第3章 06話 人員確保
次の日の朝起きるとすでにお手伝いさんは家に来ており、ティカと朝食の用意をしてくれていた。
「おはよう。みんな早いね。今日も一日よろしくね」
「おはようございます、ユウ様。本日もよろしくお願いします。昨日ミルアン様にクッキーをお渡ししたところ、大層お気に召したようで作り方を必ず覚えてくるよう仰せつかりました」
やっぱり女性は甘いものに目がないな。
「あはは、やっぱりそうか。ミルアン様は好きだろうと思ってみんなには作り方を覚えてもらうつもりだったんだよ。ティカみんなに教えてあげてもらっていい?」
「わかりました。私も何度か試して作り方を覚えましたので大丈夫です。では今日の遅い朝の休憩時間を使って・・・」
「ティカ、休憩時間じゃなくても普通に教えてあげていいよ。昨日掃除してくれたから汚れてないし、朝食の片づけと洗濯が終わったら教えてあげて。休憩時間に焼いたクッキーをオレにも食べさせてくれればうれしいな」
「では今日はクッキーの作り方をお伝えするのがメインの仕事ということにしましょう」
お手伝いさん達はオレとティカのやり取りをただ茫然と聞いている。
まぁお手伝いさんがクッキーの焼き方を覚えるのが仕事と言われたらさすがに変な感じがするが、ミルアン様からの命令だから仕方ない。頑張って覚えてもらうしかないな。
「じゃあ、お金渡すから材料も調達して来てもらっていい?砂糖はオレが用意して台所に置いておくよ」
砂糖は村では大量に作れるので遠慮なく使えるがほかの街では高級なものとなる。ミルアン様には砂糖だけでも流通ルートを優先して確保したいと言われたほど利益が出るらしい。
闇ストレージにおよそ1㎏ぐらいずつに分けて袋に入れ大量に保管しているので困ることはないだろう。金に困ったら売ろうとも思っていたので結構な量がある。
「それじゃあ、朝ご飯の用意が出来たら、みんなで食べよう」
それから少ししてみんな食堂に集まったので食事をとり始めた。
「クロ、今日は何を買いに行くの?」
「はい、妖魔達とエーテハイムでは手に入らなかった物を見に行くつもりです」
「ミミはなにか買う物ある?」
「特ににゃいにゃ。エーテハイムでほとんど買えたにゃ。ティカ達の買い物に着いて行くにゃ」
それじゃ、クロ達とティカ達の買い物班に分かれるのかな。
「ティカ達はお手伝いさんたちが札を持っているから問題ないね。じゃあ俺はクロたちに着いて行くよ。人員の確保もあるから奴隷商のところにもいくけどいいかな?」
「ユウ様、手伝い人員としては手先の器用な奴がいい。採掘には力があるやつがいい。俺達も選んでいいか?」
「いいよ。オレも知らないことがあるだろうからそこらは任せる。じゃあ今日はそれぞれ買い物としよう。遅い昼の時間には家に帰ってくるようにしよう」
食事が終わり、出発する前にティカにお金を渡す。食材や調味料も買うだろうから銅コインを5枚(5万)渡し、予備として何かあったら使うように銀コインを1枚(10万)を渡しておいた。
クロには金コイン2枚(200万)を渡し必要な材料を買ってもらう。オレは着いて回るが基本的にはクロに任せている。高いのか安いのか全く分からないからだ。
買い物に出て街の中を移動すると何度か貴族の配下に声をかけられたが、オレの顔を覚えていてすぐ引き下がる者が多かった。
昼までに妖魔達の買い物はだいたい終わった。まだないものがあり、やはり隣の大陸に行かなければない可能性があるとのことだ。
しかし加工の最終段階で使う試薬のようなので工房自体は作り始められるとのことだ。工房が完成し、採掘作業がうまくいく状態になれば武器や防具を作れるがそれまでにはまだ時間がかかるので、その間に買いに行くことが出来るだろう。
「ズズ達の買い物はだいたい終わりかな?」
「はい、こちらで買える物はすべて購入しました。あとは隣の大陸に行く必要があります」
「それじゃあ、とりあえず奴隷商のところに行っていい人材がいるか見てこよう」
グングルトの街で知っている奴隷商は鱗人族の奴隷を購入した奴隷商のところだ。エブルクアン様の紹介で行ったところなので、変な奴隷をつかまされることもないだろう。
「これはこれは、以前にエブルクアン様の紹介でお会いしたユウ様ではありませんか。お久しゅうございます」
「お久しぶり。今日は個人的に奴隷を買いに来たんだ。手先の器用な者と力のある者がいいんだが」
「承知しました。こちらで少々お待ちください」
奴隷商は店の奥にある部屋にオレ達を通し一度部屋を出ていった。
そのあとすぐにメイドの奴隷がお茶を入れてきてくれたので、お茶を啜りながら待つことしばしば。
「お待たせいたしました。こちらが今私どもの奴隷商で扱っております手先が器用な者と力のある者です」
やはりそう来たか、手先が器用なのは妖精族と人族、力があるものは鬼人族と鱗人族だ。
クロに聞いたところでは他の大陸だとまた違う種族が出てくる可能性があるとのことだが、この大陸で手先が器用、力があるという条件だとこの4つの種族が出てくるのが普通らしい。
土人族や妖魔は珍しいのでほとんどみることはないとのことだ。
「こちらは妖精族の男ですが、親が亡くなり小さい時に奴隷となりました。今18歳ですが手先が器用なので飾り小物を作らせることが出来ます」
ティカに似た水色の髪の毛だが、色が青に近い。そして耳が少しとがっていて背が高く妖精というよりエルフに近い。
「もう一人の妖精族の男は先ほどの妖精族の男の弟で17歳、兄と同じく手先は器用ですが、木彫りなどの彫刻などを得意としています」
武器屋防具を作るには飾りなども必要になるので人材としてはよさそうだ。
「こちらの人族の男は25歳、元は鍛冶屋をしていた男で父親が急死した後鍛冶屋を継ぎましたが、親の借金を返せず奴隷になりました」
人族で鍛冶屋をやっていたなら少しは経験があるだろう。使えるか?
「そしてこちらの人族の女は23歳、裁縫の仕事をしており手先が器用ですが、怪我により手が不自由になり今は思うように手が動かないため作業が遅いです」
怪我が原因なら治せるかな?
「残りの鬼人族の男3人と鱗人族の男4人は山で採掘の仕事をしていましたが、採掘作業がうまくいかず貴族が手を引いたため必要なくなり売られました。年齢は20~30とまだまだ働けます」
採掘作業の経験者ならこれ以上いい人材はいないかもしれない。
(ズズ、結構いい人材だと思うんだけどどうかな?)
(あぁ、オレもいいと思うが、あの人族の男はなんか引っかかる。ちょっと見てきていいか?)
「ちょっと近くに行って調べてもいいか?」
「はい、みなおとなしいので体に触れても問題ありません」
ズズとオレは人族の男の近くに行って様子をうかがう。
人族の男は職人のようなごつごつした手をしていて仕事熱心な感じだが、目にやる気がない。もうあきらめてしまっているような目だ。
「おい、お前は鍛冶屋の仕事の経験はどのぐらいだ?」
「はい、親父の手伝いをしながら10年ぐらいです」
「手を見せろ」
ズズは人族の手を取ってよく見ている。
「わかった、なかなかの手だ。しかしお前はやる気を感じない。なぜだ?」
「それは・・・」
人族が言葉詰まるようなそぶりを見せたのでオレは奴隷商に話しかける。
「すまないが、人員がもっと必要だ。少し怪我などの問題あるものでもいいので安いやつを連れて来てくれないか?」
「しょっ承知しました」
オレがさらに連れてくるように言ったので驚いて飛び出て行ってしまった。
「これで話が出来るようになったか?何か心配事があるなら話してみてくれ」
オレが言うと人族の男はしぶしぶ話はじめた。
「実は、俺には妹とおふくろがいる、俺が奴隷になりその金で借金を返したはずなんだが家も何もかもなくしてスラム街に移り住んだと風の噂で聞いたんだ。それが気になって他のことが手につかないんだ」
そういうことか、これはちょっと調べてみる必要があるな。
「お前の名前は?元の本当の名前だ」
「カーヴだ」
「クロ、カーヴの家族のことを調べられるか?」
「承知致しました」
そういうとクロは扉からすぐに出ていった。
「お前の家族のことは心配するな。今確認する。家族が無事でいるならお前は鍛冶の仕事をする気はあるか?」
「もちろんだ。俺は鍛冶の仕事が好きだ。不安がなくなれば喜んでやらせてもらいたい」
名前は変化球みたいだが、性格はストレートの職人気質のようだな。
「お待たせしました。他の奴隷を連れてきました」
奴隷商があとから連れてきたものはさらに妖精族の男女1名ずつ、鬼人族の男2名、女2名連れてきた。
みんな顔色が悪く元気がないようだ。
「この者たちはみな原因不明の体調不良で長らく床に就いています。元気であれば手先が器用、力がある者たちばかりです」
この奴隷商は前回売れ残っていたものを俺が買っていったから、今回も一斉在庫処分の様に売れ残りを出してきたな。
「では、いくらだ?」
「今回は元気なものは働き手として他にも需要があるため通常より少し高めになり、一人3000バルです。11名ですので33000バルとなります」
力仕事や手先が器用なものは需要も多いため値段は一般的な通常奴隷の1.5倍だな。
「あと、体調が悪い者達は使えるかどうかわかりませんので1人500バル、6人で3000バル、他の奴隷1名分で結構です」
やっぱり在庫処分だな。働けなくても6人分の食事などを世話しなくてはならないので、いるだけで金がかかるのだろう。早めに売ってしまい経費削減した方がメリットが多いと見たようだ。
「合計で36000バルでどうでしょうか?」
予算としては全然問題ないが、中途半端な金額だな。
「この者たちはほとんど働けないのだろ?当分養うだけの費用も加味して30000バルでどうだ?」
商人は少し考えていたが、納得がいったようだ。
「わかりました。では全員で30000バルといたします。引渡しはどうしますか?」
「2日後に引き取りにくるので前回と同じく全員にまともな服を用意し、食事を与えてやってくれ」
そういうと、オレは色をつけて金コイン3枚と銀コイン2枚を置いていく。
「では行くぞ」
オレは妖魔たちを引き連れて奴隷商の店を出た。
すると、丁度クロも帰ってきたところだったようで、奴隷商に店の前で会った。
「どうだった?カーヴの家族はいた?」
「はい、やはりスラム街に移り住んでいました。少し話を聞いたところ、カーヴが奴隷になって借金は返せたようですが、働き手がいなくなり生活が困窮し結局家を手放してスラム暮らしになってしまったようです」
さすがに一家の大黒柱がいなくなれば生活が苦しくなる。このままここにいても状況は変わらないから村に連れてきて一緒に暮らせた方がいい気がするな。
「クロ、カーヴ達奴隷は全員買い取った。全員で17人だ。二人増えてもあまり変わらないからカーヴの家族も一緒に連れて行こうと思うんだが・・・」
「ユウ様ならそうおっしゃると思い、すでにそのように手配をしております。2日後には街を出る用意をしておくようにいってあります」
さすができる執事だな。俺のことも良く理解してくれている。
「ありがとう、さすがだな。奴隷も二日後に引渡しとなるから、俺が奴隷を迎えに行っている間に家族を迎えに行って別荘につれてきてくれる?」
「承知しました」
奴隷の大幅増員により、村の人口も一気に増えるな。奴隷はいつもどおり全員解放するつもりだ。
家の増設も考えておこう。そんなことを考えながら別荘への道を歩き始めた。




