第4章 07話 冬祭り①
3話アップの3話目です
肌寒い風が吹き、季節はすっかり冬になりつつある今日この頃。
オレは暇が出来れば修行のためテューのところに移動をし、モーン村では冬祭りの準備をしている。
一時はオレが危険な目にあったことでいつものメンバーが必要以上に心配をしてしまい、祭りを取り止めにしようという話が出てきたが今のオレは至って元気なため予定通り冬祭りを行うこととした。
各職場や家単位で出し物を決めており、2日間の祭りで交代して行ってもらうようにしている。店を出す側と買い求める側の両方を交代で行ってもらうことで、祭りを楽しんでもらおうという考えだ。
オレは屋台をいろいろやる予定だが、一人ではムリなのでいつものメンバー(クロ、ミミ、ティカ、ナミ、ルルナ)で交代で対応するつもりだ。
「それじゃ、出し物としてはから揚げ、お好み焼き、たこ焼き、りんご飴でいいかな?」
「いいと思います。ただ、手に入れられない食材は代用品を使うこととなります」
クロの言うことはもっともだ。たこ焼きのたこはここでは手に入らない。それにりんごも似たような物になるだろう。
「それは臨機応変に対応しよう。たこの代わりは・・・前に作ったハムを角切りにしたものでも入れるか。りんご飴はりんごにこだわらないでいろんな果物を作って試してみよう」
こっちの世界でもハムはある。魚介類は手に入りづらいのでハムを入れたほうが効率的だ。味は試してみないとわからないので今日の昼に試しに全部作ってみる予定だ。
たこ焼きの鉄板は、オレがマテルを使い土でおおよその形を作ったところズズがすぐに形にしてくれた。さすが職人だ。こちらの意図をすぐに読み取り形にしてくれた。
「今日の昼に一度試しに作ってみるから、みんなやり方を覚えてね。あとは味見もしてもらおう」
みんな期待に満ちた目をしている。そんなにたいした物じゃないけど・・・でも異世界の味ってことで興味があるんだろうな。
昼飯までの時間で必要な食材を集めておく。殆どの食材は家の横に以前作った保冷庫に入っている。ちなみにうちの村には各家に保冷庫を作ってある。冷蔵庫を作ろうとしたが、大きな箱を作り密閉を高めると重くなってしまい、軽く作ろうとすると冷気が漏れてしまう場所が出来るためとりあえず保冷庫で対応しているのだ。
もともと保冷庫でさえ高級なためなかなか使えないので、冷蔵庫ではなく保冷庫だけでも十分贅沢といえるのだ。
「肉・・・タマゴ・・・小麦粉・・・」
オレは食材を探してはクロに渡し、必要な物を選び出していく。
「よし、とりあえず今あるものはこれぐらいかな」
必要な食材を集め終えて家の中に戻ると、下ごしらえを始める。
まずはから揚げ。から揚げは個人的に好きなので自己流でよく作っていた。一度弁当を作った際に会社に持っていったとき同僚に食ってもらい感想を聞いたが「から揚げって言うよりフリッターっぽい」といわれた。
でも自分では気に入っているのでこのレシピで勝負したいと思う。
まずは小麦粉に水を入れながら溶いていき、さらさら過ぎず、塊がなくなる程度どろどろした状態にする。そこに塩やこしょうなどで味をつけてとりあえず置いておく。
次に肉を一口サイズに切り軽く塩を振ったらにんにくに似た香りのする実をすりつぶして肉に満遍なく擦り込む。
本当はしょうゆなどでつけておくのだが、今は無いのでそのまま衣を付け油で揚げていく。始めは泡が多く出ているが、だんだん火が通ると少なくなっていくので頃合を見てサッと取り出し油を切る。
1つ目の肉を半分に切って火が通っているか見てから一口・・・うん、いつもの俺の好きな味に近い。
隣でナミとルルナが雛鳥のように口をあけていたので、小さく切ったから揚げをふーふーしてから口に入れてあげた。
「?!うまっうまっ!!」
まだ少し熱かったのかはふっはふっ言いながら食べているが、おおむね好評のようだ。
それから一定量を作り、昼のおかずとして皿に盛る。
次はお好み焼き。これも小麦粉を水で溶いて、長いもと同じように粘り気のある芋を擦って入れる。具はキャベツ、ねぎに似た野菜と薄く切った肉、ソースは調味料を混ぜてなんとなくで作ったがまぁまぁな出来だ。
簡単だがそれなりにボリュームもあるので1つだけ作る。紅しょうがと青のりが無いのが悲しいところだが、手作りマヨネーズは作ったのでお好み焼きにはなるだろう。
次はたこ焼き。これも粉物なので大体同じような作り方だが、焼き方が難しい。専用鉄板と一緒にアイスピックのような専用の串も作ってもらったので、丸く形を形成していく。
中身はハム以外はお好み焼きと一緒だ。同じような味にならないようにちょっと生地に魚から煮出しただしを混ぜている。
みんなオレの手の動きをみて驚いているようだ。まぁ地球にいたころ店先で実演してるところも多かったから作り方見てなんとなく覚えていたし、友達呼んでたこ焼きパーティをしていたこともあったのでけっこう慣れた手つきで丸く形作っていく。
「器用な物ですね。ここまで丸く形作る食べ物は初めてみました」
「見ているだけでも面白いのでお客さんもいっぱい集まるかもしれませんね」
たこ焼きも30個ほど焼き上げたので次に取り掛かろう。
次はりんご飴だ。地球で言うりんごは無いので、似たものや甘い果物を一通り試してみよう。
水あめもどきを作り、いろいろな物をコーティングしていく。なしやみかんのような果物は皮をむいて、皮も食べられる果物はそのまま木の棒にさしてコーティングし乾かしていく。
「まだ食べてはだめなのか?」
ナミが待ちきれずに聞いてきた。
「これはデザートだからとりあえずご飯食べてからにしよう」
「むぅ・・・わかった。それじゃすぐ食べ始めるぞ!」
もうくだもの飴(みんなで銘々)を食べたくてうずうずしているようだが、とりあえず他の物を食べてからにしよう。
「お待たせ。とりあえず全部出来たからみんなで食べてから感想言ってくれ」
「いただきます」
それぞれが好きな物に手を伸ばしていく。
「これは!!いつも焼くだけだった肉をとんかつにして揚げた時は驚きましたが、このから揚げもそれに劣らず驚きです。ここまでしっかりと味が付いているのでおかずとしてはとてもよさそうですね」
クロはから揚げを食べたようだが、好評で何よりだ
「このお好み焼きはソースが絶妙ですね。この白いソースも病み付きになりそうです。野菜とも合いそうな気がします」
ティカはお好み焼きを食べたようだ。マヨネーズが野菜にも合うと考えるところはやはり料理をしているからだろうか。
「この丸い奴は熱いからすぐには食べられにゃいにゃ。でもさめてからはおいしいにゃ」
「一口で食べると口の中を火傷してしまう。でも味はうまいな」
「熱いけどおいしいの」
ミミ、ナミ、ルルナはたこ焼きを食べているらしい。中身が熱いのは仕方ない。慣れるかさめるまで待ってもらうしかないな。
それからみんなほかの物も食べて一通り感想を聞いたがかなり手ごたえはある。そして最後にくだもの飴を出してみた。
マテルでキンキンに冷やしておいたので少し硬いかもしれないが、ぱりぱりの飴を割りながら食べるのはけっこう好きだ。
「硬いけど甘くておいしいのぉ」
ナミとルルナは小さな口でチロチロと飴をなめている。なしに似たくだものなのでけっこう大きいが食べきれるのだろうか?
「大人でも楽しめますね。ちょっと子供に戻った気分です」
ティカもおいしそうにくだもの飴を舐めている。
これも外れなくすべて好評だったので問題ないだろう。
「それじゃ、みんな作り方を覚えてもらうかな。それそれが担当持ってもらって、俺がちょっとずつ回るからね」
こうして祭りの出し物は決まり、それぞれ準備に取り掛かった。
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「この村もだいぶ大きくなった。新しい仲間も増えたので大いに楽しんでもらいたい。それでは冬祭りの開催をここに宣言する」
オレの発声により、冬祭りが始まった。大きな見世物としては咄嗟に思いついたかくし芸大会だ。飛び入りもOKで自分の特技や一発芸でオレとクロの審査で1位になった者に賞金が出る。なんと金貨1枚だ。
これを聞いた村人は目の色が変わり、自分の得意なことをさらに伸ばばすため努力する者、新たに特技を見出す者などさまざまな反応が出た。
それは夜からなので昼間はとりあえず他の村や町から店を出しに来る人も含めていろいろな店の散策がメインだろう。
ミルアン様のところの執事やメイドたちにも声を掛けたし、ビラを作って近くの町や村にも配ったからけっこう人が多い。行商人達が店を開いたりもしているので店も50以上は出ているだろう。
祭りの期間に限って加工場と採掘場以外はフルオープンになっているので警備隊が各所に配置されている。
これから2日間でどれだけ売り上げを伸ばせるか腕の見せ所だな。
まずはオレとティカとルルナが屋台を担当する。料理は4種類だが、ある程度作り置きを作っておいたので最初のスタートは問題なかった。
しかし予想以上にから揚げとくだもの飴に人気が集中している。たこ焼きやお好み焼きはまだ食事時間じゃないのでこれからだろう。
から揚げは俺が担当し、くだもの飴はティカとルルナが担当している。値段はから揚げは5つで3バル、くだもの飴は1つ1バルだ。まぁそこまで利益を上げようと思っていないのでこの値段設定でやっているが普通ならもう少し高いだろう。
「3つで3バルになります。はい、ちょうどですね。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
二人の息はぴったりだ。ルルナも子供にしてははっきりとした口調で対応している。奴隷商のところで接客していただけのことはあるだろう。
俺も負けてられない。
「はい!いらっしゃい。から揚げ3つね!9バルになるよ。ちょうどもらうよ。それじゃそこのマヨネーズは好みで付けていってくれ」
オレのほうは少し列が出来てきている。このまま接客しながら一気に売ってしまおう。
昼までには当初予定していた量を大幅に超えて売れている。今日の分はもう殆ど残っていないので、明日の分として下ごしらえしておいた分に手をつけるしかない。
午後からクロたちと入れ替わるんだけど、その後に下ごしらえをしなくちゃ明日の分がなくなりそうだ。
肉はかなり備蓄しているので問題はない。ただ作る量が多いので時間がかかるのだ。ルルナがかわいそうだからティカとルルナは祭りを回ってもらって俺は下ごしらえするかな。
昼の時間となり、お好み焼きとたこ焼きも売れ始めたところでクロ達が来てくれた。
「だいぶ売れていますね。助っ人に入ります」
「助かる。一人じゃ回しきれないからクロに連絡入れようかと思ってたんだよ」
さすがに昼の時間は人が今までの倍以上並んでしまったので、人数を増やして対応する。これは事前にそのように考えてはいたが、ここまで早く逼迫するとは思っていなかったのでちょっとあせった。
「他もすごいことににゃってるけど、ここもすごいにゃ。いっぱい売るにゃ!!」
ミミも張り切ってくれているようだ。広場と門を出た通りすべてに屋台を並べているので村に来た人は一通り見て回ることが出来る。俺達は自分達の家の前に陣取っているため一番奥になるが、門から真正面でもあるのでけっこう目立つ。
・・・やばい。人の波が押し寄せてくる。なんか昼を少し過ぎて食べ物を求める人が村の中にどんどん入ってきているようだ。
気合を入れなければ乗り越えられ無そうだな・・・頑張ろう
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結論を述べよう。
オレは接客業には向いていないらしい。
昼の大行列を全員で乗り切った後、14時ぐらいにオレとティカとルルナが休みに入ったのだが、もう燃え尽きている。
真っ白だ。もう何ものこらね。
慣れていない接客で気を使うし、から揚げを揚げまくって、売りまくって気疲れしてしまった。
3人で少しだけ祭りを回って食べ物を一通り買い家に戻り食事をしたが、疲れて食欲が少ししか出ない。いつもなら好きなだけ食うんだがのどを通らないなんて久方ぶりだ。
それでも仕込みはしなくちゃならないので、保冷庫から肉を運び出し、小さく切り味をつけていく。
なんだかんだでずっと同じ作業を繰り返しているので、少しはペースアップしているがそれでもたかが知れている。
「もう面倒臭い。マテルで一気に仕上げてやる!!」
オレは肉の塊をマテルハンドで空中に浮かせて、風のマテルで一気にサイコロ状に切っていった。切ること自体は一瞬で出来るが、全部四角いためちょっと見た目が微妙だが、味は変わりないはず!!
肉は下ごしらえだけにして、明日衣に浸してから焼くことになる。他の食材もマテルで下ごしらえしてさっくり終わらせた。
「ユウ様!!マテルですばやくやるのはいいですが・・・、面倒臭いからといってほいほい何でもマテルを使うのはやめてください!」
ティカに怒られてしまった。
「ルルナ、ユウ様のようにマテルを使えるようになっても、横着しちゃだめですよ。自分の手でやることにもいろいろな意味があるんです」
ティカの言うことはもっともだ。
「ごめんごめん。オレもさすがに今回は間に合わないと思って思わずマテルでちゃちゃっとやっちゃたよ。味付けはちゃんとやるよ」
やっと下ごしらえが終わったのはもう夕方になってからだ。クロ達も在庫がなくなったので今日は店仕舞いをして帰ってきた。
「今日は大盛況でした。明日も買いに来るというお客さんも多かったので、明日も頑張りましょう!」
クロの話を聞いてみんな気合を入れなおす。明日も頑張って売りまくろう。
祭りは好きですが、ほとんど屋台を見て回って終わります。
山車やお囃子も見聞きはしますが、食い気の方が勝ってしまい・・・
あの雰囲気で食べるとなぜかおいしいんですよね。




