第3章 20話 村の様子
遅くなりましたが2話upです。
鳥族と馬人族の衝撃的な鉢合わせを目撃した後、一度家に帰り荷物を降ろしてからクロと二人でズズのところに向かった。
「それにしても先ほどは驚きましたね」
「いや、本当にあのタイミングでオレ達があそこに現れないと起こらない奇跡に近いタイミングだからな。馬人族に跨る鳥族というのは、なんか・・・こう・・・不気味というか怖いというか・・・」
「はい、本人には悪いと思いますがあの組み合わせはさすがに・・・ちょっと不気味でしょうか」
考えてもみてほしい、馬に跨る人より、ケンタウロスに跨る人のほうが変に思うだろう。正面から見ると人に人が跨っているようになる。
そしてその跨っている人が鳥族なのだ。ブレーメンの音楽隊か!!と突っ込みを入れたくなった。そして鳥族二人のドヤ顔。いつも無表情だから感情の起伏はあまりわからないのだが、明らかにこっちを向いてドヤ顔していたと思う。
二人で話をしながらぶらぶら歩いているとズズ達のところに着いた。さっそくズズを呼んでもらい剣が売れたことと販売費用などを話をする。
「それだけの値段で売れるなら当分は今のペースで十分利益が出るな。でも高いままだと買い取り先も限定されるので、質を落とした安物も少しは造ったほうがいいか・・・忙しくなるな」
そういいながら顔はうれしそうだ。職人だから仕事があるほうが生き生きしている。
今回のようなやり方では売る場所が限定されてしまうためあまり効率的ではない。希望としては村で販売できるのがいいが、あまり高価なものを販売すると悪い奴らも寄ってきそうだから、少し質を落としたものぐらいにとどめたい。専属の信頼できる商人を見つけて買い付けに来てもらい各町に売りに行かせれば問題ないかな。
今までこの大陸で行ったことのある町や村といえば、オーク村、エーテハイム、グングルトと港町のターブルだけだ。だが、大陸は広いためもっと町や村はある。ただ遠いので足を運んでいはいないだけなのだ。
中規模以上の行商人の中にはキャラバンを組みいろいろな町を転々として回る人もいるらしいのでそういうところに繋がりのある信頼できる商人がいればもっと販路も広がるのだが・・・
ズズは忙しそうなので、加工場をさっと見学してみんなに顔を見せてから外に出る。やはりみんな村の住人だから顔を見て回ることも大切だと思う。
加工場から外に出てすぐ、また奴等が現れた。反射的に頭の中に選択肢が現れる。
たたかう
たたかう
たたかう
→めをそらす
にげる
「ちょっと!!ちょっとごしゅじんさま!!露骨に目を反らさないでよ!もう、どうにかしてよ。この子達私達から離れようとしないのよ」
「背中に乗られていて重いとかそういうことはないのですが、私たちを見つけるとすぐに背中に乗ってくるようになってしまったので困っているのです」
ケンとガイが困り果てた顔をしてこちらに話をしてくる。ガイまで言うのだから本当に困っているのだろう。
「別に良いじゃないの。減るものじゃないんだし」
「意外と減ってるのかもよ。たとえば体力とか」
「確かに減ってるわね。私達が乗ってると疲れるみたいだし」
「でも別に良いんじゃないの本気で嫌がっていないみたいだし」
「そうよね。良いわよね。乗り心地いいし気に入っちゃったのよ」
「子猫ちゃんも良いけど、こっちも楽しいし良いわね」
「馬とも違うし、人とも違うし、私達と同じ感じだし気が合うんじゃない」
「そうね、ご主人様はもう狙えないしこの子達でも良いかもしれないわね」
・・・
ケンとガイの顔から表情が消えた。そして動きも止まった。あぁ・・・白目になっちゃったよ。あらら泡まで吹いてる。
オレとクロは哀れむ表情でケンとガイを見つめる。
たった3秒で目の前の二人は10歳ぐらい老けたように見える。
「ジュウシ、マツ、もうやめとけ。いくらお前ら二人がいいと思っても、下の二人は拒絶しているぞ」
あまりにもケンとガイがかわいそうだったので手を差し伸べてしまった。
ちなみにジュウシとマツは鳥族二人の名前だ。元の名前があったのだがすごく長くて村のみんなが覚えられないということと、二人がオレに名前をつけてほしいと言ってきたので付けてやった。
まぁ見たまんまなんだがジュウシマツに似ているからジュウシとマツにした。ジュウとシマツも考えたのだが、脳内変換したら「銃」と「始末」で縁起悪そうなのでジュウシとマツにしたのだ。二人は女性なのだが、この名前で気に入ってくれたようなので良いとしよう。
「二人とも降りなさい。まぁたまに乗るぐらいなら良いけどちゃんとこいつらに許可とってからにしなくちゃだめだ。いいな!」
オレの一言にケンとガイの目に生気が戻ってきた。
ジュウシとマツは顔を見合わせてからこちらを向き一度頷いてから降りた。
「まぁ仕方ないわね。無理やりって言うのは私達もあまり気分がよくないし」
「そうね、相手が良いといえばいいんだからそこはおとなしくしなくちゃね」
「私達大人なんだからそのぐらいはできるわよ」
「そう大人だからね。大人はちゃんとしなくちゃ」
そういうと二人はケンとガイから降りた。
「それで、乗っていいわよね?」
「乗って良いんでしょ?」
「まさか断るなんてないわよね?」
「そうよね大人だものね。そこらへん空気読めるわよね」
「女性からの誘いを断る人なんていないわよね」
「いないはずよ。この村の人はみんなやさしいんだから」
そう聞いた途端に、ケンとガイは走り去っていった。しかしその後を追いかけてジュウシマツの二人も空を飛んでいった。
「あの二人には災難でしたね。そしてこれからも大変そうです」
クロが心配しながら見ていた。だが手出しはしないらしい。自分に矛先を向けられるのがいやなのだ。オレもそうだし。
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昼過ぎになり、オレはモーンの小屋に行く。
「おーい。お土産買ってきたぞ。エーテハイムの飼葉だ。前とまた違うもの買ってきた。それに子供達にはまだやわらかい新芽の草だぞ」
そう、ここ数ヶ月いろいろ忙しかったが、その間にモーンにも子供が生まれていた。あわせて3匹、オス1頭、メス2頭だ。ちょっとおなかが大きくなってきたのは知っていたが、こうも早く生まれるとは知らなかった。
(ユウ様、いつもすまない。俺達はユウ様がたまに買ってきてくれる飼葉が楽しみでな。嫁さんも喜んでるよ)
(今回は子供達の分までありがとうございます)
(あんがとーございまぁす!)
子供達が3匹でお礼を言ってくれる。まだ子供だからだろうか。なんか言葉がおかしい気がするけどまぁわかるからいいや。
「この前買ってきた海の町の飼葉はしょっぱいって言ってたよな。やっぱり育つところでぜんぜん違うみたいだな。エーテハイムでも今までに何種類かかってきたけどこれもまた違う種類だぞ」
(どれどれ、ムシャムシャ・・・。うん、こりゃいい。前にもらったものより味がまろやかで甘みがある。よく日のあたる場所で育ったんだろう)
味が良いみたいだな。俺は食えないが・・・なんかうまそうに見えてくる。子供達もやわらかい草をむしゃむしゃ食べている。まだミルクをのんでいるようだが、柔らかい草なら離乳食みたいなものらしく食べることが出来るらしい。
「お前達にはいっぱい食ってもらってもっと家族を増やしてもらいたいからな。頑張ってくれよ」
(おれ達も頑張りますが、いくらなんでもぽんぽん生むわけにはいかないですよ。なんだったら新たにモーンを加えてくれても良いと思いますよ)
そうだよな。人口が増えたことでモーンのミルクが少し品薄状態だ。子供がいるから余計にオレ達に回ってくる量は少なくなるのでもう何匹か増やしても良いかもしれないとは思っていた。モーンたちには許可もらったから後で何匹か買い足しするかな。
今、懐はかなり潤沢だからモーンを10頭ぐらい買ってモーン小屋も広くするのが良いかな。あとで住人に相談して買いにいこう。
モーンの子供は生まれたときからキリン柄なのだが、色が白と黒だ。大人は黄色と茶色のもろキリン柄なのに子供は牛と同じ色っていうのが不思議だ。でもかわいい。
あと2週間ぐらいすると生え変わるらしい。モーンは妊娠期間が3ヶ月ぐらいで、生まれて1ヶ月で色が変わると聞いた。いくらなんでも生まれるの早いだろうと思うが、魔物は大体そんなもののようだ。
肉としてよく食べるロッコなんかは妊娠1ヶ月とかで生むらしい。だから魔物は繁殖力が強く狩ってもいなくならないのだそうだ。
でも狩をしなかったら大変なことになりそうならないのかクロに聞いたことがあったが、ある一定数まで増えると繁殖しなくなるらしい。縄張りにどのぐらい仲間がいるか把握して食料が枯渇することを回避するための生存本能とでも言うのだろうか。すごすぎる。
ロッコも繁殖させられないのか聞いたところ、魔物として知能があまり高くないので、柵を破壊して逃げてしまったり、土壁で囲うと体当たりをして死んでしまうのだそうだ。よって狩をするしかないのだが、狩人としては職を失うこともないのでいいサイクルになっているのだと思う。
うちでも相当量の肉を貯蔵しているが周りの魔物がいなくなるということはない。ある意味魔物の繁殖力に助けられているのかも知れないな。
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モーン小屋を後にして学校に足を向ける。お昼を過ぎた時間なのでちょうど午後の授業が始まるだろう。
うちの村の子供達はみんなマテルを使える。学校があるからということもあるが神秘の力を使うコツを教えることでぐんぐん成長し始めたのだ。
もともとこの世界での神秘の力の使い方は見よう見まねでやってみるしかなかったのだが、俺が自分独自で練習方法を開発し子供達に教えるとすぐに使えるようになる子もいた。
ただ単に教える方法が確立していなかったのでみな「なんとなく」で使っていたようだ。
神秘の力はオレのイメージでは「気」の力だと考えている。体の奥底、腹の底の辺りに集中すると感じることができる力だ。練習が必要だが一度わかれば神秘の力を感じることができるようになる。
そして神秘の力を手に集めて使用したいマテルをイメージし発動する。これは反復練習することでスムーズに発生させることができるようになる。
子供達は遊び半分でマテルの練習をしているので上達が早いのだ。大人もこつこつ続けている人はしっかりとマテルを使えるようになっている。
ほかの町から来た商人が驚くのが、この村のマテル使用者率だ。9割の人は使える。残りの1割の人も苦手で使っていないだけで使えないわけではない。
それだけマテルを使う人が多いのはある意味異常なのだ。エーテハイムやグングルトの町でさえ3割の住人がマテルを使えるかどうかだろう。
まぁ最近は学校の制度をミルアン様に売ったからもっと使える人は出てくるだろう。
それでもこの村の異常さは有名らしく、あまりこちらに来たことない行商人まで興味本位で来るようになった。まだニルニア鉱石で作ったものは製品としては出していないが、鉄製の武器や道具は質がいいと言われ売れ行きもかなり良いらしい。
そして人族が偉そうにしていない、風呂に入ることができる、違う人種が協力をして生活している、識字率が高く計算ができるなど、他の町では無理といわれていることが起きているので、奇跡の村とも言われているようだ。
子供達は今は社会の勉強だ。先生は村の若い男女にお願いしている。高校生ぐらいの年の子達にお願いしているのである程度の授業は可能だ。難しい授業や新しいところを勉強するときは今のところオレとクロが先生になっている。
いろいろな仕事や仕事の仕組みなどを簡単に説明しているようだ。世の中にはどんな仕事があるか、その仕事はどんなことをやるのかを知っているだけで自分の選択肢が増えるのだ。小さな村では親の農業か、村で見たことのある仕事しか知らない子供も多い。
大きな町に行ける子ならいいが大体の子供は村の周辺だけしか知らないのだ。
最近ではうちの村のうわさを聞いて村に入りたい、移住したいという人が多くなり最近では移住者の対応をどうするか検討中である。
「学校や豊かな食料などのうわさを聞き、移住希望者が増えてきています。断ったとしても村の近くで勝手に野宿を始めているので何か手を考えなくてはなりませんね」
「本当は大きな町とかじゃなくて少数精鋭の村のままでいたいけどね。この状況じゃそうも行かないな。村の周辺を整地して住宅街と商店街でも作るかな?」
「住宅街と商店街ですか??」
「そう、人が増えることを拒否し続けるのは難しいからどうせなら人が住めるようにうちらが都合のよい立地に作っちゃってそれを移民に分け与えるって感じでやれば少しは管理しやすくなるかなって思ってね。そのうちニルニア武器も売りたいから今のうちに整理しときたいな」
俺の考えとしては、買い物する場所は村の中心近くに集めて、住人が住む場所を今の門より外側で整地する。加工場や発掘場は危険なので人が近づく必要がないようにする。そうすれば不審者が近づいた時にもわかりやすいし、村に来た人や住人の安全も確保できる。
甘い考えだと思うが村長なんてやったことないし、とりあえずやれることをやって問題点をつぶしていこうと思う。
やっと村長らしいことを考え始めたなぁ、と思いながらクロと村の散策をつづけた。
とりあえず村を大きくするようです。
規模としては村というより街に近くなるのかな?




