第2章 36話 暴走
いろいろ暴走してます。
オレの館が吹き飛んでなくなった。
一瞬の出来事でオレも何が起こったのかわからなかった。
ここまでのことをまとめると
①クロに人族貴族がいるオレの家の中を偵察してもらうように頼む
②クロが気配を消して家に近づく
③クロが扉を少し開けて家の中を確認する
④家が吹き飛んでなくなった。
うん。確認しても状況がわからない。とりあえずクロが何かしたのだろう。
家が吹き飛んだといっても壁や屋根が吹き飛んだだけで、家の中にいた人族はまだ健在のようだ。
しかしあまりに突然のことで全員腰を抜かし何があったかわからないといった表情をしている。
オレ達も急いでクロのところに向かう。
「どうしたクロ!!何かあったのか?」
クロは肩を震わせて怒りに耐えているようだ。
「ごっごごしゅじんささささま。私は・・・私はもう耐えきれません。この輩、こいつらだけは殺します」
指をさした方にはミミやティカの服、下着をもって喜んでいる薄汚い傭兵たちと、その様子を見て酒を飲んでいた貴族の男の姿だった。
あー・・・一番やっちゃいけないことをしてしまったようだ。クロにとってミミの私物をもてあそばれれることが万死に値すると判断した様だ。
しかし、その光景を見て後ろの二人が暴走した。
「わっわっわたしのののしししし下着がががが!!!」
ティカの顔が真っ赤になり両手からマテルを放出する。
「シャーー!!にゃにしてるにゃ!!!乙女の秘密に触れちゃだめにゃ!!」
ミミが全身の毛を逆立てて威嚇しながら両手からマテルを放出する。
それに合わせてクロも両手からマテルを放出する。
やばいっ!これじゃみんな巻き込まれる!!
咄嗟にオレもマテルバリアを仲間のみんなに展開する。あれこれ言ってられないので全開で展開した。
轟音とともにマテルが暴走する。
ティカのマテルは火、通常では真っ赤なソフトボールぐらいの火のマテルを使うが、今日はバスケットボールぐらいの大きさで光輝いている。
竜の涙の力もあってマテルの威力が倍になっているのだろう。
ミミのマテルは風、周囲の空気をすべて凝縮させ衝撃派として放出する。いつもはぶつかったら飛ばされて転ぶぐらいの威力だが、あの空気砲にぶつかったらただでは済まなそうだ。
クロのマテルは水、5cmぐらいの穴から大量の水を無理やり放出したようなマテルで、以前にオレが水の力でも一点に集中させてすごい勢いで放出すると岩でも切れると教えたことから自分で考えたマテルだ。
このマテルは岩でも切り裂くため、人に当たったら真っ二つになるだろう。
3人のそれぞれのマテルが同時に放出され人族貴族ドルキーナスの前でぶつかる。
その瞬間水と火により水蒸気爆発を起こし、そこに風のマテルで衝撃が加えられたのですさまじい爆風を発生させた。
オレ達はオレのマテルバリアを張っていたが、衝撃には耐えられずにみんな吹き飛んでしまった。
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「ゆ・・・さ・・・ゆう・・・・・おき」
うぅ・・・なんだ?
「ゆう・・・さま起きてください。大丈夫ですかユウ様!」
「あっあれ?マーラさん?」
「はぁよかった。ものすごい音がして地上に出てきたら、ユウ様の家は吹き飛んでるし、みんなそこらじゅうに散らばって気を失っているし本当に心配しましたよ」
どういうことだ?・・・あっ思い出してきた。人族貴族に家を占領されて、クロが怒って家を吹き飛ばし、ティカとミミも加わってマテルを使て爆発起こしたんだ。
「みんなは?」
「大丈夫ですよ。皆さん怪我していますが無事です。そしてうれしくはないですが人族貴族もみんな無事です。かなり重症ですが生きているので手足を縛って一か所にまとめています」
あの爆発で誰も死なないなんて奇跡だな。たぶんそれぞれのマテルが威力を相殺したのかもしれない。理屈はわからないけど事実だ。
「そっか、よかった。とりあえず怪我している村人はどこ?」
「こちらです」
オレは立ち上がると周りを見渡す。モーンの小屋より畑側に吹き飛ばされていたようだ。
村の中心に行くと広場に人族貴族とその配下が縛られて転がされている。手足が折れているものや内臓に損傷を負っているものいるが、とりあえずそいつらは後回しだ。
村人は妖魔の住んでいた小屋に集められていた。
「ユウ様!無事でしたのですね。心配しました。よかった、本当によかった」
人族のヴァンスさんが涙を流して安堵の表情をしている。
オレは一度集中し、部屋の中にいる村人全員に治癒のマテルをかけるため神秘の力を両手に集める。
「きれい・・・」
ティカがオレの神秘の力を見てつぶやいた。
オレは十分神秘の力が手に集まったのを確認して一気に治癒のマテルを放出する。
すると切り傷、骨折、やけどなどいろいろ怪我をしていた住人だが、傷が徐々に消えていき1分もするとほぼ完治していた。
「これで住人はみんな大丈夫かな?」
「ありがとうございます。後は人族を見張っている猫族のユシカとライゼがいますが、ほとんど怪我をしてないので大丈夫です」
オーク族のサイガが説明をしてくれた。
「それじゃ、ちょっと聞きたいんだけど人族貴族はいつきたの?」
「あいつらは3日前にいきなり来やがった。初めは村の門の前でワーワーわめいていたが、村長が不在だから村に入れられないと言ったらいきなり攻撃してきやがったのさ」
犬族のカイルさんが説明してくれる。
「初めはこっちもマテルや弓で応戦していたんだが、相手の方が上手のマテル使いがいて、門を破られてしまってな。それから村に一気に攻め込まれたからババルさんが危険だと判断して妖魔の家の中にみんなを誘導して逃げたんだ」
門を木で簡単に作ったことに問題があったか。でも鉄だと重くなっちゃうし、迎撃できるような大型武器でもつけておけばよかったか?
「そして私たちが独自に地下室へ行くための通路を作っていたのでそこを使ってみんなで隠れたんです」
妖魔のズズが地下通路のことを教えてくれた。妖魔は警戒心が強いし、心配性だけどその性格が今回はみんなを助けたようだ。
「そっか、妖魔のみんなありがとう。地下へ行くための通路を作っていてくれたおかげでみんなが助かった。それに、ババルさんもありがとう。みんなに指示を出して誘導してくれたおかげでけが人を最小限に抑えることが出来た」
「俺はできることをしただけだ。みんなが協力したから凌げたのさ」
それでもみんなが無事だったことに変わりはない。本当によかった。
「ユウ様、あやつらの処遇ですが・・・」
「まだみんな生きてるようだから、死なない程度にけがは治して奴隷にでもなってもらうか」
「そうですか。荒野に放り出すのも手かと思いましたが、他の村に迷惑をかけると大変なので奴隷になってもらった方がいいですね」
「うん。オレが奴隷の契約できつい条件を付ければたぶん誰も外せないからそれでいいんじゃない?」
奴隷契約はかけた本人か、本人より神秘の力が強くなければ外せない。当分は罪を償うことになるだろう。
たぶん本心としては納得していない人もいるだろうけど、子供もいるし人が死ぬところを見せたくない
「それじゃ、ちょっと行ってくる」
広場に行くと力なくうなだれている人族達とそれを見張っているユシカとライゼがいた。
「お疲れ様。今回はすごい大変だったね。けがはないか?」
「ユウ様!意識を戻されたのですね。みなで心配していました。私たち二人は怪我はありませんので心配なさらないでください」
「こいつらの・・・こいつらのせいで村が・・・許せません」
二人とも怪我は無いようだ。怒り心頭ってところだろうがここは俺に任せてもらおう。
「こいつらにはきつい条件を付けて奴隷にする。この村の中ではあまり血を流したくないんだ。納得できないかもしれないけどオレに任せてもらえないか?」
「そんな!・・・わかりました。ユウ様にお任せいたします。しかし本心としては許せません」
「ありがとう。我慢をさせるのは悪いけどみんな同じ気持ちなのは一緒だよ」
とりあえず奴隷のやばそうな怪我をしているものから治癒のマテルをかけていく。あとからティカが来てくれたので骨が折れている奴には添え木をして布で縛るのを手伝ってもらった。
奴隷にするにしてもいきなり貴族を奴隷にしたらオレが悪者にされそうだな・・・どうしようなか。
話を聞いたら、街では警備をしている街の兵士長か、貴族が判断すれば奴隷にされるらしい。その判断から行くとこの村ではオレがちゃんとした理由で判断すれば奴隷にしても問題ないらしい。
「ユウ様が奴隷として契約しても問題はありません。しかし、村に置いておくのは皆嫌がると思います。奴隷にしてきつい条件を付与した後に奴隷商に売る方がよいかと思います」
そりゃそうだ。ティカの言う通り、いくら逆らわない奴隷だとしても近くにいるのも嫌だろう。
「そのつもりだよ。とりあえず奴隷商が来るまではうちの村に置いておくしかないからといあえず牢屋でも作ろうか」
そのあと、人族の一人一人に奴隷契約をしていく。ここで一つ工夫をした。もう二度とこんなことをしないように奴隷契約と苦しむ条件を別で条件設定した。
奴隷契約は他の人に譲渡することができ、解除することもマテュリスぐらいならできる程度の神秘の力の量で契約をする。
しかし、違反すると苦しむ条件だけはかなり強い力で契約した。これで奴隷じゃなくなったとしても違反すれば苦しむため悪いことが出来なくなる。
「こんなことをしてお前らただで済むと思っているのか!!」
おーおー、自分でやったことは悪いことと認識してないらしい。ドルナーキスが怒り心頭といった感じで怒鳴ってきた。
「こんな田舎の村でもドルナーキス様に統治してもらえるんだぞ!お前らだってもっといい生活できるのにもったいないな。馬鹿共の考えることはわからんな」
配下の傭兵がいろいろ言っているが、結局は自分たちの視点で話していて相手のことを考えていない。
「お前たちには自分の考えを相手に押し付けているだけなんだよ。オレ達はお前らの管理する土地に住みたくないからここに村を作って自由に生活してるんだよ。邪魔されたなら排除するそれだけのことだ」
まだ奴隷契約しかしていないため、言いたいことを言っているけど、条件契約をしたらこんなことも言えなくなるので大目に見てやろう。
「今の契約でお前たちはオレの奴隷になった。オレはこの村の村長だが、奴隷契約もできる。罪状はこの村への侵略、略奪、破壊行為だ。お前たちは奴隷として後ほど奴隷商に売ることにする」
「何をばかなことを!そんな罪状誰も信じやしないぞ。お前は冤罪で裁いた罪で死罪になるだろう」
「そんなことはできないんだよ。お前たちはこれから真実しかしゃべることが出来なくなるんだからな。奴隷契約とは別に条件だけをいくつか強い契約で結ぶ。それでお前たちは今までの罪滅ぼしをするんだな」
そういうと、オレはドルナーキスに手をかざし条件契約を実施する。
「なんだそれは?!そんな奴隷契約方法聞いたことない。ふんっ!早くこの手足を縛っている紐を切ることだな。そうすればそこの娘だけは命を助けてやる」
ティカを見て舌なめずりしている。ティカは嫌がってオレの後ろに隠れてしまった。
「まぁそういうことが出来るからいっているんだよ」
条件としては、
①主人の命令には絶対従う
②人の悪口を言ってはいけない
③嘘をついてはいけない
④人を傷つけてはいけない
⑤1日1回は人助けをする
⑥人に命令をしてはいけない。
⑦自ら命を絶ってはいけない
⑧マテルは生活用の物のみしか使ってはいけない
この条件は一見別に問題なさそうだが、これをほぼ一生やることになると辛いと思う。
愚痴もこぼせない。悪さもできない。悪いことばかりしていた人族にとっては辛いだろう。
「終わったぞ。これからお前たちは悪口を言ったり嘘を付いたら死ぬ苦しみを味わうぞ。後は1日1回は人助けをしないと同じ苦しみを味わうぞ」
「何をばかなことを!お前に・・・ぎっ、ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
ドルキーナスがさっそく悪口を言ったため苦しみ始めた。
「これで分かったか。お前達はこれからは心を入れ替えて生きるんだな。とりあえずみんな同じ条件だから、ドルキーナスが配下だった奴らに悪口や命令を言っても苦しくなるからな」
それから破ってはいけない条件をすべて話し、当分の間閉じ込めておく場所を作りにかかる。
「ティカ、とりあえずここに奴隷を隔離するためお牢屋を作るから食事は与えてくれるかな?」
「わかりました。奴隷といえども食事はちゃんと毎日与えるようにします」
「ありがとう。おい!お前ら。うちの一流料理人が飯を食わせてくれるそうだ!街で食う食事なんか目じゃないぐらいうまいぞ!楽しみにしてろ」
俺は素直に料理がうまいからそのまま伝えたつもりなんだが、ティカが真っ赤になってもじもじしている。
「ユウ様、私が一流料理人だなんて、うふっ」
まぁいいやる気になってくれているようだから結果オーライだ。
「そんな子供の作る飯なんてまずくて食えないんじゃないか?お嬢ちゃんは・・・ぐっぅぅぐはっ」
配下の一人がからかうつもりで言ったようだが、そのあと苦しみ始めた。悪口言っちゃったもんなぁ。
俺はそんな人族を囲うための檻を作るため、ゆっくりと神秘の力を両手に集め始めた。
今年もなるべくアップをするように頑張りますが、気長に読んでいただければと思います。




