世界大思想全集 春秋社 1927年刊行 全126巻 これはまさに、画期的な刊行だった。
当時の出版界は、世に言う「円本」ブームで、各社とも今でいう全集モノを主として予約制で刊行し
ブームとなっていたのでした、
それらの出版物は当然小説主体であり、今でいう文学全集ですよね。
そんな中あえて?思想(西洋哲学・西洋思想主体です)という全集を出そうというこの決断は、、春秋社の英断であり
すごいことだったのです。
今と違って当然検閲がある時代ですよ。
文学関係ならまあそんなに検閲もゆるいでしょうが、こと思想書は相当の検閲を覚悟しなければならなかった時代ですね
そこをなんと
なんと126巻もの、大思想全集を出そうというのですよ。
これをすごいといわなくてなんとしましょうか。
そういうすごい思想全集がかって戦前にあったという驚きはいまだに
驚嘆と称賛に値する大事業だといえるでしょう。
それを成し遂げたという春秋社とはいったいどんなすごい出版社だったのでしょうか?
1918年創業、宗教書などが中心だったようです。
それがなぜ、、このような126巻という大思想全集を出そうと決意したのか?
私には詳しい経緯はわかりませんが、、。
それだけでもすごい出版社だったといえます。
全126巻ですよ、今に至るまでにこんな大思想全集を刊行した出版社ってありませんよ、
中途挫折することなく全巻を刊行し終えています。
戦後になって刊行された思想全集を見て比べても抜きんでていますね。
世界の名著、中央公論社 昭和45年刊行、、ですら全81巻ですよ。
人類の知的遺産 講談社 1979年刊行 全81巻
世界の大思想 河出書房 1969刊行 全45巻
数だけ多ければいいって?もmmじゃあじゃないって?
まあそうですよね。
上記のような戦後の全集の方が読みやすいし訳文も適正ですからね。
確かに、、今からこの「世界大思想全集」をよむとなると、、昭和5年ですからね、
訳文は相当古めかしくて、、今では読みにくいし、、しかも、、誤訳もそうとう、ありますし、検閲で?
伏字、抜け字、黒字の部分さえあります。
ですがそれらを超越して
「世界大思想全集」には今なお価値があるのです、
それは、、その後の、新訳によって後代に乗り越えられていない重要古典が多数、存在する、、ということです。
(つまり、これしか後にも先にも邦訳書がない、、という本がここにはにあるのですね。)
マイナーで埋もれてしまっているが、
少数派だがコアでディープな思想書が、、
そういう、
思想書がわんさとあるのです。
岩波文庫にもこういう思想書がいっぱいありますが、
その岩波にも訳されていないような思想書もここにはあるのですね。
126巻全部紹介するだけの気力はないので?、
というわけでこれから、、その後の、新訳によって後代に乗り越えられていない重要古典
後にも先にもここにしか邦訳がない、、という
そういう貴重なマイナーな思想書のみを紹介してゆきたいと思います。
以下、、、私の独断と好み?でセレクトしていますよ、悪しからず、、、。
○「社団的社会主義要綱」 シャルル・フーリエ(Charles Fourier)
「労働階級の政治的能力」 ピエール=ジョゼフ・プルードン(Pierre Joseph Proudhon)
いわゆる空想的社会主義の古典です。でも?ソビエト崩壊後の今から見ればマルクス主義こそが
悪夢(空想)だった?と言えるのではないでしょうか?
○「政治的正義」 ゴッドウイン
これも空想的社会主義(無政府主義)の古典ですね。この人の娘がメリー・シェリーです。
あのフランケンシュタインの作者です。この本もこれしか邦訳は存在しませんね。、
○「科学概論」 ピアソン
科学哲学(自然哲学)の名著です。
○「美学及美学史」 Estetica come scienza dell' espressione e linguistica generale ベネヂット・クローチェ(Benedetto Croce)
クローチェの名著ですね。
○近世画家論 ラスキン
○社会学上より見たる芸術」 ギュイヨオ
芸術論です。
〇唯物論史 上下2巻 ランゲ著 春秋社
唯物論の歴史通観
これは「世界大思想全集」と言って春秋社という当時昭和5年頃の有力出版社が出した画期的な思想書シリーズでした。その中の一冊がこれです。この本の邦訳はいまだありません、これしかないという貴重書?ですね。
〇第一原理 スペンサー著 春秋社
進化論的論法で世界を説明し尽くす、世界大思想全集の一冊、
この邦訳もこれだけです。
これの復刻版が最近2008年に出たそうですね。ググったらなんと定価が16500円でした。
じゃあこの原本が良い?かも、訳文は古くてとっつきにくいですがまあ読めないこともないのでね。
〇実証哲学 コント著 上下2巻。春秋社
実証哲学で世界を説明し尽くす。これも春秋社のシリーズの一冊。、
訳者があの有名な?石川三四郎です。と言っても、今ではすっかり忘れ去られた人物ですよね。
急進的社会活動家です。これもこれしか邦訳はないですね。
〇19世紀文芸主潮史 ブランデス著 全5巻。春秋社、
文学とは何ぞや。19世紀のヨーロッパ文学を網羅的に評論した大著です。
特に私は
「ドイツロマン派」の部分だけ所蔵してます。ところが、訳文がとてつもなく生硬でしかも誤訳だらけです,でもブランデスのこの本の邦訳はこれしかないので私も時々誤訳前提?で読んでますがね、吹田順介という人はドイツ文学者だと思いますが、「ドイツロマン派」のこの訳文は、誤訳が多いです。
〇レオパルヂ集 春秋社、
ペシミズムの聖典。詩人にして厭世家のレオパルディの唯一の邦訳本?
柳田泉が英語版から重訳したものです。
よく調べるとほかにもあることはあるが入手困難。と言ってもこの本だってそうと入手困難ですがね。最近、新訳が出たが、ものすごく高価です。
〇マルキシズムの改造 ベルンシュタイン春秋社、
修正マルキシズム
〇マルキシズム修正の反論 カウツキー春秋社、
〇ヴェニスの石 ラスキン 春秋社
芸術論
思えば、、遠い日々
そうですね、、今からもう50年も前になりましょうか、
私が某大学で若い哲学徒として研究に打ち込んでいたころ、、
息抜きに
私はしばしば神田の古本屋街に出かけたものでした。
貧乏学生でろくな本は買えなかった私でしたが
古本屋の店頭にいわゆる見切り品
ぞっき本というのでしょうか
露棚にどさっと見切り品が積んであるんですよ。
どれでも1冊100円って値札とともにね。
金のない私はそういう見切り品の山をかき分けては
さGしまくったものでした、
そういう中で「世界大思想全集」にも出会ったものです。
二束三文でどさっと売られていたものでしたね。
そこから「実証哲学」「第一原理」「唯物論史」「政治的正義」などを100円で買った記憶があります。
しかし、、その後の私自身の人生の有為転変で、、
今まで16回引っ越ししてますので、、
その間にどっかに行ってしまったのですね。
どこで無くしたのかさえ覚えてません。
ある日、気が付いたら、、無くなってました。
付記
今、、これからこの全集を見つけて、、買って、、読む?
という奇特なお方が。。もしもいたとしたら?
まあ、旧漢字、旧かなのオンパレードですから、
よほど語学力のある方以外は
不可能でしょうね。
これから哲学とか思想とかを学びたい?
という奇特なお方がいたら?
私のお勧めは
世界の名著、全66巻、 中央公論社 昭和45年
か、あるいは、、
世界の大思想 河出書房 昭和43年
が、、今でも最も良書でしょうね。
今こういう硬い?思想書の全集など
どこの出版社も出せないし、出す気もないですからね。
かって全盛を極めた「文学全集」ですら今や
まったく、どこの出版社も出せませんからね。
ましてや思想書の全集など、、出せるわけもありません。
当時の一流の哲学者や翻訳家が訳してるので、
この二つの全集は今でも十分、通用しますし、
有益な内容だと私が保証します。
参考文献
当時の円本の状況
以下ウイキペディアからの引用の表です。
全集名 巻数 出版社 発行期間 発行点数
現代日本文学全集 63巻 改造社 1926年12月 - 1931年 25万
世界文学全集 57巻 新潮社 1927年3月 - 1930年 40万
世界大思想全集 126巻 春秋社 1927年 - 1933年 10万
明治大正文学全集 60巻 春陽堂 1927年6月 - 1932年 15万
日本戯曲全集 50巻 春陽堂 1928年 - 1931年
現代大衆文学全集 40巻 平凡社 1927年5月 - 1932年
世界美術全集 36巻 平凡社 1927年 - 1932年
新興文学全集 24巻 平凡社 1928年 - 1930年
近代劇全集 43巻 第一書房 1927年6月 - 1930年
日本児童文庫 76巻 アルス 1927年5月 - 1930年 30万
小学生全集 88巻 興文社 1927年5月 - 1929年 30万
マルクス・エンゲルス全集 20巻 改造社 1928年 - 1930年
以上引用終わり、