第2章 14話 神の声
竜の涙という宝石が付いたネックレスに、ごっそり神秘の力を注ぎ込む、というか吸い取られて脱力感を感じたため、自分の部屋に戻りティカをベッドに寝かせてから、クロに話を促す。
「クロ、どういうことか説明して!」
「ユウ様は竜物語をご存知ですか?」
「いや、知らないな。小さいころからあまり物語などを聞かせてもらえなかったのでそういう話は疎いな」
適当に理由をつけておく。いずれはこの世界の人間ではないと話してもいいだろうが、今はまだ早い気がする。
「失礼しました。竜物語とは、昔の人々と悪魔との戦いを描いた物語で、その中でも6人の強者が活躍する様を描いたものです」
冒険ものの物語だろう。この世界でも英雄談や歴史談のようなものがあるようだ。
「その物語の中で、寿命を迎えた竜族の村長が、強者の一人に数えられる一族の若者を案じ、自分の力を一滴の涙に封じ込めたものと語られております。それが緑色をした、こぶしぐらいの涙型の宝石とされているのです」
今の話を聞いた分だと、竜の力を込めた宝石ということみたいだ。すごい力が込められてそうだけど、どんな力だろう?
「竜の涙は、物語の中では一度行ったことのある場所には瞬く間に移動でき、身に着ける者を暑さ、寒さ、雷、毒から守り、魔族に見つからなくなると言われています。そして魔力を込めることで力を発揮するとされていました。」
そんなチート道具があったのか!!でも、なぜそれがあの道具屋にあったのかが疑問だ。
「そうなんだ。それで、このネックレスについている緑色の宝石がその竜の涙に似てたから、みんなの力で試して言ったってことね。わかったよ。でも俺の力が吸い込まれて、他の人の力は吸い込まれなかったのはなんで?」
「それは、竜の涙は自分の波長に合う力しか受け入れにゃいと言われてるからにゃ。ユウ様の力がこの竜の涙の波長とあったにゃ!!すごいことにゃ!!」
興奮して話をしているクロとミミはそのままにして、ティカの様子を見る。静かに寝息を立てている。今日が楽しみで昨日眠れなかったと村の中を歩いていて教えてくれた。デートが無事終わり、安心して眠ってしまったようだ。
(おーい。ユウ殿!ユウ殿!聞こえるか?)
ん?誰だ?なんか誰かに呼ばれてる?
(わしじゃ、神様じゃ)
神様!!いきなりの登場だな。なんか忙しいからオレにかかわれないようなこと言ってなかったか?
(神様!お久しぶりです。なんか急な登場ですね。かなり忙しいとおっしゃっていたかと・・・)
(そうじゃが、気になってな。ちょっと様子を見に来たのじゃ。なんか魔王城が消えてなくなっていたのだが、ありゃどうした?)
・・・なんていえばいいだろう。ここは隠さずに話をしておこう。
(実は、この世界に飛ばされていきなり魔王城に落ちまして・・・。いきなり魔王と戦闘になり、思わず城ごと吹き飛ばしちゃいました)
(・・・そりゃ悪かった。まさか魔王城だったとは。それではあれは必要なくなってしまったかのぉ。竜の涙という宝石をおぬしが寄る村の道具屋に渡しておいた。見つけたら手に入れておいてくれ。好きに使っていいぞ)
(実はもう手に入れました。なんかすごいものらしいのですが、もらっちゃっていいのですか?)
(問題ない。あれは、人が魔族と戦うには必要になるだろうが、魔王がいないのであれば当分復活もせんじゃろう。ユウ殿が持っていてくれた方が安心じゃわい)
なんか神様が面倒なことを俺に押し付けたような気がしたが・・・まぁすごいものだしもらっておいて損はない。
(わかりました。それではお預かりします。あと、魔王を倒してしまったのですが、もうもとの世界に返れたりするのですか?)
(ん?いわなかったかのぉ。次元の歪みをどうにかするまでは、わしはそっちに行けん。その間はこの世界で頑張ってもらうしかないのぉ)
(そうですか。わかりました。どうにかこの世界で生活をできるぐらいにはなりましたので、このまま頑張ります)
(うむ。ユウ殿、魔族のことはたまに気にかけてくれればいい。あとは好きに生きよ。それではわしももう行くのでのぉ)
そういい残して、神様の声は聞こえなくなった。
「ユウ様、どうかなされましたか?なにかぶつぶつといっていたようですが・・・」
あら?独り言みたいになっちゃってたのかな?テレパシーというか、心の声みたいなので会話するんだけど、声に出ちゃってたのかもしれない。
「大丈夫だよ。ちょっと考え事してたんだ。ティカはこのまま寝かせておくし、俺がこの部屋にいるから二人は自由にしていいからね」
そういうと、二人はもうひとつ借りている部屋に移動していった。いろいろ買ったものを整理し、クロの闇ストレージに収納する作業を行うそうだ。
オレはティカの様子を見たあとに、竜の涙を見てみた。
「竜の涙って響きがかっこいいよな」
独り言を言っただけなのだが、竜の涙が点滅している。ん?なんか独り言に反応したような・・・
「竜の涙さーん、起きてますか?」
また点滅している。やっぱり話しかけると反応しているようだ。
「話していることがわかるのですかー?」
点滅している。ただ、タイミングよく点滅している可能性がある。
「では質問しますので「はい」の場合は2回点滅、「いいえ」の場合は1回点滅してください」
竜の涙は2回点滅した。
「竜の涙さんは竜の知識を持っているのですか」
2回点滅した。やはり竜の知識を持っているようだ。
「それでは、言葉を話せるのですか?」
1回だけ点滅した。言葉を発することはできないのか。
「言葉を話せなくても理解はできるのですか?」
2回点滅した。やはり理解している。意思を持っているようだ。
「今は私の従者、ティカが身につけていますが、この者を魔物から守ってもらえるのですか?」
2回点滅した。クロの話どおりだな。魔物から守ってもらえるようだ。
それからもいろいろと質問をしていたが、途中でティカが目を覚ましたため、ティカにも竜の涙のことを説明した。
「えええ!竜の涙さん?は、お話ができるのですか?」
「いや、話ができるんじゃなくて、質問にはい、いいえ出答えてくれるんだよ。意思はあるみたいだ。わからないこととかがあれば聞けるんだよ」
「ふぇ~。竜の涙さんは物知りなんですね。でも私にとってはユウ様がくれた初めての贈り物なので一生大切にいたします」
竜の涙はテカテカ点滅し、喜んでいるようだ。
-----
その後、2日間エルト村に滞在し、自分たちの村に向かい出発した。エルト村にいる間に、一緒に来たメンバーには竜の涙のことは話をしたが、あまり他に話が広がるのはいやだったので、誰かに何かを聞かれてもレプリカだといってもらうように、お願いをした。
帰りはガレム村に寄らずに直接俺たちの村に向かった。帰りは、途中で1回野営をしたが、出発した次の日の昼過ぎには村に到着した。
「あら!お帰りなさい。ご主人様がいなくて、私さびしかったわ。すぐに抱きしめて!」
ケンは相変わらず気持ち悪いが、元気いっぱいだ。俺の前にティカが立ちふさがり、ケンを押しのけようと頑張っているが・・・びくともしない。体格差がありすぎるためティカが頑張っても無理・・・じゃないようだ。
竜の涙が少し光ったかと思うと、ティカが踏ん張って押すと、ケンが後ろに押されて離れていく。
「なに?なになになに?!この子こんなに力があるの?いつの間にそんなに力をつけたのよ!」
周りのみんなも固まっている。もちろんオレも固まっている。たぶん竜の涙が光っていたから力を発揮してるのだろうけど、子供のように小さなティカが大きなおっさんを押しているのが信じられない。
「ユウ様にはっ、近づいたらっ、だめっでっ、す!」
ティカが、ケンの胴体を持って持ち上げた!こりゃ大変だ。
「ティカ!ティカ!大丈夫だって。ケンも本気じゃ・・・ないと思うから、そこらへんでやめてあげて」
ティカの強化が解除されやっと落ち着いた。みんなびっくりしすぎて声も出ないようだ。
「あーこれはだな、ティカの着けているネックレスの力だ。竜の涙の本物だ。このネックレスが力を発揮したんだ。だから、ティカは今までどおりだ。このネックレスのことは村の外のものには、聞かれてもレプリカだと言ってくれ。
なんか村に帰ってきていきなり疲れたな。
その日は疲れていたため、夜ご飯を食べて風呂に入ったらすぐ寝てしまった。
-----
翌日の朝は、やはり雨だった。村に帰ってくるときは雨は振らなかったが、また降り始めてしまったようだ。
「おはようございます。ユウ様。今日は特に予定はありません。村民から要望が出ております」
要望?なんだろう。聞くのがすごい怖いんだけど。
「村の名前をつけて欲しいとのことです」
村の名前か。さすがにオレの村とか言い続けるのもどうかと思うし、ここはちょっと考えよう。
「わかった。それじゃあちょっと考えさせてくれるか?」
「承知いたしました。できましたら、お声をかけてください。
村の名前か。どうしようかな・・・朝から村の名前を考えながら一日が始まった。




