第3章 23話 人員確保②
4話アップのうちの2話目です。
気を失った奴隷も目を覚まし、食事が終わった時にはもう昼を過ぎるころになっていた。
人は腹いっぱいものを食べれば幸せな気分になれる。そして眠気も出てくる。
すぐに寝かせてやりたいが、汚い恰好なので寝る前に恒例のお風呂タイムだ。
女性はティカとナミ、男性はオレとクロで風呂の入り方を教える。
俺達は夜に入るので入り方を教えているだけだが人数が多いのでそれだけでも十分疲れる。
全員水浴びや湯浴みはしたことあるようだが、風呂に入ったことはないらしい。
ちゃんとシャンプー・リンスをして、ボディーソープで体を洗わせる。そして風呂に浸からせて30ゆっくり数えたら上がらせるようにした。
余談だが、今までは石鹸のようなものはあったが、シャンプーやリンス、ボディーソープというものは無かった。ただ、やはり石鹸で頭を洗うとバキバキとなり髪にすこぶる悪いので自分でいろいろ試行錯誤し作り上げたのだ。
その過程でリンスやボディーソープに適したものも出来たので、村の住人にはそれぞれの使い方を教えて使わせている。
一応村に浸透してきたのを見計らって、村の商店で売ってもらうことにした。一種類ではなく、いろいろな花の香りがするものも作ったのでちょっとした小遣い稼ぎになっているのだ。でも住人が増えたらこれもちゃんと仕事として確立させ、他の街にも出荷する予定である。
話が逸れたが、新たな住人達には風呂に入りすっきりしたところで用意した服を配布する。下着と肌着と上着、ズボンのセットだが、それぞれ違う柄の生地が使われているので同じものはない。
これはティカの希望でそうなったのだが、みんな同じ服にするといかにも「支給されたもの」な感じがするので嫌なのだそうだ。
服をもらえること自体予想外だったようだが、きれいになったのにまた汚い服を着ることに少しためらっていたようだったので丁度良かった。
そんなことでも涙を流しながら、服を配るティカとナミにお礼を言っているものが何人かいた。
飯を食い、風呂に入り、ゆっくりと眠る。それが人としての幸せと言っても過言ではないと思う。
闇族の住処は部屋が多いので3部屋に分かれて雑魚寝してもらった。
もう夕方だ。オレ達も疲れたがみんなの顔を見ているとうれしくもなる。
「みんなお疲れ様、明日はグングルトの奴隷商のところに行ってくる。昼過ぎにはこっちに戻ってくる予定だからまたよろしくね」
「わかりました。人数が多いので簡単な料理となってしまうのが申し訳ないのですが頑張って用意いたします」
明日は食事はティカが一人で用意することとなるのでかなり大変そうだが、何日かしたら女性は手伝ってもらうこともできるだろう。
「私は第1陣の人たちを連れて廃墟の中で戦闘の訓練をしてくればいいのよね」
「そう、あくまでも訓練だから無理そうだったり怪我しそうだったらナミが手を加えてやってくれ。あと、戦闘に疲れたら廃墟に戻って神秘の力の使い方を教えてやってくれ。」
「わかったわ」
俺達も夜の食事をして風呂に入りゆっくりと休んだ。
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翌日朝から騒がしいと思い起きてみると、奴隷たちがいろいろと動いている。
掃除をするもの、食事を作る者に分かれて頑張っているようだ。
特にお願いしたわけでもないが、自主的にやってくれているのはうれしいことだ。
「おはようございます。私達でできることをやらせてもらっています」
昨日治療した猫族の女性がオレに気付いて話しかけてきた。
すると一斉にみんなこちらを見て「おはようございます」と朝の挨拶をしてくる。
「おはようみんな。いろいろ気づいてやってくれているんだね。助かるよ。今日から少し大変かもしれないけど頑張ってほしい」
オレが言葉をかけるとみんな嬉しそうに自分の仕事に戻って行く。
「おはようございます、ユウ様」
ティカが台所から出てきた。
「おはようティカ。みんなのやる気がすごいな」
「みなさん昨日早くに寝ていらっしゃったので、早く目が覚めてしまったのでしょうね。元気な証拠ですね」
ティカも随分と早くから起きて食事の用意をしてくれているようだ。
「おはようございます。ユウ様」
今度はクロが廊下から歩いてくる。
「おはようクロ、クロもみんなと掃除してくれていたのか?」
「はい、掃除と言ってもみなさん勝手がわからないでしょうから指導をしていました」
クロもティカも疲れているのだろうけど指導をしてくれているようだ。
「・・・おはよう・・・みんな早いのね」
ナミが目をこすりながら部屋から出てきた。
ぶかぶかのシャツを着て大きなモーンのぬいぐるみを引きづりながら出て来るなんてなんて典型的なできない子!
一部の人には萌え要素が大きいだろうが、オレはあまりそっちの趣味はない。
ティカと付き合っている時点でお前もロ○コンだろうと思ったやつはちょっと外に出ようか?
ティカは背は小さいが育つところはだいぶ育っている。もうちゃんと女性なのだ。背も155ぐらいになったがそれから止まってしまったらしい。
見た目は幼く見えるがしっかりした性格もあり年相応ではない雰囲気が出ている。
「お前はちゃんと身だしなみを整えてから外に出てこい!」
オレはナミを怒ったつもりだが、まだ半分寝ているらしくまったく聞いていない。
「ナミちゃん、そんな恰好で人前に出てきちゃダメでしょ。ちゃんと着替えてきましょうね」
ティカがナミを連れて部屋に入って行く。完全にお母さんだな。すごく微笑ましい光景だ。
食事を取り、用意が出来てから俺とクロでグングルトの拠点に転移する。
転移を見た奴隷が驚いていたが、今後はこれも普通になるだろう。まぁナミがちゃんと口止めしてくれることを願おう。
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グングルトの拠点に一気に飛ぶと管理をしてくれているメイドや執事が驚いてしまうので、街の近くの森の中に転移する。
そこから歩いて街の中に入り、拠点としている屋敷にいどうするのだ。
ミルアン様には数日前に「今度行くからよろしく!!」ってな感じで手紙を送っている。
オレの化けの皮が剥がれ始めた・・・というより堅苦しいのが面倒くさくなってフランクに接するようにしてみたところ、意外と相手も気にしていないようだったのでそのまま気軽に話しかけさせてもらっている。
もしかしたら、新しい村が軌道に乗って調子に乗っている若造とでも思われているかもしれない。でもそれでいいと思う。ちょっと信用できるのかどうかわからないぐらいの方がお互いに近づきすぎず離れすぎずの関係がやりやすいのだ。
今回はいろいろと面倒かけるかもしれないので、街についてからまずミルアン様の屋敷を訪れる。
「こんにちは、ミルアン様は居るかな?モーン村のユウって言ってもらえればわかると思うんだけど」
「ユウ様お久しぶりです。私です。以前ティカ様から料理を教えてもらっていた執事の一人です」
おっと。顔見知りだとはわからなかった。正直執事もメイドも一人ひとり覚えているわけではないので完全に忘れていた。
「すまない、気付かなかった。料理を大量に作ったあのときにいたメンバーか。それから料理の腕は上がったか?」
「はい、皆でよく練習しております。おっと、失礼いたしました。早速ミルアン様にお取次ぎいたします」
執事君は終始笑顔だったが門の前にお客様を待たせてしまっていることに気が付いて、すぐに家の中に入っていった。
程なくして戻ってきた執事君に案内されてミルアン様の居る部屋に通してもらった。
「久しいなユウ殿、クロ殿。我町への訪問歓迎しよう。元気そうで何よりだ。村の様子はどうだ?」
「お久しぶりです、ミルアン様。お元気そうで何よりです。村は順調に住人を増やしていますよ」
他愛もない挨拶を交わした後、本題に入る。
「ミルアン様、今回お伺いしたのはお願いがありまして。今村では人員不足に悩まされております。そこで奴隷を購入して即戦力として村の住人にしたいと考えております」
変に隠してもいいことは無いので正直に説明する。
「購入する人数は多いので大所帯で街中を歩けばよからぬ輩が絡んでくると思いますので、そこを配下の人に護衛してもらえないかと思っております」
「お願いというからなんだと身構えてみれば・・・そんなことならいくらでも手伝おう。いろいろと世話にもなっている。遠慮はするな」
それから30分程度ミルアン様と話をしてから奴隷商のところに移動する。移動する際に配下のオルミさんが一緒に来てくれた。
「久しぶりだな。この前までヒヨッコだったあんちゃんが今じゃ話題の村の村長さんだもんな。びっくりするぜ」
オルミさんはおどけた様子で俺に話しかけてくる。
「私もあれよあれよという間にこんなんなってしまいましたが、中身は何も変わってませんよ」
そんな話をしながら歩いていると奴隷商の所についたのでオルミさんには外で待っていてもらうように話をし店の中に入っていく。
「すみません。だれかいませんか?」
店中には何故か誰も居なかったため、声を掛けてみる。
「・・・ちょっと待ってくれ」
すると奥のほうから声が聞こえた。待ってくれといっているようなのでそのまま店の中で待つ。
ただ待っているのも暇なので店の中を見渡してみると、以前来たときとは様変わりをしていた。
前は入り口正面に受付があり、その右側にちょっとしたテーブルと椅子が置かれ、左側には奥に通じる通路があったのだが、今はバーのカウンターのように右端まで長い受付になっていた。
左側に通路があること変わりないが通路に通じるところには人の背の高さぐらいの柵が設置されており、中に入るには柵の鍵を開けてもらってから入ることになるようだ。
全体の雰囲気も前に比べて新しくなり、小奇麗になったので全体的にリフォームを施したというところだろう。
10分ほど待っていると、店の置くから一人の男が出てきた。
「いや、待たせて悪かったな。奴隷の"躾"をしていたので遅くなった」
その男は40代ぐらいで少し腹が出てきた中年だった。白髪の混じった栗色の毛は短く切られており清潔であるが威圧感がある風貌である。
前に居た奴隷商とは違うようだ。
その男はニヤニヤしながら躾をしていたといっていたが、どんな躾なのかは聞きたくないし聞く必要が無いのでスルーした。
以前にクロに聞いたところでは、奴隷商の中には自分の言うことを聞かない奴隷に躾といって暴力を加えるものも居るとのことだった。ひどい奴になると、女の奴隷は性的暴行をしたり、男の奴隷には後遺症が残るほど暴力を振るうこともあるという。
それもあって、躾の内容を聞きたくも無かったのだ。
「それで今日はどんな用だ?」
俺が機嫌が悪くなっているのに気づいたクロが話を進めてくれる。
「今日はこちらにおられますユウ様が奴隷を購入するためにお伺いさせていただきました。私は執事のクロと申します」
「ほぅ、その坊ちゃんが奴隷を買うのか。どんな奴隷がいいんだ?」
奴隷商はどのぐらい金を持っているか見定めているかのようにオレのことをじっくり見ながら話を進める。
正直良い気分はしないが、そんなことで腹を立てていたらこの街では何も買えやしない。ある程度慣れているのでそのまま話を進めてもらう。
「はい、今回は教養のある奴隷を購入する予定です。計算や戦闘、家事など何か特技がある者や、一芸に秀でた者などを怪我や病気は気にせずに全員連れてきていただきたい。その中から選ばせていただきます」
内容は前回と変わらない。目に付くものは今回購入し、よからぬ考えを持ったものは省く方法で選別する予定だ。
「ずいぶんと良い奴隷を求めているようだな。まぁうちではいろいろと取り揃えているから連れてこよう。病気や怪我は気にしないでいいんだな?」
「はい、気にせず連れてきていただきたい」
クロの返事を聞くと、奴隷商は部屋の奥へと続く柵の鍵を開けた。
「奥の待合室で待っていてくれ。廊下を進んで最初の右側の扉だ」
奴隷商は俺達を奥に通すと、自分はさらに奥の奴隷達を収容している部屋に進んでいった。
「クロ、あの奴隷商なんか気に食わないんだけど」
「そのお気持ちはわかります。しかし相手も商売ですのであまりにおかしなことはしないと思いますが・・・」
すると手伝いの子供の奴隷がお茶を持ってきてくれた。
「ありがとう」
お茶を受け取るとオレはその奴隷に銅コインを渡す。
「いいの?」
「店主にばれないように隠しておくんだよ」
笑顔で俺にお礼を言って下がっていく子供の奴隷と入れ替えに店主が部屋の中に入ってきた。
「ちょっと待て、お前お客さんから小遣いもらっただろ。早く出せ。お前らに金なんか必要ねーんだから早く渡せってんだ!!」
店主は怒鳴りながら子供の奴隷を殴りつけ、ポケットにしまっていた銅コインを無理やり取り上げた。
ピキッ!!
何かひびが入るような音がした。
(ユウ様、ここは抑えてください。後であのものは治療をして銅コインを渡しておきます)
オレは知らず知らずのうちに殺気が出るほど店主の男を睨み付けていた。
「いやぁ、お客さん奴隷に勝手に金渡さないで欲しいね。渡すなら俺に直接渡してくれ」
店主は「ぐへへへ」と言わんばかりのイラつく笑顔を見せる。
「それじゃ仕事だ。こいつらが今店に居る奴隷の中でも質の良い奴等だ」
連れて来られた奴隷達は全員で13名
鱗人族の男2名
鱗人族の女1名
猫族の男1名
妖精族女3名
人族の女2名
犬族の男1名
犬族の女3名
13名のうち怪我や病気が無いのが犬族の女1名と妖精族の女2名の3名だけで、他はみんな怪我やひどい栄養失調状態になっている。
見るからにひどい仕打ちをされているようだ。
そのためか奴隷の全員がすがるような目でこちらを見ている。
クロがその一人ひとりに話しかけながら特技を店主に聞いていく。
「わっわわ、私はどんな要望にでもお答えしますのでぜひとも購入をしてください。廃墟で使い捨てにしてもかまいません。どうか、どうか私を」
・・・見ていられない。どの奴隷も必死に訴えてくる。
この奴隷商はどれだけ陰湿なことをしているのかが垣間見える。
連れて来られたのはほとんど20台後半以上の成人ばかりだが、何かおかしい。
エーテハイムの奴隷商では15~25ぐらいの奴隷がほとんどだったが、今目の前にいる中で10代なのは鱗人族の男1名だけだろう。
おかしいと思い、神秘の力を展開して店の中をくまなく調べてみると、目の前の奴隷の他に20人ほど奴隷が居ることがわかった。
正確な年齢まではわからないが、神秘の力の強さから一般的には10代~20代前半のものが殆どだろう。
この店主は確かに要望どおりのものを目の前に並べて入るだろうが、どちらかといえば年齢が高くなり売れ残りやすい者を値段を吹っかけて売りつけてやろうとしているようだ。
後は考えたくないが、自分で楽しむために若い女は留めておき、高く売れる若い男も他に良い金を出すあてがあり、わざと出さないのだろう。
「店主、この者たちは全員引き取ることを前提に話を進めたい。ただまだ足りない。新しい事業を始めるに当たって命令に従う奴隷が多く必要なのだ。今この店に居る奴隷を全部つれてきてはくれないか?それともこの店はこの程度の品揃えしかないのか?」
オレはわざと店主に喧嘩を売るような口調で言う。
「あんた、相当な田舎者らしいな。グルード商会。この名前ぐらいは聞いた事あるだろう。あんたはそこに喧嘩を売る気なのか?」
?何だその犬の名前みたいな商会は。正直そのぐらいしか思わなかったのだが、クロが耳打ちで教えてくれた内容によると、ガルガバル大陸の西側を拠点として商売をしている大きな奴隷商会のことのようだ。
奴隷を使った裏家業もしており裏社会では一流で通っているが、奴隷商売としてはかなりあくどい方法で商売しているようで良いうわさが無いとのことだ。
ちなみに、エーテハイムが大陸の中心あたりになり、そこを基点として南にいくとモーン村や辺境の荒野、巨大な森林地帯が広がっており、東に行くとグングルトの街、さらに東に行くと港町がある。
北側と西側にはまだ全然足を踏み入れていなかったので全然知らなかったのだが、かなり大きな商会で最近大陸全土に力を伸ばし始めているとのことだった。
「知らんな。だが、そんな大きな商会でこの品揃えなら店の質が悪いということだな」
俺が知らんと言ったことに驚きを見せたようだが、悪口を言われたことに怒りを見せた。
「どこの貴族の坊ちゃんか知らないが、俺をそこまでコケにしたんだ、ここから帰れると思わない方が良い」
そう言うと店主は店の奥に入っていった。
小物だな。今まではグルード商会の名前を出せば相手がひるんで下手に出ていたので強気になっていたのだろう。
俺が知らんと言い切ったことで自分の優位性が無くなり慌てたのだろう。
店主がいなくなったことで奴隷達がそわそわし始めた。
「お客様、すぐに!すぐにこの店から出て、街を出てください。そして追いつかれないように逃げてください」
必死に訴えてくる奴隷達だが、あの店主に襲われたとしてもまったく怖くは無い。
「あの店主は戦闘奴隷、それも滅多に見ることの無い狼族と猛虎族の戦闘奴隷を従えています。いくら優秀な執事がいてもあの戦闘奴隷にはかないません」
そういうことか、裏家業もしているのでかなり優秀な戦闘奴隷がいるらしい。
「クロ、その・・・狼族?と猛虎族?はそんなに強いのか?」
「はい、戦闘奴隷としては他の種族は足元にも及ばないといわれています。もともとの戦闘能力が高いため、捕らえられるとよく戦闘奴隷にされ売られますが、この大陸にはあまり居ないため希少な奴隷であることは確かです」
うーん。そんな強いならそいつを買っていきたいね。
「まぁいいや。なんか気に食わないから先にこの子達を俺の奴隷に書き換えちゃうわ」
「それがよろしいでしょう。私も猫族の女性をこのように痛めつけている輩は、個人的に気に食いません」
ミミとダブるのかもしれないな。俺も妖精族女性が怪我しているのは他の種族の人が汚しているよりも居たたまれなく思ってしまう。
「みんな、今から俺の村の住人になってもらう。怪我と病気も治すからみんなそのまま動くなよ」
オレはこれから起こる面倒なことを予想しながら、奴隷所有者の書き換えと病気や怪我の治療をするのだった。
人材不足は深刻です。今回の人員で解消できるかな?




