第2章 23話 圏外
更新遅くなり申し訳ないです
ちょっとばたばたしているので落ち着いたらまたペース上げます。
グングルトの街に着き、街中を歩き始めてすぐ後ろから止まるように声をかけられたため、立ち止まり振り返った。
「お前はなぜ馬人族を連れている。それに執事やメイドまで連れて歩くとは大層大物らしいな」
なんだか柄の悪い傭兵のようなやつらが絡んできた。
「このものたちは私の従者です。別に大物ではないですが村長をしており、買出しのためにこの街に来ました」
とりあえず下手に出て相手の反応を見てみる。
「村長さまか、大層なご身分だな。それじゃ田舎者の村長さんに、この町のルールを教えてやろう。まずは俺達のようなものに呼び止められ、腕のこのマークを見たら、100バルコイン1枚を渡すことだ。このマークは人族貴族のドルナーキス様の配下の証だ。金を渡せば代わりにこの木札を渡す。これでドルナーキス様の管理する場所は自由にしても俺達は何も言わない」
人族貴族の資金調達なのだろう。1回だけならいいが、こんなやつらに1万円も払うのは嫌だが、街に来ていきなりトラブルってのも嫌だから、とりあえずここは1回払っておこう。
クロが前に出て追い返そうとしたが、手を出して制する。
「そうですか、何も知らずに申し訳ない。では銅コイン1枚それにこの1枚は授業料ということでお納めください」
「わかってるな。さすが村長さんだ。世の中の渡り方は知っているようだな。この木札を持っていきな。今回は見逃すが、ドルナーキス様が馬人族について何か言ってきたら逆らうなよ。最近馬人族が言うことを聞かないため気が立ってるからな」
ただの木の切れ端のようなものに傭兵の腕につけていた腕章のマークと同じケンを3本交差させたようなマークが書かれたものを渡された。すぐに捨ててしまいたいが仕方ない、とりあえず持っておこう。
銅コイン2枚=2万円の出費は今の資金からだととくに問題ない金額だが、あいつらに渡したことはなんか気に食わない。でも馬人族に対しての情報をくれただけいいと思うか。街を見て回ろう。
「お前らは田舎者だな?」
また他のやつらから声をかけられた。
「さっきドルナーキスのところの配下に金を渡していたな。それなら俺達エブルクアンの配下にも同じことだ。わかるだろう?」
なんだかややこしいことになってきた。エブルクアンの配下は全身が鱗で覆われており、爬虫類のような目をしている。クロに聞くと鱗人族らしい。こちらにも銅コインを2枚渡したが、その後にもピークランという頭に小さな角が生えている鬼のような見た目の、鬼人族の配下にも銅コイン2枚を渡すこととなってしまった。
「何だこの街は?各種族の貴族だらけなのか?」
「私が以前来たときはこのようなことはありませんでしたが、いったい何があったのか・・・」
クロも驚いているようだ。
「最近は金を持っていそうな奴は、あのようにかもにされるんだよ」
また一人の男が話しかけてきた。この男は今までの薄汚い傭兵連中とは違い、しっかりと手入れのされた鎧を着ている。どちらかといったら騎士って感じだ。
「おっと、警戒しないでくれ。オレは妖精族の貴族、ミルアンの配下で街の巡回をしているオルミというものだ。俺達は金を巻き上げたりはしないよ」
他のやつらよりはまともそうだ。人族と同じような見た目だが髪が青黒く耳がとがっている。エルフのようなイメージだが背があまり大きくない。160後半ぐらいだろう。
「そんなに警戒するなよ。この街について教えてやるよ。そのついでに俺の頼みも聞いてくれればいい。頼みといっても簡単なことだ」
頼みごとを聞いてる暇はないが、この後もややこしいことに巻き込まれるもの嫌だな・・・。とりあえず頼みの内容を聞いてみよう。
「頼みというのは?」
「ああ、今この町にいる馬人族のおっさんに妖精族貴族のミルアン様に会ってくれるよう話をつけてもらえないか?あんたの連れている馬人族が話をすれば聞いてくれないかとおもってな」
結局は馬人族の勧誘か・・・こっちも話をしにいくから断った方が良いな。
「こちらも用事があり、あまり時間を取れないので、今回はお断りさせていただきます」
「まぁそう言うなって。俺たちは人族貴族とは違う。悪いようにはしない。この前ミルアン様が森を移動中魔物の群れに襲われてしまってな。私兵が瀕死の状態だったときに馬人族のおっさんが現れて魔物を追い払ってくれたんだ」
馬人族はやっぱり強いようだ。ケンも結構強いが、そのおっさんもかなり強そうだ。
「ミルアン様が礼を言いたいといって邸宅に招こうと話をしても、断られてしまう。ミルアン様が会いに街にこられても避けるように逃げられてしまうんだよ」
妖精族はとくに馬人族のおっさんをどうこうしようと言う感じはしないが、本人が嫌がっているのに行くように言っても意味がなさそうだが・・・
「私が話をしてみるわ。ご主人様いいでしょ?どちらにしろ、私達も話をするんだし、話をして本人が嫌がったらちゃんと理由を言ってお断りすれば良いじゃない」
ケンの言うことが一番良いだろう。俺達も街について知ることもできれば、一石二鳥になるな。
「わかった。それでは私達でその馬人族に話をします。ただし、本人が嫌がったらちゃんと理由を説明するのであきらめてください」
「よし!引き受けてくれるか。これで少しは前進だな。ミルアン様になんていったら言いかと正直困っていたんだよ。」
オルミの話では、馬人族のおっさんは夕方頃に狩りの獲物を売りに肉や近くに現れるらしい。ただその後は一目散に逃げて行ってしまうのでどこに寝泊りしているのかもわからないようだ。
オルミだめだめだな。まぁオルミは他に3人部下を引き連れて巡回しているようだが、3人の部下も訓練されているのか動きがきびきびしていて軍隊っぽい。
「街のことについて教えてやろう。この街は今は4大貴族によってそれぞれ統治されている。言ってみれば街を4つに分けているような状態だ」
ドルナーキス 人族族貴族
エブルクアン 鱗人族貴族
ピークラン 鬼人族貴族
ミルアン 妖精族貴族
この4つの貴族で街を分割して統治しているため、それぞれの配下が自由勝手に行動しているらしい。
もともと門のところで街に入るときに税を徴収していたらしいが、4つに分かれたことでどの貴族が正面の門を管理するかで争いが起こり、結局それぞれの統治する場所を利用する場合は配下が税を徴収するような今の体制になってしまったらしい。
そしてさっきもらった木の札を持っていれば各貴族の統治する土地へ出入りしても税を徴収されることがないらしい。
本来はこのシステムを知っている人は、自分が用事のある場所にのみ税を納めればいいので損はしないらしいが、たまにかもにされ、行きもしない場所の分まで税を払ってしまうらしい。
「それではミルアン様のところは統治する場所に入るための税はとらないのですか?」
「ミルアン様は優しいお方だ。知り合いに会いに来ただけで税をとられては、滅多に会えなくなってしまうといい、立ち入るだけでは税をとらないんだ。物を売り買いするときに少し税をかけるぐらいだな」
おお、消費税みたいなものか。でもその考えはいいと思う。立ち入るだけで金を取られるなら、各貴族の土地に住んでいる人が隣の貴族の土地に入るだけで税をとられてしまうことになる。おかしな話だ。
「そのため、3貴族の中で他の人と会う場合はミルアン様の統治する土地で会うこととなる。でなければ毎回金を取られるからな。その代わり物が安かったり、生活税が低かったり別のいい面がある」
そっか。他の貴族の土地は他のメリットがあるから人がいなくならないんだな。ある意味バランスが取れているような気もする。自分の生活環境に合わせて住む土地を考えればそんなに差が出ないのかな?
あとは、ミルアン様は4貴族の中でも一番経済的に厳しいとか、馬人族は人族貴族からかなりしつこく勧誘されているとか、おいしいご飯の店とか、その店の飼っているモーンが最近元気がないなどあまり必要ない情報もいろいろ聞いた。
「じゃあ、とりあえず夕方にこの広場に来てくれ。ここでまっていれば必ず馬人族はあっちのミルアン様の統治する土地にある肉屋に向かっていく。そこで話しかけてくれ」
町の中心にロータリーのような広場があり、中心に噴水がある。ここは各貴族の土地にアクセスできるが、門から入ってきて妖精貴族が統治する土地に行くには必ず通ることになる。少し街を見て時間を潰しまた戻ってこよう。
「わかりました。とりあえず、街を見て回って、夕方になったら戻ってきます。話をした結果は明日の朝ここでお話します」
「わかった。じゃあ、明日の朝ここに来る。よろしく頼むよ」
オルミさんと3人の部下はそのまま妖精族が統治する土地のほうに進んでいった。
「ケン、馬人族との話は任せるよ。夕方に話す内容はまとめておいてね」
「わかったわ。とりあえず挨拶して話を少し聞いてみるわ」
「クロ、ミミ、ティカこの街でいろいろ買出しするものがあるでしょ?とりあえずそれを買っちゃおう。まだ時間あるし軽く食事もとろうか」
「承知いたしました。では先ほどおいしいといっていたお店で食事を取り、道具屋などを回りましょう」
5人で来た道を少し戻りお勧めされた店に入ってみる。
テーブルが並んでおりおいしそうなにおいがする。昼はスープとサンドイッチのような軽めのものを少しとるだけにした。
「ユウ様、一つよろしいでしょうか?」
ティカが話しかけてきた。
「今回はなぜエーテハイムの街まで竜の涙を使ってこなかったのですか?」
「ああ、それか。一瞬で移動できる能力はすごい便利だ。でも、便利だからこそ他の人も使いたいと思うだろう。竜の涙を使って移動したところを誰かに見られると、その力を手に入れたいと思う人たちが何をしてくるかわからないからね」
特に人族貴族は手に入れようとして、どんな手でも使ってくるだろう。
「だから人目につくところに移動することは避けたいんだ。できれば安いボロ小屋でも購入してそこに移動するようにできれば良いけど、今は資金的にはちょっと厳しいな」
「ユウ様、エーテハイムであれば闇族の住処に移動すればよかったのでは?」
・・・そうですね。その手がありましたね。普通に忘れてた。
「それを早く言ってよ。完全に忘れてたわ。でもたまにはのんびり馬車の旅もいいでしょ」
「私は馬車でのんびり来るのが好きだにゃ」
「ユウ様、やはり旅は馬車でするものです。一瞬で移動など楽しみがありません」
クロ・・・お前完全にミミの意見に流されただろ。でもオレもミミの意見には賛成だね。
「私もユウ様とゆっくりお話しながら移動できたので楽しかったのですが、緊急の場合を考えると近く街に拠点を作るのも一つかと思います」
ティカの言うことはもっともだな。エーテハイムは闇族の住処があるから良いけど、グングルトはどこかに拠点を用意しても良いな。
「それもいいな。今度廃墟に行ってお金稼いで来たら、グングルトにも拠点を作ろうかな」
「それなら私も廃墟に行きたいわ」
ケンが申し出てきた。
「少しぐらい能力を上げておかないとみんなの足手まといになっちゃうじゃない。そうしたら私出番が少なくなっちゃうと思うの。影薄くなっちゃうじゃない」
何だこいつ。出番とか・・・影は薄くならないよ。濃すぎるぐらいだ。でも能力を上げることはいいことだろう。
「わかった。影はかなり濃いが能力を上げるのは問題ない。そのときは一緒に連れて行くよ。他の村人も行きたい人がいれば連れて行っても良いね。闇族の住処に移動すれば一瞬だし、人にも見られないから日帰りもできるよ」
そんな感じでたわいもない会話をしたあと、街を散策し必要なものをいろいろ買い込んだ。馬車に積む振りをしながらクロの闇ストレージやオレの無限リュックの中に全部入れていく。
だいぶ日が傾いてきた。もうそろそろ広場に戻ろう。
「それじゃ、ほとんど買うものは揃ったみたいだから広場に戻って張り込みしよう」
それから広場で馬車を止めて待っていると周りがざわめき始めた。
街の人の視線お先を見るとケンを一回り大きくしたようながっちりとした体付きのケンタウロスがこちらに歩いてきた。見るからにすごい気迫を感じ、幾多の戦いを潜り抜けてきた戦士の貫禄が出ていた。
強い。その一言が一番合うだろう。そんな大男が目の前まで来たときにケンが話しかけた。
「同属のお兄さん、私はケン。同じ馬人族よ。この街に馬人族がいるんなんて思わなかったから思わず声かけちゃった」
あいつ!おねぇ言葉かよ。そこは男らしく話しかけろよ!あやしさが倍増しちゃうよ。
「あ・・・あっ・・・あーーーー!馬人族・・・馬人族の方がこの街に・・・やった・・・よかった」
なんかすごい安心しているようだが・・・
「どうしたの?そんなに安心したような表情して。お兄さんのお名前教えてよ」
「申し訳ありません。今まで、街でお金を取られ、だまされ誰も信じられなくなり、一人でずっと不安だったんです。私はガイガス。独り立ちしたいと思い村を出てこの街で生活を始めましたが不安で不安で・・・」
なんか・・・見た目と違ってずいぶんなよなよしてるな。でもケンが話をしてるからだいぶスムーズに話が進んでるようだ。
「そうなの・・・怖かったわね。不安だったわね。でも良く頑張ったわ。別に一人で頑張ろうとしなくてもいいじゃない。私もそんな時期があったけどいろいろ失敗して大人になっていくのよ」
「ケンさん。貴方もいろいろと苦労をしてきたんですね。私はまだ何も知らない未熟者。できればケンさんにいろいろと指導をしてもらえれば、私も少しは大人の男として成長できるかと思います。できれば弟子にしてもらえないでしょうか?」
なんか話が急展開だぞ!なんかすごい強そうだったけど、今は震える子ヤギのような弱弱しい感じになってしまっている。それにケンの弟子って。いろいろ指導してくれってそんなにすぐに相手を信用していいのかよ!
「だめ・・・だめなの。私はこのご主人様、ユウ様に仕える身。この方はすばらしい方よ。私もまだこの方を目指して修行しているようなもの。そんな身で弟子なんて取れない」
こらこらこら!ちらちらとこっちを見るな。オレが許可しないとすごく嫌なやつっぽくなってしまっちゃうじゃないか。
「そうなのですか?!ユウ様、私はケンさんより未熟者。何も役に立てませんがケンさんの弟子にさせていただきませんでしょうか?」
「えっと・・・ガイガスさんはケンの弟子になりたいの?」
「はい。一人前の男になるため、是非ともケンさんの弟子となり指導を受けたいです」
「いいんじゃない?ケンがいいって言えば問題ないよ。でも、うちの村に住んでもらうことになるけどいい?」
「問題ありません。ケンさん、ユウ様に許可を頂きました。弟子にしていただけないでしょうか?」
ケンが腕を組んで考えている。何を考えているかわからないが、ずいぶんと考えている。
「わかったわ。弟子にしてあげる。でも私の指導は厳しいわよ。村の手伝いもするのよ!」
「わかりました。よろしくお願い致します」
「それじゃあ、ガイガス、これからは貴方はガイよ。ガイと名乗りなさい。私達二人でケン・ガイの師弟よ」
なんじゃそりゃ。意味を知らないだろうけど圏外って。ケンはある意味圏外だけどガイはどうなのだろうか?
優しい青年って感じだから、変に害されなければよいが・・・
なんか良くわからないけど、村人が一人増えた。それもケンの弟子という形で。
まぁこれならオルミさんのお願いもかなえることができるだろう。




