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知らない世界で街づくり  作者: 星野 シラセ
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第3章 05話 ルール

新しい拠点を見て目を点にしているみんなを楽しんだ後、とりあえず家の中に入りそれぞれ中を探索し始めた。


これだけ広いと見て回るだけでも時間がかかる。オレは探索済みなので暇な間にお手伝いの執事やメイドさんのために焼き菓子でも作っておくか。


こちらの世界でもクッキーはあるんだが、あまり甘くなくぽろぽろでどちらかというとバランス栄養食品のようなものが主流なのだが、


クッキーを無性に食べたくなり材料をかき集めて作ってみたらうまくいき、みんなに好評なのだ。


物としてはシンプルなバタークッキーだが、バター、砂糖、卵、薄力粉があればできる。砂糖が高級品だが、うちの村では砂糖が取れる植物を育ててもらっているので安価に手に入る。


あとは焼くためのオーブンがオレ特製の石窯だから火の調整が難しいけど、さっくり焼けるのだと思う。


本当はショートニングを入れてもっとサクサクに仕上げたいが、ショートニングってなに?使ってはいたが元はなんだかよくわかってなかったので代用品がわからなかった。


なんでここまでクッキーに詳しいかというと、高校生の時バレンタインにチョコをもらえることを想定して、手作りクッキーの練習をしたことがあった。


出来は最高にうまくでき、売っているものとあまり変わらないぐらいいい出来だったが、バレンタインに学校ではチョコをもらえなかったという落ちがついている。


まぁ親とか幼馴染が義理でくれたので、一人で泣きながら食べることはなかったがある意味俺の中では黒歴史だ。あぁ、嫌なことを思い出してしまった・・・。


気持ちを切り替えて、キッチンの一部に石窯を作るため一応ティカに話をしに行く。


「ティカ、キッチンのどこかに石窯作りたいんだけどどこらならいい?」


「いしがま?ですか。あっ!あのピザやクッキーを焼いてくださった時の石でできた料理道具ですね。あの大きさですと・・・この角はどうでしょうか?」


「わかったよ。ちょっとキッチンでクッキー焼くから後で味見してね」


「クッキー!作り方は教わりましたが、火加減が難しいのでなかなかうまく焼けないんです。是非見学させてください」


とりあえず石窯を作る場所は確保できた。家の屋根に一部穴をあけるしかないけど煙の排気口は必要だ。


土のマテルを使って作るので本当に一瞬でできる。何回か作っているのでもう手慣れたもので3分でできてしまった。カップラーメンが出来る時間で石窯が出来るのは地球では考えられなかったな。


それからティカが見学する中クッキーの生地を作り、長細くしたものを風のマテルで冷やして固め輪切りにしていく。このまま焼けばクッキーの出来上がりだ。


焼き加減はオーブンとかじゃないからちょっと難しい。初めに窯を温めて、火が落ち着いてきたら少し火種をバラし火力調整。後はオレも何度かやって感覚で覚えたのでティカにも見て覚えてもらうしかない。


「火は強すぎると焦げちゃうから、周りに寄せて少し弱くしてからクッキーを入れるといいよ」


「わかりました。一度弱めた方がいいのですね。勉強になります」


クッキーを焼いていると甘い香りが漂い初め、その匂いに誘われてみんながキッチンに集まってきてしまった。


「みんな集まっちゃったな。ちょっとここじゃ狭いから食事をとる部屋がこの先の右側にあるからそこでお茶にしよう。ミミ、ティカお茶の用意してくれる?」


「わかったにゃ。私達もクッキー食べていいかにゃ?」


「もちろんだよ。今日ミルアン様の計らいでお手伝いさんが5人ぐらい来るからその人たちにあげるんだけど、その前に味見してみてくれ」


そういうと、みんなは歓喜の声を上げた。そこまでクッキーを食いたかったのか?まぁたしかにこの世界では甘いものが圧倒的に少ない。甘いお菓子を作るだけで一儲けできそうだ。


それからお茶会が始まった。クッキーを一つ取って口に入れる。サクッとした歯ごたえと適度な甘さは申し分ない。


しかし今回はもう一つ試しで作ってみた。一つはシナモンのような香辛料のビビスをまぶしたもの。もう一つはクルミのような木の実のポポルをまぶしたもの。


ちょっとしたアクセントとしてまぶしてみたのだが、試しに一つ食べてみると、それぞれクッキーとの相性もいいらしく、香ばしくて美味しい。


「このポポルがついているものは香ばしくてわたし好みですね」


クロは木の実のクッキーが好きらしい。


「このビビスの粉がかかっているものも美味しいです。これはテラル茶よりカラル茶のほうが合いますね」


ビビスはシナモンに近いから紅茶に近いカラル茶が合うのはわかる。


「ユウ様の作るお菓子はおいしいにゃ。毎日食べたいにゃ」


ミミ、それは危険だ。クッキーを毎日食べたら太ってしまうぞ!


それから用意した分はみんな食べてくれた。結構な量があったのでみんな満足してくれたようだ。今回もうまく焼けたようなので、別にしておいた分はお手伝いさんにあげよう。あと、ミルアン様にも持って行ってもらう分を用意しておく。


昼前ぐらいになり、玄関の扉をたたく音がした。


「はーい。ちょっと待ってくださいね。」


ティカが玄関に迎えに出る。


「初めまして。私たちはミルアン様よりこちらでユウ様達の身の回りのお世話を仰せつかりました」


「ようこそいらっしゃいました。私はユウ様の従者の一人、ユウ様の身の回りの世話は私が行いますが、よろしくお願いします」


なんかティカが言っているようだが・・・とりあえずお手伝いさんが来たようだ。


「いらっしゃい。オレがユウ、ミルアン様とは親しくさせてもらっている。ここにいる間はみんなにお世話になるけどよろしく頼むよ」


それからお手伝いの女性3人男性2名はテキパキと動き家の中の掃除や庭の手入れなどをしてくれている。


クッキーは3時のおやつだな。まぁ休憩しているときにでも見計らって持って行ってみよう。


「ティカ、お手伝いさんは休憩とか何時ごろに取るんだろう?」


「基本的には休憩時間というものはありません。手の空いているときに休憩することとなりますね」


(あんたの知識はこっちの世界の常識が無さすぎるから人前でそんな質問しないほうがいいわよ)


いきなりナミが割り込んできた。オレが力を供給してからだいぶ力に余裕があるらしく首にかけていないでも会話できるようになったらしい。


「あぁ、確かに普通子供でも知ってるようなことを聞いちゃったりするからな。周りに人がいないときに聞くように気を付けるよ」


しかし、休憩時間がないというのはちょっと大変だよな。よし、こういう時はオレが決めてしまおう。


「それじゃあ、たとえば遅い朝と遅い昼ぐらいに休憩時間を作っちゃっても問題ない?」


この世界では時間の概念はあるが、細かく24時間で分かれているわけではなく大雑把に分かれている。


朝・・・7時ごろ

遅い朝・・・10時ごろ

昼・・・12時ごろ

遅い昼・・・15時ごろ

夕・・・6時ごろ

夜・・・9時ごろ

遅い夜・・・0時ごろ

魔物の時間 3時ごろ


今回遅い昼=15時頃に休憩時間を作ってお茶の時間にしてもらおうというわけだ。まぁ常に気を張って働くより適度に休憩を取った方がいい。


「特に問題はありませんが聞いたことがありません。通常は休憩をしているとサボっていると思われあまりよく思われませんので、人目につかないところで休みを取っています」


マジでか?!この世界に来てそれなりに長い時間生活してきたが、こういうところには全く気が付かなかった。じゃあ村のみんなもせっせと休みもろくに取らずに働いていたのか?!


「村でもみんな休憩取らずに働いているの?」


「いいえ、村では自分の意思で仕事をしていますので疲れたら休みを取っています。ただ時間は決まっていませんので休憩を取らずに働く方もいらっしゃいます」


そうなんだ。これはうちの村の中でのルールとしても休憩時間を作っていいかもな。まぁ任意でやってもらうつもりだから強制じゃないけどね。


「わかったよ。それじゃ今日の遅い昼の時間にお手伝いさんに一度集まってもらいたいんだけど、声かけてもらっておいていいかな?」


「わかりました。食堂に集合してもらうようにお話ししておきます」


今日は一日グングルトの拠点でゆっくりすることとなっているのでみんな思い思いの時間を過ごしている。


妖魔達は家の造りを気にしていろいろなところを見て回っている。やはり職人の血が騒ぐのだろう。


クロとミミは二人で庭にいるようだが何をしているかまではわからない。


ティカはクッキーの練習をしているようだ。


オレは自分の部屋の中を模様替えしている。何となく窓際に机を持って行ったり、ベッドの向き変えている。


するとすぐに遅い昼の時間に近くなってしまったので食堂に行くと、お手伝いさんがみんな集まってくれていた。


「みんな呼び出してしまってすまない。ここで手伝いをしてもらうにあたり、ここでのルールを説明する。ルールって言っても絶対に守らなきゃいけないものじゃないから気楽に聞いてね」


お手伝いさんたちはみんなルールと聞いて顔が強張った。オレも人族みたいな見た目だから、無理難題を押し付けられるのではと警戒しているのかもしれない。


「まずは、休憩時間について。ここでは遅い朝の時間と遅い昼の時間、1日2回は休憩時間としてお茶でも飲んでゆっくりしてね。お茶とかお菓子は台所の棚に用意してあるものは自由に食べていいよ」


一つ目のルールは休憩時間について、これはさっきティカと話していた内容だが、お茶とお菓子はせっかく頑張ってもらっているのでそのぐらいはこっちで用意しようと思って決めた。


俺の話を聞いてみんなぽかんとしている。


「二つ目は食事について、ここでは食事は一緒に食べるように。用意はお願いするけど、ティカとかオレもたまに作るから遠慮なく食べてね」


もうみんなの頭の上に???が浮かんでいる。


「2つ目に、夕食が終わって片付けも終わったら、帰る前にお風呂に入って行っていいよ。うちのみんなは毎日入っているから遠慮しないで入って行ってね」


風呂と聞いてもうなにがなんだかわからないといった様子だ。


「みなさん、ユウ様は村でも皆さんと一緒にお食事をして、一緒にお風呂に入られていますのでこちらでも同じようにしてほしいと思っております。休憩時間は忙しくなければ皆さん一緒にとってください。私も混ぜていただければ嬉しいですね」


ティカの笑顔でみんな本当だということがわかったようだ。でもオレが言っても信じてもらえなかったのにティカの笑顔一つで信じてもらえるのだろう?オレが笑ったとしても悪いこと考えているようにしか見えないのか?


・・・


やめよう。考えるだけで悲しくなる。やはり女性の笑顔が一番相手の心をぐっとつかむのだろう。そう、そういうことにしよう。


「最後に、オレ達は特殊なマテルを使ったりする。これは村の秘密でもあるから、出来れば内緒にいてほしい。ミルアン様に聞かれたらオレに言ってほしい、オレから話すから」


ミルアン様は風呂のこと知っているから別にいいんだけど他にもいろいろなマテル使うから後でなんか言われても厄介だ。見つかったら俺から話すことにしよう。


「じゃあ、話すことは終わったから、さっそくお茶にするか。ティカお茶入れてくれる?」


「わかりました、今日は私が用意しますので皆さんは待っていてくださいね」


何人かは立ち上がろうとしたが、ティカが手で制して座らせた。


「本当によろしいのでしょうか?私達はお世話をするためにこちらに来ているのですが、休憩時間をいただいたりお茶をいただいてしまって・・・」


お手伝いさんの中で一番偉いメイドの人が話しかけてきた。


「いいんだよ。みんな頑張ってくれているんだからそのぐらいあたりまえ、っていうか俺がそうしてもらいたいからいいんだよ。あと、これ食べてみて。オレが作ったクッキーっていうおかしなんだけど結構うまいよ」


作っておいたクッキーをみんなに見えない死角から闇ストレージより取り出してテーブルに乗せる。


焼き菓子にしては一般的なものと見た目が違うので不思議そうに見ていたが、出されたものに手を付けないと失礼に当たるため恐る恐る手を伸ばしてそれぞれが口にする。


するとみんな頭の上に?!のマークが出たような表情をしてびっくりしているようだ。


「ユウ様、この焼き菓子は何でしょうか?このように甘くて美味しいものは食べたことがありません。こんな高級なものを私達がいただいてよろしいのでしょうか?」


「別にいいよそんなに高級でもないし、戸棚に入れておくから休憩のときにつまんで食べてね。他にもお菓子は用意しておくし作り方も教えるから自分でも作ってみてね」


この言葉でみんなまた動きが固まった。高級そうなお菓子がここにいる間食べられるということ。作り方を教えてもらえるということの2つに驚いているようだ。


あまりに驚いて男性の執事が喉につかえてしまったようだが、ナイスタイミングでティカがお茶を持ってきた。


「ウフフ、そんなに急がなくてもクッキーは逃げませんよ。美味しいですよね。あとで一緒に作りましょう」


それからはお茶を飲みながら談笑してすっかり打ち解けた。


午後から執事の一人がミルアン様のところに行くということなので、クッキーをお土産に持たせ渡してもらうことにした。


休憩時間としては30分ぐらいだが初日で緊張していたこともあったようで、いい具合に緊張も解けてやる気に満ちた表情をしていた。


それからその日の夕食を一緒に食べたときは食事の豪華さに驚き、妖魔には驚いていたようだがすぐに打ち解けて仲良く話をし始め、人生初となる風呂にも驚きながらくつろげたようで5人のお手伝いさんみんなが生き生きとした顔をしていた。


「手伝いに来ているのに私たちの方がいい思いをしてしまっているようで申し訳ない気持ちですが、明日からも頑張りますのでよろしくお願いいたします」


「はいよ、みんなで一緒に頑張ればいいんだよ。緊張せずに明日からもよろしくね」


お手伝いさんたちは意気揚々と帰りの途についた。


明日からはまた買い物だな。オレは人員確保も視野に入れなくちゃならない。さてどうしたものか。


明日のことを考えながら、オレは一人でゆっくりと風呂に浸かるのであった

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