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知らない世界で街づくり  作者: 星野 シラセ
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第2章 31話 決意

昨晩は疲れていたせいもあり風呂を上がったらすぐに寝てしまった。そのせいで今日はかなり朝早く起きてしまった。


といっても、廃墟の中だからどのぐらいなのかわからないが、まだ誰も起きてこないということは日が出ていない時間であるのは確かだ。


「・・・?ユウ様もうお目覚めですか?すぐ食事の準備をします」


「いいよ、クロも疲れているだろうからもう少しゆっくり寝ていていいよ。俺は少し街の様子を見てくるよ。朝ご飯までには戻るよ。


服を着替え、闇族の住処より外に出る。まだ外は暗く星も見えているため、朝4時ごろだろうか。


廃墟から街に移動すると少しずつ人通りがあった。たぶん朝早くからやっているパン屋や仕入れに出かける商人たちだろう。


ふらふら歩いていると、道の端で一人うずくまる子供がいた。


「どうしたんだ?腹でも痛いのか?」


「お腹が減ったのと、風邪ひいてて体調が悪いから立無いの」


小学生低学年ぐらいの人族の男の子だ。顔色もあまりよくない。今は暑い時期だから外にいても問題ないがなんでこんなところにいるのだろう。


「おうちに帰らないのかい?」


「おうちはないの。奴隷だからご主人様に納屋で寝るように言われてるんだけど、納屋で寝るとモーンに蹴られるから怖いの」


モーンに蹴られる?どういうことだろうか。そんなに気の荒い生き物でもないけど、何かして怒らせたのだろうか?


「モーンに蹴られるのは嫌だね。でもモーンは悪いことしなければやさしい生き物だぞ。こんなところでうずくまってたら体にも悪い。俺が一緒に行ってやるから案内してくれないか?」


少年は顔をあげてオレのことを見上げるが、すぐに下を向いてしまった。


「お兄ちゃんはいい人っぽいけど、まだ信用できないから案内はできないよ。ご主人様に見つかったら怒られちゃうし・・・」


初対面の人ににいきなり納屋に連れて行けと言っても警戒するよな。


「じゃあ、まずはちょっとそっちの道についてきてくれるか?金を持ってないお前にたかろうとも思わない。食べ物をやるが、ここではちょっと人目につくからな」


食べ物という言葉に反応して、少年は体調が悪そうだが立ち上がり後をついてきた。


「それじゃこれでも食べな」


俺は無限リュックを入れたカバンからパンとハムを出して、パンの間にハムを挟み少年に渡す。


少年は奪い取るようにパンを取り、大きな口をあけ食べ始めた。


喉を詰まらせそうだな。カバンから水を入れた容器を取り出し少年に渡す。


パンを食べ終わってから、少しの間動かないように言い聞かせ、オレは体調が悪い原因を神秘の力を使って探ってみる。


ん?体にあざが多いようだ。モーンに蹴られたのか、主人にやられたのかはわからないが、治しておく。


原因は何か変なものを食べたことによる食中毒のようだ。空腹に耐えられず落ちているものでも食べたのだろう。神秘の力で体の中の毒素を浄化していく。おまけにオレの神秘の力を少し注ぎ込み活力を与えてみる。


「あれ?お腹が痛くない。それに元気が出て気がする」


うん、うまくいったようだ。


「お前変なもの食っただろ?体の中で毒が回って体調が悪くなっていたぞ。治したからもう大丈夫だ。礼は要らないから、モーンたちに合わせてくれないか」


「うん。まだご主人様は起きてないから、今ならいいよ。こっち来て」


少年についていくと、家と家の間を抜けたところにモーンを飼っている小屋があった。


中に入るとモーンがこちらを向き、少年を見るなり威嚇してきた。


「おいおいちょっとまて、お前たちが怒っている原因はなんだ?この少年に何かされたのか?」


「モー!モーン。モーモーモーン」


モーン達が一斉に話し始めたので聞き取れるまでに時間がかかったが、要は少年がモーンの食事の雑穀などを食べてしまうことや、子供がお乳を飲んでいるときに少年も一緒に飲むためいやなのだそうだ。


「わかったわかった。ちゃんと伝えるから蹴らないでやってくれ。こいつは奴隷で主人にろくに飯も食わせてもらえず、子供だから親恋しくなったのだろう。ちゃんと言い聞かせるから大目に見てやってくれ」


「モーン・・・モーンモーン」


やっとわかってもらえたようだ。モーンは結構物わかりのいい魔物だから話をすればちゃんとわかってくれるのだ。


「少年、お前モーンの餌を食ったり子供がお乳を飲んでるところに混ざって一緒に飲んだりしただろ?モーンはそれが嫌で怒っているみたいだぞ。今事情を話したからもう蹴ったりはしないよ。でも嫌がることはやっちゃだめだぞ」


「おにいちゃん、モーンの言葉が分かるの?」


え?モーンの言葉が分かる?そういえば今普通に話をしていたが、前はこんなに会話のように話はできなかったような・・・


「モーン、ここにこの少年が一緒に住んでもいいか?腹が減ったら食事を少しもらうことはあるかもしれない。でも子供だと思って一緒に生活を共にしてもらえないか?」


よく耳を澄ませてモーンの言葉を聞いてみる


「みんな、オレは子供たちがいじめられなければ一緒に住んでもいいと思うがどうだ?」


「いいわよ」


リーダー格のモーンがみんなに子供をいじめなければ一緒に住んでもいいか?と聞いてくれた。ちゃんとみんな納得してくれたようだ。


ってそんな納得している場合じゃない。俺にはモーンの言葉がはっきりとわかってしまう。人と話すときと同じく口の動きは違うが、オレの理解できる内容に翻訳されているようだ。


なんでいきなりわかるようになったのかな?前は何となく考えていることが理解できるというぐらいだったんだけど、今は話していることがはっきりとわかる。


「なんでか知らないけど、モーンが言っていることがわかる」


少年に向かって言うと、少年は尊敬のまなざしでオレを見つめてくる。


「すげーなにいちゃん。他の種族昔の言葉を話す人は見たことあるけど、犬族以外でモーンの気持ちがわかる人何て初めて見たよ。すげーな」


やっぱり犬族以外ではいないらしい。イレギュラーなんだろうな。・・・いや待てよ。これってこの世界に来た時に神様からもらった能力の一部かな?


(神様!聞こえますか?ユウです。ちょっと聞きたいことあるんですが・・・聞こえてますか?)


(なんじゃ、朝早くから。わしはいつでもお前の声が聞こえているぞ)


(神様、なんか最近モーンの言葉が分かるようになったんですが、なんかそんな能力と買ってくれました?)


(モーン?あぁあの面白い魔物じゃな。地球風にいうとキリンがらの牛だな。言葉がわかる・・・なにかしたかの?)


神様も何もしていないのか?じゃあ、俺が理解できる能力を持ったのか?


(あ!!そういえば、このまえ連絡したときにちょちょっと翻訳能力のバージョンアップをしたのぉ)


バージョンアップってなにそれ。ここはパソコンの中のゲームの世界か!まぁそんな考えを持っていた時期が前にありました。今はもう宇宙のどこかにあるほかの世界だと認識したよ。


(そんな簡単にバージョンアップできるんですか?まぁ便利ではありますがひとこと言ってほしかったですよ。驚いちゃいました)


(すまんのぉあの時は急いでいたからのぉ。こちらの世界で長丁場になるゆえ、竜の涙ぐらい渡してやろうと思っておりバージョンアップの話は伝えそびれておった。)


ん?なんか引っかかる。長丁場の話ってなんかあったか?


(前回お話ししたとき、長丁場の話はありましたか?竜の涙の話しかなかったような気がしますが)


(ん?はじめに言ったであろう、次元のはざまをふさぐのはざっと500年ぐらいはかかると)


・・・はっ?何言ってるんだこの爺さん。そんなの地球に戻ることはできないじゃないか。なんか話が違うぞ。


(この世界に来るときにそんなこと言ってなかったじゃないですか)


(いやわしは500年ぐらいはかかるといったはずじゃぞ。伝わってなかったなら申し訳ない。事実、どんなに頑張ってもあと500年はかかるのぉ。)


一瞬頭の中が真っ白になった。もう地球に戻れない。親にも仲間にも実家のペットにも会えない・・・ショックを受けぼうっとしていたが、我に返りよく考えてみた。


オレは地球に何か未練があるか?親やペットに会えないのはさびしい。しかし恋人がいたわけでもなく、仕事に追われ会社とアパートを行き来する生活、仕事は頑張っていたがあまり大きな会社ではなかったため給料UPもあまり見込めない。


未練はないのか?なにになぜショックを受けた?やりかけのゲーム?読みかけの小説?自問自答してみてもそこまで未練があるものが無いことに気が付いた。


ただ地球に、日本に帰ることができないということにショックを受けただけで特に未練がない、この事実に気づいたら意外と気持ちがすっきりした。


(ユウ殿だいじょうぶかのぉ。だいぶショックを受けているようだが・・・)


(大丈夫です。よくよく考えたら特に未練があるものがなかったです。この世界で良い仲間に恵まれましたし、今は村を作っているので途中で投げ出せないですよ。こっちで頑張ってみます)


(そうかそうか、納得してもらえてわしも安心したわい。一ついいことを教えておこう。ユウ殿はこの星ではかなりの強さになったと思う。それに伴い寿命も延びている1000年は生きられるだろう。よって、500年後地球に帰ることもできる。このままこの世界に残ることもできる。どちらでも選べるぞ。ゆっくり考えることだ)


(わかりました。とりあえず500年はこの世界にいることは確定していますので、まずは今をがんばって生きます)


(うむ。それではまた何かあったらわしを呼ぶが良い)


ずいぶん会話をしていたようだが、現実世界では一瞬の出来事だったようだ。


「にいちゃん、大丈夫か?いきなりぼうっとしたからどうしたかと思ったよ」


「ごめんごめん。なんでもない考え事をしていただけだよ。モーンとは話をつけた。ちゃんとモーンに話しかけて相手の気持ちを考えて行動するんだぞ。それじゃな」


「ありがと!パンもうまかったし、体調もよくなったよ。本当にありがとね」


少年に別れを告げて、闇族の住処へと戻った。周囲は明るくなり、日が出てきたので丁度朝飯を食べるころだ。


「ただいま。ごめん遅くなった」


「ん?お帰りなさいませ。丁度みな今揃ったところですが・・・何かありましたか?何か決意に満ちたような表情をしていらっしゃいます」


「あぁ、ちょっとしたことがあってね。自分の身の振り方が決まったとでもいうかな。あとモーンと会話ができるようになった」


「それはまたすごい能力をお持ちになりましたね。ユウ様の身の振り方がどうなろうとも、私達は付いていきます。安心して自分の道を進んでください」


クロはやっぱり高性能執事だな。主人のちょっとした変化に気付き、そして当たり障りのない範囲で会話をしてくる。


「それではみんな、今日は2つのチームに分かれて探索をすることにしたいと思う。いっぱい食べて力をつけよう」


食事をしながら考える。自分の周りには地球とは違い、従者がいる、村の住人がいる、俺を頼りにしてくれる人がいる。それだけでも、オレがここに頑張ろうと思う理由がある。


これから辛いことも嬉しいこともいっぱいあるだろうけど、この世界で頑張ろう。


新たに決意をして、食事を口に運んだ。

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