第2章 09話 襲撃(1)
それから数日経ち、みんな村に慣れ始めた。猫族と兎族の4人は狩りを始め、直接捕まえる以外に罠を使った猟も行っているようだ。狩りの成果はまぁまぁのようだが、周りの地理にも詳しくなっているようだ。
ババルさんたちはオークの新人3人に畑での野菜の育て方や手入れの仕方を教えているようだ。マテルを使えるらしく作業も捗っている様だ。
カイルさん家族はモーンを世話して、肥料を作ることにとりかかっている。モーンの感情を読めるため、ストレスも少なく元気に成長しているようだ。今後は繁殖もしたいといっていた。
ティカはクロとミミから淑女の特訓を受けており、毎日家に通ってきては料理や掃除、裁縫、作法などを教わっている。
オレはというと、ケンが暇そうにしているので手伝わせて、畑を含んだ今の村の敷地を囲うように、2Mぐらいの壁を作っている。
オレがマテルで壁を作り、ケンには木材を加工して門の扉を4か所作ってもらっている。村の東西南北に4か所、馬車が対面通行できる大きさの門を作り開閉できるようにしたいと考えている
通常、街の門などは大きく重いため数人で動かすが、この村は人手が足りないため、門に一工夫加えた。
門の下に木のタイヤを作り設置し、一人でも押して動かすことができるものとしたのだ。門を締め切るときは両方の扉に木の棒を差し込み、かんぬきとするが、そのほかに扉に設置された杭を下ろすと、地面に空けた穴に入り、扉が固定される構造とした。
「こんな門は見たことないわね。でもいいかも。少ない人数でも開け閉めできるから、いざというときすぐ対応できるわね」
お!ちゃんと有効性を見抜いてくれたようだ。まぁ完成まではもう少しかかるから、ケンには引き続き門の扉づくりを頑張ってもらおう。
そんなある日、狩りに出ていた4人が、大声を上げながら村に戻ってきた。
「おーーい!みんな。すぐに逃げるんだ!魔物の群れだ。早く逃げろ!」
魔物の群れ?この前みたいなロッコとバックンの群れかな?でもそれならあんなにあわてないだろう。
「ユウ様!早くお逃げください。魔物の群れが森からこちらに向かってきます」
兎族のアルニが慌てた様子でオレに逃げるように訴えかける。
「魔物の群れってどのぐらいの規模なんだ?」
「そんなこと言っている場合じゃ・・・150匹~200匹のいろいろな魔物の群れがこちらに向かってきています!さすがにこれは住人総出でも手に負えません」
アルニは必死だ。肩で息をして震えながら話していた。
「クロ、ミミ、どうした方がいいと思う?」
「私は村の外で迎え撃つことも一つかと思います。ただし、私たち以外は作成中の門の上で弓を使い攻撃させれば安全で、戦力にもなります」
「私も同じ考えにゃ。このまま逃げたら村がつぶされちゃうにゃ」
大声を聞いて村の面々が集まってきた。
「みんな聞いてくれ。今、村に魔物の群れが向かってきている。もうすぐ見えるだろう。このまま逃げると、せっかく作った村が潰されてしまう可能性がある。まだ壁が未完成だから、村の外で迎え撃ちたいと思う」
真剣に話を聞いていた面々だが、俺の説明を聞いてさすがに恐れを抱いているようだ。
「大丈夫だ。戦闘に慣れていないものは壁の上で弓を使って攻撃してくれればいい。壁は今からすぐに補強して上にも乗れるようにする。俺とクロとミミが前線で戦うから、間を抜けてきた魔物を排除してくれればいい」
「私も戦えるわよ。せっかくすごい弓もらったんだからいいところ見せるわ」
ケンも戦ってくれるみたいだ。
「それなら、ケンは俺達の後ろで援護射撃をしてくれ」
ケンに渡したものよりもう少しレア度が低そうな弓を出し、みんなに渡していく。それでもみんなびっくりしていたのでやはりそれなりのものなのだろう。あとでクロにいろいろ見てもらったほうがいいな。価値がわからないからそこらで出したらまずいものもあるかもしれない。
それからすぐに配置に付いた。村の畑側の壁を補強し、みんなを上に乗せてから3人で魔物の群れが来る方向に立ち準備をする。
「クロ、ミミ、廃墟で戦った以来の本格的な戦闘だから、足を引っ張るかもしれないけどよろしくね。それと、マテルもばんばん使っていくからよろしくね。くれぐれも怪我には気をつけてね」
「こちらこそよろしくお願いします。私もマテルを使いながら戦います」
「私はマテル使うとすぐに疲れちゃうにゃ。まずはダガーでどんどん数を減らすにゃ」
会話をしていると地響きが響いてきた。森の中のため良く見えないが、以前に戦ったことのあるバックンやマッドタイガーなんかもいるようだ。その後ろにサイのような魔物や象のような魔物もいる。ただ小さく身軽な魔物が第1波としてオレたちのところに到達するようだ。
まず目の前で飛び掛ってきたバックンを横に避けながら切り飛ばし、その流れでマッドタイガーの首を飛ばす。動きを止めるとすぐに襲い掛かってくるため、流れを止めずに振るう。
しかし数が多い。雑魚は剣だけでどうにかできたが、魔物が強くなってきたためマテルを使う。まずは落とし穴をそこらじゅうにつくり魔物を落とす。そこに水のマテルを流し、出てこれないところを雷のマテルで電気ショックを与える。いつもこのパターンだが、シンプルで効果が大きい。
何匹か間を抜けていっているが、ケンが早業で仕留めているようだ。まだ壁までたどり着いた魔物はいない。感覚的には4割は減ったかな?
クロもマテルを使って確実にしとめているようだ。動きに無駄がなく芸術的な戦闘とでも言うのだろうか。一瞬見てしまうぐらい無駄がない。
ミミは相変わらず忍者のような身のこなしだ。1撃は弱いが踊りを踊っているような剣技でどんどんと魔物にダメージを与えている。やっぱり猫族は身軽だ。
半分以上は倒しただろうか。そんな時、第2波が迫ってきた。大型のものが多い。剣で攻撃したが皮膚が硬くダメージが少ない。フィアのマテルで火の玉をぶつけるが体を揺らし、火を消してしまうのでこちらもあまり聞いていないようだ。
クロやミミもかなり苦戦しており、俺達の周りを大型の魔物が囲み始めた。
これはまずい。咄嗟に剣を投げ捨て、神秘の力でビー〇サーベルを作る。いつもより密度を上げて切れ味を上げている。力強く踏み込み、サイのような魔物の正面から神秘の剣を振り下ろす。するとバターをきっているように簡単に魔物が真っ二つになった。
これならいける。神秘の力をさらに込め、刀身を長くして一気に魔物を蹴散らしていく。何発か体当たりなどを食らったが致命傷ではない。口の中が切れて血が口から出ているが、すぐに回復するので気にせず突っ込む。クロやミミは防御に徹しており、攻撃を食らわないようかわしたり、オレが攻撃しやすいようけん制をしてくれている。
やっと大型魔物がほとんどいなくなった。あとは止めを刺せば終わるかな?、やっと終わりが見えたそのとき、一瞬の隙が生まれた。
「ユウさま!!危ない!」
クロがオレの後ろにいきなり現れた。なんだ?!なにがあった?まだ他に魔物がいるのか?
「ほぉ、私の一撃を受け止めたか。よく反応できたな」
後ろから声が聞こえたため、振り返るとそこには魔物というより、悪魔のような姿をした奴が槍を突き出した上体でこちらを見ていた。
「くっ。よかった。間に合った・・・ユウ様・・・お怪我は・・・」
なんだ?!どうなってるんだ?クロ・・・クロに槍が刺さっている。俺を後ろから不意打ちしようとしたのを、かばってくれたようだ。ただ、左胸に槍が突き刺さり、呼吸と共に血が流れ出ている。
「クロ!俺をかばって・・・すぐ治療してやるまってろ!」
「ユウ様・・・来てはだめです。こいつは・・・悪魔の・・・デス・・・私達にかなう相手では・・・ここは私が命に代えても!!!お逃げください!!」
どうなってんだよ。デス?悪魔?そんなの知らない。ただクロがこのままじゃやばい。
「お前!ふざけんな!命に代えてもとかそんなのはオレは望んでない!今助ける!!」
デスに向かって突進し、神秘の剣で切りつける。しかし姿が消え離れたところに一瞬で現れた。何だあれ?!瞬間移動?
「下等な生物の癖に、生意気にもソウルソードを使うのか。これは誤算だな。まぁ当たらなければ問題ない」
デスが離れたため、クロに近づき神秘の力を使い治癒をする。しかし治癒が効かない。傷が塞がらず血が流れ出ている。
「なんで・・・なんで治癒できないんだよ!クロ、しっかりしろ!今すぐに治してやるからまってろ!」
「ユウ様・・・この槍は悪魔族の不治の槍・・・これで傷をつけられると・・・治りが悪くなります・・・」
槍を抜いてしまいたいが、抜くと血がさらに出てしまうのでどうすることもできない。クロの神秘の力がどんどん弱くなっていく。俺の力を注いでも穴の開いたバケツのようにどんどん弱弱しくなってしまっている。
「ユウ様・・・私は・・・そんなに弱くないですよ・・・すぐに治します・・・心配おかけしません・・・ユウ様・・・近くにいるのですか・・・」
目が見えなくなっているようだ。この世界に来て初めて仲間となったクロが、いま消えてしまいそうになっている。その現実を受け入れられずにただ、自分の力をクロに注ぎ込み、命をつなぎとめようとしている。
「なんだなんだ、もう終わりか?お前らは弱いくせに強がるから胸糞悪いんだ。まぁいい。早くそいつを始末して俺の相手でもしろ。少しは楽しめるだろう」
「だまれ!!!お前は・・・あとでしっかりと借りを返してやる」
ミミもデスを警戒しながらクロの様子を見ている。
「ユウ・・・様。心配しないで・・・いつも私は・・・そばに・・・いつも・・・いつも・・・」
声が弱くなり、クロの体から力が抜けた。
そしてオレの腕で抱えられていたクロの体は、黒い霧となって消えてなくなってしまった。
「ク、ロさん?!クロさん!!クロさん!!!いやーーーーーーーーーー!」
ミミの叫びが森の中に響いた。
クロが・・・消えてしまった。




