第2章 18話 朝日
寒くなってきました。
皆さん風邪には気をつけてください。
一人洞窟を進み、街へ戻る。今はホールスネークは街の近くの洞窟をゆっくりと進んでいるため、街のどこかに罠を仕掛けてそこで仕留めようと思っている。
よく、アニメなどで主人公が奥の手を最後まで出さずにボロボロになり、最後に必殺技であっさり倒してしまうことがある。はじめはどうかと思っていたが、今考えると、はじめに必殺技を使い外したり倒せなかったら、絶望しか残らない。
尺を稼ぐこともあるかと思うが、いろいろ小技で弱らせておいて、確実に相手を倒せるタイミングまで待っているということが本音だろう。
自分が今そんな状態になったから、理解できた心理なのであろう。賛否両論だと思うけどね。
神秘の力を放出するあの格闘ゲームの波〇拳のような技は強いことには強いが、ここで使うと崩落の可能性がある。
神秘の力を手刀にする技は、さっきホールスネークと戦っていた状況で使っていたら、正面からしか攻撃できなかったため、大きな口に食われていただろう。
某忍者アニメのように蛇に食われても腹の中で分身して破裂させることや、某巨人アニメのように食われてから覚醒→巨人化して脱出することはできない。俺にはそんな技はない。
腹の中で手刀を使うことはできるかもしれないが、気持ち悪いからやりたくない。
そんな中考えた作戦は単純だ。蛇は変温動物なので、寒くなると体が動かせなくなると聞いたことがある。それを利用し凍えるような寒さをつくり、動けなくなったところを切るという単純な作戦だ。
街に通じる通路のひとつを延長し、その先にオレが囮として待つ。延長した筒状の通路にホールスネークが完全に入ったところで、両側を土のマテルで固く閉じる。一部手が入る程度に通路の中心あたりに穴を空けているため、閉じ込めたあとに壁の中に水のマテルを使い、ひざの高さぐらいまで水を溜める。
次に風のマテルで気温を下げようとしたが、ホールスネークが暴れだした。かなり硬度を高くし、2重にしてあるため壊れてはいないが、体当たりを始めたためかなり地響きがする。
そうだ!蛇って水の中に居ると結構元気なんだよな。小さいころ田舎で道路で力なく横たわっている蛇を棒で突いていたとき、まったく動かなかったのに田んぼの中に投げたら、泳いで逃げていった記憶がある。暑くてただ動けなくなってただけかもしれないが、水との相性がいいのは確かだ。
静かにさせるため、壁の中の水に向けて雷のマテルを放つ。バリバリバリ!と音を立てて水から煙が上がり、ホールスネークがぐったりとして動きがかなり鈍くなった。
よし!ここで風のマテルを使い、閉じ込めた石棺の中の気温をどんどん下げていく。水が凍り始め、石棺の周りにも霜がついてきた。
すると、ホールスネークの動きが止まり、完全に動かなくなった。そこらに落ちていた棒で穴から突いてもまったく反応がない。
土のマテルを1m程度の範囲だけ解除し、神秘の力で手刀を作り、思いっきり振りかぶり切ってみた。手にドスンとかなりの手ごたえがあり、蛇の胴半分を切り裂いた。しかし凍っているからか半分までしか切れず、途中で止まってしまった。
もう一度振りかぶり同じところを狙う。少しずれたが、蛇の胴を半分以上切ることができた。そんなこんなで数回振りかぶっては切り、振りかぶっては切りと繰り返し13回目でやっと胴体を切ることができた。固まって冷凍マグロみたいになっちゃったよ。皮とか売れるかもしれないな。あとでみんなにとるのを手伝ってもらおう。
胴を半分に切ったからといって油断はできないので、念には念を入れて、今度は頭の部分のマテルを解除し、今度は手刀ではなく、大きな釘のような形にした神秘の力で、上空に高く飛び上がり落下の力で脳に突き刺せないか試してみる。
イメージはパイルバンカーだが、かなり硬いためうまく行くか?
結果は大成功で、パイルバンカーは脳を突き刺し地面まで貫通した。これでまだ動くなら本当に化け物だな。
それから、みんなを呼びに行き事の顛末を話すと、妖魔たちが仇として最後に一撃を与えたいとのことなので好きにさせることにした。
蛇の状態を見てみんな口をあんぐりさせているが、なんかおかしいだろうか?
「ユウ様。何ですかこれは。いつも驚かされますが・・・。なんで頭に大穴が開き、胴が真っ二つなんです?!」
クロが不思議そうに質問してきた。作戦の内容を話したが、それでも信じられないような顔をしている。
「ユウ様はやっぱりマテュリスです!こんな事できる人なんて聞いたことも見たこともないですよ」
ティカは相変わらず美化しすぎだ。そんなにすごいことなのか?
「土のマテルや水、風のマテルを使ったことはわかるにゃ。でもこんにゃ使い方をすれば倒せるにゃんて考えてもみにゃいにゃ」
そうか。使うことはできるが、応用の仕方が一般的じゃないのか。まぁそこは適当にごまかしておこう。
「そうなのか?いつもゴロツキをやっつけるときにやっていることと同じことを、ちょっと大げさにやっただけだよ。そんな大げさなもんじゃないよ」
妖魔の面々も思い思いに攻撃を加えているが、まったくダメージを与えられていない。マテルを使っても、打撃を加えても、うろこに跳ね返されてしまうようだ。
あれを見ると、自分でやったことがなんかすごいことなのかもしれないと自覚してきたが、終わったことなので気にしないこととする。
「クロ、このホールスネークの皮とか他の部位って売れるのかな?」
「はい、この大きさですと、いろいろ使うことができますので皮、肉、内臓、すべて売ることができると思います。細かくするともったいないのでパーツごとに分けて私の闇マテルで保管しましょう」
お!闇マテル便利だね。俺も使えるようになったけど、ここはクロに甘えることとした。
「ユウ様、私たちは妖精と魔物の混血。村の方がおびえるかもしれません。しかし、私達はユウ様の実力、そして寛大なお心に惹かれました。ぜひとも住民として住まわせていただけませんでしょうか」
「いいよ。じゃあ手先が器用なようだし、いろいろ作ってもらったりすると思うからよろしくね」
「えっ?!いいのですか?短時間で決まってしまったのですが、村人と話をするとか、従者と話をするとかそういうのは・・・」
「クロ、必要?」
「いいえ、ユウ様。ユウ様の村ですし、今でもいろいろな種族が混ざって平等に生活しています。大変すばらしい考えだと思います。よって、住民として問題ないとユウ様が判断されれば、私共は素直に受け入れます」
クロがいってくれたことはオレにとっても嬉しいことだ。この世界に来て感じたことは種族間の関係が平等ではないということだ。これはオレにとっては気に食わない事の一つなので、俺の村では種族間の上下関係は一切なしとしている。
これは村で暮らし始めて初めの夜に、みんなに話をして納得してもらっている。奴隷という制度自体いやなのだが、この世界では奴隷が生活を支えている部分もあり、オレ一人で全部の奴隷の面倒を見ることもできないので、自分でできることから始めている。
「だってさ。オレはみんなは同じ人間だと思ってるし、手先が器用な人たちがいてくれた方が村としてもメリットが大きい。だから問題ないよ」
「私は生まれてこの方、土族でさえ初めは見た目で判断され忌み嫌われていました。それが、会ってすぐに住民として受け入れたいと言われ、疑っておりました。自分が恥ずかしい。こんなに心の広い方の側でお力になることができるなら、誰が断るでしょう。是非ともよろしくお願い致します」
「よし!これでまた村が活気付くね。それじゃホールスネークの解体手伝ってね。マテルを解除すれば、ナイフとかでもどうにか切れると思うからちょっと待ってね」
それから火のマテルで氷を溶かし、水をお湯に変え、蒸気で蒸し風呂状態にすることで解凍した。そしてすべてのマテルを解除し、解体作業を行ったが、問題なく解体できた。
「そういえば、俺たち井戸を掘りたくて穴を掘っていたんだけど、ここらを掘っても水脈はなさそうだな」
「井戸?それなら、この村で使っていた井戸に、マテル備蓄の石があるからその石を使えばいい。水のマテルの力を込め、一定の量まで自動で水を追加するようにしておけば使った分だけ水が湧くようにできます」
何その便利でチートな使い方。そうか、マテル備蓄の石を使えば水を出すことができるのね。それも自動でチャージできるなんて便利すぎる。
街の井戸は3つあった。そのすべてに拳ぐらいの大きさのマテル備蓄の石があったので、すべていただいた。
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それから1時間で解体を終わらせ、街の中で使えるようなものを頂き、井戸のところから地上に戻ってきた。
忘れていたが、井戸に入ったのは昼過ぎで、ずいぶん井戸の中にいたのでもう朝になっていた。
朝日に照らされ、妖魔達はみんなまぶしそうに、しかし嬉しそうに日の光を浴びる。数年ぶりの日の光にみんな嬉しそうだ。
また、村の住人が増えた。村が賑やかになるしいろいろと発展できるので喜ばしいことだ。
「みんな、これから住民に説明と、新しい家の作成、そして新たな住民の歓迎会を開く準備をしなくちゃいけない」
3人の従者、そして妖魔はオレの言葉に耳を向けている
「オレは家の作成、クロとミミは住民への説明、そのあとズズ達を風呂に入れて、ゲストハウスに連れて行って休んでもらって。ティカは歓迎会の準備をお願い。寝てないから辛いだろうけど、もう一踏ん張りだ、頑張ろう!」
「承知しました」
「お風呂は心の洗濯にゃ」
「腕によりをかけて準備いたします」
ミミの言葉は聞いた事あるが突っ込んだら負けなきがする。本当は疲れているだろうが、3人ともやる気満々だ。
新たな住民のためにもう少し頑張ろうと、俺を含めた4人はそれぞれの役目を果たしに行動し始めた。
その表情はすがすがしく、疲れを感じさせないような笑顔だった。
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