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私は今

登場人物紹介を除けば、記念の50話目です(多分)

 ダンジョンでの一件も落ち着き、調査を国に任せたレンヤは自室のベッドにてミクルーアの膝枕を楽しんでいた。


 中庭で遊ぶ子供達のはしゃぎ声をBGMに、穏やかな時は流れていく。最高の枕と時折髪を梳くように頭を撫でてくる優しい手つきにレンヤは完全に身を委ねていた。


「お疲れ様でした、レンヤくん」

「俺は特に何もしてないがな」


 今回の一件、ダンジョンにケルベロスが出たが無事倒せた、というだけで終わる話では当然無かった。


 ケルベロスは深層に出没し、ダンジョンの魔物の特性として階層を移動することはない。つまり、今回の件は異例の出来事だったのだ。


 初心者が主に回るダンジョン浅層にそのような魔物が出るのは多くの命の危機に直結する。それ故の国の調査だ。


「こっちはこっちで手は回した。きな臭い情報が色々と出てきたよ」


 レンヤは独自の情報網を駆使し、自分なりの推測を立てていた。


「そもそもおかしくはあったんだ。俺達が行く前からダンジョン内には冒険者が多くいたはずなのにケルベロスの発見情報はなかった。あんだけでかい図体を見逃すはずはない」

「すると、突然現れたということでしょうか」

「あるいは知らない間に俺達が深層へと飛ばされてたかだな」


 優人が見つけた大きな爪痕。突然ケルベロスが現れたとなればそんなもの残っているはずがない。ということはあれを見つけた時には既に深層へと飛ばされていたとなれば一応の説明はつく。


「転移の魔道具はもうほとんど残されていなかったのでは?」


 ミクルーアの言葉通り、転移の魔道具はこの世にほとんど残っていない。かつて英雄と旅路を共にした賢者のみが作れたとされる希少な魔道具だ。


 そんな便利な物が長い間残るわけもなく、既に使い果たされていたはずだった。


「それが実は残っていた、あるいは――――」


 レンヤは一つの結論に辿り着いていた。それは、考えうる限り最悪の場合の結論だ。


「相手側に、それを作れる者がいるってことだ」


 街に突然魔物を出現させたり、国の要人たちが集まる場所に不意打ちをかけたり、相手にはそれが出来る可能性が浮上した。


 幸いにも転移は入口と出口の両方に魔道具を設置しなければいけない。つまりは一度行ったことある場所でなければならないのだ。


「陛下に警戒を呼びかけておくか。もしこれがあの実験の一部なら、本格的に備えなければいけないな」


 帝都を襲った魔物の軍勢に学園祭でのエドガーの狂暴化。どれも裏で手を引く影が見え隠れしていた。


「何にしても、ミアと孤児院だけは絶対に守る」

「頼りにしてますよ」

「しとけしとけ。……くぁ……」

「少し寝ますか?」

「すまん、そうする。ミアも一緒に寝るか?」

「私は眠くないので子供達の様子でも見てきます」

「分かった」


 欠伸をしたレンヤは膝から離れベッドに入ったかと思うとすぐに小さな寝息を立て始めた。ミクルーアは静かにレンヤの寝顔を眺められる位置へと移動した。


 普段はサクヤやリオンによって面倒事に巻き込まれて気難しい顔をしていることが多いだけに、このあどけない寝顔がミクルーアは好きだった。


「ふふ、おやすみなさい」


 起こさないようにそっと額に口付けを落とすと、ミクルーアは上機嫌で部屋を出ていった。


 ※※※


 サクヤは廊下を歩き、ある部屋を目指していた。その道中、ご機嫌なミクルーアと遭遇する。


「あら、サクヤちゃん」

「ミクルーア。丁度良かった」


 何やらサクヤはミクルーアに伝えたいことがあるらしく、まさに偶然だった。


「私、狙いますから。ボケっとしているとその座も危ういかも知れませんよ?」

「望むところです。正妻の座は誰にも渡しません」


 互いに見つめ合い、しばしの沈黙が流れる。


「……ふふっ。どうやら自信満々のようですね」

「当たり前です。レンヤくんのことは誰よりも愛してますから」

「上等ですね」


 サクヤからの宣戦布告を堂々と受け止めたミクルーアは最後に一言だけ残していく。


私の(・・)レンヤくんは自室で寝てますよ」

「そうですか。情報どうも」


 去っていくミクルーアの背中をしばらく見送った後、サクヤはレンヤの部屋を訪れた。


 そこでは気持ちよさそうに眠っている少年がいた。本人が望んでいる怠惰な生活としてよく見る光景だ。


 危害を及ぼそうとさえしなければ、自然と目が覚めるまで起きることはないだろう。


 ――――私も……


 ミクルーアとレンヤがそういう行為をしているのは知っていたが、少し羨ましいなと思う程度だった。だが今はもう違う。


 自分もしたい。愛する人と繋がりたい。


 だからこそ、サクヤは行動する。


 近付いていく顔。微かな寝息すら感じられる距離までそれは近付き――――


「ん……」


 自分とレンヤの唇が重なり合う。想いを唇に乗せ、そっと伝える。


 伝わりきらない暖かな想いが胸に溢れ続ける。


 自分は今、とっても幸せだ。


「大好きです、レンヤ」



ハーレムタグが光り輝く。


評価、感想お待ちしております。


ちょっとずつポイントが増えるの焦らしプレイみたいだと思いました(前作品でも言った)


次回更新は明後日17時予定。


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