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沈黙は金 雄弁は銀 無駄話は一体?
我は多弁である
しばしば己を
うるさく感じ、黙る
だがその試みはすぐ失敗に終わる
黙っていられないのだ
起床し、覚えていたら夢の話をし
朝のニュースを見ながら
あーだこーだ話す
出勤前の静かな朝のひとときなど、主人にはない
主人は寡黙である
テレビを消して
我が黙ると
部屋に満ちるのは沈黙だ
主人はいつまで黙っていられるのか?
と時間を計ろうとしたことがあった
沈黙に耐えられず我は口を開いた
結局時間もわからずじまいだ
主人が黙っていられる時間と
我が喋っていられる時間はもしや等しいのではないか?
話すという点において
タイプが真逆なのかもしれぬ
交際当時から薄々感じてはいたが
共に暮らすようになると
浮き彫りになった
先日運転してもらっているのに
我は助手席でうたたねしてしまった
「あ、すまない。眠ってしまった」
「知ってた。黙っていられるわけないからね」
以上が繰り広げられた会話である
我は大変なショックを受けた
主人は嫌味を言ったわけではない
事実を述べただけなのだ
我は本当にやかましい
うるさい人間だ
物静かなひとに憧れてやまない
ただそうなろうとすると
苦しくてたまらないのだ
かなしい