第2章 13話 雨
昨日歓迎会をしてもらい、寝たのが遅かったので朝起きるのも少し遅めに起きた。だが、なんか外がいつもより暗い。
布団から起き出し、木でできた窓を開ける。この世界ではガラスのような透明なものはあるにはあるが、かなり貴重らしい。ほとんどは木枠の窓のため、部屋の中は暗く、光る石やマテルを使い明るくしている。
窓を開けると、どんよりとした曇り空に、雨がシトシトと降っていた。こっちに来て初めて雨になったけど、地球と同じだな。
「ユウ様・・・起きていらっしゃいますか?」
ドアの外でティカが声をかけてくる。最近はクロではなくティカが起こしてくれることが多い。
「起きてるよ。入ってきていいよ」
ティカがドアを開け部屋の中に入ってきた。なんか元気がない。そっか。雨降ったからデートが出来ないからかな。
「おはよう。雨降っちゃったね。デートどうしようか?ティカがいいなら雨でもデートしようか?」
「いえ・・・ユウ様が濡れてしまいますので。今日は・・・」
「おはようにゃ」
「おはようございます」
ミミとクロが入ってきた。こちらの二人はさすがにプロというべきか、いつもと同じ平常運転だ。
「ユウ様、本日は昨日のお話の通り、その・・・おっ、おやっ、お休みをいただきたたたき、いただだたい、いただきたいと思います。よよ、よろしいでしょうか?」
前言撤回、クロはやっぱりデートのことを考えているようでポンコツになってる。ポーカーフェイスのくせに噛み過ぎだろ。
「うん、いいよ。あっそうだ!3人にはちゃんと給料を渡すね。少なかったら言ってね」
オレは一人に銀コイン1枚をそれぞれに渡す。
「そういえば、村の人にはお金渡したほうがいいのかな?」
「それについては各村人に確認しております。必要なものがあるときは、私たちが村を出るときに必要なものを聞いて買っていますので、特にお金が必要ないとのことです」
さすがクロだな。事前に確認していてくれたんだ。そっか、この前街に行った時も、食料とか道具とか買い出しに行ったとき、クロとミミがいくつか買ってもらいたいと言ってたな。そこらは二人に任せてもいいな。二人にはお金をいくらか渡しておこう。
「オーク族は畑で採れる野菜を売ることが出来るようになれば問題ないそうです。犬族は肥料を作り、いずれオーク族からお金をもらうそうです。兎族と猫族は狩りで得たものを売るそうです。他には、各自手の空いている時間で工芸品を作ると言っておりました。行商人が来たら買い取ってもらうとのことです」
それぞれいろいろ考えてくれてるんだな。ケンも手伝いしたり、工芸品作ったりするって言ってたし、それなりに収入が見込めるだろう。当分は食べるものには困らないだろうし、うまくお金が回るようになれば村っぽくなるかな。
「クロ、ミミ、二人には当面の運営費用を渡すから、みんなが欲しい物とかを聞いて、村を出たときに買ってあげてくれるかな?自分の給料とは別にしていてね」
運営金として金貨を1枚ずつ渡す。これだけあれば当分は持つだろう。
「承知いたしました。ありがとうございます。それでは今日は・・・その・・・ミミとお休みをいただきます。ではミミ、行こうか」
「ちょっと待って!二人は今日は雨降ってるけど・・・どうするの?」
「?デートするにゃ。買い出しもする予定だから忙しいにゃ」
「でっ、デートは雨だろうが雷だろうが関係ないです。二人の気持ち次第です」
やけに力強い口調でクロがいう。そうだよな。オレも雨は特に気にしないし、ティカもいきたそうだからいこう。
「ティカ、そういうことだからオレ達も行こうか」
「いいんですか!!わっわかりました。準備をしてきます」
なんか一瞬のうちに消えたぞ!目で追えなかった。なんて速さだ。クロとミミも何が起きたのか?とキョトンとしていた。
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それからクロとミミは二人で仲良く部屋を出ていった。オレも準備をしてティカを待つ。それから10分ほどでティカが戻ってきた。いつものハンドメイドのメイド服ではなく、普段着に着替えたようだ。
「じゃあいこうか」
「はい」
これから宿屋を出て、村の中を散策しようと思うが、この世界には傘はないのだろうか?
「ティカ、雨降ってるけどこういう時ってどうしてる?」
「?普通は雨帽子をかぶるのではないのですか?」
アメボウシ?なんだそりゃ。今まで見てないな。雨降らなかったし仕方ないが・・・
「雨帽子ね。俺持ってないんだけど・・・道具屋で売ってるかな?」
「はい、私も持っていないので、道具屋さんで買おうと思っていました。ここからだと道具屋さんまでそんなに離れていないので、走ればさほど濡れないと思います」
「よし、じゃあ行こうか!」
オレはティカの手を取り雨の中を走る。といってもティカが着いて来れないので少し早歩き程度だ。ティカは一生懸命走っているようだが、チョコチョコと飛ぶように走っているので、あまりスピードは出ないようだ。
10秒ぐらい軽く走り、道具屋までたどり着いた。というか3軒隣ぐらいだったのでかなり近かった。
「こんにちは」
「はーい。あら、いらっしゃい。昨日のタリアたちを連れてきてくれた人たちね、本当にありがとうね。村人みんな喜んでいるわよ」
道具屋にはふくよかなオークの女性がいた、肝っ玉母ちゃんタイプだ。ガレム村のクーリさんと同じタイプだ。簡単な会話をして本題に入った。
「雨帽子はありますか?」
「あるよ、そっちの棚に置いてあるから好きに見ていいわよ」
指を差したほうの棚には、大きな帽子が置かれている。なんかセレブの人が着けている、意味もなくツバの大きな帽子に似ている。簡単に言えば大きな帽子で体にかかる雨を防ぐって感じなんだろう。足元は濡れるよな・・・
ティカと二人で雨帽子を選ぶ。いくつか種類があるようだ。花のワンポイントが入っていたり、何かの模様が入っていたり、色付きのものもある。
「どのようなものがいいでしょうか・・・?」
ん?これはティカが自分に合うものを選んで欲しいってことかな?
「これなんかいいんじゃない?この花の色はティカの髪の色と同じような色だし、ティカに似合っていると思うよ」
3つの花の模様が入った雨帽子だ。生地は白いが、花の色が水色のため、ティカのイメージにぴったりだ。
「かわいい・・・これに!私はこれにします!」
「じゃあオレは・・・」
「これはどうですか?」
ティカのお勧めは、黒い生地に白で鳥の羽のようなワンポイントがついている。黒は嫌いじゃない。髪の毛が黒いからイメージが黒だったのかもしれない。黒は闇族のクロのイメージが強いけど、クロの髪の色はシルバーなんだよな。
「お!それいいね。じゃあこの二つは買おうか。他にもいろいろあるからちょっと見てみよう」
せっかく道具屋に来たので、他にもいろいろ物色する。傷薬や、やけどに効く薬、農具やアクセサリー類なども置かれていた。
ティカがアクセサリーにちらちら目をやっているが、遠慮してなのか、ちゃんと手にとってみようとはしない。
「ティカ、そっちにアクセサリーもあるから見てみよう」
「・・・はい」
恥ずかしそうにうなづいた。見てるのがばれて恥ずかしかったようだ。
アクセサリーは腕輪やネックレスがほとんどだ。指輪ってのも歩けど、結構ごっついやつばかりだ。オレはその中でもひとつのネックレスに目が行った。
ネックレスは宝石と飾りがいくつもついているような派手なものが多いが、その中で1つだけシンプルだが、存在感のある宝石が1つ付いているものがあった。
「すみません。これって、他とだいぶ見た目が違いますが、何か特殊なものなんですか?」
「どれどれ・・・あぁそれね。前に行商人の人が誰も買ってくれないから、邪魔になるのでここに置いて欲しいといわれて、安く譲ってもらったのさ。特に何も効果はないと思うけど、他のものに比べて、何も飾りが付いていないから見栄えも良くなくてね。竜物語に出てきた物のレプリカだろうけど、売れ残っちゃってるのよ。それを買ってくれるなら、他の物も安くするよ」
竜物語?しらないな。うーん、見栄えは他に劣るんだけど、なんか気になるんだよね。1つだけ付いている宝石は、こぶしより少し小さい雫のような形をした宝石で、エメラルドのように緑色だ。
なんかすごく気になる。これ・・・ティカは気に入るだろうか?すごく似合いそうだけどなぁ。
「ティカ、他よりシンプルだけど、これなんてどうかな?ティカは何を着けても似合うと思うけど、これが似合いそうなんだよね」
「そっ、そうですか!ユウ様が選んでくれたものなら何でもうれしいです」
ティカが買って来ようとしたので、引き止めて、他のものと一緒に俺が会計をする。実はクロ、ミミ、ティカに従者としての証として腕輪を3つ一緒に購入した。
腕輪は手首につけるタイプで、1cm幅ぐらいで銀色に輝いており小さな赤い宝石が埋め込まれている。
金額は雨帽子もあわせて銀コイン3枚だった。ティカにネックレスをつけてあげ、腕輪もつけてあげた。
「こんなにたくさん・・・ありがとうございます。一生大切にします」
すごく喜んでくれたようだ。俺も嬉しくなる。雨だけどデーと自体はうまく行っている。
そのまま雨帽子を装着し、外に出た。
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そのあとは街の中をぐるっと周り、武器・防具屋を最後に見て、宿屋に戻ってきた。お昼の時間ぐらいだろう。ちょうど何かを食べたくなったところだ。
「おじさん!ちょっとおなか減ったから、おいしいもの食べさせて!」
宿屋の主人に料理の注文をして、その間、いろいろな話に花を咲かせた。
「ティカ、いつもありがとう。こんなオレだけど、ティカや他の二人のおかげでどうにかやっていけているよ。これからもよろしくね。休みのときはまたデートしよう」
ティカはうんうんと何回もうなづいている。今日は楽しんでもらえたみたいだし、俺も結構楽しかった。また行きたいと思っていた。
クロとミミが帰ってきた。なんか前よりぎこちなくなっているような気がするが・・・まぁそれは本人たちの問題だな。
「クロ、ミミ、二人にこれをプレゼントするよ。従者の証みたいなものだよ。これからもよろしくね」
二人ともプレゼントを見て驚いている。
「ありがとうございます。これからも末永くよろしくお願い致します」
「ありがとうにゃ。きれいにゃ。」
お?!ミミの頭にきれいな髪飾りがついている。
「ミミ、クロに買ってもらったの?」
「そうだにゃ。クロさんはやさしいから一番きれいなものを買ってくれたにゃ」
クロはずいぶん奮発した様だ。ミミも嬉しそうにしている。
しかし、クロとミミがティカのことを見てから、お互いい顔を見合わせ、そしてティカに近づいてネックレスをみている。
「これって・・・。まさかあれじゃにゃいかにゃ?昔話で聞いたことあるけど初めて見たにゃ。私の力を試してみにゃ・・・だめにゃ反応しにゃいにゃ」
「そうですね。これはあれですね。私も話は聞いたことありますが、見るのは初めてですね。試してみましょう・・・私の力ではだめですね」
「まさか本当にあれなんですか?道具屋の店主はレプリカだと言っていましたよ。私の力は・・・ダメみたいです。」
3人で何やら話をしながらいろいろ試しているようだが、うまくいかないようだ。昔話で・・・とか話してるからさっき聞いた竜物語に出てきたものに似てるのかな?
「ユウ様、少し力を貸していただけませんか?」
「ん?なにするんだ?オレでよければ力になるよ」
クロがオレに協力を求めてきた。なんだろう、ネックレスと何か関係があるのか?
「いや、力を貸してほしいというのは、神秘の力をこの宝石に込めてほしいのです」
そういうことね。でもなんでオレの力を込めるのかな?
「いいよ、でもみんなの力じゃダメなの?」
「この「竜の涙」は力を選ぶにゃ。さっき3人ためしたけど、だめだったにゃ。ユウ様の力にゃら大丈夫かもしれにゃいにゃ」
なんかわからないが、とりあえずオレの力を込めればいいみたいだ。
右手に力を集めネックレスに近づけると・・・おっ?!おおお?!?!なんかぐんぐん吸い取られてるみたいだ。
「すごいにゃ!すごいにゃ!これは本物の竜の涙にゃ!」
「まさか本物が存在するとは・・・いやこの状況を見れば疑いようがないか・・・」
「わっわたしはこんなすごいものを・・・ふにゃ」
あら?!ティカがよろけて倒れそうになったのでオレが抱き留める。ネックレスはオレが力を込めるのをやめようとしてもぐんぐんと力を奪っていく。まだ余裕はあるが、すごいな。これは青いマテル備蓄の石より力を込めてることになるぞ!
それから、オレの力の3分の2ぐらいを吸い込み、やっと竜の涙が力をすうことをやめた。これ何なんだろう?
不思議なネックレスに興味を持った従者3人の興奮とは正反対に、その日の午後も静かに雨が降り続いていた。
11/4 更新が少し遅くなり申し訳ないです。
体調不良です。のどが痛い・・・




