第2章 03話 思い出の味
村で自給自足するために畑をつくりたいが、畑で物を作る知識がない。誰か知ってる人がいればいいのだが・・・
「カイルさんやヴァンスさんは畑で野菜とかを作ったことはありますか?」
「私はありません」
「私も経験ないな」
自給自足するならやっぱりそういうことも勉強していかなきゃな。そうえいば、オークの村で一番最初に会ったダンさんは畑仕事をしていたよな。ちょっと教えてもらいに行ってくるか。
「前に行ったことのあるオークの村で畑で野菜を作っている人がいたから、ちょっとコツとか聞いてくるよ。都合がつけば何日かこの村に出張してもらえないか話してみる。クロ、不在の間にみんなと一緒に畑を作る場所を整地してもらえないかな?」
「承知いたしました。それでは村の入り口から見て左奥の方向を開拓します。畑以外にも土地は今後必要となりますので、ユウ様が帰ってくるまでの間は整地を中心に作業をします」
「うん、お願いね。クロは神秘の力が枯渇したらちゃんと休憩してね。皆さんも無理はしないでください」
無限リュックの中に入れてあったいろいろな道具や食料などは、ちょっとだけ残してクロの闇ストレージに移しておいた。これで少しの間、不在でもやりくりできるだろう。心配しないでも大丈夫だとおもうけどね。
女性陣にもオークの村に行くことをいうと、いくつか買ってきてもらいたいもののリクエストがあった。一つは布、そして綿、寝るときに使う布団を作るために買ってきてほしいらしい。
布団を買ってきたほうがいいのじゃないか?と聞いたところ、自分で作った方が安いらしい。
オーク族のガレム村までは南方向に行ったところにあるとおもう。感じたことのある気配が南のほうに集まっている。初めはゆっくりとジョギング程度に走る。これだけでもかなりのスピードなのだが、ここからさらにスピードを上げる。
砂埃を巻き上げながら走り続けること1時間、だいぶ村に近づいてきたのでスピードを落としてから村に入った。
「お!ユウじゃないか!」
門番の人・・・たしかシルテさんだ。オレのことを覚えてくれたようだ。
「お久しぶりですシルテさん。みなさんにお変わりはないですか?」
「ああ、みんな元気だ。子供たちがマテルをうまく使えるようになったからみんな助かっているよ」
オレがやった青空教室がうまくいったようだ。この世界には学校のようなところはないのだろうか?
シルテさんと少し話してから街の中に入る。街の広場に行くと、子供たちが今日も集まってマテルの訓練をしながら遊んでいるようだ。
「おーい。みんな元気か?」
「あ!ユウ兄ちゃんだ!」
ライがすぐに気付き走り寄ってきた。
「ユウ兄ちゃん、久しぶりだな!あれからみんなマテルをつかえるようになったんだ!それからね!」
みんな興奮して一斉に話してくるので一人ずつゆっくり話を聞いてあげた。みんな神秘の力をうまく使えるようになり、前よりも使えるマテルの種類と持続時間が伸びたらしい。神秘の力は訓練すると総量が増えるのかもしれない。
「村で畑をやってる人で、野菜作りとかに一番詳しい人ってダンさんかな?」
子供たちに畑に詳しい人を紹介してもらうことにする。
「オーク族は土をいじるのが得意だからみんなできるよ!でも一番詳しいのはババルさんかな。この先の家に住んでるから案内してあげるよ!」
子供たちに手を引かれながらババルさんのうちに向かう。ダンさんよりもババルさんの方が詳しいらしい。ウリ坊はやっぱりかわいいね。でも大きくなると迫力が出てかわいらしさが・・・いやそれ以上はやめておこう。
「ここがババルさんの家だよ。ババルさーん!いる?」
ライが声をかけたが返事が返ってこない。留守なのかな?
「今の時間だと畑で仕事してるのかな?ユウ兄ちゃんどうする?」
「それじゃ、帰ってくるまで村長の家に挨拶でもしてくるかな」
「そっか。たぶんお昼の休憩に帰ってくると思うからそのぐらいにまた来てみるといいよ」
「わかった。ありがとなみんな」
それから村長の家に向かう。ケルダさんはクズ貴族事件で怪我を治してから、今まで以上に元気になってたな。マールちゃんを困らせてなきゃいいけどな。
「こんにちは、ケルダさんいます?」
「だれじゃ?・・・?!ユウ殿じゃないか!娘を嫁にもらいに来たのか!!!」
「いや、違います。ちょっと用事があって寄ったんですよ」
「躊躇いもなく否定されるのも複雑な気分じゃが・・・でもよく来た。マール、マールや!ユウ殿がきたぞ」
自分で嫁にはやらんとか言ってたのに。親の気持ちとしては複雑なんだろう。
「あら、ユウさん!お久しぶりです。お父さんが何か大きな声で話してたので気になってたんです。ユウさんが来てたんですね。遊びに来てくれたんですか?」
「お久しぶりです。今回は畑を作るための知識を持っている方に協力してもらえないかお話ししようと思いまして・・・」
そのあと、マールさんに懐かしいテラル茶を出してもらい、村を出てから街に行ったこと、街での騒動、そして今、自分たちで村を作ろうとしていることなど経緯を話した。
「ユウ殿が村を作るとは・・・いや何か大きなことをやるだろうとは思ったがそうきたか。わしらで力になれるなら協力しよう」
「ありがとうございます。さっき子供たちに、畑に詳しい人としてババルさんを教えていただいたのですが、協力してもらえるでしょうか?」
「ババルはダンと二人で畑を作っている。ダンはユウが初めて村に来た時に案内してくれたから知ってるだろう?ダンは家族がいるが、ババルはまだ独り者だ。ダンよりは自由に動けるだろう。」
「そうですか。ではお話ししに行ってみます」
村長の家を出てババルさんの家に向かう。久々に飲んだテラル茶はやっぱり少し苦めのお茶みたいで好きな味だ。街で飲んだ紅茶とほうじ茶の間のような味のお茶について聞いたところ、カラル茶と言いテラル茶より高級でこの村ではほとんど飲まれることがないとのことだった。
程なくしてババルさんの家に着いた。
「こんにちは。ババルさんいらっしゃいますか?」
「なんだ?お前は・・・たしか少し前に村に来ていたユウとかいう奴だったか?俺になんか用か?」
「実は・・・」
ババルさんに、今村を作っていることや畑を作るための色々な知識を教えてもらいたいことを話した。
「ずいぶん壮大なことを始めたようだな。畑を一から作るのは大変だぞ。オーク族は昔から土をいじるのに長けているため、他の種族よりは短期間で出来るだろうが、それでも人手が必要だ」
「そうですよね。簡単にはいかないと思ってはいたのですが・・・。ちなみにババルさんが私の村に来てもらっていろいろ指導してもらうことはできませんか?」
「畑を作るなら中途半端に手を出すことは・・・ちょっと考えさせてくれ。明日ダンと話をしてみる」
「無理を言って申し訳ないです。よろしくお願いします」
明日の昼休憩のときにババルさんの家で返事を聞くこととし、家を出て宿屋に向かう。
「ナグリさん、お久しぶりです。クーリさん、お元気でしたか?」
「おー!ユウじゃないか!村に来てたのか」
「私たち家族はみんな元気よ。それが取り柄みたいなもんよ。ユウさんも元気そうね」
二人は相変わらず豪快に笑いながら迎え入れてくれた。なんかこの宿は安心するんだよね。
「今日1泊したいのですが、部屋空いてますか?」
「ああ。大丈夫だ。この宿がいっぱいの時なんて滅多にないな。がははははっ」
自虐ギャクに苦笑いしながら宿帳に名前を記入する。文字はだいたい読み書きできるようになったから問題ない。文法は日本語に似ているので覚えやすかった。
「今日は夜ご飯を食べたいのですが、用意してもらえますか?」
「おう!任せておけ。お前の好きなロッコ肉の煮物も作ってやろう」
これは楽しみだ。この村で初めて食べてから好物になった食べ物の一つだ。エーテハイムの街でも食べたが、ナグリさんの作ったものが今のところ一番だと思う。
そういえば宿にはベッドと布団があるけど、どこで買ってるんだろう。
「クーリさん、この村で敷布団や掛布団は皆さん手作りなんですか?」
「そうだね。普通は道具屋で綿と布を買ってきて作るね。作られてるものは嵩張るから道具屋でも見ないね」
そうか。綿のままや布のままならそれぞれ運べるが、布団にすると畳んだとしても嵩張るし、汚れたりするから余計な手間がかかるんだろう。
「それでは道具屋でなら綿と布を買って自分で作るのが一般的なんですね」
「そうだね。今の時期なら、綿もまだ残ってるだろうから買いたいなら聞いてみるといいよ」
明日ババルさんの家に行く前に道具屋に寄って行こう。
その日の夜は久々にナグリさんの料理を堪能し、満足して床に就いた。




