第2章 35話 後悔
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
今年1回目UPです。
ガルを退治してから3日、魔物が少なくなりあまり多くの素材を手に入れられなかったが、だんだんと廃墟の中もいつも通りに戻ってきた。
今日は闇族の住処を出発し、モーン村へ戻る事を事前にみんなに伝えてある。
「おはよう。今日は村に帰るけど、必要なものがあったら昼までに買い出ししておいてね」
「わかったにゃ。今日は女性陣だけで行くにゃ」
女性だけで行くなら買い物に時間かかりそうだが・・・
「お昼までで大丈夫?もう少し時間必要じゃない?」
「大丈夫にゃ。ちゃんとお昼までに戻ってくるにゃ」
「そっか、じゃあ馬車に乗って行ってこのバックにいろいろ詰めてきてね。他の人に見られると厄介だからちゃんと馬車の荷台に隠れてから入れてね」
ミミに無限リュックを入れたバックを渡すと、みんなで買い物に出かけて行った。クロが付いて行き、闇族の住処から出ていく時に他の人に見つからないよう様子を見てくるようだ。
本当はクロもミミと買い物に行きたかったのかもな。なのに女性陣だけで行くって聞いてあからさまにしょんぼりしてたな。
男性陣の買い物については、女性陣に必要なものをお願いして買ってきてもらうようにした。
オレ達は出発の準備をする。残った男性陣に指示を出し、当分戻ってこないこの館のテーブルや椅子などに布をかぶせていく。
ここは館としては広いし申し分ないんだけど、出入りが面倒くさいのと、日の光が当たらないから洗濯をしてもなんかすっきりしない感じがする。やっぱり日の光は大切だな。
グングルトの街で貴族に目を付けられたり、ガイや鱗人族のみんなが仲間になったりいろいろあったため、なんだかんだで村に帰るまでに1か月もかかってしまうな。
村のみんなには、クロが行商人のラルさんやドンさんに会ったときに伝言をお願いしていたから大丈夫だろう。
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昼前になり、女性陣が帰ってきた。
みんな満足そうな顔をしているので、自分の目当てのものが買えたのかもしれない。
モーン村には店が無いんだよな。もうそろそろ雑貨屋みたいな店が1つあってもいいかな。
「それじゃ、軽食とったら出発するぞ」
みんな簡単な保存食を口にして腹を軽く満し、闇族の住処を後にした。
廃墟の入り口で馬車を受け取り、商人のところへ行く。
「今回の廃墟探索は終わりだ。今日自分たちの村に向けて出発するよ」
「そっか。それじゃまた当分は来ないってことだな。でも今回は相当儲けさせてもらったから感謝してるよ。他の商人もみな喜んでたよ」
「喜んでもらえたらなよかった。オレも十分資金を調達できたよ。また廃墟に来た時は声をかけるよ」
それから街に入り口を抜けて村に向けて出発する。
街から少し進んだところで気付いたが、何人か後をつけて来ているようだ。だいぶ金を稼いだからそれを目当てにした奴らかもしれない。
神秘の力を展開して相手の位置を常に把握しながら先に進んだが、特に近づいてこないようだ。
「クロ、なんか後ろからついて来ている奴らがいるようなんだけど、村までついてこられたら厄介だ。今夜あたり襲撃してくる可能性があるから警戒しておいてくれ」
「承知しました」
それから休憩を取りながら先に進んだが、ついて来ている相手はあまり近づいてこなかった。
「今日はここらで野営するぞ!みんな準備にかかってくれ」
鱗人族のメンバーもだいぶ慣れてきたらしく、ワグがそれぞれに役割を指示して動いている。
オレも周囲を確認しながら薪でも集めてくるか。
薪を集めながら神秘の力のレーダーで周囲を確認すると、野営場所の周辺に8つの反応がある。
一つは単体でロッコのような魔物の反応、もう2つは小さな小動物の反応、残りの5つは野営場所より少し離れているが人の反応だ。同じ方向に向かっている商人の可能性もあるか?
そのあと食事を作っている間に、各自の部屋と風呂を作った。もう恒例となっているがオレ以外にも土のマテルで作ってほしいと頼んでみたが、
「土マテルは使えても、ユウ様のようにうまく作れるものはいないでしょう。私でもこれが限界です」
そういうとクロはオレと同じように土のマテルを使い小さな小屋を作る。見た目は変わらないが、中に入ると一目瞭然。椅子やテーブルは足が歪み、寝床の台はぼこぼこで寝たら痛そうだ。
この状態でもクロは相当な神秘の力を使ったらしく、肩で息をしていた。
オレはフィギュア作りで相当きめ細かい力の加減をできるようになったから、それがうまく作用して細部まできめ細かく造れるようになったのだと思う。
いつもどおりに食事をして、風呂に入りみんなの満足そうな顔を見てから火の番をはじめた。
今回は事情があるため適当に理由を言って心配させないようにし、俺とクロで朝まで晩をすることにした。
はじめは特に相手に動きがなかったが、日付が変わろぐらいの夜中に相手が動いた。
(クロ、相手が動いた。まだ遠いけどこのまま近づいてくるとみんなおきちゃうし、この小屋とか風呂とか戻す前に見られるのはちょっと問題あるから、こっちから仕掛けるよ)
(それなら私に任せていただけませんか?闇の中でなら私の力を発揮できます)
(わかった。今回は任せるね。相手は5人、ここからまっすぐ言ったところに3人後は左右に少しはなれて1名ずついるよ)
相手の位置を伝えると、クロはニヤッと笑い闇の中に消えていった。消えていったというのは大げさではなく、暗闇に解けて消えてしまうように見えなくなってしまった。
さすが闇族だな。オレも後で闇族のマテルを教えてもらおう。闇ストレージとかもめちゃくちゃ便利だしな。
それから10分ぐらいすると、追っ手の気配がスピードを上げて逃げていく。5人全員逃げているようだが何をしたのだろう。
クロが戻ってきたのでどんなことをしたのか聞いてみた。
「クロ、ご苦労様。さすがだね。みんな一目散に逃げていったよ。どんな手を使ったんだ?」
「たいしたことではありません。暗闇にひそみ近づき相手の耳元で「これ以上前に進めば殺す」と囁いただけですよ」
めちゃくちゃ怖い。ニコニコしながらいうクロが怖い。気配もなく近づき耳元で殺すとか言われたらオレでも逃げ出すな。
「そっか。まぁあの逃げっぷりならもう近づかないだろう。後は朝まで俺が番をするから休んでいて良いよ」
「いや、私もお供致します」
「大丈夫だよ。俺何もしてないから朝までゆっくり番をしてるよ」
「まぁこういう機会がなければユウ様とゆっくりお話もできませんので、ユウ様のいた星のお話でもお聞かせください」
それから、クロといろいろな話をしながら周囲の警戒をして朝を迎えた。クロは俺のいた世界に興味を持っていたらしく、車や飛行機のことを説明するとなんとなくわかったようで驚いていた。
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朝になり小屋と風呂を元の土の状態に戻してから食事を取り出発した。
それからの道のりはのどかなものだった。魔物も出てこなかったため、馬車の操縦を鱗人族の面々に教えたり、休憩時間にケンとガイのコンビとオレ一人で模擬戦をしたりゆっくりと楽しみながら村へと向かった。
後村までもう少しというところで神秘の力のレーダーに変な情報が引っかかった。
村の中に村人がいないのだ。村人の神秘の力はみんな知っているためレーダーの範囲に入れば誰がどこにいるかある程度わかる。しかし今村の中には知らない反応が23ほどあるだけだ。
嫌な予感がする。
「クロ、なんかおかしい。村の中に住人の気配がない。その代わりに知らない反応が20以上ある」
「・・・それはもしや」
「あまり考えたくないけど何かあったと考える方がいい。俺は先に行くから馬車を頼む。ケン、ガイ!村で何かあったらしい。先に行くからお前達二人も全速力で村まで来てくれ」
「話は聞こえていたわ。わかった、私達も村に急ぐわね。行くわよガイ!」
ケンとガイはケンタウロスとしての本領発揮とばかりにスピードを上げて先行する。しかし、俺が全速力で進んでいくとすぐに追いつきそのまま追い抜いたため、ケンとガイは驚きの表情を浮かべていた。
オレは胸騒ぎがする中、村まで全速力で移動し、村に通じる森のトンネルの入り口でスピードを緩める。神秘の力のレーダーでは村の周囲には人はいない。中心のオレの家の中にほぼ集まっているようだ。
森を進み門が見える位置まで来て愕然とした。
門が形をとどめていない。それどころか焼き焦げている。俺が作った周囲の壁もところどころ崩れており、弓矢が所々に刺さっている。
門から村の中を見ると3名の人族の傭兵がモーンの小屋のあたりで何かしている。
くそっ!あれはグングルトの街にいた人族貴族配下の傭兵じゃないか!なんで村にいるんだよ。
モーンの小屋の中に入ったのを見てから、音をたてないように近づき中の様子を見る。
小屋の横にある井戸は壊されてしまっている。中にあったマテル備蓄の石も奪われてしまったようだ。
モーンの小屋に近づきその先にある畑を見ると、畑が荒らされ人族が乗ってきたであろう馬がそこらじゅうで野菜を食べ、畑の土壌を荒らしている。
オレはまずその馬をおとなしくさせるため、25匹いた馬の周りに霧を発生させ、その中で雷を起こして電気ショックですべての馬を気絶させた。
それから小屋の中をのぞく。
「ここのモーンは毛並みがいいな。いい肉になりそうだな。後でみんなで食うか」
「モーーーーーンモンモンモン!!」
(村のみんなに何をした!俺達はお前らなんかに食われないぞ!)
モーンが必死に声を出しているが、傭兵はただ鳴いているだけにしか思っていない。
オレは後ろから一気に近づき2人を手刀で気絶させ、残りの1人の手を後ろに回し、声を上げられないように口を押えて耳元で質問をした。
「死にたくなかったらオレの質問に答えろ。「はい」の場合は縦に1回首を振れ、「いいえ」の場合は横に1回首を振れ。わかったか?」
傭兵は縦に首を振る。
「お前はグングルトの街の人族貴族の配下だな?」
傭兵は縦に首を振る。
「この村へは、奇襲をかけたのか?」
傭兵は躊躇っているようだ。
「回答を拒否したり、嘘を付くと苦しむことになるぞ」
傭兵は慌てて首を縦に振る。
「村の住人はどうした?殺したのか?」
傭兵は横に首を振る。
「どこかに捕えているのか?」
傭兵は首を横に振る。
ん?捕えてなくて殺してもいないならどこかに逃げたのか?
「では、お前の主人のドルナーキスの命令で動いているのだな?」
傭兵は縦に首を振る。
とりあえずモーンは無事で、村の住人も最悪の事態にはなっていないようだから安心した。
質問をし終えたため、この傭兵にも気を失ってもらい、3人まとめて外に出し紐で縛っておく。
すると門のところにケンとガイが到着したのが見えたので、ジェスチャーで静かにこちらに向かうように指示を出す。
(ご主人様これは・・・どういうことなの?)
(グングルトの人族貴族が村を襲ったらしい)
(なんてことを・・・人族貴族はあの街でも目に余る行動で忌み嫌われていました)
ガイが嫌そうな表情で傭兵を見下す。
(それで、村のみんなは無事なの?)
(とりあえず無事だが、どこに行ったのかこの周辺にはいないようだ・・・ちょっと待てよ)
オレはこの村の地下にある土族の街のことを思い出し地表だけでなく地下にまで神秘の力を展開して気配を探す。
すると地下のズズ達妖魔が居た場所に村のみんなの気配が集まっている。よかった、少し弱っている気配もあるがみんな無事なようだ。
一度村の入り口まで戻りクロ達が追いつくのを待つ。
一人で片づけてしまってもよかったが、村人の無事が分かったのでクロたちが来てからみんなできっちりと人族貴族に責任を取ってもらうことにした。
30分ぐらいして馬車が猛スピードで近づいてくる。あれじゃ馬車を修理しなくちゃいけないな。それほど急いで向かってきてくれたらしい。
「遅くなりました。それで状況はどうですか?」
「とりあえず、村人はみんな地下に逃げて無事みたい。モーンもみんな無事だから大丈夫だよ。グングルトの人族貴族の仕業みたいだ」
人族貴族と聞くとみんな顔をしかめている。ワグたちは拳を強く握りしめ何かに耐えているようだ。
「最悪の事態は回避できたようですね。しかしいつの間に・・・もしかしたら私たちがエーテハイムの街で廃墟探索している間に村に向かったのかもしれませんね」
「そういえば、村で買い物してた時に店の主人が数日前グングルトから来た人たちがいろいろ買い占めて行ってしまったから品揃えがわるいって言ってました。
ティカの話からするとオレ達の村に向かうために旅の補給として人族の配下がいろいろと買い占めていったようだ。
グングルトの村にいたときに人族にかかわったのがまずかった。あの時つぶしておいた方がよかったか?いや、ドルキーナスとは会っていないし会いたくもなかったからどうしようもなかったか。
みんな人族貴族にはいい印象を持たない。オレも同じだ。この世界では一番クズが多いだろう。
「今、人族貴族はオレの家の中に集まっているみたい。まだ中は確認してないから一度静かに近づき中を確認して、それから一気に攻め込もうと思う」
「わかりました。今回は私たち全員怒りで手加減できない可能性があります。もし殺めてしまったときは・・・」
「いい。オレもどうなるかわからない。今までオレに気を使ってちゃんと手加減してくれていたね。出来ればちゃんと罪を償わせることをしたい。それだけ頭の隅に置いておいてくれれば結果については何も言わないよ」
この世界では死が身近だ。街中で喧嘩を吹っ掛けられ切り捨てられるとか、魔物に襲われて死んでしまうとかそういうことはしょっちゅう起こる。
だからと言って人を殺めることがいいわけではなく、犯罪者として奴隷にされることが多い。オレも今までにゴロツキを懲らしめたことはあるが殺したことはなかった。
それを知ってかみんなちゃんと殺さずに命に別状ない程度に懲らしめていてくれている。みんなの腕ならその加減が可能なのだ。
「それじゃ、クロ、中の様子を確認して来てくれるか?」
「承知しました」
クロは気配を極力消して村の中に進んでいった。




