第2章 27話 帰り道
奴隷商に連れてこられた鱗人族は、大人の大男1名、色っぽい女性1名、中高生ぐらいの子供男女2名の4人だった。皆健康で働き手としてはもってこいだろう。
「こちらはうちの上等な奴隷です。この大男は前の主人の元で廃墟の探索に使われていたため、魔物を相手にしても怯えずに戦ます。種族の特徴である堅物なところはありますが、命令にはちゃんと従います」
確かに戦い慣れていそうな見た目である。特に戦闘要員はいるわけではないが、この前みたいに魔物の襲撃があったらやっぱり人手が必要にもなる。警備要員としてもいいだろう。
「こちらの女は年頃の上物です。元はこの街の飲み屋で働いていましたが、金遣いが荒く借金が返せなくなり奴隷となりましたが、前の主人のところで主人の要求に従わないため返品されてきました」
金遣いが荒いのはいただけない。でも主人の命令に従わなかったら罰があるとおもうが、それに耐えてそれでも従わなかったというのであれば根性はありそうなタイプだ。スタイルは抜群ですらっとしたモデル体型。鱗人族の特徴である鱗は顔にはあまりない。目が爬虫類の目だからわかるが、顔だけパッと見たら人族とあまり変わりない。
「こちらの2名はまだ若いですが、大人と同じに働けます。これから成長しさらに使い勝手は広がるでしょう。男は力仕事をさせてもよいし、女は身の回りの世話をさせてもいい。お勧めな奴隷であります」
うん、よく見ると高校生ぐらいかな?鱗人族は体が大きいから本当はもう少し年齢が若いかもしれないがなぜ奴隷になったのだろう?
「この二人はどうして奴隷に?」
「はい、男の方は親が死んでしまい生活苦から盗みを働いて奴隷になり、女の方は親が借金を作り逃げてしまい、残された子供は奴隷として売られました。両方ともまだ奴隷になって間もないので躾は必要ですが、大男にでも任せておけば奴隷としての自分の立場は覚えるでしょう」
両方とも不運だな。生活苦と親に捨てられたという境遇で奴隷になったのか。
「みんなどうおもう?うちの村でやっていけるかな?」
「私は大丈夫だと思います。躾とまではいきませんが常識を教える必要がありますが、それは誰でも同じです。問題ありません」
クロはOKみたいだ。
「私も別にいいと思うにゃ。村のみんなに危害を加えられるほどでもないにゃ」
確かに村のみんなは強い。ミミは村のみんなは何かあっても特に問題はないと考えているようだ。
「女性が多いのは・・・ちょっと嫌ですが。問題はないと思います。でもユウ様、鼻の下を伸ばさないでくださいね」
なんかティカの心配はオレの事だけのようだ。
「わっ私はこういうことに口をはさめる立場ではないと思うので・・・皆さんに任せます」
ガイは相変わらずおどおどしているな。でも反対では無いようだ。
「ご主人様、別にどんな奴だって問題ないんじゃないの?だって問題起こすようだったら追放すればいいし、ご主人様なら奴隷をどうすることだってできるじゃない」
ケンの言いたいことは奴隷を解放することも、また奴隷に戻すこともオレにはできるから問題ないということらしい。
確かにそうだ。実際に開放することができたので、奴隷として言うことを守らせることもできるだろう。まぁそんなことしなくても本当に追放したいと思ったら実力行使で追放できるし問題ないな。
「そうだね。みんな問題ないみたいだから全員引き取ろうと思う」
「ユウ様、後の二人も引き取るおつもりなのでしょう。お金は後でまた廃墟にでも行けば稼げますのでお好きなようにしてください」
クロがそういうとガイ以外の面々は俺の顔を見てニヤニヤしている。見透かされていたのだな。はじめから6人引き取るつもりだったからいいけど、なんか見透かされているような気がして恥ずかしい。
ガイは不思議そうな顔をしているがケンから耳打ちして話を聞かされたようで、やっと納得が行ったようだ。
「この他にも後2人鱗人族がいると聞いたが見せてもらえるか?」
仲間内での会話は小声で話していたので店主までは届いてなかっただろう。店主は驚いた顔をして他の二人を呼んできた。
「こちらはちょっと難がありまして・・・二人とも子供ですが、一人は目が見えず、もう一人は言葉を話せないのです。子供のため役に立たず、治すにしても莫大な金がかかるので困っているところです」
治すためには金がかかるか。
この世界では命が金で買えてしまう。奴隷となった時点で価値が生まれるが何かの戦に巻き込まれたのか、親を亡くし子供が奴隷として売られた場合、大抵は労働力として売られる。
しかし、病気や怪我で体が悪い場合は著しく価値が下がる。それでも奴隷商はお得意先からであれば買わなければならないことがあるらしい。
言葉が話せないのはティカのときと同じで強い力で奴隷の契約がしてあるのだろうか?それなら問題なさそうだが、これも買ってから調べればいいか。
「わかった。初めの4人はエブルクアン様の紹介として買おう。後の2人は私の個人的な売買として買わせてもらう」
「えっ?!いいのですか?まだ子供ですし手伝いすらできないかもしれませんが・・・」
「別にいいといっている。育てれば少しは役に立つだろう。それに鱗人族同士で面倒を見させれば、オレに手間はかからん。いくらだ?」
オレは店主の態度に少し不機嫌になりながら値段を聞いた。人を物扱いしている感じが嫌なのだ。
「はっはい!このたびはエブルクアン様のご紹介であります。そしてうちの店としても困っていた商品のため、1人500バルでどうでしょうか?」
安っ!通常の奴隷で2000バルぐらいだから4分の1か。まぁおれとしては嬉しい誤算だ。
「それでいい。それでは1500バル渡そう。奴隷は明後日の朝引き取りにくるから、それまでにちゃんと飯食わせてもう少しいい服を着させてくれ」
「承知いたしました。ありがとうございます」
奴隷はいつもシーツに穴を開けて頭を通し麻紐で腰の辺りを縛っているだけのような格好なので、連れて歩くにはもう少しいい服を着させたい。多めに金を払ったからちゃんと用意するだろう。
それから店を出てみるともう日が傾きかけていた。なんだかんだで時間を食ってしまったな。宿に帰ろう
宿について部屋で荷物を置いてから食堂に集まることにした。
いつものことだがオレが一番遅くなったようだ。
「みんな今日もご苦労さん。明日ピークラン様のところに行ったら後は村に帰る。もう一踏ん張りだ申し訳ないが明日も付き合ってくれ」
そういって、乾杯をして夜ご飯を頂いた。今日は魚料理だ。最近魚料理を食べていなかったからおいしく感じる。無限リュックや闇ストレージに入れれば食べ物は腐らないため魚も大丈夫なのだが、なんか臭いが臭くなりそうなのでオレもクロも入れていなかったのだ。
「それにしてもユウ様はお人よしにゃ。私達みたいな奴隷を見つけたらみんな買ってしまうにゃ」
「それは言いすぎだろう?奴隷をみんな買っていたら、今頃村じゃなくて街になってるよ」
ミミの言葉にオレが返すと、他のメンバーから笑いが起きる。
「しかし私はユウ様の考える村がすごく理想的です。誰もが平等、誰もが村の人のために頑張れるそんな村であれば、今日のあの方達も心を開いてくれると思います」
「そうだと良いね。オレもあの村ならみんな安心して生活できるんじゃないかって思うよ」
みんなと話をしながらおいしいご飯を食べてその日は過ぎていった。
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次の日、前日と同じく朝からみんなで宿の前で待つ。今日はピークランの人が迎えに来てくれるらしい。
「今日のピークラン様は鬼人族だけど、どんな人だろう?」
「宿の店主も鬼人族ですが、見た目と違いやさしい性格です。しかし戦いになると性格が変わり激しい戦闘となります。そのため武器や防具に鬼を使うものが多くピークラン様の統治する地区には武器防具屋が多いです」
さすがクロ、知りたい情報をすぐに教えてくれた。
「そっか。じゃあ穏便に話を済ませてすぐに帰りたいね。なんかこの街に長居するのはあまりよくない気がするよ」
そんな話をしているとピークランの配下、確か・・・カーダさんだっけか?が3人の部下を連れて迎えに来た。
「遅くなりました。本日はよろしくお願いします」
「こちらこそ来てもらってしまい申し訳ないです。よろしくお願い致します」
カーダさんについて移動をする。大通りをまっすぐ進んでいくと、見るからに金持ちの家というような大きな家が現れた。エブルクアン様の家と同じぐらいの大きさだが、こっちは力強い感じのイメージだ。
「中に入って少し待っていてくれ」
メイドについていくと客間に通された。今日で3回目だからこの対応にも慣れた。
ここでもカラル茶を頂き、お茶菓子としてパンが出てきた。でもパンといってもいつも食べているパンではなくもっとふっくらして甘いパンだ。菓子パンの部類に入るだろう。こんなに柔らかいパンは久しぶりだ。
みんなパンを食べて驚いているようだ。
「お待たせしました。私が鬼人族貴族のピークランです。わざわざ足を運んでもらい申し訳ない」
ずいぶんと下手に出てきた。好感は持てるが、何か裏がありそうな気がしてならない。見た目はまだ40台ぐらいのおじさまって感じの人だ。でも目が鋭いのは貴族ゆえのことなのだろうか?
他の貴族にしたことと同じく、自分と他のメンバーの紹介をして席についた。
「なんでも、人族貴族の配下10人を3人で戦闘不能にしたとか。それも一人も殺めず、怪我もたいしたことないとの事を聞いた。それほど腕の立つものはここ数年聞いた事ない。だめもとで聞くが、私の配下に入ってはくれぬか?」
「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。われわれは村を作っている最中であり、どこの貴族にも付く気はありません」
「そうか、しかしミルアンのところでは今後来村することを約束し、エブルクアンのところでは鱗人族を村に住まわセル事を約束した。それにそれぞれ商人を行き来させるようだ。われわれはどのようなことを約束してくれるのであろうか?」
なんかいろいろな情報を手に入れているようだ。しかし温厚そうに見えてこういう人が一番裏が怖そうだから、しっかりと断らなければならない。
「何に対しての約束なのか存じませんが、私は村に危害を加えないのであれば交流はいたします。しかし少しでも村に危害を加える存在と判断したときには全力で排除します」
「はっははは、これは愉快。そこまではっきりと私に物を言うものは久しい。裏表なくしっかりと自分の意思を伝えたこと気に入った。われわれも商人を村に行かせたいのだがよいか?」
「それはもちろん。村としても喜ばしい限りです」
「そうか。まぁ私としては鬼人族も村に住まわせてもらいたいところだが、それはまたいずれ考えよう。今回はユウ殿との交流がもてたこと、これが最大の収穫ということにしよう」
やっぱりなんか胡散臭い。でもそれ以上追求するわけにも行かずとりあえず話しをそらして、話を続けた。
そして昼前には家を出ることとした。
「明日街を出て村に向かうため、今日はいろいろと準備をさせていただきたいのでそろそろ帰らせていただきます」
「そうか、急に呼び出して申し訳なかった。今後鬼人族貴族ピークラン配下の者はユウ殿とは友好な関係だと伝えておこう。街に来たときは私のところにも寄って欲しい」
別れの挨拶をして館を出るとカーダさんが待っていた。
「今日は悪かった。他の貴族があっている人物にピークラン様が会えないと後で俺達が罰を食らうことになる。今日は助かった礼を言う」
それから宿に戻ってから買い忘れのものなどをピックアップして手分けして買いに出て行ったため、オレはティカと二人で留守番をしていた。
「ユウ様、今回の奴隷の方達のことを解放してあげるのですか?」
ティカが質問をしてきた。
「そうだね。一応どんな人か帰りの旅路で確認して、問題ないと思ったら開放するよ」
「そうですね。すぐに開放するのは少し不安がありました。竜の涙もすぐに開放するのはやめた方がいいといっています」
あら?そうなの?まぁ警戒することはいいことだろう。何かあってからでは遅いからな。
「そうか、了解。帰りも5日ぐらいかかるからその間に見極めして開放するかどうか決めよう」
その日の夜はまた食堂で酒盛りが始まってしまった。明日帰るといったところ、食堂にいた客がみんな送別会のような会を開いてくれて宴会が始まってしまったのだ。
送別会というのは都合だけでただみんな飲みたいだけのようだ。今日は俺も少し飲むことにしよう。
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そして案の定二日酔い。もっと強くならないものかね?オレアルコールに弱い体質なんだな。
頭が痛いが少しなので今日はすぐ行動できる。出発の準備をし、馬車の用意も済ませる。
「それじゃ、みんな揃ったところで出発しよう!奴隷商のところで鱗人族の人たちを乗せるから馬車の荷台に少しスペース作っておいてね」
エブルクアン様の地区に行き奴隷商の店えと向かう。当初の予定より多く日数を取っちゃったよ。まぁでも少しは収穫もあったしいいだろう。
「いらっしゃいませ。これはユウ様奴隷達の準備はできております。食事をさせ服も着替えさせております。では奴隷の所有者をユウ様に書き換えます」
それから一人ずつ奴隷の所有者を書き換えて馬車に乗せて言った。
「これで6人全員です。ありがとうございました」
奴隷を乗せて馬車を進める。街の門まで来ると、街に来たときに絡んできた門番がいたが、無視をしてそのまま進んだ。絡まれたら面倒くさいからだ。
「これでやっと村に帰れるね」
「予想外のことが多かったですが楽しかったですよ」
馬車の操作をしているオレの横には当たり前のようにティカが陣取り座っていた。
「そうね、私も弟子なんかできちゃったし忙しくなりそうだわ」
ケンも話しに加わってきた。そういえばガイはケンの弟子だったな。忘れていた。
「ケン、ガイにちゃんといろいろ教えてやるんだぞ。一般常識を教えてやるんだ」
「わかってるわよ。へんなことは教えない。私より大きいんだから変なこと教えようとしたら、腕をへし折られちゃうわよ」
確かに、あのがたいは威圧感があるし、実際に力も強いだろう。ケンでも止められない可能性がある。
荷台ではクロとミミが奴隷の面々にいろいろと話しかけてコミュニケーションをとろうとしている。少しずつではあるがみんな話をし始めたようだ。
やっぱり馬車でのんびりと帰るのはいい。一瞬で帰れれば楽だが、ゆっくりと流れる時間も貴重だ。
「鱗人族の皆さん!これからオレの村に行って村の発展のために住んでもらう。不便なことはあるだろうができる限り村人と力を合わせて乗り越えたい。みんなも協力して欲しい」
鱗人族のみんなはオレのほうを見てポカンとしている。奴隷なのに命令ではなくお願いされたことに驚いているようだ。
みんなうなづいてくれたのでそのまま馬車の操作に戻る。
「今日もいい天気だなぁ」
青空に浮かぶ雲を見ながら俺達はゆっくりとモーン村に向けて出発した。




