第2章 12話 里帰り
ガレム村までは問題もなく順調に進み、休みを取ながら夕方には着いた。
「ユウさんにババルさん!お帰り、それに仲間のみなさん、よく来てくれた」
門番のシルテさんが声をかけてくれた。
「こんにちは、シルテさん。今日はババルさんや仲間も一緒です。村に入れてもらえますか?」
「もちろん。今みんな広場に集まってると思うぞ。オレももう少ししたら行くところだ」
ん?何かイベントでもあるのかな?
村に入り、まずは宿屋に向かう。ナグリさんはまだいるだろうか?
「こんにちは。ナグリさんいますか?」
「はいよっ、お!ユウじゃねーか、この前村に来てから結構経つな。元気にしてたか?ババルさんは・・・なんか前より元気そうだな、がっはっはっは」
ナグリさんとババルさんが言葉を交わしている。やっぱり村の人と仲良かったから、すぐに昔みたいに話し始めた。
「ナグリさん8人なんですが、3部屋用意してもらえますか?」
「おう、大丈夫だ。ただ、今から広場にみんな集まるんだ。それが終わってからでもいいか?ユウたちも来るだろ?お前たちならみんな歓迎するだろう」
「わかりました。私達も一緒に行きます」
なんだろう。何かあったかな?ババルさんに聞いてみたところ、暑い時期の前にやる「星降りの儀式」というらしい。
この時期は星が大きく見えるため、星の力が大地に降り注ぎ、土を潤し、よい野菜を作れるのだそうだ。オーク族の伝統行事として、星が大きく見える時期に星に祈りを捧げるのだそうだ。
ナグリさんとクーリさんそしてライと一緒にオレ達も広場に行く。すると村人がオレ達を受け入れてくれた。
「ユウ殿、よくぞ参られた。ババルも他のみなさんもよく参られた。今日は暑い時期の前に行う星降りの儀式じゃ。儀式が終われば飲み食いをするので是非とも参加していただきたい」
「お久しぶりです、ケルダさん。是非とも参加させていただきます。お礼と言ってはなんですが、今日は肉をお土産に持ってきました。皆さんで食べてください」
「おおっ。これはこれは。こんなにたくさんありがとうございます。さっそく村の者に預けましょう」
それから儀式を見学した。儀式用の衣装を着たマールさんが、広場の中心にある焚火の周りを、棒の先につけた光る石を星に見立てて、空から地に降り注ぐさまを表現しながら踊りの様に舞っている。
すると大地がところどころ微かに光はじめ、神秘的、幻想的な風景となった。これは神秘の力だ。微力だが神秘の力が光を放っている。こういうのを見るとクリスマス時期に至る所で行われるイルミネーションを思い出す。
オレにはただ写真を撮る人が邪魔なだけで、あまりいい思い出はないな。でも、今目の前で起きていることには見とれてしまった。きれいだ。
儀式が終わり、みんな飲み食いをし始める。そこにマールさんが近づいてきた。
「ユウさんお久しぶりです。儀式はどうでしたか?」
「マールさんお久しぶりですね。儀式凄かったです。なんか幻想的で見とれていました」
本当にみんな見とれていた。うちらは後ろのほうだったからはっきりは見えなかったが、すごくきれいだったのは確かだ。
「まぁ、見とれてしまっただなんて。恥ずかしいわ」
「いかん!娘はやらんぞ!!」
相変わらず、ケルダさんは過保護だな。まぁオレもそんな気はないが・・・。
「あら!誰かと思ったらマールお姉さん?さっき儀式をしているとき似ているなぁとは思ったんだけどやっぱりマールお姉さんだったのね」
「タリナ?タリナなの?!人族の貴族に連れていかれてしまったと聞いていたけど、本当にタリナなのね!」
マールさんとマーラさんは知り合いのようだ。お姉さんと言ってたけど、さすがに姉妹ではないだろう。でも似てるから・・・親戚か何かかな?タリナっていうのはマーラさんの元の名前かな?
それからマールさんとマーラさん、村長も含めて話をしていた。俺は持ってきた肉を小さく切り、焼き肉を振舞っている。うちの村で好評だった、塩、コショウ以外に柑橘系の果物の果汁をかけたものを出したところかなり好評で、みんな焼きあがるのを待っていた。
「まさかユウ殿が隣の村のタリナ、今のマーラ達を助けてくれていたとは・・・。それに奴隷解放をして村に住まわせてくれているとは。オーク族としては感謝してもしきれないですな」
「いやたまたまですよ。そんな大げさな事じゃないです。今は大切な住民ですし、こちらが助けられてますよ」
そのあと、マールさんから話を聞いた。マーラさんはケルダさんの弟さんの娘らしい。従妹ということになる。やっぱり似てるよな。
「マーラさん、元の名前がタリナさんだったんですね。自分の好きなほうの名前を名乗っていいですよ」
「私はもうマーラです。ユウ様からもらった名前ですし、マーラのほうが気に入っているんです」
本人がそれがいいというならそれでいいと思う。マーラさんはマーラさんだ。
それからも宴会は続き夜中に解散となった。みんなお酒が入っているので宿に帰ってからグダグダ言い出し大変だったが、クロとミミとオレでどうにか寝かしつけた。
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次の日、村に寄付した分の肉で、食えなかった残りの肉は、うちの村と同じように地下室を作り保管してもらうことにした。前に寄付したマテル備蓄の石があるためすぐにできる。
始めはオレが力を込めたが、1分ぐらいで赤く光を放つようになった。今後は神秘の力が足りなくなってきても、村の子供たちがみんなで力を注げばもつだろう。
「村にこんなすごいものを作ってもらってもらい、感謝しております。重ね重ねなんとお礼を言ったらいいか」
「いいですよ。前にお渡ししたマテル備蓄の石を使っただけです。これでいろいろ保存できるので活用してくださいね」
ガレム村から隣村までは馬車で半日とのことなので朝から出かけることにした。村のみんなに別れを告げて、オレ達は次の村に向けて出発する。
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ガレム村の門を出て東に向かう。途中休憩をはさみながらだが、今日の昼過ぎにはつけるとのことだ。
「そういえば、マーラさんとテーナ、サイガはみんな同じ村なんでしょ?」
「はい、エルト村と言います。ガレム村と同じぐらいの規模で、村長はジブカといい、私の父です」
ガレム村のケルダさんの兄弟だったよな。娘が無事に帰ってきたら喜ぶだろう。
そうこうしているうちに村が見えてきた。ガレム村と同じように柵が作られているが、門が少し大きい。そして、門には2名の若者が立っていた。
「おーい。みんな!私よ、タリナよ!ただいま!!」
「ん?!タリナ?本当にタリナなのか?おお!ムイやテーナまでいるじゃないか!こうしちゃおれん、みんなに知らせてくる」
門番の一人は村の中に走って行ってしまった。オレ達もすぐに通してもらい、まずは村長の家に行く。村長夫婦は家の前で出迎えてくれた。
「タリナ!タリナなのね!」
村長夫人がマーラのところに駆け寄って抱き合っている。お互いに涙を流し無事を報告しているようだ。村長もそんな二人を抱きしめ、娘の無事を喜んでいる。
そのあと、サイガとテーナの家族も駆けつけ、みんな泣きながら無事を喜んでいた。
「行商人のユウ殿、娘から話を聞きました。なんとお礼を言ったらいいか。奴隷としてでも生きていればと思っていましたが、奴隷を解放し村に住まわせていただいているとか。本当にありがとうございます」
他の家族もしきりにお礼を言ってくる。なんかこそばゆい。そんな狙ってやってたわけじゃないのに結果的にはよかったな。
「ユウ殿は奥さんがいるのかね?いや、奥さんがいたとしても妾をとるつもりかね?」
「いえ、私はまだ独り者ですし、妾をとる気はありません」
「そうか。いくら娘の恩人とはいえ、タリナを嫁には出さん!まだ早すぎる!!」
・・・やっぱりそうだった。ケルダさんと同じく娘を溺愛してるな。
「大丈夫です。私はそんな気はありませんよ」
「なに?!それは娘に魅力がないとでも言いたいのかね?」
面倒くさい。ケルダさんだけでお腹いっぱいなのに、ジブカさんにまで参戦されたらさすがにウザイわ。
「ユウさんはいずれ私だけのご主人様になるのです!他の方は心配いりません!」
ティカ・・・おとなしくしていると思ったが、いきなりぶっこんで来てくれたな。
オレはすでにクロやミミの主人なんだが・・・あーあ、クロやミミの笑顔がひきつってるぞ。あとで修行という名のお仕置きを受けてるだろう。南無。
その日の夜は歓迎会を開いてくれた。持参した肉を見せたら、村のみんながすごく喜んでくれたのでいつもの通り、焼き肉で焼き手を引き受けている。それにしてもみんな食うな。
こう、毎日焼き肉ばかりしていると、さすがに太りそうだな。あとで運動でもしよう。
「ユウ様、私は本気ですよ。淑女の修業が終わったら、身も心もユウ様に捧げます」
酒が入っているティカが絡んできた。年齢的には問題ないが、見た目的には子供が悪ふざけで酒を飲んでしまった感じだな。
「はいはい、その気持ちだけでうれしいよ。そういうのはもう少し大人」
「大人です!もう立派な大人なんです。体だって最近成長してるんです。背は・・・少ししか変わりませんが、胸は大きくなってきました。どこまで大きくなるかわからないけど・・・もう見た目も中身も大人です!」
ムキになって怒っているティカを見ると、やっぱり微笑ましい。子供が怒っているようで、頭をなでてしまう。頭をなでると嬉しそうににやにやしているが、その姿がやっぱり子供に見えてしまう」
「もう!子ども扱いしないでください。もう25歳なんですよ。そんな頭をなでられてうれしがるなんて・・・そんなこと・・・」
どうにか理性を取り戻したようだったが、また頭をなでるとぼけーっとして嬉しそうにしている。なんかかわいい小動物みたいだ。
「ユウ様、ティカをいじめないでほしいにゃ。ティカは頑張ってるにゃ。たまにはちゃんとご褒美も必要にゃ」
「うん、最近すごい頑張ってるのはオレも見てるからね。なんかご褒美ね・・・ミミはクロにどんなご褒美もらったの?」
「?!わっ、私かにゃ?!ごっご褒美は・・・・」
ミミがクロを見上げている。もしかしてミミもご褒美もらってないから欲しかったのかな?
「クロ、ミミも頑張ってるんだからちゃんとご褒美を上げないとダメだろ!よし!明日は休みにしよう。二人ともまたお小遣いあげるから一日自由にしていいよ。またデートでもしたら?」
「でっ、でっ、デートですか。そっ、それはいいかもしれませんね。ミミ!明日はでっ、デートだ。どんなご褒美がいいか考えておきなさい」
「私は・・・クロさんが意地悪しないなら何でもいいにゃ」
「何でも!?くぁwせdrftgyふじこl」
あら。最近はちゃんと万能執事だったのに、久々にポンコツになったな。鼻血出して倒れたよ。ミミが慌てて体を支えたけど、なんか呆れてる。
「もうそろそろ、慣れて欲しいにゃ・・・」
ミミは大変だな。でも明日のデートで少しは進展するだろう。
ん?なんか・・・すごい視線を感じる。そっちを見たら食われそうなほどすごい視線を感じる。
「ユウ様、私たちもデートしませんか?」
「そっ、そうだな。でもババルさんが一人だとさびしいだろうから・・・」
「俺は、明日はこの村の畑を見ている者と話をすることになってるから、気にしないでくれ」
くそっ。唯一の存在があてにならなくなった。まぁいいか。明日はオレもこの村を観光しよう。
「わかった。じゃあ明日は二人でデートをしよう。この前一生懸命看病してもらったし、そのお礼も兼ねてね」
「ありがとうございます。明日が楽しみで眠れないかもしれません」
目を輝かせてうれしがってくれているティカを見て、オレも楽しみになってきた。
明日はどんな感じになるかな。そんなことを考えながら歓迎会の食事を口に運ぶのであった。




