第1章 06話 青空教室
昨日歓迎会を行った広場はすり鉢状に窪んだ地形となっており、その中心でライとほかの子供たちがマテルの練習や何か遊びをしている。
「あっ!兄ちゃん来てくれたんだな。今ちょうどマテルの練習をしていたんだよ。兄ちゃんも一緒にやろうぜ」
「おう!でも練習って言ってもよくわからないから、今回はみんなの練習を見せてもらうよ。そうだな~今日はみんなの得意なマテルを見せてくれないかな」
意識を集中している状態を見ていても面白くないので、いろいろなマテルを見せてもらう方が個人的には楽しいし、みんなの実力が見れていいかと思い提案をしてみた。
「わかった。じゃあみんな、兄ちゃんに自分の得意なマテルを見せようぜ。じゃあそっちの端からな」
ライが取り仕切りマテルのお披露目会が始まる。一人目はライより少し背の高い男の子だ。集中して手のひらに神秘の力を集め、みんなが集まっているところから少し離れた場所に向けてマテルを放つ。次の瞬間俺の伸長と同じぐらい(およそ170cm)の火柱が上がった。
「おお!なんかすげー魔法っぽい」
「マホウ?なんだそりゃ。これはフィアっていうマテルだぞ」
思わず素で言葉が出てしまい、ライに突っ込まれてしまった。でも驚きもするでしょ。最近のゲームはグラフィックとかきれいで魔法を使うときのアクションとか発生するエフェクトとかかっこいいと思うけど、目の前でいきなり火柱上がったらゲームよりすごいし興奮もするさ!
「これがフィアのマテルね。すごいなぁ俺も使ってみたいかも」
「じゃあ次は私ね」
次の子は一番背が大きい女の子だ。この子はさっきの子と違い、特に目を閉じて集中するわけでもなく、手を前に出していきなり手のひらから大量の水を放出した。前の子が出した火がまだ燃えていたのでそこに水をかけているようだ。年齢は中学生ぐらいなのだろうか?一番お姉さんみたいだから火の始末をしたのだろう。
マテルの出し方にもいろいろあるようだ。話を聞くとマテルをうまく引き出せる人は特に目を閉じて集中しないでもいいようだ。後で練習しよう。
そのあとも次々と子供たちがマテルを披露していく。同じマテルを披露した子もいたが、年上の子より威力が弱かったり持続時間が短かったりした。それでも集まっていた中で3分の1の子供たちはマテルを使うことができるようだ。
「すごいなぁ。生活に役立つものや魔物をやっつけるマテルまであるんだな。俺も覚えたいね。教えてくれるかい?」
「いいぞ!みんなで教えてあげるよ。でも兄ちゃんも神秘の力の使い方を教えてくれよ」
交換条件として神秘の力の使い方を教えることとなった。実際自分ではどんなふうに使っているかあいまいにしかわからないのだが、まずは全く使ったことない子供に腹にしたの方に意識を集中させること。川の流れのような力を見つけること、その力を引っ張るイメージで手に持ってくることを教えてみた。
すると何人かの子供はコツをつかめたらしく、簡単な光の玉を作り出すことができていた。初めからマテルを使えていた子供たちもスムーズに力を出すことができるようになったようだ。
「すげぇすげぇ!何人かの子がいきなりマテル使えるようになったぞ!俺たちもだいぶスムーズにマテルが出せるし、兄ちゃんすげぇよ」
うん。みんないい子。こんな素直な子ばっかりだったら学校の先生とかもやってみたいと思う。だが、マテルが使えなかった子が落ち込んでしまっている。
「マテルを使えなかった子たちもみんなすぐに使えるわけじゃないかもしれないけど、練習頑張ればできるようになる!だからあきらめるな!みんな量は違っても神秘の力は持っているんだよ。料理だって、初めはできなくても練習すればだれでもできるようになる!それと同じだ!」
つい熱くなりわかりづらいたとえで語ってしまったが、これにはわけがある。オレが人や生き物の気配を感じることができるのはどうやらこの神秘の力の存在を感じているからだと、さっきわかった。マテルを放とうとするとき、感じていた気配が強くなった。マテルの威力が小さい子は感じる感覚も小さかったが、できない子でも気配は感じるので使えないことはない。
生き物すべてにこの力が備わっていることは間違いない。だからコツさえつかめればみんなマテルを使えるんだと思う。
そうこうしているうちに日も傾いてきたため解散となった。
実はこのあとも一人で残り、マテルの練習をしてみたいと思っている。子供たちが各自の家に帰るのを確認して個人練習が始まる。
今日子供たちから教えてもらったマテルは、フィア(火柱)、ライタ(光の玉)、ウィータ(水)、ウェア(風)、センド(砂)、モッド(土)の6種類だった。たぶんほかにもいろいろあるがアレンジ次第でどうにでもなりそうだ。
ライタは昨日使ったのでまずはおさらいとして光の玉を出す。昨日失敗したので今日は明るくなりすぎないように調整しため問題なく使うことができた。
「よし!これで明るくなったから練習始めるかな~」
まずはイメージをしやすい火のマテルをやってみる。たき火が燃えているぐらいの火をイメージして手のひらに神秘の力を集める。すると手のひらで炎が発生してしまった。びっくりしたため思わず手をふるって落とそうとしたが手から離れない。これはやけどすると思い覚悟をしたが、特に熱いわけでもなく手の上でメラメラと燃えているだけだった
「焦った~」
思わず独り言を発してしまうほどびっくりしていたのだが、冷静に炎を観察するとマテルで発生させた炎は、神秘の力を込めるとだんだん光り輝く色となり、力を少ししか込めないと小さな炎しか発生しない。これは力を込める量により威力が変わるのかもしれない。
そのあとも各マテルを試してみるが、ゲームでみた魔法をイメージしてから行ったため特に問題なく行うことができた。
マテルを使うにはイメージが大切だ。例えば風の刃を使いたい場合かまいたちの様に切り刻むことをイメージしないと、ただの強い風をたたきつけるような結果となった。どちらかというとマテルを発生した後の結果をイメージしたほうがいいようだ。
次は試しに火と風を使い炎の竜巻を作ってみる。極力威力を抑え30㎝ぐらいの竜巻を作ってみたが、成功した。試しに炎だけで竜巻をイメージしたが火がメラメラと揺らぐだけでうまく竜巻にならない。やはり火を風で操るイメージをしなくてはうまくいかないようだ。
その後1時間ぐらいいろいろな組み合わせやマテルのスムーズな発生を練習し、宿に戻った。