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知らない世界で街づくり  作者: 星野 シラセ
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第2章 29話 不安

ユウとティカの仲が進展するか?!

休憩を終えて出発をし、特に問題なく順調にすすむ。その後何回か休憩を取りながら進み、日が傾きかけたころ今日の寝床を決めて馬車を停める。


「今日はここで野営しよう。じゃあ、ミミとティカ、それにラルとニュイは食事の準備ね」


鱗人族の女性と中学生ぐらいの女の子に指示を出す。


「わっわかりました」


ここに来るまでの道中、みんなに名前を聞いたところ、


大人の男・・・ワグ

大人の女・・・ラル

中学生の女の子・・・ニュイ

中学生の男の子・・・ムータ

目の見えない女の子・・・エク

口の利けない女の子・・・ピリュ


というらしい。


名前を変えようかとも思ったが、面倒くさいことと、本人達もどちらでもいいということだったのでそのままにした。前の主人につけられた人もいたが、名前自体は気に入っているから良いらしい。


「クロ、焚き火の準備と寝る場所と例の恒例行事の準備をお願い。ワグとムータはケンとガイについていって薪拾いをしてきて。エクとピリュは俺と一緒に馬車の方で話をしようか」


「承知しました」


「あれね!久しぶりだから楽しみだわ。私とガイ用のもお願いね」


この言葉にクロ、ミミ、ティカ、ケンは俺のやろうとしていることを察したようだ。


「ごっご主人様!その子供に相手は難しいと思いますのでわっ私がお相手します」


ラルが子供をかばうように前に出てきた。何か勘違いをしているようだ。まぁ人払いをしてから話をしたいって呼び出す感じになっちゃったし、勘違いされても仕方ないな。


「ラル!ユウ様は理由があってこういう配置にしております。変な勘違いをしているならやめなさい。ユウ様に失礼ですよ。貴方は私の手伝いをしていればいいのです」


ティカがラルを一喝し連れて行った。


「それじゃみんな準備をお願いね」


小さな女の子の手をとり、馬車の荷台に向かう。二人とも馬車の荷台に入ってから、ゆっくりと話し始める。


「二人の体の悪いところを今から治すから、動かないでね」


一人は目が見えない。まずはこの子を治そう。


神秘の力を手からだし、まずは治癒をしてみる。神秘の力を伝って目の状態が伝えられてきたが、大きな外傷はないようだ。目自体は問題ない。


次に目から入った光を集める水晶体、そしてその光を脳に伝える神経系を確認していく。人の構造なんてほとんど知らないが、カメラの映像が脳に流れていくようなものだから、その伝達路の神経がおかしいのではないかと考えていた。


案の定、神経の一部が途中で切れてしまっている。これは先天性なのだろうか?そこまではわからないが、これなら俺の力で治せそうだ。


神秘の力を強めに込めて、両目の神経をそれぞれ修復していく。1分ぐらいで問題ないレベルに修復できた。


「終わったよ。ゆっくりと目を開けてみて」


「私は目を開けても何も見えないので前の主人から目線が怖いからずっと閉じているように命令され、破ったときには苦しみが与えられるように契約されており、今でもその契約は継続しております。命令であれば開きますが・・・」


そっか、ずっと目を閉じていたのはそういう理由があったのね。


「ごめん、そこまでは気付かなかった。ちょっと待ってね」


契約の指輪を使用し、ついでに奴隷解放もしてしまう。今回はそんなに力をこめないでも解放できた。


「そんなっ!奴隷解放を?!私はもう用済みなのですか?なんでもします。どうか捨てないでください」


「違う違う!これからみんな解放するんだよ。そして奴隷ではなくてちゃんと一人の人間として村に住んで欲しいんだ。解放したからもう目を開けても大丈夫だよ。ゆっくり開けてごらん」


エクはゆっくりと目を開ける。馬車の荷台に来たのは光がいい具合に遮断されており、ずっと光を見ていなかった目に優しそうだったからなのだが、それがよかったようだ。


「あ・・・ああっ・・・目が見えます・・・。私の・・・目が・・・」


そのままエクは泣き出してしまった。この声を聞いてラルがこちらに来ようとしたが、今度はミミが引き止めたようだ。


「よかった。ちゃんと見えるようになったね。これでいろいろなものを見ることができ、生活もしやすくなる。村でも一緒に頑張ってくれるかい?」


「はいっ・・・はい!私・・・頑張ります」


うん。これでまずは一人解決。次は声が出ない子だな。声帯が痛んでいるのだろうか?それとも契約の条件に変な条件が入ってしまっているのだろうか?


「じゃ、次はピリュだ。これから声が出るように治療するから動かないでね」


ピリュはエクの事を見て驚いていたが、自分も治るかもしれないという期待の目で俺を見てすごい勢いでうなづいた。


まずは奴隷解放をしてみる。指輪に神秘の力を込めて奴隷解放を行う。光を放つ指輪を見てエクが眩しいと顔を隠していたが仕方ない。


「奴隷解放したんだけど、声でないかな?」


「ぁ・・・ぁ・・・」


声はほ出ておらず、息が抜ける音だけがする。ピリュは首を振る。


「そっか、じゃあ次の方法で試すからまたじっとしててね」


うなづいたピリュを見てから神秘の力を解放し声帯の状態を確認する。あれ?声帯ってどんなのだ?わからん。でも声帯らしきものがない気がする。


いったん自分の体で声帯を確認したが、やはりピリュには声帯にヒダがないようだ。これは先天性の病気なのかな?これじゃ声を出すことができないはずだ。


一応治癒をしてみたが、もともとない物を治癒することはできない。やはり効果はないようだ。うーんどうしたものか。


物は試しで、自分の声帯と同じようなヒダが作れないか試してみる。土のマテルで培ったフィギュアを作るときのように繊細な作業でのどの周りの細胞を活性化させ皮膚を伸ばし声帯のヒダの代わりとなるように作り変える。


とりあえず同じような状態にできた。肺からの息がとおり、ヒダが振動することで声を出すことができるため、同じように作ってもうまく振動しなければ声は出せないのだ。


「とりあえず治したけど、声をちゃんと出せるようになるには練習が必要かも。ちょっと声出せるか試してみて」


「うぁ~、くぁ~」


お!声は出てる!声の出し方がわからないから大きな声でうなってるだけになっちゃってるな。


「よっし!声は出たから後は声を出す練習を繰り返せば、自分の思うように声を出せるようになると思う。だめな場合はまた治療するよ」


「あぁーがぁー」


たぶんありがとうって言いたいのだろう。声がでかいのは仕方ないな。興奮してるのと声を出しなれていないので加減ができないのであろう。


二人を連れて馬車の外に出るとラルが心配そうな顔をしてこちらを見ていた。


「あのね!ご主人様に目を治してもらったの。まだ慣れていないから明るくて目を開けられないけど良く見えるようになったの!」


「あぁーのぉー」


二人が興奮してラルとニュイに話している。


「それいにねそれにね!ピリュの声も出せるように治してくれたの!練習すればちゃんとお話できるようになるって!」


「のぉー、るぉー」


飛び跳ねながら二人は喜んでいる。


「信じられない。奴隷商もいろいろ手を尽くしたけどどうしようもないってあきらめていたのです」


そりゃそうだろ。これを治せるのは相当神秘の力を使いこなせなきゃできないだろう。マテュリスでもできるかどうかわからん。


「それでねそれでね!二人とも奴隷解放してもらえたの!村で一緒に頑張ろうって!私頑張る!」


「るー!よー!」


すごいはしゃぎようだ。しかし奴隷解放の言葉を聴いて他の4人が驚きの顔をこちらに見せる


「あぁー言うのが遅れたけど、他の4人も順番に奴隷解放しちゃうから並んで。奴隷のまま村に連れて行きたくないからさっさとやっちゃうよ」


4人はすぐさま列を作りおとなしく並んだ。


指輪に力を込めて一人ずつ解放をしていく。


「ご主人様は何か意図があって私達を解放するのでしょうか?」


ワグが質問してきた。


「オレは村を作ってるんだけど、その村の住人は半分は元奴隷の人たちだ。俺が奴隷解放をして村に住んでもらってる。オレは種族とか貴族とかそういうのが嫌いだ。みんな同じ人として平等に、対等に接したい。だから村の住人になってもらうみんなには奴隷ではなくて一人の人としてきてもらいたいんだ」


6人は真剣に話しを聞いている。


「村では家も用意する。後は自分達で考え、村を発展させるのを手伝ってもらいたい。もし村を抜けて他の街に行きたいのならそれはそれでいい。本人の意思の自由だ。でもみんながいたいと思う村づくりをしていくつもりだ。オレに力を貸してもいらいたい。一緒に村を作ってくれないか?」


少しの間が空き、ワグが涙を流しながら語り始めた。


「私達、鱗人族は昔から他の種族から見た目で嫌われてきました。そして堅物で融通が利かないといわれ虐げられてもきました。でも今日は初めて人の温かさを感じた気がします。私で良ければ協力したい、いや、協力させてください。貴方となら私たちも他の種族を信じていくことができる気がする」


「私もそして他の子たちも貴方になら付いていきたいと思います」


ラルは軽そうなイメージの女性だったけど、ちゃんと子供達の面倒を見て母親代わりをしているようだ。泣きながら子供達を抱きしめている。


「よし!そうと決まれば後はうまい飯を食って温まって、ゆっくり寝ることだけだ!ミミ、ティカ食事の準備は?」


「完璧にゃ、もう用意したにゃ」


「私も腕によりをかけて作りましたよ!メインは焼肉です!」


こりゃ今夜はパーティーだな。


食事をして談笑しているうちにオレは風呂の用意をする。元奴隷の人たちを風呂に入れるときの驚きとくつろぎの顔はいつ見ても飽きないな。こっちも嬉しくなる。


風呂を3つ作って、男、女、ケン・ガイと文字を入れていく。そして簡単なつくりの土の小屋を5つ作る。俺とクロ、ミミとティカ、ケンとガイ、ワグとムータ、その他の4人だ。


「じゃ腹休めもできただろうから風呂に入るか!男湯はクロが仕切って!女湯はミミが仕切ってね、ケンとはガイはそっちね」


それからはきゃっきゃとはしゃぐ子供と風呂の気持ちよさのとりことなった大人、久々で楽しみにしていた面々で風呂を楽しんだ。


「お風呂とはここまで気持ちいいものだとは知りませんでした。一生に一度の体験、ありがとうございました」


ワグやラルがお礼を言ってくる。


「いや、一度じゃないぞ。村ではみんな毎日入っているぞ」


「!!」


みんな顔が緩んでいる。または入れることを想像してニヤニヤしているようだ。


それから夜の火の番をする順番を決め、それぞれの部屋に入る。はじめはオレとティカだ。ティカのたっての希望で一緒になった。


「ユウ様、みんな嬉しそうな顔でしたね。いい笑顔をしておりました」


「そうだね。やっぱりみんな笑顔で居られるのが一番いい。時には厳しいこともあるだろうけどオレは笑顔を見ていたいよ」


「うふふ。ユウ様はみんなに笑顔を与えることができる人なんです。もっと自信を持ってください」


「自信ね。オレはたまに思うんだよ。オレはこれでいいのか?もっとやり方があるんじゃないか?ってね」


オレもこの世界に来て成り行きで村長になったわけだが、やっぱりいろいろな人の人生を預かったようなものだ。不安にもなる。


すると、ティカが手を伸ばし、俺の頭を自分の胸に当てて細い腕で抱きしめる。


「大丈夫です。私がいつでも側にいます。クロさんもミミさんもいます。ユウ様は一人じゃないんです。困ったときにはみんなで悩めばいいんです。失敗したらやり直せばいいんです。ユウ様が思ったように理想の村を造っていけばいいとおもいます」


「ティカ・・・ありがとう。君がいてくれてオレは心強いよ」


顔を上げると、すぐに目の前にティカの顔があった。やばい、この状況やばすぎる。少し顔を近づけるだけでキスしてしまいそうなほど近い位置にティカの顔があった。


オレは吸い寄せられるようにティカの顔に近づいて・・・いこうとしたが、思わぬ邪魔が入った。


「えっと・・・ティカ、これはどんな状況なの」


ティカの首に掛けられた竜の涙が今までにないほどの勢いでちかちかと点滅している。めっちゃちかちかしてる。正直言ってネックレスを引きちぎって遠くに投げてやりたい気持ちでいっぱいだった。


「これは・・・竜の涙さんが興奮しすぎて点滅しちゃっているようです・・・もーーーーー!!!」


ティカさんご立腹。オレは思わず笑い出してしまった。


「はっはははは、何だよこの石!昔からあるならもっと空気読めよ!」


笑っている俺を見てティかも笑い始めた。


「うふふふふ。なんかいつもは私にいろいろ教えてくれるので、すごく大人な人を想像していましたが、こういう一面もあったんですね。純粋な石ですね」


二人で笑っていると竜の涙が少し赤く光りながら点滅している。怒っているようだ。


「ごめんごめん、わるかったよ。でも人のこと見て興奮してる方が失礼だぞ」


すると竜の石は青くなり反省しているようにゆっくりと点滅している。


「まぁでも久々にこんなに笑った。面白い物を見れたから良かったよ。もうそろそろ交代の時間だな。じゃあティカ、ミミを呼びに行ってくれる?俺はクロを起こしてくるよ」


「わかりました。それではユウ様おやすみなさい」


立ち上がり小屋に行こうとするティカの手を捕まえて引き寄せ、かがんでおでこにキスをする。


「今日は雰囲気ぶち壊しだったからこれで我慢だな。おやすみ!」


そういってオレは自分の小屋に向かう。


後ろでは顔を真っ赤にしてティカが固まってしまっているようだ。


二人の熱くなった体温を覚ますように心地よいそよ風が流れている。


ティカの胸ではちかちかと竜の涙が点滅をしていた。

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