第4章 04話 未知の世界
3話のうちの3話目です。
新たに強い奴が出てきました。
どれだけの時間が過ぎたのだろう。気を失っていたが死は間逃れたようだ。
いつの間にか暗視ゴーグルのマテルも切れていたので光のマテルを放とうとするが、体が言うことをきかない。かろうじて洞窟内のヒカリゴケのような植物がうっすらと光を提供してくれた。
その光に目が慣れてきたので怪我の具合を確認する。全身の骨折と右手の凍傷、左足の重度のやけどがかなりひどい。自分で治せるのだろうか?左腕は折れて腫れ上がりどす黒い色に変色しており、自分の意思で動かそうとすると激痛が走る。
右腕もひどい状態で肩の傷は化膿し指先は黒くなっている。左足は膝下は皮膚が焼きただれ一部は炭化してしまっている。これでよく生きていると思えるような状態だ。
肋骨もいくつか折れているようだが幸い肺に刺さってはいないようなので呼吸は問題なかった。
「ふっ、ふふっ、ふっははっ!!いてっ」
どうもこうもできないとわかると、何故か笑いがこみ上げてくる。しかし笑うと傷にさわり激痛が走る。
ここで終わりなのか?やっとあいつから逃げ出せたのにもうだめなのか?
そんなことを考えているとふと神様のことを思い出した。この世界に連れてきた本人だし少しぐらいは助けてくれないだろうか?
(すみませーん。、神様いますか?)
・・・
(神様~いますか?)
(・・・な・・・じゃ)
(ん?聞こえてますか?)
(よく・・・が、どこに・・・だ)
なんか途切れ途切れで電波の悪いところで携帯電話を使っているような感じになってしまう。
(ん?またずいぶ・・・どうした・・・)
(廃墟で自分の技術を上げようと修行をしていたらゼリーみたいな奴にやられて瀕死なんですよ。どうにか出来ませんか)
(・・・にはどうにも・・・じゃがしかし・・・近くに・・・向かわせる)
なんかわからないけど誰か使いを向かわせてくれるのかな?
(わかりました。ありがとうございます)
(おぬし・・・むちゃ・・・るなよ)
無茶をするなか・・・。そういうと神様との通信は途切れた。
それから体を動かそうと頑張ってみたが、その都度襲うあまりの激痛に耐え切れず意識を手放した。
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ドゴーーーン。
オレは轟音に目を覚まされた。
廃墟の中に作った小部屋の壁が吹き飛んで砂埃を舞い上げる中、すたすたと一人の小さな少年が近づいてきた。
だんだんと姿が見えてきたがはっきりと見えるようになり俺は驚いて目を見開いた。なんと背中に羽がついているのだ。もうオレは死んでしまったのか?と思ったがそれならわざわざ壁をぶち壊して入ってくる必要はない。天使かと思ったが頭の上に輪もない。
びっくりしてボーっと見ていると、小学1年生ぐらいしか身長がない子供なのにオレのことをいきなり担ぎ上げた。
意識がはっきりしていなかったが、持ち上げられたときの激痛で意識がはっきりする。
「おまえっ!!何だっ!くそっいてーんだよ!放しやがれ」
「うるせー、シシル様のお言葉を頂戴したからここに来たんだ。助けてやるから大人しくしてろ!」
シシル様?お言葉?なんのことだかわからないが、最後の助けてやるという言葉ははっきりと聞こえたのとあまり動くと激痛でまた意識をなくしそうなので大人しくした。
「シシル様って誰のことだ?」
「シシル様は俺たちにお告げをくれる上界の方だ」
お告げって言うぐらいだからえらいのか?ん?何かを忘れているような・・・あっ!神様の使いか?
「もしかして神様の使いか?オレはユウ、この上にいるゼリーみたいな奴にやられて動けなかったから神様に助けを求めたんだが・・・」
「俺はテュー。カミサマ?なんだそれは。そんな物は知らない、俺達にとってシシル様の言葉は絶対。聞けること自体が光栄。そのシシル様がビルフィのいる階の下階に助けてほしいものがいるといわれたので来た」
ビルフィ?なんかビフィズス菌をかわいく言った様な名前だが、あのゼリー野郎のことだろうか?しかしシシル様というのは神様で間違いないようだな。
「そのシシル様から助けてやれって言われたから助けに来てくれたのか?」
「そうだ。お前達のような意地汚い生物とは関わりたくないが、シシル様のお告げだから仕方ない。お前のことは助けてやる」
ぶっきらぼうな話し方だが、オレのことを助けてくれるのは確かなようだ。
テューと名乗ったこの少年は身長130cmぐらいで小学生ぐらいだが、背中から羽が生えている。そして白い皮の鎧のようなものを着ておりさほど太くない腕で俺のことを担いで歩いている。
腰には刀らしき物を携えているが身長に合わせているためか50cmぐらいの長さしかない。
これでもオレはそこそこ筋肉はついているので70kgはあると思うが軽がると片手で持ち上げられ、廃墟の40階を進みどんどん深い階層に進んでく。
驚くのは道中の魔物を手をかざしただけで粉砕している。そしてまたに刀を取り出して瞬時にみじん切りにしている。
明らかに俺よりも強い。あまりに早いためにまったく動きが見えない。
乱暴に運搬され激痛で意識を手放しそうになるが、歯を食いしばりテューの動きを見続ける。
どうやら廃墟の奥に連れて行かれるようだ。
もともと39階にいてビルフィ?というゼリー野郎に瀕死にされ40階に下りてきたが今はさらに深く降りてきている。もう何階なのかわからないぐらい進み、周りの魔物も見たことないものばかりになったが、以外だったのが上の階にあがり始めたのだ。
上の階にあがるといっても着た道を引き返しているのではなく、今までとは違う階段で上がっていく。
「いたっ!おい!痛いからもっと揺らさないようにしてほしいんだが。それに今何階にいるんだ?下がっていたと思ったらまたあがり始めたが・・・」
「痛いのぐらい我慢しろ。命があるだけいい。ここは95階。これから上にあがりここを出る。でもお前の入ってきた入り口とは違う場所から出る」
ん?違う場所もう何時間経ったかわからないぐらい歩いている。よく疲れないものだと感心してしまうが、だいぶ遠くまで来ていることはわかっている。
この廃墟はこれだけ広かったんだな。途中意識を飛ばしていたところもあるけど今目の前にいる魔物は明らかにレベルが違う。俺でも歯が立たないだろう。殺気の密度がおかしいほど濃いのだ。
しかしその魔物さえも短い刀で即座に細切れにしていく。オレが神秘の力を纏わせ剣を長くして戦うことがあるがそれと同じようだ。同じといってもやり方が同じだけで、神秘の力の密度や切れ味は雲泥の差があるようだ。
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さらに3時間ぐらい過ぎたころ疲れたのかテューは俺のことを床におろした。
「腹減った。俺飯食う。お前は弱いがここからなら役に立つかもしれない。直してやる」
テューは俺の体に手を添えて神秘の力を流し込んでくる。弱いからといわれたことにちょっとイラっとしたが、確かに今までの魔物はオレが倒していた魔物とは比べ物にならない強さだったので即死していただろう。
密度の濃い神秘の力が体中を駆け巡りもう動かすことが出来ないと思っていた手足に力が戻ってくる。急激な回復により体力を持っていかれているが、耐え切れるだろう。
10分。俺よりも密度の濃い神秘の力を使ってしても俺の体の怪我を治すのに10分かかった。それだけひどい怪我だったということだ。
ゴキゴキと体を動かしほぐしていると、テューが硬そうな干し肉を渡してきた。
「魔物の乾燥肉、食え」
腹ごしらえのようだ。ただオレはすごく腹が減っているので干し肉はすぐになくなり、追加で朝作っておいたタマゴサンドとBLTサンドを闇ストレージから取り出す。
俺のサンドイッチを見たテューは口をあけたまま干し肉を食べている手が止まった。
試しにひとつ食べようと動作すると、サンドイッチから目を離さずその動きに合わせて顔を動かしている。
パクッ・・・ムシャムシャ。
俺は気にせず一口食べて問題ないことを確認してから、サンドイッチの入った入れ物をテューに向けて差し出す。
テューはよだれをMAX状態で垂らしながら俺の顔とサンドイッチを交互に見ていたが、誘惑に負けて手を伸ばした。そして意を決して一口食べたとたんに満面の笑みを浮かべてムシャムシャ食べ始めた。
まるっきり子供だ。うまい物をうまそうに食べている子供だな。ほほえましい光景だと思いながらオレも腹ごしらえをする。
2人でサンドイッチを食べ終わるころには満腹になったのか舟をこぎ始めるテュー。・・・やっぱ子供だよな。
土のマテルを使い周囲を囲い小さな部屋にして魔物から身を隠す。
自分の体のあちこちを確認するがほぼ完治しており色の変わった指も、炭になっていた足も元の通りだ。完全に消失してなくなってしまうと元に戻せないのだが、逆を言えばそうでなければ時間を掛けることで元には戻る。ホント、神秘の力はチートだな。
オレも満腹感で睡魔に襲われた。さっきまでは激痛で寝たというより気を失ったという形だったので少しの時間だが睡眠をとることにした。
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「起きろ。行くぞ」
時間にして2時間ぐらいだろうか。仮眠を取りテューに起こされたオレは一度背伸びをしてから土のマテルを使い小部屋を元に戻す。
「そういえばテュー、今何階にいるんだ?」
「ここは30階。もうすぐ地上に出られる」
30階であれば一人でもマテルを使いながら問題なく倒せたので足手まといにはならないだろう。
「テューはこの暗闇でも目が見えるのか?」
「シシル様の力を使えば問題ない」
シシル様の力?たぶん神秘の力のことだと思うが呼び方が違うようだ。オレは暗視ゴーグルマテルを使うことで暗闇でもよく見ることが出来るが、それと同じようなことがテューも出来るようだ。
そのまま進むと4方向に扉のある部屋に出た。すると右側の扉から何かが出てくる。
「気をつけろ。あいつは厄介」
神秘の力を展開していたから魔物がいることはわかっていた。しかしこの部屋を経由しなければ上の階にはいけないとのことだったので進んできたが厄介な相手がいるようだ。
「おいおい!何だあれは?」
目の前に現れたのはライオンのような生き物だ。しかし体が腐り肉がただれところどころ骨も見えているゾンビ状態だった。
そして左側の扉からも魔物が現れた。こっちはうっすらと体の表面が光っているトラだ。どちらともオレよりもでかく扉をやっと通ってきたようだ。
「お前は光っている奴をやれ」
光ったトラがオレの獲物らしいがなんだか神々しいな。そんなことを考えながら土のマテルで弾丸を作りトラに向けて放出する。
様子見のつもりで放ってみたのだが、着弾すると思われたそのとき予想外のことが起こる。
「なっ?!」
トラの光が強くなったと思ったら土のマテルで作った弾丸がすべて勢いを止めぽろぽろと下に落ちる。
「あいつにはシシル様の力を直接使っても効かない。力を使うなら自分の体に使う。それなら倒せる」
シシル様の力=神秘の力なのでマテルとして放っても効かないらしい。ということは剣に神秘の力を通しても無力化されてただの剣に戻ってしまうので、身体能力強化をするしかない。
自分の体に神秘の力をうまく循環させ身体能力を補助するように働きかけるが、意外と難しい。
部分的に硬化させたり防御したりは前から出来たが、全身に力を流して強化することは殆どしてなかった。
最初から身体能力が高かったため必要性を感じていなかったのだ。ただここに来て自分より強く、マテルの効かない相手に遭遇しやっとその必要性に気づいたのだ。
ダラダラしていたら相手にやられる。神秘の力を体の隅々に行き渡らせ、部分強化ではなく体を全体的に強化をした。
その隙を狙っていたかのように光るトラが襲い掛かってきた。咄嗟に横に飛んだのだが、強化している状態で思いっきり踏み込んでしまったので攻撃を躱すことができたが壁に激突してしまった。
「いっってー。慣れてなからぜんぜん動き方がわからねぇ」
力の加減がわからないので思うように全く動けない。しかし留まっていれば確実にトラの爪にやられるだろう。
飛び込んできたトラの動きを見て、とっとだけ左に避ける。自分では1mぐらいずれようとしたのだが体は3mぐらい離れた場所まで移動した。
トラもしびれを切らしてきたようで矢継ぎ早に追いかけてくる。それを一つ一つ確認しながら躱していると少しずつだが動きが制御できてきた。
やっと動き方がわかってきたころには、テューはゾンビライオンを倒して部屋の端の方でオレの事を見ている。オレは足手まといにしかなっていないな。
さすがにこれ以上時間をかけるのはテューにも悪いので攻撃に転じる。
まずは正面から襲ってこようとするトラの横にずれて、間髪入れずに横腹に剣を突き立てる。しかしそれだけではただ刺さっただけでまだ致命傷ではない。いったん離れ暴れだしたトラの顎に膝蹴りを入れ、体勢を崩したところを剣で首を叩き切りとどめを刺す。
身体強化によるスピードと力により難なく切り捨てることが出来たが、素のままでは歯が立たなかっただろう。マテルが聞かない相手がこんなに強いとは思わなかった。
自分がどれだけ恵まれた環境に居て、マテル使いという才能があったことで生きながらえていたのか身に染みた。井の中の蛙状態、世界は広いと改めて思った。
「遅い、先に進むぞ」
テューに怒られながら先に進むためにいったん身体強化を解除したところ、ぐらっと体が揺れそのまま倒れてしまった。
「お前神秘の力の使い方がなっていない。それに体が弱い。だからすぐ動けなくなる。俺が鍛えてやる」
そういってまた神秘の力でオレの体を治してくれる。言葉遣いはぶっきらぼうだが根はやさしそうだし、お言葉に甘えて指導してもらおう。
このままでは自分がこの洞窟の中で生き残ることすらままならないので久々に一からやり直すつもりで修行をすることにした。
廃墟の中はどこにつながっているのか…次の話より新しい街が出てきます。




