第2章 15話 村の名前
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村の名前を部屋で考えていたが、いい案が浮かばないため、雨帽子をかぶり外に出てみる。
村はいつもと変わらずだが、雨が降っているため広場に水たまりが多くできていた。少し水の排水とか考えた方がいいな。エーテハイムの街では石畳であったが、道の端に排水用の溝は作られていた。うちの村は地面を固めてはいるが、土のままなので雨が浸透するとどろどろになってしまう。魔獣の皮で出来た靴がどろどろになってしまうな。
そうえいば、雨だけどみんなどうしているのだろう?ふと畑やモーンの小屋の方に目をやると、オーク族、犬族ともに雨帽子を着けている。・・・あれ?ババルさんの持ち物にあったのかな?
カイルさんのところに近づき雨帽子をどうしたのか聞くと、不在の間に行商人のジルさんがやってきたらしい。ババルさんはお金を持っているのはわかるが、ほかの人はどうしたのだろうか?
話を聞くと、今まで時間があるときに木の切れ端などを使い、皿やコップなどを作っていて、それを売ってお金を作ったようだ。
また、みんなで集めた木の実や魚などを売り、お金は等分したらしい。ゲストハウスに泊っていってもらったのだが宿泊費には手を付けず、分けたお金の中からいろいろ購入をしたとのことだ。
ジルさんは、今回もう1人の別の行商人を連れてきたらしい。熊族で大きく温厚な人だったらしい。布や道具類を多く持参しており、今後もこの村を訪れてくれるとのことだ。少しずつ行商人の人が増えてくれれば村も発展するだろう。
そして、ババルさんからは村の畑で採れた初めての野菜を見せてもらった。作付からあまり経っていないが、成長が早く、すぐとれるものを最初に作ったらしい。見た目はジャガイモだが、ゆでるとトウモロコシのような味のものや、赤いレタスのような野菜などがあった。
「この村で初めての収穫ですね。今晩は野菜と肉を使って収穫祭でもやりましょう!みんな揃いましたし、そのときにみなさんに話したいこともありますしね」
それからは大変だった。雨が降っているので、俺たちの家を収穫祭を行う会場として、いろいろと準備を始めた。俺も手伝うといったのだが、村長はゆっくりしていて欲しいといわれてしまい、自室で夕方まで待機だ。
気分転換に外に出たはずが、出戻りとなってしまった。仕方ないので、また部屋の中で村の名前を考える。
せっかく名前をつけるんだから、覚えてもらいやすい名前がいいよな。長いと間違えるし、覚えるのが大変だ。短くてインパクトがあるのがいいかな。
そんなことを考えていると、ドアを叩く音がした。
「ユウ様、収穫祭の準備ができました」
「はいよ!今行く」
部屋を出ると、村人総出だ。テーブルには肉を焼いたもの、野菜のサラダやポトフのようなスープ。蒸かしたジャガイモもどきなどもある。
「じゃあ、みんな飲み物持ったかな?今日はこの村で初めて野菜の収穫ができた。これから他のものもいろいろと収穫できると思うが、それもババルさんをはじめオーク族、そして他のみんなの協力があってこそだと思う。みんな良く頑張ってくれた。今日はみんなで楽しもう!乾杯!」
「乾杯!」
乾杯をした後は無礼講だ。みんなで思い思いに料理を食べ、酒や果物ジュースでのどを潤す。飲み物はこの前クロとミミが買い込んでいてくれた。みんな好きなようだから今後も備蓄しておくことにしよう。
「みんなちょっと聞いて欲しい。もうそろそろこの村に名前をつけたいと思うんだ。オレが勝手に考えたから、おかしかったら言ってほしい」
みんな期待に満ちた目をしている。・・・なんかハードル上がってないか?一応始まる前にクロに話したら、問題ないと言っていたから大丈夫だと思うけど、なんか「ユウ様らしい」とか言われたんだよな。不安だ。
「この村の名前は、「モーン村」にしたいと思うんだが・・・」
なんだこの沈黙。怖い。みんなが固まっているようだが・・・
すると、パチパチと拍手をし始めたと思うと、みんなが拍手をして受け入れてくれたようだ。
「いや~びっくりしたが、ユウらしいな」
ババルさんが肩をバシバシ叩きながら酒を注いでくる。
「ユウ兄ちゃんは面白いね。みんなすぐ覚えそうだね」
子供たちが笑いながら話しかけてきた。
「さすがユウ殿だな。村の名前に魔物の名前は思いつかなかった。でもいいと思うぞ!うちのモーンは温厚だし頭もいい。もっと増やしてもいいと思うぞ」
ヴァンスさんが奥さんと一緒に笑いながら話しかけてきた。うちの村のモーンは特殊なのか?
「本当にいいのですか?なんか村の名前にしていいのか疑問なんですが・・・」
カイルさんは困ったような顔で聞いてきた。
「いいんですよ。覚えやすいですし、これからモーンも増やしていろいろやりたいこともあるんですよ。頑張って増やしてくださいね」
「それは責任重大ですね。頑張りますよ!すぐに必要なら買い足したほうがいいですが、もう少しで繁殖時期ですので、次の暑い時期までには何匹か増やしますよ!
この村の名前はいろいろ考えたが、結局覚えやすく、みんなが知っていて、響きもいいのがいいと思った。モーン村は日本で言うところの牛村だったりホルスタイン村のような響きだろうが、オレにはなんかいい響きなんだよな。
別に魔物だとしてもちゃんと世話してやれば温厚だし、モーンが食肉として食べられていないのは犬や猫と同じような位置づけなんだろう。意思が通じる部分があるから、食べる選択肢に入らないんだと思う。まぁ周りにモーン村として浸透していけば普通に思うだろう。
「ご主人様はやっぱり普通の人とは一味違うわね。まさかモーン村とは思わなかったわ。でも覚えやすいわね。あたしは賛成よ。みんなも受け入れてくれてるみたいね。ひとつ相談があるんだけど・・・」
ケンがやけに素直に話しかけてきた。村の名前を受け入れてくれたことは素直に嬉しい。お願いとはなんだろうか?
「相談なら乗るけど、変な相談はやめてくれよ」
「そんなんじゃないわよ!まじめな相談。この前来た熊族の行商人から話しを聞いたんだけど、グングルトの街で馬人族がいたらしいの。知り合いかどうかはわからないけど、同じ馬人族だし、この村に住まわせて上げられないかしら?」
馬人族か。ケンと同じくおねえだったら、ちょっと考えるが、村の用心棒としても心強いと思うな。
「馬人族は何か理由がない限り自分たちの村を出ないのよ。何か分けありかもしれないから、会ってから決めてもらっていいけど、考えておいて欲しいわ」
「わかった。少し村のことをやるから、落ち着いたら一度グングルトの街に行こうか。そのときはケンも着いてきてくれよ」
ケンは素直にわかったといって、みんなの中に戻って行った。
今日は雨が降っていたけど、みんなで収穫祭として飲み食いを楽しみ、いい一日だった。村の名前も決まったし、これから村の拡張とかも考えないとな。
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次の日、空は久しぶりに晴れ渡り、眩しい太陽の光がさんさんと降り注いでいた。
「クロ、ミミ、ティカ、今日は村の周辺を散策したいから猫族のユシカ、ライゼ、兎族のナジ、アルニと一緒に行動するよ。みんなは村の中の様子を見てくれる?」
「承知しました。雨が続きましたのでいくつか確認したいこともあります。われわれは手分けして村の中を確認します」
それから猫族、兎族の面々に話しをして、一緒に村の周辺の探索に向かう。4人はいつもは2つのペアに分かれて、それぞれ村の周りの森で狩りをしているのでかなり詳しく、細かく周辺の説明を聞きながら森の中を進んだ。
30分ほど東に進んだところ、川の上流にある池にたどり着いた。池といってもかなり大きく、反対側に行くには船が必要なほど広い。いつもは水は綺麗で澄んでいるそうなのだが、今は雨のあとだったため濁っている。
「この池の周りには魔物が多く集まります。強い魔物は少ないため、群れで行動するバックン以外はさほど脅威ではありません」
この池の水が村の近くの川の水源だが、どう考えても川の水の量が多すぎる。池が広いといっても川に流れている水の量を常に流していたら絶対枯れるよな・・・
「池は大きいけど、川に流れる水の量が多すぎない?池が枯れないのが不思議なんだけど」
「ユウ様は水竜の力をご存知ありませんか?」
水竜の力?またなんかすごい力っぽいけどわからないな。
「水竜の力?わからないから教えてもらえる?」
「水竜の力は、水の力を持つ竜が大地に力を封じた後、封じた大地が割れて水が溢れ出し池になるといわれています。池の中心に水竜の力が封じられており、大量の水が湧き出ているため枯れることがないといわれています」
水竜の力か・・・。普通にでかい水脈が地表に出てきちゃって、豊富な水が池に溜まるから川の水の量が多くなってるんだと思うな。でも村の近くに水が豊富なのは喜ばしいことだ。
そのあと森の中を遠回りして村に戻ったが、途中に小高い丘のようになった場所があっただけで、特に変わった場所はなかった。
「ただいま。なんか変わったところはあった?」
「お帰りなさいませ、ユウ様。村の中を確認したところ、ここ最近の雨で、畑の柵付けしていない場所で一部水浸しになり、地下倉庫にも水が入り凍り付いております。床の上に台を作りそのうえに保管をしていたため食べ物は問題ありません」
「あと川の水が濁って飲み水が確保できにゃいにゃ。今は樽に入れてある水を使ってるから問題にゃいけどあまりにゃがくはもたにゃいにゃ」
「村の広場が水溜りが多く、水はけが悪いためなかなか水溜りがなくならないとの事でした」
クロ、ミミ、ティカからそれぞれ問題点を確認できた。それぞれ対策しないとな。
正直言うと村づくりなんてやったことないし、どうすればいいかもわからない。だから手探りで一つ一つ最善策をみんなで考えていかなければならない。
まずは畑の水はけだ。どうすればいいかババルさんに相談してみよう。
宿を出て、畑に向かう。
「ババルさーん!ちょっといいですか?」
ババルさんが畑作業から手を休めてこちらに来てくれた。
「なんだ?みんな揃ってどうした?」
「畑の水はけが悪くて、畑の一部が水に浸かっていると聞いたのでどうしたものかと思いまして、相談しに着ました」
「そうか。畑の水はちゃんと流れる場所があれば抜けるが、今は塀を作ったため外に流れていかん。そこがうまく行けば問題ないだろう」
塀か・・・そうだね。塀を作ったから、他へ流れていく水がそこでせき止められちゃってるね。塀の下に小さな溝を彫って村の外に流れるようにすればいいのか!」
「わかりました。では早速取り掛かります」
塀に溝を作ると溜まっていた水が少しずつ抜けていっている。葉っぱとか大きなごみが詰まると流れなくなっちゃうから、定期的に見てもらうようにババルさんに伝えた。
次に地下室を見に行く。うん。水が入ってきたけど、固まっちゃったんだね。力を入れて踏みつけたら20cmぐらいの厚さがあった氷が割れた。持ち運べるようになったので、外に持ち出した。
次に入り口を20cmかさ上げし、階段もそれにあわせて作り直した。もちろんマテルを使ってやっているので一瞬だ。
次に広場の水溜りだ。ここはエーテハイムの街のようにしてしまおうか?
「クロ、村の広場なんだけど、エーテハイムの街みたいに、固い地面にして細かい溝を入れたらどうかな?」
「良い案だと思います。石畳にする必要はないと思いますが、硬い地面にし、中心から外側に向けて低くし一番外回りに溝を作ると良いかと思います」
さすがクロだ。中心から外側に向けた傾斜をつけるのは、この世界でもそういう技術があるのかも知れないけど、素人のオレにとっては渡りに船。その案を採用しマテルで水を取り除いてから、地面を硬く押し固めるようにイメージし、中心から外側に向けて少しだけ傾斜するようにした。
普通に歩いていたらわからないが、外側に10cmほどの溝を作った。人が歩く場所はトンネルのようにして歩けるようにした。
そして最後に残ったのが水の確保だ。前にも井戸を作ろうとしてそのままだったから、今回作りたいと思う。
「広場の中心に井戸を作りたいんだけど、いいかな?」
「広場の中心より畑に近い位置の方がいいのではないでしょうか?」
ティカが意見を行ってきた。珍しいね。でも意見を言ってもらえるのはうれしい。
「私たちは一日に使う水の量はあまりありませんので、樽や桶で汲んでおけばいいですが、畑やモーンの世話には大量に水を使います。なるべく近くにする方が楽だと思います」
「そうだね。その通りだ。水を使う寮が違うから、多く使うほうのことを考えてあげた方がいいね。よく考えてくれたね」
ティカの頭をなでてあげる。嬉しそうにいつもピンとしている耳をふにゃりとして、目をとろんとさせている。薄い水色の髪がサラサラでなで心地がいい。
井戸を作る位置はモーンの小屋とババルさんの家の間ぐらいにした。少しスペースがあり、川のほうに近いため水が出やすいかもしれないと思ったからだ。
マテルで土をやわらかくして書き出す。なんとなく、やわらかくした土をレンガぐらいの大きさに固めたら、持ち運びやすくなったので、レンガ上にしてから持ち出すようにした。
持ち出したレンガのようなものを使って、ミミとティカに丸く穴の周りに積み重ねてもらう。足場を確保し、足元の土をやわらかくして行きながら、穴の回りも硬く固めて進める。
5mぐらいでだいぶ土の層が砂利などを含み始めた。そのまま進み10mで粘土のような層が出てきた。さらに10m掘ったところで異変が起きた。
土をやわらかくしたら、土が消えた。正確にはそこが抜けたように下に落ちてしまった。光のマテルを使い井戸の底を照らすと、井戸の底にポッカリと穴が開いてしまっていた。
「クロ、これって何だと思う?」
「洞窟・・・でしょうか?闇族の住処のような廃墟でもないようですし、ちょっとわかりかねます」
やっぱり洞窟か何かにぶち当たっちゃったのかな?一応中を確かめた方がいいかな?
クロと、一度地上に戻り洞窟の探索に向けた準備を進めた。




