第4章 03話 瀕死
3話UPのうちの2話目です。
やはり上には上が…
むさくるしい奴らを追い返してから数日、クロ、ミミ、ティカ、ナミは各自の役割を果たすべく忙しく動いていた。
そんな中、俺は何かをやるにしてもみんな他の人がやっておりやることがなく正直暇だ。
暇といってもいろいろなところに顔を出してちょっと話しをしたら次にいくという現場監督のようなことはしているが、これといってやることがない。
ちょっと村の生活をよくしようと下水道の敷設を始めたところ、整備隊に引き継がれてやることをなくし、新しい食べ物でも作ろうとしたら食堂のおやっさんにアイデアを持っていかれやることをなくし・・・。
俺も狩りをしようと思って出かけようとしたら、狩人のメンバーから新人の修行にならないから遠慮してくれといわれ、仕方なくモーンの小屋に遊びに来ている。
(ユウさん、元気ないがどうしたんだい?)
「いや、なんかやることがなくて暇なんだけどどうしたものかなってね」
(それならこの小屋をもう少し広くしてくれませんか)
「いいよ。暇だし」
安請け合いをしたが、小屋の拡張なんて30分で終わってしまう。
今後のことも考えて結構広く拡張し、真ん中の通路以外は両側に飼育場所を分けそれぞれ中央に仕切りを作り4部屋あるように作った。自由に歩きまわれるようにしたのだ。
(これなら軽い運度も出来るな。ありがとうございます)
「簡単に出来たし喜んでもらえたならいいよ。それにしても暇なのはうれしいが暇すぎるとちょっときついな」
モーンの子供と遊びながら時間をつぶすことにしたが、そんなに長い時間つぶすことは出来ない。
修行と趣味としてマテルでのフィギュア作りももう飽きてきたしどうした物かものか・・・
(ユウさんはエーテハイムの廃墟攻略は完了したのかい?)
「いや、まだ完了はしていないよ。どこまで続いているのかわからないから適当に攻略して終わりにしてるって感じだな」
(それなら体がなまらないように廃墟で一暴れしてくるのはどうだい?)
ん?モーンが廃墟攻略を進めてくるなんて珍しいな。でもそれならみんなに迷惑かけずに時間をつぶせるし自分の修行にもなる。
「その案はいいね。でもお前達は俺の暇な時間をつぶす案というよりはお土産を買ってきてもらうため、という気がするんだが」
(そっ!そんなことはないモーン)
なんか無理やり語尾をモーンにしているあたり怪しすぎるが・・・まぁいいか。
「それは土産を買ってきてやるよ。でも何日かかるかはわからないぞ」
(いいですよ。私達はいつでもこの村で待っています)
よし!行動に移ろう。
それからいつもの面々にちょっと廃墟で修行してくるって言ったら、「一人は危険すぎます」とか「私を見捨てる気ですか!!」とか「どうしても行くというなら私を倒してから行きなさい」とかとかいろいろ言われたが適当にあしらった。
「とりあえず、俺はちょっと自分を鍛えるために廃墟に行ってくる。何日か潜るから帰ってこないでも心配しないでくれ。1ヶ月以上連絡なかったら探しに来てくれ」
そういって転移のマテルで闇族の住処まで転移する。
転移間際ルルナとティカが「いってらっしゃい」といってくれた気がした。
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転移のマテルで移動してからとりあえず廃墟の中に入りいくつか準備をする。
水や食料を大量に補給し、毛布も1枚持っていく。野営できるセットも一応用意したらとりあえず完了だ。
ここは初心に戻り浅い階層からじっくりと攻めて行こう。
初めはクロと二人で探索をした廃墟。ミミが増え、ティカが加わりケンガイコンビも一緒に来た。
何れも一人ではなく常に誰かが一緒だった。そのため自分がミスをしても誰かがフォローをしてくれる。逆に自分以外の誰かのことをフォローしながら戦う方法ということでもあった。
しかし今回は助けてくれる人も助けなければいけない人も居ない。すべて自己完結しなければならない。低い階層なら問題ないだろうが強い敵が出てくればそれだけソロは辛くなる。
回復したくてもする暇が与えられず、逃げたくても一人では突破口も開けないこともある。そのため今まで以上に慎重に考えて行動しなければならないのだ。
気を引き締めてから闇族の住処を出て廃墟の探索を始める。
10階層までは敵が弱いので囲まれてもマテルを使わずに手に握られている魔剣でどうにかなった。魔剣はこの世界に来てすぐに魔王の城で倒した魔物が持っていた物だ。いまだに豊富にあり結構いいものなので剣の痛み具合を気にせず思い切り使える。
20階層まではマテルを使い敵を撹乱しつつ剣で切り捨てる方法でどうにかなった。でもところどころで敵に後ろに回られ危うく攻撃を食らうところだった。
25階層まではマテルの威力を上げて先制攻撃で殲滅していった。これは敵の数が多いことと、一匹の強さが高いため剣で切っていては後ろに回りこまれて攻撃を受けてしまったからだ。
大きな傷ではなかったが思うように動けず致命的な一撃を食らいそうになったので、出し惜しみをせずにマテルを放ち敵を一掃する方法に切り替えたのだ。1発食らったら死ぬ。そんなシビアな戦いを続けていては本当に死んでしまうのでなるべく危険を回避する戦い方を選択する。
30階層までは1回のマテルで殆どの魔物を倒せたが、30階層以降はそうも行かずマテルでダメージを与え、気をそらして剣で切り捨てる方法になる。だんだん自分の力量の限界が見えてきた。
マテル使いとしては一流だし威力もかなり物だが、魔物の強さもかなり物物でマテル耐性を持った者がちらほら出てくるようになってきた。
そしてやっと40階層に到達しようとしたときにそいつが出てきた。
見た目は青いゼリーのようなグミのような丸い生き物だ。大きさは高さ1m、幅2mぐらいだがぐちゃぐちゃと音を立てながらこちらに近づいてくる。
ちょうど40階層に続く階段がある部屋に入り中央に来たところ、天井からゼリー野郎が落ちてきたのだ。
まずは火のマテルに思いっきり神秘の力を込めて青白く光るゴルフボールぐらいの玉にする。それを目の前の魔物に投げたのだがあろうことかその魔物は火のマテルを吸収してしまった。
ゼリーのような体にマテルの青白く光る玉が当ると爆発するのではなく体の中に取り込まれてしまい、だんだん光を失い消失してしまったのだ。
次に水のマテルでウォーターカッターを作りゼリー野郎に攻撃する。ウォーターカッターが当った瞬間は切れたように見えるのだが、勢いを殺しただの水になるとそのまま吸収されてしまう。
そして心なしかゼリー野郎が大きくなっている。これはマテルの神秘の力を吸収して大きく成長している可能性がある。
相手は動きが遅く、特に攻撃してくる様子もないのでとりあえず全系統のマテルで攻撃してみることにした。
結果はマテルはまったく役に立たなかった。土のマテルは土ごと体に取り入れ吸収し、風も勢いを殺して吸収し、雷は当ったところから吸収され、風と水を使った氷のマテルは一瞬氷付けになったが、中から氷を溶かし吸収されていった。
次に打撃だが剣で切ってもすぐに戻ってしまうし、切ったほうの剣が分解され吸収されてしまう。
もう大きさは高さ3m、幅15mぐらいになってしまった。かなりの大きさになり帰り道は塞がれてしまっている。後は先に進むしかないが、もうそろそろ時間も遅くなるので一度転移して戻ろうと光のマテルを発動した。
しかし、発動すると同時にゼリー野郎が光のマテルを吸収してしまう。マテルの中でも光のマテルが好物なのか?積極的に体を伸ばして吸収するため発動が出来ない。
転移は諦めてゼリー野郎の先に見える降りる階段を目指して横を通り抜けようとしたそのとき、いきなり奴が攻撃を仕掛けてきた。
針のように尖らせた自分の体の一部を、何本もオレに向けて飛ばしてきたのだ。これには咄嗟にマテルで障壁を作ったが最初に飛ばしてきた針が障壁にくっつきどんどん神秘の力を吸っていく。そして弱ったところに第2波が押し寄せ、手や足に突き刺さろうと向かってくる。
風のマテルを発動し風圧で体を少しずらす。とりあえず足への攻撃は避けることが出来たが、右肩に1発食らってしまった。
方に刺さったゼリーはそのまま俺の腕を侵食するかのように広がって行き、だんだんと神秘の力を吸い上げ広がっていく。
「ぐあ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
激痛に意識が飛びそうになるがここで意識をなくしたら確実にあいつにすべてを吸収されて終わりだろう。骨も残らず誰にも知られずにここで終わってしまう。
こんな深い階層には一般の探索者は来ない。この大陸でも片手で数えられるぐらいの人数しかここまでこられないのではないだろうか?
助けに来てもらえる可能性はゼロ。クロ達が助けに来たときにはもう跡形もなくなっているだろう。
ふと思い出したのはティカを奴隷商から引き取り、初めて言葉を交わしたときのことだ。もうティカを悲しませるわけにはいかない。
そんなことが頭をよぎり、気合で意識をつなげる。
オレに攻撃が当りもう時間の問題と考えているのかゼリー野郎の攻撃が止まった。オレはその隙を見逃さず、自分の腕に纏わり付き神秘の力をすっているゼリー野郎の破片を氷のマテルで凍らせすぐに砕く。
氷のマテルだけ吸収が遅かったことと、小さいため全体を凍らせることが出来たため思惑通りに砕くことが出来た。
本体は氷のマテルを使っても仲間で全部凍らせることが出来ないようで砕いたとしても結局トカゲの尻尾きり状態になる。そして切り飛ばした破片も自分で吸収するので元に戻ってしまうのだ。
今回は腕に刺さったものだけを取り除くためだったのでうまくいったが、自分の腕も凍り付いて動かせなくなってしまっている。
次の攻撃がくる前に本体に氷のマテルを放とうとしたが、右手が使えないため風と水を同時に発生できず仕方なく水のマテルで相手を壁際に押しやる。
その隙に階段に滑り込もうと渾身の力で地面を踏み込み移動をする。あと10メートル・・・あと5メートル・・・あと3メートル・・・。いつもなら1秒もあればたどり着く距離が今は果てしなく長く感じる。
あいつの体の大きさならこの通路に入れば動きがさらに遅くなるので逃げ切れるだろう。あと1歩のところまで来て足に激痛が走る。
足を攻撃されバランスを崩したオレは勢いを止められずに階段を転がり落ちる。
やっと止まったときにはもう意識も朦朧としてしまっていた。たぶんいくつか骨がやられた。その痛みもあるが、足に刺さり体を侵食し始めた痛さにまたうめき声を上げる。
「っぐ!このっクソ野郎!!」
折れているだろう左腕を無理やり動かし、足に火のマテルを放つ。
小さくなった破片では火を吸収しきれないようで水分を失い焦げて体から剥がれ落ちた。しかしオレの左足も重度のやけどを負ってしまった。水のマテルで冷やしてみたがまったく痛みが取れない。
体中の痛みで意識がだんだん遠ざかる中、階段の上を見たがあいつは降りてこないようだ。魔物が居る廃墟の中で意識を失うのは死を意味する。オレは最後の力で壁に土のマテルで4m四方の部屋を作りそこに這って行き再び土のマテルで入り口を閉ざした。
一人で修行していたのが仇となったユウですが、どうにか切り抜けたようです。しかしこれからどうなることか。




