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知らない世界で街づくり  作者: 星野 シラセ
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第2章 25話 もてもて

相手は11人、こっちはオレとクロとミミの3人。一人頭3人ぐらいだが、オレ達が動き始めてすぐに相手の力量が分かった。


さほどスピードを出したわけじゃないが、相手がこっちの速さについてこれていない。それに連携が取れていない。傭兵といっても雇われているだけで統率がとれていないようだ。


まずは一人目の首筋を手刀で叩き、気を失わせる。もう一人が横からタックルの状態で突っ込んできたので体を反転させ躱した後、足を少し出して躓かせる。そして躓いたところに背中にこぶしを落とし込みそのまま地面に濃厚なキスをしてもらった。


次の傭兵は先に突っ込んだ2名の様子を見て警戒し、盾を構えて剣をこちらに向けている。その剣をマテルハンドで奪い取り、マテルハンドのパンチで盾ごと吹き飛ばした。


周りの傭兵は何が起こったのかわからずにおどおどしている。クロとミミも問題なく3名ずつ傭兵の気を失わせている。


のこり2名の傭兵は、逃げ出そうとしていたので、土のマテルで足元を泥にして胸まで沈ませ一人では抜け出せないようにした。


「おいおい!あんたたちめちゃくちゃ強いな。本当に村長なのか?」


オルミさんは口を開けたまま、驚いた表情で聞いてくる。その近くではケンの後ろに隠れた気でいるガイも吃驚した様子でこちらを覗いていた。


「村長なのは本当ですよ。行商人をやっていましたが廃墟で売り物を手に入れるのに少し修行しましてね。従者の二人も一緒に行動しておりますので、おのずと腕が上がったのでしょう」


バグルたち傭兵は、何人かけが人はいるようだが大したことはないだろう。


「なんの騒ぎだ!」


今の騒ぎを聞きつけたエブルクアンとピークランの配下たちも集まってきた。


「ちょっとまてまて!ワイグもカーダも落ち着けって。この人たちにバグルが襲い掛かったんだが、3人でこの人数を懲らしめちゃったわけよ。初めに襲い掛かったのはバグルたちだからこの人たちは問題ない」


オルミさんがほかの種族の配下に説明してくれている。


「オルミ、お前が見ていたならなぜ止めなかった。バグルたちがいつも問題を起こしているのはわかるが、さすがにここまでやられるのを見ていただけとなると後で何を言われるかわからないぞ」


エブルクアンの鱗人族、名前はワイグ・・・さんかな?ワイグさんがオルミさんに言い寄っている。


内容からすると、あとでバグルたちから絡まれるってことなんだろう。やっぱり人族貴族の配下もろくな奴がいないな。


「止める暇もなかったよ。そちらの3人がいつの間にか動いて10数える前に終わってた。そんな人たちを俺が止められるわけないだろ?」


「そんなにすごいのか?お前が止められないなんてどういうわけだ!?」


「んっ?馬人族を連れた人族・・・お前は「ほらあな」という宿に泊まっているマテル使いか?」


今度はピークランの鬼人族の人・・・確かカーダさんが質問してきた。ほらあな?あぁそういえば奥行きのあるほらあなみたいな宿だったな。


「そうです。こちらは私どもの村で村長をしておりますユウ様。私たちは従者と、村の住民です」


クロが代わりに答えてくれた。


「やっぱりそうか。土のマテルで足元を泥状にして身動きをとれなくするとはな。従者もかなりの強さのようだ。ほらあなの店主がすごいマテル使いがいるって言っていたがお前のことだったのか」


昨日マテル道具の照明に神秘の力を一気に込めちゃったから、すごいマテル使いってことになっちゃったのか。酔ってたし迂闊だったな。


「私たちは以前行商人をしていたため、廃墟に入り売る品を手に入れていたこともあります。それである程度の能力をつけることはできました。今回は、相手が自分の方が人数が多いということで油断していたため、どうにか対処できただけです」


オレは嘘くさいが精一杯の言い訳をしてみる。変に危険人物指定されても嫌だからなぁ。


「それにしてもだ。3人でこの人数を殺すことなく叩きのめしている。それだけ実力差があるということだ」


そのあとはなんだか各種族の配下同士でああでもないこうでもないと、話をし始めてしまった。


オレ達はミルアン様のところに行くことになるんだがいつになるんだ。この場を去るわけにもいかないしな。


それか10分後やっと話が終わったらしく、オルミさんが近づいてきた。


「待たせたな。ちょっと話があるんだがいいか?」


「なんでしょうか?」


「お前たちのことなんだが、他の種族がぜひ貴族様に会わせたいということなんだ。今日ミルアン様に会わせると言ったら、他の奴らもそれぞれの貴族に会わせたいと言いって聞かなくてよ」


なんだそりゃ。オルミさんが余計なことを言うから・・・。


「それはそちらの勝手じゃないですか。私たちはミルアン様に会うのはガイへのお礼を言うということで出会うだけです。他の貴族に会う気なんてないですよ」


オルミさんは申し訳なさそうに頭を掻いている。


「もうこうなったら、馬人族とか関係なくてよ。お前さんたちの強さが目的になっちゃってるんだよ。あんな強さ見せたらどこの貴族だって自分の配下に入れたいと思うさ」


なんでこうなるかな。本当にため息しか出ない。クロもため息をついている。


「私たちは自分たちの村のことがありますので、配下になることはできません。そういうことならミルアン様に会うことも辞退させていただきます」


オレはいろいろ面倒くさくなったのですべて断ってやる。


「ちょっとそういうなよ。オレのところには来てくれるって約束で昨日この街の情報を教えてやっただろう」


「オルミのところだけで、うちには来ないっていうなら、村まで行くことになるぞ。村に来てほしくないなら一度エブルクアン様に会ってもらおう」


「それならうちも同じだ。ピークラン様に会ってもらおう」


結局、相手の弱みをついて来るんだな。嫌な感じだ。


「わかりました。会いますが、それでもしつこく付きまとったり、村にまで来ることがあったら、実力行使します」


「あんたは、話が分かるな。それじゃ、今日はうちのミルアン様に会ってもらって、明日はエブルクアン様、その次の日はピークラン様に会ってもらうってことでいいだろうか?」


「ああ、私たちは問題ない」


「私もだ」


これで話がまとまった。すぐに帰ろうと思っていたが、あと2日は滞在しなければならなくなってしまった。


-----


それからミルアン様の邸宅まで歩いて行った。20分ぐらい街の中を歩いて、やっと着いたところにはうちの3倍以上あるだろう豪邸が立っていた。


「ここがミルアン様の家だ。今から着いたことを伝えに行ってくるから、メイドの後をついて行って客間で待っていてくれ」


家は木の造りだが廊下や客間には絨毯が敷かれていた。それだけでも高級感があるが、壁には大きな剣や盾が飾られておりかっこよさも演出している。


ソファーに座って待っていると、メイドの人がお茶を持って来てくれた。おっ!これはカラル茶だ。いつも飲み慣れているテラル茶もいいが、これはこれで好きな飲み物だ。


「お待たせいたしました。私はミルアン、この街で妖精族の貴族として統治させていただいております」


・・・予想外。女性だっていうのは少し予想していたんだけど、ティカと同じような青白い髪の毛だ。しかし背は高く耳もとがっている。個人的な感想では妖精というよりはエルフに近い。


「初めましてミルアン様。私はユウ、こちらから従者のクロ、ミミ、ティカ、私の村の住人のケン、ガイです。ガイは昨日私の村の住人となりました」


一人ずつ名前を紹介し、ガイのことを話しておく。


「そうですか、ガイさんというお名前でしたのですね。以前に魔物に襲われているところを助けていただき、是非ともお礼をさせていただきたいと思っていたのです」


そういうと、ミルアンさんはガイの方に向きをかえた。


「あの時はありがとうございました。死を覚悟しておりましたところを、さっそうと現れて魔物を蹴散らしていただき、命を助けていただきました。今の私がいるのもあなたのおかげです」


「わっ私は・・・魔物がいたので狩りを・・・狩りをしていただけです。助けようとしたのではないので頭を下げないでください」


ミルアンさんは貴族と言ってもほかの貴族とは違うようだ。ちゃんと頭を下げてお礼を言っている。かなり好感をもてる。


「わたしは他の貴族ほど裕福ではないので何でもとは言えませんが、できる限りのお礼をさせていただきます。何か希望はありますか?」


ガイは困った顔をしてこっちを見ている。


「ガイは何か欲しいものとかない?」


「私は・・・上着を・・・」


!!そういえば、ガイは上着を何も来ていなかった。ケンタウロスってそんなもんだって思ってたけど、ケンはちゃんと皮のシャツを着てるんだった。


「ふふふ、暑い時期なのでそのような恰好が好きな方かと思いましたが、破れたしまったのでしょう。では代わりの品を用意させますが、他に何か必要ですか?」


「いいえ。大丈夫です」


まぁ変に高いもの頼むよりはいい。ミルアンさんのほほえみは見るものを引き付ける魅力があるな。


(ユウ様、鼻の下が伸びてます)


ティカが足をつねってきた。焼きもちを焼いてるようだ。ほっぺを膨らまして怒っているがそれがかわいい感じになってしまう。子供じゃないけどどうしても子供っぽいよな。


俺がティカの頭に手をのせてやさしくなでてやると、怒っていたはずなのに嬉しそうににこにこし始めた。


「あら、あなたは・・・妖精族・・・ではないわね。兎族なのかしら。でもその髪の色は・・・」


やっぱりミルアン様は気づいたようだ。


「ティカは兎族ですが、先祖に妖精族でもいたのでしょう。その特徴が髪の毛に出てしまったようです」


「そのようね。でもその髪の色は妖精族に多い色ということは確かです。私たちの仲間、あなたが望めば私たちのところで暮らすこともできますが・・・」


ミルアン様は好意で言ってくれているのだろう。悪気は全然感じないが、ティカは警戒をしているようだ。昔から髪のことでいろいろ言われてきたのだろう。


「ミルアン様、私は辺境の荒野の近くで村を作りました。その村は人族、闇族、オーク族、犬族、猫族、兎族、馬人族、妖魔がいますが、皆争わず仲良く生活をしております。そして村には必要な存在です。ティカも必要な存在ですので私たちと村で一緒に頑張ってもらおうと思っております」


「私はユウ様や村のみんなといることが幸せでもあります。お誘いは大変ありがたいですが、お断りさせていただきます」


オレの説明に続いてティカがはっきりと誘いを断った。


「あら、ごめんなさい。そんな村があったのね。私は知らなかったわ。でもその考えは私もすごく興味があるわ、いずれ私もお伺いさせていただきたいわ」


「ミルアン様であれば歓迎いたします。私たちはまだまだ未熟で村をみんなで作っているところです。今回も勉強させていただこうと思っています」


この人はあまり裏がなさそうだな。あったとしてもさほど悪いことに手を出してはいないと思う。


それからは村の話やケン、ガイの話などいろいろと話をした。


ミルアン様はもともと妖精族の貴族の娘だったが親のやり方が嫌で、自分の代になりいろいろと試しているとのことだ。統治する土地に入っても金を取らないのも新たな試みの一つらしい。


まぁ人がいいことはわかった。この人はいい人過ぎるんだと思う。だからあまり民衆に税金を科せられないので収入が低くなってしまうのだろう。


「それでは今日はこのぐらいで帰らせていただきたいと思います。ミルアン様ありがとうございました。ぜひ我々の村にも来てください」


「こちらこそありがとう。楽しかったわ。いずれおじゃまさせていただきますわ」


ミルアン様とのお茶会?は無事終わり、門のところに戻ったところオルミさんが待っていた。


「ずいぶんと長かったな。気に入られたのか?」


「そうだね。ミルアン様はやさしい人だということはわかった。あの人なら村との交流をしてもいいかと思ったよ」


「そうだろう。あの人はやさしすぎる。でもその人柄にみんな引かれているんだ。オレもその一人だな。わっはっは」


オルミさんも人がいい。類は友を呼ぶということなのだろう。


「明日はエブルクアン様に会うことになる。気をつけろよ。変な情報は与えないほうがいい。後でつつかれるぞ」


そんなアドバイスをもらいながら街に向かい、夕方まで散策をして宿に戻った。


明日は面倒くさいことになりそうだ。ゆっくり休もう。

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