第2章 32話 新技
今日の廃墟探索は2チームに分けることにした。
一つはオレ、クロ、ミミ、ティカの4人で深い階層の探索
もう一つはケン、ガイ、ワグ、ニュイ、ムータの5人で浅い階層の探索
残りのラル、エク、ピリュは食事の用意と留守番をしてもらうこととした。
2つに分けた狙いは、深い階層を探索し高価な素材集めをするために、力の弱いメンバーは連れていけない。しかし、探索をしたいという意見もあったため、ケンとガイ、それにワグがいれば若手二人の面倒を見ながらでも低い階層なら探索が出来そうなので分けた。
だいたい8階~10階ぐらいのところを探索できるようになれば十分だろう。
オレ達はさらに深くまで移動する予定だ。
ティカの竜の涙があるため、深い階層に行ってもすぐに戻ってこれるし、次の日もまたそこから探索を再開できる。15階以上となれば人もいないため見つかることもないだろう。
「それでは今日から2チームで探索をする。ケン、みんなのことを頼むぞ。怪我をしないように安全第一で探索するんだ。この無限リュックを渡しておくから、いろいろ素材を集めたらこれに入れておくんだ」
「わかったわ。私が手とり足とりこの子たちに教えるわね。心配しないで、立派な大人にして見せるわ」
「お前の言い方だと不安を覚えるが・・・ガイもワグもいるから大丈夫だろう」
「私たちにお任せください」
ワグの言葉に安心を覚えた。ケンは実際にはすごくしっかりしてて頼りがいがあるんだが、言動が怪しすぎる。
「ニュイ、それにムータ、みんな戦闘のプロだ。二人は無理しないで一つずつゆっくり覚えていくんだ。チームワークを大切にするんだぞ」
「わかりました。頑張ります」
それからガイ、ワグ、ニュイ、ムータに武器を渡し暗視ゴーグルのマテルをかけて移動を開始した。
渡した武器は俺が以前に魔王城で拾った武器だが、みんな「こんないいものもらってもいいのですか?」と驚いていた。実は拾い物で、無限リュックの中にまだまだあるから問題ないとは言わない。
途中、低階層で出てきた敵は、ワグと若手2人に任せてみたが、ワグが一つずつ丁寧に教えて、後ろでケンとガイが危なそうなときに弓でフォローを入れている。うん。丁度いいバランスのようだ。
若手二人はまだ剣の扱いに慣れていないらしくふらついている。特にニュイは女の子ということもあって腕力が足りないようだ。
「ニュイ、剣の扱いが難しそうだから槍に変えてみる?ムータが剣で前衛、少し後ろにニュイが槍で攻撃するっていうのも一つの攻撃体系だから、試してみよう」
ニュイに槍を渡し、また魔物との戦闘をしてみる。
ここらの敵はバックンやワームのため、まだ怪我をするほどではないが、少しここらで慣れてから進んだ方がいいな。
そんなことを考えていると、奥から人が叫びながら逃げてくる。
「お前たちも逃げろ!!魔物の大群が来るぞ!!」
神秘の力を展開してみる。するとまだだいぶ先だが廃墟の下の階から魔物が50匹前後向かってくるのが分かった。
でも内容としてはマッドタイガーやミストビースニーキングバッドってところだろう。いくつか知らない気配もあるが強い気配ではない。
逃げてきた人がそのまま上の階に向けて走って行ってしまった。
「みんな、これからこっちに魔物の群れが来る。50匹前後だが、さほど強い敵ではないと思う。クロ、ミミ、俺と一緒に前線で敵対し順次殲滅、その後ろでケンとガイで抜けてきた魔物を始末しろ」
「承知いたしました」
「ティカは後方でマテルを使って支援、ワグは若手二人を守りながら抜けてきた魔物を倒してくれ。戦い方を説明して見て学ばせるんだ」
「了解いたしました」
それから敵が来る方向にオレとクロとミミで10m間隔ぐらいで並び、敵を待つ。5分ほどで敵が向ってくるのが目に映った。
オレはクロとミミに目で合図し、一気に走り出した。さすがにいきなりトップスピードで移動したので他の二人がついてこれなかったが、お構いなしに敵の中に突っ込み剣を振るう。
今回は剣に神秘と力を纏わせたものを片手に持ち、もう片方の手には神秘の力で手刀を作り二刀流の様にして敵を切り刻んでいく。
普通はマッドタイガーがこの階に出ることはないと思うのだが、何か原因でもあるのだろうか?そんなことを考えながら、マッドタイガーの首をはね、その勢いで回転しながらバックンやホールスネークを切り刻む。
やっとクロとミミが追いつき1匹ずつ確実に仕留めていく。やはりこの二人は無駄が少ない。二人でお互いの背中をカバーしながら戦っている。最近になってこういう戦い方に変わってきた気がする。俺って放置プレイ?
後ろからティカがマテルを放ちオレの周りの敵を少しずつ倒してくれている。
それでも数が多いため間から抜けてしまっているが、ケン・ガイコンビで矢を放ち敵を倒していく。
すると、50匹程度だと思っていたが、後からまた同じぐらい魔物が来ることが神秘の力によってわかった。
「クロ、ミミまだこの後にも第2波がくるみたいだ。ちょっと試してみたいマテルがあるから後ろに下がってもらっていい?」
「試してみたいマテル・・・わかりました。ミミ、このままこの魔物の群れを倒したら一度下がるぞ」
「わかったにゃ」
第1波はもうほとんどいないため、片づけてから一度後ろに下がる。
「あら、もう終わったのかしら?3人がほとんど倒しちゃうから私たちの獲物がはほとんどいなかったわ」
「いや、まだ来る。ただ、ちょっと試したいことがあったからいったん下がったんだよ」
他のメンバーも終わったと思って集まってきたが、オレの話を聞いて、何をやりだすのか興味津々のようだ。
オレのイメージしたマテルは、爆発の伴わない攻撃だ。数が多く、廃墟などの狭いところでは大きな爆発を伴う攻撃は自分たちも危険な状況になってしまう。
そのため爆発が小さい、もしくは衝撃が小さい全体攻撃魔法のようなマテルが出来ないかと考えていた。
案① クラスター爆弾
土のマテルで石の塊を作り一気に敵に向けて放つ。そして敵の前で小さく分裂し広範囲に散らばることで、爆発はしないが銃弾の様に勢いをつけた石が当たるので、魔物もひとたまりもないだろう。
案② 針のむしろ
水と風のマテルで氷を作り、尖らせた氷を地面から大量に発生させ串刺し状態にする。見た目はグロいが、威力はありそうだ。
案③ 薙ぎ払い
光のマテルを応用したレーザーで敵を一瞬で切り刻む。某風が吹く谷であった殿下の「薙ぎ払え!!」を実際にできる。でも爆発はせず敵が切り刻まれるだけ。
個人的には3番の「薙ぎ払え!!」をやりたいが、数が多いため仕留め切れないこともあるため、1番を実施してみることとする
敵が通路を通り、オレ達がいる広場に入ってきた。
みんながオレの後ろに避難したことを確認し、オレは神秘の力をいつもより多く準備し、自分の周りにある石を宙に浮かせ一つの塊にする。。
分裂した後は、固いどんぐりのような形になるよう成形し回転するようにした。
パッと見は大きな岩の塊が浮かんでいるように見える。
後ろにいるメンバーが不思議そうに上を見上げている。どのようなことが起こるか知らないので仕方ない。
敵が30mぐらいのところに来た時、オレは新マテルを発動した。
「砕け散れ!!」
掛け声と一緒に上にあげていた片手を降ろし、敵に向けて岩の塊を飛ばす。
敵の少し前で岩が分裂し、一斉に石の弾丸が魔物に降り注ぐ。
一瞬の出来事だった。魔物に石の弾丸が当り、肉をえぐり叫び声をあげながら絶命していく。いつの間にか静かになり動くものがいなくなった。
「あれは・・・なんですか」
ティカが驚きからやっと正気に戻り、言葉を絞り出す。
「あれは小さな石を高速でぶつけることで爆発しないで敵を一掃できないかと思って考えてみたんだ。一応うまくいったみたいだね」
「ユウ様、我々以外の前でこれを使わないでください。世界中から狙われかねません」
そうだよな。これだけ威力があれば、使いたい奴も出てくるだろうし、これを使って戦争を起こそうとする輩もいるかもしれない。
「わかってる。一応いざというときのために考えたから、こういうイレギュラーでもない限り使わないよ」
「あれじゃ、人に向けて放ったらひとたまりもないわね。みんなミンチになっちゃうわ」
ケンもさすがに引き気味だ。
「すごい!すごいです。ユウ様はマテュリス様だったんですね。私たちの奴隷解放や治療をしてくれたこともすごいですが、これはもう言い表せないぐらいすごいです」
ニュイが興奮しながらピョンピョン跳ねている。
「こんなマテルは見たことないです。僕にも使えるようになるでしょうか?」
ムータはマテルを使ったことないよな。後で教えてやるか。
「使えるかどうかは練習次第だな。後で神秘の力を使うコツを教えてあげるから練習してみな」
「わっわたしも!私もお願いします!」
ニュイも教えてほしいと言っていた。まぁ村の子供たちにも教えてやったし、後で鱗人族のみんなに教えてあげよう。
それからは使えそうなものや売れそうなものを集めて周り、それぞれのチームに分かれて行動した。
オレ達のチームはどんどん深い層を目指して移動する。
なぜ魔物が群れとなって移動してきたのか疑問に思っていたので、捜索も兼ねて魔物の気配を探りながら移動している。
「クロ、この廃墟なんだけど、何階ぐらいあると思う?」
「作ってからだいぶ経ちますので、50階ぐらいはあるのではないでしょうか?」
50階か。深くなるごとに強い魔物が出てくるからどこまでいけるかで今の自分の力がわかるな。
「魔物が大量に出てきたのは何かから逃げてきたようにも思うんだけどどう思う?」
「その可能性はあると思います」
「私もそう思うにゃ。魔物の種類もバラバラだったにゃ。だから何かから逃げてきたと思うにゃ」
そうだな。そういえばいろんな周囲の魔物がいた。
「ユウ様、魔物は狩りや住んでいる場所の移動をするだけなら単一の種族となります」
そっか、今回みたいないろいろな種類の魔物が一緒に逃げてきたとしたら、この前の魔物の襲撃の時みたいに操っているものが後ろにいるときか、何者からか逃げているときなのだろう。
「周辺の気配を探っているけど今のところ魔物がいないな。今何階だっけ?」
「地下18階です」
18階か。下の階に少し魔物の反応がある。今はまだゆっくり移動できるから話をしておくか。
通路を歩きながらオレは自分の素性を話す決意をしゆっくりと語り始めた。




