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初め

 僕には夢がある。


 冒険者ギルドに入り、冒険者になるという夢が。


 そして冒険者になり、モンスターを倒し町に住む人々から感謝されるという夢が。


 もちろん母さんや父さんには反対された。


 母さんは僕に冒険者になって欲しくないそうだ、冒険者になるともしかしたら命を落とすかもしれない……と。そのくらい僕だって知っている、だけど僕はそれでも冒険者になりたいと思っている。


 父さんには殴られた。お前なんかが冒険者になれるはずがない、魔法だって使えないしスクールに通ってすらいない。そんな奴なんか冒険者ギルドに採用すらされない……とまで言われた。だが僕は剣を使えないわけじゃない。父さんは動物を狩ったりする、だから僕も父さんを手伝うために動物を狩ったりしてきた。短剣を使わせたら天才だとも言われた、そんな父さんに反対された僕は……耐えきれず家を飛び出した。


 そして今僕は夢を叶えるべく冒険者ギルドの試験を受けに来ていた。


 父さんは町に行くまでにモンスターに襲われる……なんて言ってたけどモンスターなんて一体も出てこなかった、もしかしたら僕は運がいいのかもしれない。


 今まで町に来たことがなかったが……こんなにすごい場所だとは思わなかった。


 まず町を囲むようにして壁が立っている、これはモンスターを町の中に入れないためだろうか。


 さらに町に入るとまたしても驚かされた、町の建物が木ではなく石で作られていた。


 そして……町だから当たり前だとは思うが、たくさんの人がいる。

 頭からもふもふした耳が生えてる人なんてなんて初めて見た。


 果たしてこんな場所で僕はやっていけるのだろうか……っと弱気になってはいけない。


 今から夢を叶えるべく一歩を踏み出そうとしてるときではないか。


 弱気になるなんて僕らしくない。


「アイリさん、番号123番のアイリさん」


 どうやら僕の名前が呼ばれたようだ……さてまずは何をするのだろうか……さっきプロフィールは提出したし、もしかしたらモンスターを倒したりするのだろうか。


「はい、僕がアイリですけど何かするんですか? 実際に戦ったり……」

「申し訳ございません、少し質問をさせていただきます」


 おや、少し予想が外れた、冒険者ギルドなのだから力を確かめたりすると思ったのだが……


「あ、はいどうぞ、どんなことでも聞いてください」

「アイリさんは、魔法を使うことができますか?」


 僕は魔法を使うことができない、というのも魔法は誰かから教わるものだ。というか誰も僕に魔法を教えてくれなかった。


「いえ、使うことはできません、ですが先ほど渡したプロフィールにも書いてあるのですが短剣を使わせると天才と言われてきました」


 誰にとは言わなかったが嘘ではないし別に問題ないだろう。


「そうですか……ではスクールには通ってましたか?」


 スクールか……もしかしたら本当に父さんの言ってることが正しくてスクールに通わないと冒険者ギルドには入れないのだろうか。


「いえ、一度もありません、ですが短剣を「そうですか……」え?」


 受付の人の顔が一気に曇ったように見えた。


「すみませんがアイリさん、あなたを採用することはできません」


 え……嘘だろ……どうして……。


「え……それはどうしてですか?」

「もしもの場合責任を負わないといけないのは私たちギルド側です、ギルドの考えは犠牲を少なくを目標としているため魔法かスクール出身でないと採用が難しいのです」


 言ってることはわからなくもない、犠牲はなるべく少ないほうがいい。

 けど無理とかではなくて難しいとはどうしてだろうか。


「どうして無理とかではなく難しいなんですか?」

「後ろから戦ってもらう魔法使いや弓使いならばモンスターの攻撃を受けなければ問題ないので採用するのですが、アカネさんのように短剣を使うなどの前で戦うとなると犠牲が増える可能性があるのです」


 前で戦う僕は死ぬ確率が高いから採用できない……と。


「……スクール出身の短剣を使う人は採用するんですか?」

「そうですね、スクールでは戦うための剣術などを教えてますから犠牲も少なくなるのです」


 なるほど……そういうことか、要するに僕は死ぬ確率が高いから採用されないのか。

 だけど……僕も諦めることはできない、家を出てまで目指した夢なんだ。


「僕はどうしたらこのギルドに採用されますか?」

「魔法を覚えたりスクールに通ったりするか……他のギルドに入っていただき功績を残してもらえれば採用することができます、冒険者ギルドや金融ギルドなどは国が管理しているものなので他のギルドに入っていたとしても採用することができます」


 僕が功績を残せば、僕は戦える人間という信用を得られるということか。


「功績を残せばいいんですね?」


 スクールに通うのは今更だ……魔法だってタダで教えてもらえるわけではない。

 だが功績ならば簡単だろう、街にはたくさんのギルドがある、そこの一つに入ってなんらかの功績を残せばいいのだ。


「はい、そうなりますね……ですが冒険者ギルドは特別ですが他のギルドとなると……採用期間はつい数日前に終わったばかりなので採用されるのは難しいですね」


 え……そんなこと聞いてない。

 初めて知った。


「つまり他のギルドに入って功績を残るのは来年からだと」

「そうなりますね……よろしければこちらで探してみましょうか?」


 そのときの僕はショックで受付の人の声が聞こえてなかった……来年にならないと功績すら残せない?


「いえ……大丈夫です……ありがとうございました」


 ーーーー

「ねぇあなた、アイリのことなんだけどあんなに反対しなくてよかったじゃない、いつも言ってたじゃない……アイリは天才だって……もともと冒険者だったあなたが言うのだから才能はあるんじゃないの?」


「アイリは天才だ……あんなことができるのは今までに見たことがない……だが俺がもともと冒険者だったからこそなって欲しくなかったんだ」


「そうね……アイリはやっていけるのかしら……もしかしたら道中にモンスターに襲われたりしてるかも……」


「ああ、それは大丈夫だ、アイリはそこらへんのモンスターにはやられないさ……ただスクールに通わせなかったし、あれは魔法でもないからな……採用されるか……」


「ねぇあなた……そういえば私聞いてなかったけどアイリの才能ってなんなの?」


「……アイリはな、武器に魔法を付与することができるんだ」

 ーーーー


 先ほどまで驚かされた街に色がないように感じられる……僕はこれからどうすればいいのだろうか。

 家に帰る……?


「家に帰るなんてだめだ……家を出てまで街に来たのに……母さんや父さんに会わせる顔がない」

「おっと……前を見ないと危ないぞ」


 前を見て歩いていなかったせいで誰かにぶつかりそうになったみたいだ。


「すみません」


 顔を上げるとそこにいたのはメガネをかけた執事のような人だった。


「少年、どうかしたのか? 目が死んでるぞ」


 男性が声をかけてくれるが……なんというか、馬鹿にされたのか?


「いえ……なんでもないです……心配してくれてありがとうございます」

「ちょっと待ってくれ」


 その男性は隣にいるもう一人の男性と話し出した。

 こっちの男性は……髪が長く……不気味な格好をしている。


「少年、冒険者ギルドに採用されなかったみたいだな」


 ああ、あのときの僕を見ていたのか。


「そうですね……功績を残せば採用するって言われたんですけど数日前に他のギルドの採用も終わったみたいで……」

「なら、俺たちのところにくるか?」


 え……俺たちのところ?


「え……いいんですか?」

「ああ、俺がギルドのマスターをしてるんだが人手が足りなくってな……どうだ?」


 僕にとっては本当にありがたい話だ。

 とにかく断る理由がない。


「え、いいんですか? ありがとうございます! ……ところで何をするギルドなんですか?」


 執事のような格好をしてるしそっち系のギルドなのだろうか?


「なんでもする」

「え?」


 僕は耳を疑った……なんでもするって言わなかった?


「だから、なんでもするんだ。 ああそうだ名前は? 俺はネロ、そしてこいつがシューダーだ」


 言ってたらしい……ネロさんに、シューダーさんか。


「アイリですけど……」

「そうかアイリか、よろしくな、こき使ってやるから」

「……え?」

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