第3章 11話 恐怖
少し短いですが更新です。新たな展開が?!
クロ、ミミ、ティカにこっそりと事情を説明してから、夜の火の番について商人達と話をする。
「ではまずは私の従者が火の番をします。その次に私が、その後はそちらに声をかけますのでお願いしても良いでしょうか?」
「ええ、問題ありません。交代のときは護衛のどちらかに声をかけてください」
よし、これでこちらの思惑通りだ。オレが一人で番をしていれば狙い目と思い襲ってくるだろう。
「クロ、火の番頼んだぞ。交代のときは遠慮なく声をかけてくれ。それまではオレは馬車で休んでいる」
(もしクロが襲われたら遠慮なく返り討ちにしろ)
「承知いたしました」
「クロさん!私は一緒じゃにゃくても寂しくにゃいかにゃ?」
「一緒に・・・いや、今回は私一人で大丈夫だ」
クロの表情が泣きそうだ。めちゃくちゃ悔しそうな表情でもある。せっかく申し出てくれたのに危険にさらすことになりかねないからな。まぁミミならあいつら二人でかかってきても問題ないと思うが・・・。
後ろ髪惹かれる思いで、クロは火の番をするために焚き火の方に歩いていった。後姿に哀愁が漂っている。
俺たちは馬車の荷台に魔物の毛皮を敷き布団代わりにする。俺も軽く寝ておきたいが、どんな風に懲らしめてやろうか考えると目がさえてしまう。
「ユウ様、どのようにするおつもりですか?仮に私達以外にも餌食となった人たちがいるなら重罪です。捕まえて街で奴隷商に差し出すのですか?」
ティカも眠れないのだろうか。俺に質問してきた。
「奴隷商に売るのも良いが、もうこんなことをしたくなくなるように懲らしめてやろうとは思う。俺たち以外にも被害者がいるかどうかはわからないが、奴隷にしても連れて行くのが面倒くさいな。まぁなんとかするよ」
殺すことはしたくない。でも街の護衛に差し出したり奴隷商に差し出すにしても連れて行くのが面倒くさい。後は懲らしめて捨てていくしかないと思う。
「ユウ様がにゃにか悪いことを考えているようにゃ気がするにゃ」
ミミもティカもオレが悪いことを考えているように聞こえているようだ。どっちが悪者なんだよ!オレは悪者を懲らしめるんだよ!
それから3時間ぐらいして丁度日付が変わる頃ぐらいだろう。クロが馬車の荷台のところに来て、俺に声をかけてきた。
それに気が付いたのかミミもティカも起きてしまった様だ。丁度良いので、3人に協力をお願いする。
「悪いが、懲らしめるために協力してくれ。俺が呼んだらゆっくりと馬車の荷台から出てきてくれ。それもすごく疲れてダルそうな様子で足を引きずる用に歩くとさらに良いな。魔物のゾンビみたいに演技して」
「何を考えているのかなんとなくわかりました」
オレはクロと交代で火の番につく。神秘の力で周りの気配詳しく探ると、俺たち以外は小さな小動物ぐらいしかいない。
ダンツ達の馬車では全員が起きている様で、クロたちが寝るのを待っているようだ。
それから1時間ぐらいして、やっと傭兵とダンツが馬車から出てきた。もう1人の傭兵と息子のエグは馬車の裏側から俺たちの馬車の近くに待機している。俺を襲うタイミングで馬車の中に乗り込むのだろう。
「ユウ殿、お疲れ様です。どうですか1杯」
ダンツは酒を用意し、俺に勧めてくる。何か毒でも入れているのか?怪しまれないように一度手に取り神秘の力で調べてみるか。
「おっ!良いですね。ダンツさんは眠れないのですか?」
「いやいや、お恥ずかしい。ちょっと寝付けないので一杯やってから寝ようと思いましてね。せっかくなのでご一緒していただければと思ったのですよ」
そんな会話をしながら木のコップを受け取り、酒を注いでもらう。神秘の力で酒の中身を調べてみたところ、特に何も細工されていなかった。少しぐらい飲むのは問題ないだろう。
ダンツと傭兵の・・・バッシュかな?二人も酒を飲み始めた。幾分ペースが速い気がするがやはり緊張しているのだろうか?
「ユウ殿は結構飲める方のようだ。ささっもう1杯どうぞ」
どんどん進めてくるな。酔わせて襲いやすい状態にするのかな?まぁ酔った振りでもしておこうか。
オレがだんだん酔ってきた振りをして顔が見えないように下を向いた。すると二人は顔を見合わせて動き出そうとした。
「そういえば・・・」
オレがいきなり話し始めたので二人は剣に手を掛け立ち上がろうとしたが、一度腰を下ろした。
「グングルトの街でこんな噂を聞きましてぇねぇ。少人数の商人や旅人が姿を消すとぉ。聞いた事ありませんかねぇ?」
二人はまた顔を見合わせて少し焦ったようなそぶりを見せる。
「そっそういえばそんな噂が出ていましたね」
「居ないんですよ。私の妻と子供が・・・どこに・・・行ったのか・・・」
オレは悲しそうな口調で語りかける。そして準備しておいた光のマテルで周囲を少し暗めにし、風のマテルで冷たい風をダンツとバッシュの近く、そして息子のエブとユーバの近くにも吹かせた。
ダンツ達はぶるるっと体を震わせた。熱い季節の終わりとはいえ本来はこんな冷たい風が吹くはずが無いのである。
「私はね・・・ずっと探してるんですよ・・・ダンツさん知りませんか?」
そういって、オレは光のマテルで俺の姿を変える。オレは顔を上げたが、ダンツ達が見た俺の顔は魔王城に居た骸骨兵士の顔になっているだろう。
「ひっひぃぃ!!」
俺の前に居た二人が腰を抜かし後ろに倒れこむ。逃げようともがくが力が入らずにじたばたするだけになっている。
「あんた達は知らないかねぇ?私の家族を・・・。おーい・・・おーい・・・」
オレが馬車のほうに向けて声をかけるとクロとミミとティカがものすごく気だるそうに馬車からゆっくり降りてきた。3人とも肉が腐っているゾンビのように見えているだろう。
馬車の陰に隠れていたエブとユーバは3人が出てきたのを見てやはり腰を抜かしている。
3人はうまくエブたちを焚き火の方に誘導している。クロは足を引きずり、ミミは乗り気で途中で倒れて地を這うように移動している。ティカも「お父さんどこ?」といいながらこちらに近づいてくる。
そして4人が一緒になったところでさらに光のマテルで俺たちの馬車とクロ、ミミ、ティカの姿を消す。見た目では肉と骨が崩れ落ちて砂となり消えていったように見えただろう。
「あぁ・・・私の家族が・・・おのれ・・・許さん。絶対に許さん!!」
骸骨の何も無い目の中に真っ赤な炎が現れ、怒りに狂ったように演出する。そして風のマテルを使い4人を空中に浮かばせ、きりもみ状態にする。
死ぬことは無いだろうが、恐怖心と強烈な回転で相当苦しんでいるだろう。
「わっ悪かった。もっもう悪いことはしない!だっだから、だから許してくれ!」
「我の怒りはお前達を呪い殺すだろう。良い行いを1000回行えば死からは逃れる。せいぜい苦しむが良い」
よく考えるとよい行いをすれば呪いが解けるって相当甘い考えだろうが、いつ死ぬかわからない恐怖を感じながら生きるのは辛いだろう。
「はぁぁぁっ!!」
最後に光のマテルで姿が見えないほど眩しくし、空中から地面に落とす。結構な高さから落下したから骨ぐらいは折れたかもしれないが命があっただけ良いだろう。
4人とも気を失ったため、今のうちに奴隷契約をする。条件は人に悪さをしたら苦しむ。うそをついたら苦しむ。1000回良い行いをしたら奴隷契約を解除するその他もろもろ。
良い行いの判断はどのようになるかわからないが、一応条件に盛り込めたので大丈夫だろう。
「クロ、ミミ、ティカお疲れ様。協力ありがとう。なんだかんだでみんなやる気満々だったな」
「そりゃにゃんでもやるにゃら全力だにゃ」
「はじめはお互いの姿を見てびっくりしました。何も聞かされていなければ気を失っていましたよ」
ティカなら気を失いかねないな。ミミは平気っぽい。
「私はこういうのは苦手なので・・・できればもうやりたくないですね」
クロは闇族の癖にホラー系が苦手なのか?そりゃ無いだろう。むしろお化けの親玉的な存在じゃないのか?
「とりあえずこいつらを街道の途中においてくるよ。誰か一人火の番をして、他は休んでていいよ」
オレはマテルハンドで4人をダンツの馬車に放り込み、馬車をグングルトの街の方に向けて走らせる。
丁度街と中間のあたりまで来てから、4人の身ぐるみを剥いで馬車の車輪にそれぞれ縛り付ける。ここなら昼間は人通りがあるからどうにかなるだろう。
そして「私は罪を犯しました。街の護衛に差し出してください」と書いた紙を貼り付けておく。
身ぐるみを剥いだときダンツの服から奴隷契約の指輪が出てきた。やはり襲って捕まえてから奴隷契約をして売り飛ばしていたのだろう。これも没収する。
オレはみんながいる場所までダッシュで戻ったが、もう時間も朝方なのでそのまま起きている事にした。火の番はティカがしているようだ。
「お帰りなさい、お疲れ様でした。お茶を入れますね」
ティカがお湯を温めてくれていたようで、テラル茶を入れてくれた。
「ありがとう。丁度喉が乾いていたんだ」
ティカからお茶をもらいのどを潤す。ティカも自分の分を用意して飲んでいるようだ。
「あの方達はこれで心改めてくれるでしょうか」
「大丈夫だろ?奴隷契約でいくつか条件もつけたから悪さはもうできないよ」
うっすらと周りが明るくなってきた。もうすぐ日の出だ。
「ユウ様と一緒に居ると毎日驚かされます。一人では怖いことでもユウ様と一緒だと何でもできそうな気になります」
「俺もティカやみんなに助けられてるよ。一人じゃ何もできない。みんながいてくれるから俺もいろいろできるんだ」
やはり仲間がいるのは心強い。自分を信じてくれる。自分も信じることができる。そんな仲間が居ることが何よりも嬉しい。
「私は先ほどのように家族と思ってもらいたいです。子供としてではなく一人の女性として・・・」
「家族か・・・そう思ってくれているのはすごく嬉しいよ。オレは適当な性格だからいつも側にいてくれれば心強いよ」
お互いに惹かれあっているのは気づいているが、こうやって二人で話をする時間もなかなか取れなかった。
オレはティカが好きだ。ティカの気持ちもわかっている。こういうのはきっかけだろう。勢いも必要だ。
オレはティカを引き寄せ目を見つめる。今回はナミも寝ているらしく点滅もしない。
丁度日が昇り始め、木の間から朝日が差して来た。眩しい光に照らされながら、そのまま二人は引き寄せられるようにキスをした。
ユウとティカはやっとのことで進展しました。クロたちはどうなるのか?!




