えが浮かんだが、すぐに却下する。通るかもしれないが、これから先疑いの目で見られることになるだろう。そしてそれは妻でもあるミクルーアに向くことになる。


 レンヤが魔王だとバレれば仲間でもある『機関』のメンバーも共犯の疑いがかかることになるだろう。それも避けなければならない。


 更にレンヤはケルベロスの襲撃の際に姿を消していた。事件後に生徒達から何をしていたのかと問い詰められ、対応力を試すためであり救助できるように準備はしていたと伝えてはあるが、多少の不信感は残っているだろう。


 他の誰にも被害が行かないようにするにはどうするか。


 そしてレンヤは決断する。そのために――――


「フフ……フハハハハハハハハハハ!!!!!!」


 レンヤは高らかに嗤った。





「ここどうなってんねん」という疑問が出てきそうな箇所に関して。


なぜ魔王を象徴する大鎌をレンヤは学園祭で使ったのか。

ミクルーアを殺そうと企てていたことに関して、冷静そうに見えて実は頭に血が上っていたからです。作中でもレンヤの弱点はミクルーアと表記してますし、レンヤも愛する妻を想う一人の人間ですから。


あと何個か思い浮かんでたんですが後書き書いてる途中で忘れました。思い出したら追記しときます。


次回更新はいつも通り。


追記

次回更新は3日17時に変更します。

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