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知らない世界で街づくり  作者: 星野 シラセ
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第2章 26話 意外な展開

翌朝、身支度を整え朝食を食べた後にエブルクアンの配下の者が待つ街の広場に向かった。


今日も全員で向かうこととする。初めはオレとクロ、ミミの3人で行こうとしたのだが、ティカがついて来ると言い張り、それならとケンとガイもついて来ることになってしまった。


ティカはオレのことを心配して、いざとなったら竜の涙の力で逃げることを考えてくれているらしい。ケンとガイは二人で歩いていてもまたからまれるだけなので、着いてきたいとのことだった。


まぁ何かあって逃げるとしても一緒にいたほうが都合がいいのは確かなので、今日もみんなで行くこととしたのだ。


「今日会うエブルクアン様はどんな人なんだろうね?」


「私が知りうることでは、鱗人族は嘘が嫌いで堅物が多いということです。エブルクアン様がどのような方かは存じませんが、噂ではかなりの切れ者だとか」


クロが知っている情報を教えてくれた。何も知らずに会うより少しでも相手のことが分かっているほうがいいだろう。


「そっか。じゃあ昨日オルミさんが教えてくれたように、あまり余計なことを話さないようにしないとね。みんなも発言には気を付けろよ」


話をしながら歩いていると広場までたどり着いた。広場にはすでにエブルクアン配下の人らしい一団がいた。


1,2,3・・・6人もいるよ。こっちも6人だから合わせたのかな?


「おはようございます。えっと・・・ワイグさんでしたでしょうか?昨日の約束通りエブルクアン様に会うために参りました」


「おはようございます。そう、わたしはワイグという。今日はエブルクアン様のお屋敷に案内する。ついてきてくれ」


やはり鱗人族の人は堅いイメージだな。傭兵なので軍隊の指揮官という感じに近いのかな。人族の傭兵に比べ、統率がとれているように見える。指揮官のワイグさんの指導がいいのかもしれない。


今日はまだ未開の地だったエブルクアンの統治している地区に入る。エブルクアンの地区はきれいに整備されており、意外に工芸品などを扱っている店が多い。


「ユウ殿は我々の地区に入るのは初めてか?」


「はい、今まではピークラン様とミルアン様の土地しか行き来しませんでしたので今回が初めてです」


「そうか、我々は他の種族から堅物と言われているが、その分正確な仕事にこだわる。よって仕掛けのある工芸品などの細かい仕事を要求されるものを扱うことが多い。職人気質なのだろう」


へぇ、手先が器用なのは意外だ。妖魔のように小さい種族なら細かい作業が得意なのはわかるが、鱗人族は180を超える大柄な体格だが手先が器用っていうのが意外だった。ガイみたいな体格でも臆病だったりするから、見た目だけで判断しちゃいかんな。


「職人気質の人々が作る工芸品は興味がありますね。後で見て回りたいと思います」


「そうか、ぜひ見て行ってくれ」


エブルクアン様の屋敷は広場から一番離れたところにあった。ミルアン様の屋敷の倍はあるだろう。でかい屋敷だがところどころに細かい装飾が施されていて仕事の細かさがわかる。


それに、見た目はデカくいろいろな装飾が施されているが嫌な感じはせず、すっきりとまとまっている感じである。センスを感じるな。


「それではエブルクアン様に話をしてくる。客間で待っていてくれ」


それから執事に連れられ客間に通され、大きなテーブルの端にそれぞれ席に着き待っていた。


ここではカラル茶と焼き菓子が出されて、ミミとティカ、そしてケンがおいしそうに食べていた。女の人が甘い物好きなのはわかるが、彫刻のような彫りの深い顔をしたおっさんが焼き菓子をおいしそうに頬張る姿はシュールだった。


オレも一つ手に取って食べてみたが、スコーンのようなものに砂糖がまぶしてあり、クッキーとパンの間ぐらいの触感だった。あまり甘すぎないためお茶のお供としては丁度いいかもしれない。


砂糖は高価なものだが、客に出すお茶菓子として気軽に出していることがエブルクアン様に大きな財力があることがわかる。


「お待たせした。私がこの地区を統治する鱗人族貴族のエブルクアンだ。今日はよく参られた」


「初めまして。私は辺境の荒野近くで村長をしておりますユウと申します。こちらは従者のクロ、ミミ、ティカ、こちらは村の住人のケンとガイです」


昨日も同じことを説明したため、今日はすらすらと説明していく。明日も同じことを言わなければならないのが面倒くさいが・・・


エブルクアン様は黒髪に白髪が混ざった初老の紳士って感じだった。首や頬まで鱗でおおわれている姿は他の鱗人族と同じだが、隙がない感じはさすがだ。


「辺境の荒野は魔物も住みつかない厳しい土地と聞く。その近くで村を作ったか。森があったと思うが、そのあたりだろうか?」


さすがにオレ達のことを調べたのだろう。村の位置を知られるのは嫌だが、うそをついても仕方ない。


「そうです。荒野に入る手前に森が広がっており、森を切り開き村を作ってります」


「そうか。切り開くのは大変だったであろう。なぜそんな人が寄り付かない土地に村を作ろうとしたのだ?」


うーん。正直に言ったほうがいいのかな?嘘は見抜かれそうだし後でつつかれるより本当のことを言ったほうがメリットが大きいな。


「私は遠い地の出身ですが、この土地に来ていくつかの街を回り各町で奴隷のひどい扱いを目にしてきました。また、人族貴族の嫌がらせに悩む民衆も目にしてきました」


人族貴族という単語に少し反応した様だが、そのまま言葉をつづけた。


「私は種族とか奴隷とかそういうものをなくして皆平等で安心して過ごすことのできる場所を作りたいと思い、自分で村を作ることにしました」


「平等で安心できる場所か・・・それは聞く分にはとても良いが、難しいのではないか?」


「はい、村が大きくなればそれだけ管理することは難しくなります。しかし、やってできないことはないと思います。まだ手探りのため本当にできるかわかりませんが、やれることはやってみようと思ってます」


エブルクアン様は腕を組んで考えているようだ。難しい顔をして会話に少し間が空いた。


「私も以前はそのように考えていたが、やはり無理だった。街を大きくすればするほど格差が出来てしまう。きれいごとばかりでは統治などできないのだ」


ここまで街が大きくなればさすがにすべて平等とはいかないだろう。エブルクアン様もかつてそういう考えを持っていたのは予想していなかった。


「初めは配下の者の話を聞き、腕の良い者たちを見つけたから配下に入れてみてはどうかと言われたが、会って話を聞き少し勘違いしていたことに気付いた。ユウ殿達は確かに腕は立つのかもしれない。しかし配下に置いて価値を見出すより、村と街でのかかわりを持ったほうが有意義なこととなりそうだ」


さすがは貴族として統治をしているだけのことはある。目先のことより、長く見てものを考えていたようだ。


「それは我々の村との交流を持つとのこととでしょうか?」


「そう、出来れは我々の配下の者を何人か村に住まわせて村づくりを手伝わせたいと思っている」


ん?村の住人として配下の者を住まわせるのはちょっと嫌だな。なんか監視されてるように思ってしまう。それに下手に逆らわないよう首輪をつけようとしてる気がする


「申し訳ありませんが、私たちの村の住人は私が話をして大丈夫だと認めた人しか住むことを許可しておりません。村での争いを避けるためにこのような対処をしているので配下の方をそのまま受け入れることはできません」


「そうか。それなら配下でなくともよい、街にいるもの、奴隷でもいい鱗人族がその村で住むことが出来るなら、住まわせてもらいたい、そして街の商人が行き来することも受け入れてもらえないだろうか?」


鱗人族が村の中にいること、そして商人が行き来をして、鱗人族の様子を見て報告するのだろう。


(クロどう思う?オレ達の行動を監視するってことより、鱗人族が村でやって行けるか見たいような言動だけど)


(なにか裏がありそうな気もしますが、ここで断ると後でもっと厄介なことになる可能性もあるため、奴隷を何人か連れて帰るということでいいのではないでしょうか?)


クロの提案を小さくうなづき肯定した。


「わかりました。では私たちが帰るまでに奴隷商のところで鱗人族の奴隷を何人か買って行きます。商人はオーク族の行商人ジルさんまたは熊族のドンさん、犬族のトッカさんなどに聞いていただければ村の場所がわかると思います」


「そうか、わかった。では奴隷を買う費用はこちらで出そう。奴隷商のところに使いを出しておく、好きな奴隷を4人選んで連れて行ってくれ」


それからは村での生活のこと、人族貴族の配下をやっつけたときのことなどを説明し、昼の軽食までいただいた。


感想としては、悪い人ではないが何を考えているか読めないところがある。鱗人族は見た目から怖がられて迫害を受けることが多く、鱗人族単体で街に住むことがあまりないのだそうだ。


だから誰もが平等に生活できる村という話を聞き、試しに誰かを住まわせてみたかったのだろう。


「それでは帰らせていただきます。ごちそうさまでした」


「いや、こちらこそいろいろな話を聞けて楽しかった。奴隷商のところにはすぐ行くのであればワイグに案内させよう」


あとで忘れちゃったら面倒くさいことになりそうなので、午後から奴隷商に行くことにした。


「どうやらエブルクアン様に気に入られたようだな」


奴隷商に行く途中ワイグさんが話しかけてきた。


「話の流れでうちの村に鱗人族の住人を住まわせることになりましてね。それで奴隷商で住人候補を探すことにしたんですよ」


「いや、エブルクアン様があそこまで気を許して話をしている人も珍しい。それに奴隷とはいえ鱗人族を少人数でほかの村に住まわせることには驚きだ」


やはり鱗人族は群れで住むことで迫害から逃れてきたのだろう。ワイグさんも驚いているようだ。


「うちの住人はほとんどが元奴隷なんです。そのためか種族や容姿は皆気にせず対等に付き合います。全員私が解放しているので自由ですが、村のために頑張ってくれています」


「それはすごい。奴隷解放ができるのか?奴隷商でもやっていたのか?」


なんか余計なことを言ってしまったようだ。奴隷解放が出来るのは奴隷商ぐらいなものだろう。契約の指輪をもらって普通にやっていたから気にもせず話をしてまった。


「そっそうなんです。昔奴隷商もしていまして・・・」


「嘘だな。そんな嘘は私たちはすぐ見抜く。まぁ今回はいいだろう深く探りはしないでおこう。ただし鱗人族の奴隷もちゃんと解放してくれ」


「申し訳ない。訳あって契約の指輪を譲ってもらってね。約束しようちゃんと解放する」


それからは程なくして奴隷商のところに着いた。


ここの奴隷商はエーテハイムのバルバリーのところより大きい店構えだった。中に入るとワイグさんが話をつけてくれた。


「私はここまでだ4人分の奴隷を買う費用はエブルクアン様につけてもらうよう話をしてある。後はそこの店主が奴隷を紹介してくれるから好きな奴隷を選んでくれ。それではまた機会があったら合おう」


「ありがとうございました」


ワイグさんと別れて奴隷商の店主の案内で個室に移動する。


「本日は我々の店にお越しいただきありがとうございます。エブルクアン様からの紹介のお客様とお聞きしております。料金はエブルクアン様よりお受けいたしますのでお好きな奴隷をお選びください」


「ありがとうございます。私たちは鱗人族の奴隷で、殺人などの大罪がないものを見せていただきたい。年齢、病気などは問わないので該当する奴隷をすべて見せていただけないだろうか?」


店主はすぐに執事に耳打ちをして用意させるように指示出したようだ。


「鱗人族とはお目が高い、屈強で戦闘に特化した奴隷から、ひんやりとした肌がマニアな方に人気のある若い女まで取り揃えております。今は条件に該当するのは6人おります。まずは4人、そのあと少し悪条件の2人をお披露目します」


やはり鱗人族は戦闘に特化しているようだ。鱗でおおわれているから防御力が高いとクロから耳打ちされたが、聞くまでもなく見た目からして強そうだからある程度予想できていた。


あとは蛇に似ている肌だから、冷たいのだろう。夏はひんやりして気持ちよさそうだ。


「ユウ様、鱗人族の女性は肌が冷たいから夏は気持ちよさそうだとか考えていませんでしたか?」


ティカが頬を膨らませて怒ったように聞いてきた。


「ソンナコトカンガエテマセンデスヨ」


ティカはこういうところが鋭い。前になぜ考えていることがわかるのかと聞いたことがあったが、「いつもユウ様を見ているので、表情で何となくわかります」と言われて少し怖くなった。


謝りながら膨らませた頬を両方引っ張り遊んでいると、奴隷商が鱗人族の奴隷を連れて帰ってきた。


こちらがお勧めの鱗人族となります。


鱗人族の奴隷を1人ずつ見ていく。さて、村の住人として受け入れることが出来る逸材は何人いるだろうか?



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