第2章 08話 焼肉パーティー
焼肉うまいですよね。
ティカの衝撃的な年齢カミングアウトにより、ほのぼのとした道中が一気にティカへの質問攻めとなり、一時的に移動が止まってしまったが、やっとのことで移動を再開できた。
兎族は通常、他の二人のように背が比較的高い。16歳を過ぎると成人とみられるらしく、通常は黒い髪か白い髪らしいのだが、ティカは白に薄い青が入った水色をしている。
兎族の特徴である耳については他の2人と同じく白なのだが、髪の毛が水色なのはかなり珍しいとのことだ。先祖にほかの種族が入っていたのかな?先祖帰りして特徴が出てしまっているのかもしれない。
「私は、昔から他の子と違うと思っていましたが、見た目だけだと思っていたのです。しかし、10歳を過ぎたあたりから身長は止まってしまいました。背が小さく子供っぽいかもしれませんが、ちゃんと25歳ですよ」
馬車の手綱を握っているオレの横で、ティカが話し始めた。
「両親は普通の兎族ですし、病弱だったわけでもないので原因はわからないのです。ユウ様は私のような見た目が小さい女性はお嫌いですか?」
ちょっと待ってくれ。俺は確かにロリコンではないが、こんなかわいらしい子を見たらだれもがかわいいと思うんじゃないかな。正直いうと、もう少し大人っぽくなるとストライクゾーンど真ん中だな。
「俺は別に容姿は気にしないよ。ただ、好みとしてはもう少し大人の女性の雰囲気が出たら、気になっちゃうかもね」
「大人の雰囲気・・・わかりました。大人の女性目指して頑張ります。クロ様、ミミ様、これからユウ様のために大人の女性を目指したいのですが、お二人に私の指導をしていただけませんでしょうか?できる限りのお手伝いもします。よろしくお願いいたします」
ティカがクロとミミにお願いをしているが、目が本気だ。体は小さいのに目力が半端ない。
「わっ、わかりました。私とミミ二人で淑女としての振る舞いを、そして身の回りのことができるようにお教えします。甘くないですよ」
「ティカはいい子にゃ。ユウ様にはティカみたいにゃ子が近くにいると私達も安心にゃ。協力するにゃ」
なんかいろいろと勝手に進んでいる。まぁティカがやる気なのだから本人が気が済むまでやるのがいいだろう。
「ユウ様、何か遠くからこちらに走ってくる物がおります」
兎族の男の子えっと・・・ナジだ。ナジには何かが走ってくる音が聞こえているようだ。
「どんな感じの足音?どのぐらいいるかわかる?」
いったん馬車を止め、ナジが音を聞き取るまで待つ。
「数は・・・8、いや10ぐらいいます。何かが追いかけられて逃げているようです」
何だろう。目を凝らしてみると小さな何かが走っているように見えるが、まだわからない。
「あれは・・・ロッコがバックンに追いかけられているにゃ。どうするにゃ?捕まえるかにゃ?」
ん?聞き慣れない名前が出てきたな。
「バックンってどんなやつ?」
「バックンとは鋭い歯をもったオオカミの魔物です。ここらでは、たまに見る魔物ですよ。群れで狩りをし、動きが素早いため厄介ですが、戦いに慣れているものであれば問題はありません。安いですが牙が売れます」
クロは何でも知っているな。オオカミね。狩りをしているところなんだろう。ロッコは見た目は豚だが、色は白く額に角が1本生えている。食用として狩ることが多く、俺も好きな肉だ。
「それじゃ、このメンバーなら大丈夫だろ。兎族の2人と猫族の2人は組んで不意打ちをかけてもらえるかな?ロッコとバックンを分けてもらいたい。バックンは俺とクロとミミ、ロッコは他のみんなでやっつけてね。うまく捕まえられたら今日の晩飯はロッコの焼肉だ!」
それを聞いてみんなの目つきが変わった。オーク族の男の子サイガが何かぶつぶつと言葉を発している。耳を澄ますと
「肉・・・肉・・・肉・・・」
と呪文のようにつぶやいている。怖い。正直怖い。そんなに肉が食いたいのか?奴隷だったから肉はあまり食えなかったのかもしれない。病弱だったのがうそのようにやる気を出してるな。
さすがに素手では危ないので、あまり程度のいいものではないけど魔王城で拾った剣や短剣、盾などを渡したら、すぐに物陰に隠れて臨戦態勢だ。
ケンは剣より弓が得意とのことなので、一度も使う機会のなかった、骸骨戦士のアーチャーが持っていた弓と矢を渡したら、目を見開いていた。
「これって・・・ボーンアーチャーの弓よね?弓は魔物の骨で出来ていて弦はドラゴンのひげって言われてるレアものよ。やっぱりご主人様って計り知れない人ね。驚きすぎて素になっちゃったわよ」
「ユウ様、まだそのようなレアな品をお持ちでしたか。それは強力な魔物のボーンアーチャーが持っている弓で、弦が切れることがなく、狩人は家を売ってでも手に入れたいとされる品です。相場はわかりかねますが、金貨100枚でも買いたいという貴族はいるでしょう」
え!マジで?普通に落ちてたから拾ったけどそんなにすごいものだったのか。でもケン以外に弓を使える仲間もいないしいいか。
「そうだったんだ。まぁいいよ、ケンはそれを使ってくれ。そのかわり、ちゃんと働けよ!」
「あったりまえでしょ!こんなすごいものもらっちゃったら、是非とも使ってみたくなるわよ。ご主人様の出番はないかもしれないわよ」
なんかさらにみんなテンションあがったようだ。
「久々の運動ですね。少しは楽しめるでしょう」
「最近馬車ばかりで面白くにゃいからちょうどいいにゃ」
クロもミミもやる気満々だな。俺も久々の戦闘だから少し興奮気味だ。
ほどなくして走ってくる魔物が見えてきた。馬車は森の陰に隠し、茂みに身をひそめる。今回はティカは馬車を見てもらっている。操縦方法は、俺の隣で見ていたのである程度覚えたようだ。ダガーを預けてあるが、戦闘の真っただ中に入ってくることはないだろう。
まずは兎族と猫族の4人が連携して、獲物が俺たちのところに来るように誘導している。そしてバックンがスピードを落としたところを狙い、ケンが弓で一番先頭のバックンを仕留め、それを合図にロッコとバックンの間に猫族が入り込み2分した。
うまい。さすがに長年パートナーとして組む種族同士。特に打ち合わせしたわけでもないのに連携が取れている。ケンも弓の腕は確かだ。すかさず俺達3人もバックンの前に飛び出て、隙をついて剣で倒していく。バックンは残り6匹だったが、一人2匹ずつ倒してすぐ片が付いた。
ロッコの方もうまくいったようだ。けが人もいないし作戦は成功した。ロッコの解体はオークに任せて俺はバックンの牙集めをする。顔に対しては結構大きな牙だが、ドラゴンの牙よりは小さい。あ!ドラゴンの牙もあったよな?!あとでクロとミミには話しておかないとな。
久々の戦闘もすぐに終わり、そのまま村へ進む。武器はそのままみんなに持たせてある。下剋上を狙って襲ってくるような奴は特にいないだろう。信頼関係は信用することから始まるって言うしね。
その日の夜はロッコ肉で焼肉パーティーをした。野営用の道具の中に針金が入っていたのでそれを編んで網にして、マテルで焼き肉用の台を作り火を付ける。炭は、野営のときいつもたき火をしてできる炭を、少しずつ集めて持っていたのでそれを使う。
野菜や肉がじゅうじゅうと焼ける音、そして肉から出た汁が垂れ炭に当たり音を立てる。それだけでよだれが出てくるがまだ早い。みんなの目は猛獣のような目になっているが、ここはまだおあずけだ。
焼いている肉に塩と胡椒、そしてレモンのような柑橘系の果物を絞ってかけ、まずはオレが肉を1枚取って食べる。
・・・うまい。豚肉とほとんど同じだが運動量が多いのか肉が引き締まっている。しかし固いわけではなく食い応えがあり、脂が甘いため食欲が増す。そして塩と胡椒が肉のうまみを引き立て、柑橘系の香りでさわやかに喉の奥に流れていく。これはたまらん。
「シンプルだがうまい!みんなたべていいぞ!」
それからオレは肉を焼く側に徹する。地球にいた時もそうだったが肉を焼いているとなぜか焼く側に回ることが多かった。焼くのが間に合わないので、すぐにおなか一杯になってしまったティカにも手伝ってもらい肉を焼く。
野菜もちゃんと食うように言って、みんな好きなだけ食べさせてあげた。俺も最後にしっかりと食べ、焼肉パーティーは終わりを迎えた。
「こんなに肉を食ったのは初めてです。本当においしかった」
オークのサイガが満足したような顔で感想を述べている。他の面々もみんな満足そうだ。ふと馬車の奥を見ると、モーンがプルプル震えて一か所に集まっていた。ん?もしかして食われると思ってるのか?
「大丈夫だ。お前たちは食用じゃない。ちゃんと村で飼ってやるから安心しろ」
モーンに近づき1頭をなでながら話しかけると、モーンたちは安心したようにオレの周りに集まり、すり寄ってきた。なんだ・・・意外とかわいいやつらじゃないか。っていうかモーンって言葉が分かるのか?謎だ。
それからテラル茶を飲みながら食休みをして、みんなで片づけをした。そして寝る前に風呂に入り、今日はみんなに交代で火の番をしてもらうようにお願いして、ゆっくり眠った。何をするでもないけど、こんな平和で飢えのない生活が平凡だが幸せだと思う。
焼肉パーティーから6日かけて村に戻った。結局村を出てから2週間もかかってしまったが、無事目的を達成できた。
「お!ユウか。なんかずいぶん大所帯だな」
朝早かったが、ババルさんがまず出迎えてくれた。村はパッと見は変わっていないが、畑は一部が土が盛り上げられ、何か種でも蒔いてあるようだ。
そして村に入ってすぐの広場と畑の間に、ヴァンスさん家族とカイルさん家族が小屋を建てていた。前に切り出した丸太を使い、屋根は木の枝を大量に重ねている。たぶんモーンの小屋を作ってくれたのだろう。作業を止めて集まってきてくれた。
「みなさん、長い間留守にしました。その間に何か変わったことはありましたか?」
「いや、みんな元気だったぞ。ユウ殿にもらった釣りの仕掛けで魚も簡単に取れたし、保存のきく乾燥野菜を置いて行ってもらったので食糧にも困らなかった。むしろ今までより多く食べてしまい太ってしまったかもしれないな。わはっはっは」
ヴァンスさんが豪快に笑いながら腹をさすっている。子供たちも前よりたくましくなったように見える。
「こっちはいろいろありましたが新しい仲間を連れてきました。それとカイルさんに世話をお願いするモーンです」
「これは元気で若いモーンですね。世話のし甲斐があります。よろしくな」
カイルさんにモーンをなでている。モーンも挨拶するように頭を上下に振っているように見える。
その後、それぞれの紹介をした。一気に人数が増えたため、家を増やさないとな。
急遽、広場を中心にして、畑と反対側に家を4軒建てた。いつも通り、マテルでちゃちゃっとやったためそれほど時間はかかっていない。
やはりみんな驚いていたが、「お風呂・・・お風呂・・・」と聞こえてきた。前にミミが言った説得は効果絶大のようだ。
「そういえばオレたちがいない間、風呂はどうしていたの?」
「お風呂は私が頑張って練習し、お湯を出せるようになりました。でも神秘の力が足りずにお湯が少なかったですし、シャワーも使えませんでした」
ヴァンスさんの奥さんのソリアさんはマテルを使えるといっていたから練習したのだろう。お湯を出せるようになるだけでも立派だ。お風呂のすばらしさもわかったようでよかったよかった。
「それでは今日はゆっくりお風呂に入れるようにしますね。それに人数が増えたので順番で入るようにしましょう」
みんな特に喧嘩をする様子もなく順番は決まったようだ。ただ、ケンは専用のふろを用意してやる。馬のプールのように深めに作り、スロープで中に降りていく形をイメージしている。
「あら、私も一緒でいいのに。一人じゃさみしいじゃない。ご主人様に一緒に入ってもらいたいわ」
「ふざけるな。お前と風呂入ってたらゆっくり入れない。あぁそうそう、みんなに言っておく。特に男性だ。この馬人族は男が好きらしいので気をつけろ。ケン、お前も男を襲ったら追放だからな」
「そんなに私は尻軽じゃないわよ。ちゃんとご主人様だけを見てるわよ」
おっさんが見つめてくると張り倒したくなるのはなぜだろう。
4軒の家はオーク族、兎族、猫族、ゲスト用として割り振った。ババルさんのところにオーク族を任せてもいいと思ったが、ババルさんが若い者に気を使わせたくないということだったので、分けて住んでもらうことにした。
ティカは俺たちの家に住みたいといっていたが、ミミが
「まだ早いのにゃ。淑女の修業を終えてからにするにゃ」
とわけのわからん内容で説得させられたようだ。
これで村の人数は
オーク族4人
兎族3人
猫族3人
犬族4人
闇族1人
馬人族1名
人族4人
計20名と
モーン5頭となった。
やっと村らしくなってきたな。村長としての自覚がないまま、村が大きくなっていくことをただ純粋に喜んだ。




