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知らない世界で街づくり  作者: 星野 シラセ
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第1章 07話 クズ事件

その後2週間の間、畑仕事や罠を使った狩りの手伝いし、時間が空けば子供たちにマテルを教えたりちょっとした計算を教えて過ごした。子供たちには文字やこの世界での常識をいろいろと教えてもらった。


初めはそんなことも知らないのか?と不思議がられたが3日目ごろからは特に突っ込まれずなんでも教えてくれたのでかなり助かった。先生気分でちょっと得意げに教えてくれるのがまたかわいい。


この世界は大きな4つの大陸からできているらしい。ラクスプール、クリオステラ、ガルガバル、リーテカイトといい、今いる大陸はガルガバルになる。ガルガバルはここ最近魔物が増え、各都市でいろいろな影響が出ているらしい。


まぁそうだよね、魔王城あったし。あんな魔物がごろごろいるところによく住んでいられるよ。そこらへんも少し聞いてみたが、やはりオークは温厚な種族なため、ほかの種族に追いやられこの地に村を作ったと村長に聞いたことがあるらしい。ただ辺境の地のため、今は魔物対策さえしていれば不自由なく暮らせているようだ。


ほかの大陸についても聞きたかったがあまり知らないとのことだった。大きな町にでも行ったらそこらの情報も手に入れられるだろう。


そんな昼下がり一つの事件が起こった。



「おい!この村の村長は誰だ!ヴォルーダ様が来たというのに歓迎もなしか!」


門の方で大声をあげて村長を探している集団がいる。1台の馬車と馬に乗った兵士5人、腕輪をつけられてロープで引っ張られている子供が3人。なんかすごくみすぼらしい服を着ており、栄養状態もあまりよいとは言えない顔をしている。門番の人が必死に止めてるけど、ずかずかと中に入ってきて村長はいないかと大声を上げている。


オレは広場で子供たちと戯れていたが、このままだと子供たちまで変なことに巻き込まれるため、ライに子供たちを集めて隠れるように言い、門のほうに向かって走って行った。


「私がこの村の村長ケルダと申します。このような辺境の地に何用でしょうか?」


オレがたどり着く前にケルダさんが兵士一行の前に歩み出て話を始めた。


「今日からこの村はエーテハイムの人族貴族ヴォルーダ様の管轄下になる。今日は村の視察と税の徴収に来た。村長は速やかにこちらが提示した税を用意するように!こちらの要求する税が払えない場合は奴隷として何人か選んだ人員を連れていく。文句があるものは容赦なく切り捨てるぞ!!」


なんという言い分だ。いきなり管轄下とか税の徴収とかわけのわからない話になって、村長も驚いて開いた口が塞がらないようだ。


「ヴォルーダ様とはお初にお目にかかります。そのうえ管轄下になるというお話も今聞きました。いきなり言われても私どもには対応できません」


そういった直後に、一番前にいた兵士が馬を降り、いきなり村長を剣で切り捨てた。あまりに一瞬の出来事だったため周りの人も何も反応できなかった。


力なく倒れるケルダさんを理解できずに呆然と見ていると馬車から一人の人族が下りてきた。


「やめとけ ビルザー、剣のさびが増える。それにそんな汚いものを道の真ん中にころがしておくな」


降りてきた人族は貴族のヴォルーダだろう。細身の長身だが目が細く、いかにも悪いことをしていますという顔つきだ。ケルダさんを切り捨てたことは気にせず、汚いものとして扱っていることに怒りを覚える


「お父さーーーん!」


マールさんの悲痛の叫びと共にケルダさんに駆け寄り声をかけている。


「ほら、邪魔だ!早くどけろ!どけないならこうだ!」


さっきの兵士がマールさんのことを蹴ろうとしたとき、後ろから火の玉が兵士に向かって飛んでいった。


「やめろ!それ以上村のみんなに手を出すな!」


後ろを振り向くとライと何人かの子供がマテルを準備し兵士に向かて放つところだった。水や炎のマテルを各兵士に飛ばしているが、兵士は手で払うだけでかわしてしまう。


「なっなんで当たらないんだよ!俺たちのマテルは前より強くなってるのに!」


あんな小さな子供でさえ助けようと頑張っているのに・・・オレは足がすくんで動くことができない。


平和な日本で喧嘩とかもしたことがなく、大量の血を見ることに慣れていないため血の気が引いてしまっていたこともあるが、目の前で親しくなった人が簡単に殺されてしまうような場面を見て怖くなってしまっていた。


魔王を倒したときは魔物であり、正直ゲーム感覚で考えていた。オーク人は人族ではないが人の形をし、やさしく、オレを助けてくれた。そんな人たちが目の前で人族に簡単にやられてしまうことに恐怖を感じているのだ。


「ガキのくせにいっちょ前にマテルを使って反撃しようなんぞ、生意気なことしやがって」


兵士全員が馬を下り、その中の2人がマテルを発動しようと手を前に出した。


ここで我に返り、子供たちが危ないため反射的に子供たちの前に割り込み兵士側に背中を向け子供たちの壁となった。次の瞬間背中に何かか当たる感覚がしたのだが…そんなに痛くない。


子供たちもびっくりして目を伏せて屈んでいたが、恐る恐る俺の様子をみて安心したような顔つきになっている。


あれ?マテル当たったの?後ろを振り返ってみると、1mぐらいの円柱状の岩が下に落ちて割れていた。また、いつも着ている拾ったマントが少し焦げていた。ただそれだけで特にダメージもくらっていない。ん?どういうこと?


「なっなんだ貴様は!人族のくせに下等なオーク族に味方に付くのか!ん?そのローブは骸骨騎士が持っているローブじゃないか!そんな貴重品をお前みたいな平民が持つ資格などない!丁度いい、そのローブを渡せば子供たちは助けてやろう、それにお前を配下に入れてやる」


「ヴォルーダ様は寛大な方だ。悪くない話じゃないか?」


なんか勝手に話を進めてるし、一言一言が癪に障る言い方だ。これじゃあ人族の貴族が嫌われるわけだわ。たぶん何不自由なく育ってわがままし放題だったんだろう。人として腐ってるな。


「なんだかわからんが、村長と子供への攻撃は許さない!このローブを渡す気もない。それに村の物何一つ渡す気もない。その繋がれている子供たちもほかの村からさらってきたんだろ?そんなクズの配下になんてなりたくないね」


「なっなっなっなんだと!クズだと!もう我慢ならん。この村を焼き払いすべてのものを奪ってやる。女、子供は奴隷として売りさばくがそのほか好きにしていい。やれ!」


クズが合図をすると5人の兵士が動き始めようと・・・したができなかった。


正確には思いっきり踏み込んで走り出し、兵士が動き出す前に足を払い全員転ばせた。何が起きたかわからないでもがいている兵士に今度は土のマテルと水のマテルで兵士の周りの地面を沼のようにし抜け出せなくした。


それでも手を使える兵士がマテルを俺に放ってきたがまともに正面からフィアのマテルをくらってもちょっと熱いぐらいでやけどはしなかった。


「こっっここここの、化け物め!!!!」


ヴォルーダが破れかぶれに剣を振り回してきたので少し後ろに下がり距離をとる。そしてマテルを放とうとしているがその先がオレではなくケルダさんとマーラちゃんのほうを向いている。


「っく!」


こちらのほうが距離が離れていたため走っても間に合いそうにない。ここは一か八か魔王に放ったあの一撃で相手を吹き飛ばすしかない。一瞬のうちにそう判断し村ごと吹き飛ばさないよう神秘の力を10分の1ぐらいで制御し、ただ目の前のクズをぶっとばすことだけを考え力を放出した。


次の瞬間突き出した手からうっすらと青く光る力の流れがものすごい勢いで放出し、ヴォルーダと奴の馬車そしてその後ろにあった村の門まですべて吹き飛飛ばしてしまった。そして俺の前には、幅1m深さ50㎝ぐらい溝が100mほどできてしまった。


泥沼にはまっている兵士も、村の人も、子供たちも、瀕死のケルダでさえも声をあげずにただヴォルーダが飛んでいった方向を見ている。


・・・やりすぎちゃった。テヘ♪


ってマジでこりゃまずな。みんな引いてる。でもそんなことはどうでもいい!まずはケルダさんが心配だ。


「大丈夫ですか?うわぁめっちゃ血が出てるし骨とかも見えてる・・・うぇ・・・」


けがをしたケルダさんには悪いがマジでだめだ。こんなの見たら肉食えなくなりそう。でもそれどころじゃない。


「ユ・・・ユウ殿・・・わしはもうダメ・・・じゃ・・・ゲフォゲフォ、娘を・・・よろし・・・く・・・たの」


うーん。マールさんはいい人だがさすがに任されるわけにはいかない。っていうかイノシシだもんさすがにちょっと無理。ここで今までの特訓の成果を発揮できる時が来たな。


実はこんなこともあろうかとちょっと切り傷や擦り傷ができた子供に治癒のマテルを試していた。子供たちは治癒のマテルは使えないようだったが、要は元の元気な時の姿に戻すイメージだ。


ご都合主義となってしまうが、体の中の細かいところまではわからないが「元の姿に戻る」というイメージで傷が治ってしまった。魔物を捕る罠を回収する際、とらばさみに挟まれたロッコに治癒のマテルを使用したら傷が癒え問題なく暴れていたため人にも使えると…思う。


マテルを多めに放出しケルダさんを包み込むようにする。すると傷口が光はじめ10秒もしないうちに塞がってしまった。


「娘を・・・娘を・・・むす・・・む・・・娘はまだやらん!!!!!!」


なんかいきなり目を見開いたかと思うと飛び起きてこちらを睨んできた。どうどうまず落ち着け。


「こんなの・・・奇跡だわ。治癒のマテルはマテュリスの方しか使えないって聞いたことある・・でもお父さんが・・・お父さんが・・・」


あらら、泣いちゃった。そりゃそうだわな。あれだけ瀕死だったらあきらめもするだろう。でも前より元気になってるようだ。


後で噂で聞いたが持病の腰痛が治っていたとかいないとか・・・


周りの村人も「奇跡だ」とか「マテュリスさまだ」とか「ゆがみねぇ」とか・・・最後のは何のことだ?いろいろ言っているが、そのうち歓声に変わった。


こうしてクズによる村人誘拐事件は解決した。

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