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頭脳

10分遅れの更新。

遅れて申し訳ないです。

 馬車に揺られダンジョン入り口がある広場へとやって来たレンヤ達一行。引率の代表であるレンヤは早速説明を始めた。


「一番奥にある洞窟がダンジョンへと繋がる入り口だ。この広場はダンジョンへ向かう者達にむけて様々な屋台が出ている。少し時間を取るから装備を確認したり何か食べて英気を養ってくれ」


 レンヤの言葉に生徒達がワッと沸き、思い思いに散っていく。


「なあミア。この光景を見てどう思う?」

「そうですね……まるで観光気分、でしょうか」


 屋台の食べ物に舌鼓を打つ男子生徒や、アクセサリーに模した装備品を眺めてはしゃぐ女子生徒。その様子は明らかに『これから戦いに挑む者達』ではなかった。


「でも、一人だけ違う行動をとっていますね。レンヤくんが指名した人では?」

「そうだな」


 ミクルーアの視線の先、特に何もせずベンチに座り込んでいる優人がそこにはいた。


「レンヤくんはなぜあの人を?」

「ユートにはあいつ等の頭脳(ブレイン)になり得る素質がある」


 レンヤはそれを初対面の時の『お試し』の時に把握していた。


「ユートは何かの際には必ず周囲の状況を把握する癖がある。そして自分が取るべき行動を瞬時に判断する判断力がある。そしてなにより――――」


 レンヤはニヤリと笑う。


「あいつには、プライドがない」


 人にはプライドというものがある。自分の立場や状況によって、自分はこうでなければというものがあるのが人というものだ。そこには格好いいところを見せたい、失望されたくないという見栄も含まれているだろう。


 だが生きるか死ぬかの戦いにそんなものは要らない。見栄やプライドなど死んでしまっては元も子もない。生き残った者こそが勝者だ。


「あいつは恐怖を前にして即座に『逃げ』を選択していたよ。そういうやつの方がこの世界では長生きするからな。今回、他の奴らには痛い目見てもらってユートの指示によって無事に生きて帰ってきてもらう。んでこの世界への認識を改めてもらえれば………何笑ってるんだ、ミア?」

「いえ、何も? ふふっ」


 ミクルーアはレンヤにそっと腕を絡める。この不器用な男が愛おしくて堪らなくなったから。


 レンヤは『この世界で生きるために必要なこと』について語っていたが、何よりも生徒の無事を大事に考えているというのが伝わって来た。素直に『死んでほしくない』と言えばいいものを、遠回しにしか言えないのがもどかしくもあり愛おしい。


「行きましょう。レンヤくん」

「……ああ、そうだな」


 上機嫌なミクルーアに連れられ、レンヤは困ったような笑みを浮かべながらも付き添っていた。


※※※


「はぁっ!」


 一人の男子生徒が剣を振るい、魔物が慌てて後方へと距離を取る。


「今だ! 『火球(ファイアボール)』!」


 そこにすかさず魔法が飛んでくる。重心が後ろへと傾いている状態かつ足も遅い魔物は火に包まれた。


「うん、いいコンビネーションだったよ」


 それを見ていたリオンが評価を下す。


 ダンジョンに入った一行は何組かのパーティーに分かれ、順番に魔物と戦っていた。基本的には戦闘技術を教えていたリオンやサクヤが傍についており、レンヤは後ろで眺めているだけだ。


「結構楽勝だよね。これならもうちょっと下の階層に行けそうじゃない?」

「いざとなったらリオンさん達が守ってくれるんでしょ? なら行ってみたいな」


 そんなレンヤの耳に戦闘を終えた生徒達の会話が届く。どうやらもう少し強い魔物をご所望のようだ。


 ――――案の定、か。


 レンヤはこの状況を危惧していた。冒険者が死ぬ時というのは、魔物と戦い敗れた時というのがもちろん多いが、その次に多いのが戦闘を終えた後だ。


 いわゆる気の緩み。緊張が解け、油断が生まれたその隙を突かれてというケースはよくあることだ。


 ――――ま、下の階層で絞られるといい。


 見た感じ、この階層では生徒達の実力は充分通じるが、あと二、三階層ほど下りれば余裕はなくなるだろう。そうすれば緩みもなくなる。


「それじゃあ、休憩にしようか」


 地下迷宮という名から入り乱れた道を進んでいくと突き当りに巨大な部屋が存在していた。ここには国が用意した結界が張られており、安全地帯となっている。ここで休憩を取ったり、寝泊りをするのが主流だ。


 思い思いに腰を下ろして雑談に興じる生徒達。笑顔が見られることからも、特に思うことは無いのだろう。


「レンヤさん、あの……」


 レンヤも休憩していると、優人が話しかけてきた。


「ここまで来る途中の壁に、大きな爪痕があったんですけど……遭遇した魔物の中にそんなに大きな魔物はいませんでしたよね?」


 優人が聞いてきた内容に、レンヤはよく気付いたなと心の中で賛辞を贈る。


 たしかにそのようなものはあった。初心者向けのダンジョン浅層ではそんな大きな魔物など出ない。となると、自然に沸くものではないということになる。優人もそれには気付いているようだ。


「一応、注意を呼び掛けておいた方が……」

「そうだな。そうしと――――く必要はなさそうだ。来るぞ」


 刹那、部屋が激しく揺れだし、巨大な影が姿を現した。



雨でずぶ濡れになり、風に押され転びそうになりました。

皆様もお気を付けを。


更新が遅れる際は最新話の後書きに追記をしておきます。あと活動報告でも知らせます。


そういえば、この作品のブックマーク数が200を超えていました。これからも『最強の元王子様は怠惰に過ごしたい?』をよろしくお願いします!


次回更新は明日17時予定。

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