第3章 08話 久々の
グングルトの街から出て30分ほど歩くと街道沿いに林が続いている。クロとの待ち合わせがあるので林の中に入って行き少し広くなっている場所で休憩をする。
街道には休憩や野宿をするための場所がところどころに作られているが、ここはその一つだ。今はだれもおらずオレ達の貸切となっている。
ミミとティカがお茶の用意をしている途中でクロが姿を見せた。ぼろぼろな幌を付けた荷台を引いた馬車に乗ってきたが、近くまで来ると馬車を降り幌がついた荷台に行き、中から女性2人を連れてオレの近くまで寄ってきた。
すると、鍛冶職人のカーブがいきなり声を上げて近寄ってきた。
「まっ・・・まさか?!母ちゃん!!ククリ!!なんでここに?!」
そう、クロが連れてきたのはカーブの家族だ。カーブの腕はいいようだが家族のことが気になって仕事に集中できないのであれば、家族も一緒に連れてくればいい。
そんな単純な考えだが、クロの話だと別に悪いことをしたわけでもなく、貧しいながらも人の道を外れずに懸命に働いて生活をしていたようだ。そんなまじめな人なら村に来てもらっても問題ない。
1部屋ずつみんなに用意する予定だから、カーブの家族で1部屋使えばとりあえず雨風凌いで生活をすることはできる。現状でかなりつらい生活をしていたため、クロがモーン村にカーブが来ることや一緒に暮らす場所を提供すると説明すると二つ返事で了承したとのことだ。
「このクロさんがモーン村というところでカーブと一緒に住まわせてくれるって言うから来たんだよ」
「兄さん、体は壊してない?私も頑張って働くから家族みんなで頑張りましょう」
「二人とも無事で良かった・・・本当によかった・・・」
カーブは涙ぐみながら家族との再会を喜んでいるようだ。
「カーブ、これで鍛冶職人として力を発揮できるな」
「ユウ様、ありがとうございます。本当にありがとうございます・・・」
やっぱり家族は一緒にいるほうがいいと思う。そりゃ喧嘩することもあるだろうけど、一人は淋しいだろう。オレも以前は淋しいと思うこともあったが、今はすべてを知っている家族と呼べるような仲間がいっぱいできたから淋しくない。
「クロ、ご苦労様。こっちも問題なくみんな連れ出せた。後はあのおっさんが起きたときに説明して納得させたら村に戻ろうと思う。それまではちょっと休憩していてくれ」
「クロさんお疲れ様にゃ。こっちでお茶を用意するから来るにゃ」
ミミはクロの手を取って連れて行った。最近あまりイチャイチャしていないように思うがそれなりにうまくいっているようだ。
「ユウ様、あの大きな方が目を覚ましそうなのです。一応危ないかと思いまして皆さんを遠ざけておきました」
「ありがとうティカ。ちょっと行ってみるよ」
ティカの連絡を受けてオレは馬車の荷台に行き、座って頭を振っている鬼人族のおっさんに声をかけた。
「おっさん!気が付いたか?体調はどうだ?」
「ん?なんだお前は。頭が痛いが・・・なんでオレは寝てたんだ?」
やっぱり記憶がないか。狂戦士になるとその前となっていた時の記憶が飛んでしまうとクロから教えてもらっていたため驚きはしなかった。
「おっさんは狂戦士になって暴れ、奴隷商の店をつぶしかけたところをオレが気絶させたんだ。あっちにはお前の娘もいる。落ち着いて聞いてくれ。おっさんとおっさんの娘をオレの村の住人にしたい。仕事はあるからまじめに働けば生活には困らないだろう。どうだ?一緒に来るか?」
おっさんは「娘」と聞いたとたんに目つきが変わったが、一緒に村に住んでほしいと聞いて驚いたような表情をしている。
鬼人族は見た目で2つに分かれる。一つ目のものと二つ目だが小さな角がおでこに2つ生えているもの。おっさんは一つ目だが娘は二つ目で角が生えている。母親似なのだろう。
「娘は・・・娘は奴隷になったのか?お前の・・・お前の奴隷に?」
うっ!おっさんの目つきが一気にやばくなった。これはなんか勘違いをしている感じがするぞ。奴隷をこき使ったり、痛めつけたりする主人もいるだろうからそういう奴と勘違いされている可能性がある。
「お前の娘さんはこれから自由にするんだよ。もちろんお前もだ。自由になったうえでオレの村で住人として働いてもらいたいんだ」
オレが説明をしてもあまり信じていないようだ。おっさんの据わった目つきは変わらない。仕方ないので娘を連れて来ることにする。
「おっお父さん・・・久しぶり」
「おっ、おう。お前は元気なのか?怪我はないか?イヤラシイことをされていないか?」
やっぱりおっさんはオレが娘さんにイヤラシイことをしているのではないかと疑っていたらしい。
「お父さん!この人はすごい人なんだから!!お父さんをひとひねりしちゃったし、みんなを治療してくれた。もちろん私のことも・・・うふ」
お嬢さん!!!その最後の「うふ」ってなに?!それ絶対おっさんが勘違いするって!!
「おい・・・お前は・・・お前は!!!娘をたぶらかしたな!!!」
やっぱり勘違いしやがった。もう面倒くさい。さっさと説明して村に帰りたいのに・・・。
「おじさま!ユウ様はそんなに簡単に女の人をたぶらかしません!そんなことをしたら私が許しません!あなたのお子さんもみんなと一緒に治療して村に住むことを許可しただけです」
馬車の陰からティカが現れておっさんに説教をしている。おっさんもティカに怒られて正気を取り戻したようだが、お母さんに怒られた子供の様にしょんぼりしてしまった。
「まぁなんだ、おっさんそういうわけだから俺はあんたの娘さんに手を出す気はないし変なことをさせようって気もない。村に住んで村のために貢献してもらいたいって思っているだけだ」
「悪かった。俺の勘違いのようだな。娘が行くなら俺も行こうユウ殿よろしくお願いしたい」
やっとのことで話がついた。もうみんな休憩を終えていつでも出発できるようだがオレが疲れた。主に精神的に。
神秘の力を展開して周囲に誰もいないことを確認する。ここの休憩所は街に近いこともありあまり使う人がいないようだ。これから竜の涙の力で移動するためこちらとしては都合がいい。
ナミに村まで移動をお願いするといやいやながら了承してくれた。なんでもこれだけ人数が多いと力を結構使うらしい。後でまた補充すると言ったら納得してくれた。
「今からオレ達の村に移動する。移動はちょっと特殊なマテルを使うから目をつぶっていてほしい。一瞬だから心配することはない」
みんな少し不安そうな顔をしているけどちゃんと目をつぶってくれたようなのでナミに移動をしてもらう。
いつものようにナミが光り始め、まぶしくて目を閉じると次に目を開けたときにはもうモーン村の広場に立っていた。
「おお!ユウ様たちか。いきなりあらわれたからびっくりしたよ。お帰りなさい」
移動した先にはヴァンスさんがいたようで、オレ達がいきなりあらわれたからびっくりしたようだ。
「なっなんですか今のは!?さっきまで林の中の休憩所に居ましたが、今は村・・・のようですが」
「特殊なマテルで辺境の荒野近くにあるオレの作ったモーン村まで移動したんだ。このマテルは秘密にしているから、村の外から来た人には話さないでね」
まぁもし話したとしてもそんなマテルは知られていないから冗談だと思われるだろう。
「妖魔のみんなお疲れ様。いろいろ買い出ししたものをクロと一緒に整理してほしい。ミミとティカは疲れてるところ申し訳ないけど家を準備するから用意した寝具を設置してくれるかな?」
「わかったにゃ」
「わかりました」
それから奴隷のみんなには広場で待っていてもらい、オレが家を急ピッチで作っていく。今回は人数が多いので長屋のような家を作る。家としては小さいが、2部屋とダイニングキッチン、トイレ付きだ。
マテルで作るのでそんなに時間をかけずに5家族分の長屋を3棟程作成した。いずれ希望があれば大きな家も作れるけど時間がかかるのでとりあえず長屋に住んでもらおうと思う。
オレが作っていくとミミとティカ、それにヴァンスさんやカイルさんの奥さんも手伝ってくれて家の中に寝具などを設置していく。1時間もすると家の準備はできたため女性陣には歓迎会の準備をしてもらい、オレは奴隷解放をするため広場に戻った。
「みんなに話しておきたいことがある。これからこの村に住んでもらうことになるが、家はこっちで用意した。食料も初めはこっちで用意する。仕事もやってもらいたいことがあるが、個人でやりたいことがあればそれは相談してもらいたい」
奴隷としてこき使われると思っていただろうが、家や食料を用意すると聞いてみんな驚いている。
「そして、これからみんなを奴隷解放する。オレはみんなに村の住人として住んでもらいたいんだ。もし村が嫌になって出ていくならそれもいいだろう。それはみんなの自由だ」
奴隷解放。その言葉を聞いただけで涙を流しているものもいる。カーブに関しては涙と鼻水まみれで「仕事がんばるっす」といっていた。みんなやる気が出たようだし村に住んでくれるようだ。
それから順番で奴隷解放をしていく。中には強めの契約がかかった者もいたがオレにとってはどうってことないため。ちゃっちゃと解放していく。
「この村ではみんな平等だ。人種や容姿は関係なく差別もしない。でも誰かを裏切るようなことや傷つけるようなことがあれば厳しく罰することとなるだろう。それだけ覚えておいてくれ」
みんなオレの話を真剣に聞いてくれている。奴隷解放してもらったってことが大きいかな。やっぱり奴隷のままこき使われるわけではないというだけでうれしかっただろう。
それからみんなの部屋割りをしてとりあえず夕方まで自由時間とした。
一気に住人が増えたから食料調達をもっとしなければならないかもしれない。狩りをしているペアにはもっと肉の確保をしてもらうように話しておこう。
今日は久々の焼き肉だ!!最近肉料理は食べていたが焼き肉は食べていなかった。まずは焼き奉行として肉を焼くことに徹しよう。
「あら!ご・しゅ・じ・ん・様じゃない!いつ戻ってきたの?なんか大勢連れてきたみたいだけど、どこの女狐を連れてきたのよ!!」
忘れていた。この村にはこいつがいたんだ。なんか数日間とはいえ村を離れていたからこいつのことを忘れていたんだけど、なんか一気に現実に引き戻された気がする。
「ケン、女狐とか言うなよ。みんな村の住人としてこれから頑張ってもらうんだ。いろいろ忙しくなるからケンも頑張ってくれよ」
「あたしはご主人様の命令ならちゃんと言う事聞くわよ。いっぱい命令して!!」
「じゃあ、焼き肉用の肉運んで来てくれ」
オレがお願いするとケンは急いで倉庫に走って行った。途中でガイも引っ張って行ったからいっぱい持ってきてくれるだろう。
今日は人数が多いから外にテーブルを作って肉を焼きながらみんなで食べたいと思う。
オレは焼き肉を楽しみにしながら歓迎会会場の準備を始めた。
また書いた内容が溜まったらアップします。




