第2章 01話 夢にまで見た・・・
第2章を開始しました。これから少しずつ村を作って行きます。でもたまには冒険にも出たいと思います。
空には見たこともないような星が並び、土星のようなわっかの付いた星が良く見える。うん、やっぱり地球じゃないね。
辺境の荒野へ向かう途中野営をしているのだが、ふと目が覚めたため、馬車から出て空を見上げながら背伸びをする。知らない星が並ぶのをみると改めて異次元世界に来ていることを実感する。
「クロ、交代するよ」
「ユウ様、まだゆっくりされていてもいいですよ。」
「いや、なんか目が覚めちゃってね。クロも疲れてるだろうからゆっくり寝ていいよ」
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます。」
クロが俺達の馬車に乗り込んでいく。馬車は今3台ある。1台は人族貴族の元私兵隊長のヴァンスさん家族、もう1台は犬族のカイルさん家族、そして最後の1台は俺達の馬車だ。
馬車の荷台には幌が付いていて、寝やすいように毛布や魔物の毛皮を敷いている。
移動を始めてから、夜は各馬車ごとに担当で火の番をする。今日はうちの番だからクロやミミと交代で番をしているのだが俺は夜中から朝方担当になっている。
一人焚き火の前に座り、燃えている木の枝を他の棒でつつく。焚き火ってなんかいじりたくなっちゃうんだよね。何でだろ?
そんなことをしていても長続きせず、眠くなってしまう。ここはひとつ実験といきますか!
まずは、目の前の火を操ってみる。実はここ数日焚き火の番をするときに、神秘の力をマテルとしてではなく神秘の力としてそのまま手から出すことを練習していた。練習の成果としては、少しずつ手のように細かい作業ができるようになっている。
手を使うイメージをして物理的にものを掴むことができるが、まだ慣れていないのでうまく持ち上げたりはできない。ただ、熱さなども感じないため、火を包むことはできた。今日は火の一部を切り取り、神秘の力に包まれた火の玉を作り出す。
なぜか球体の中で火は消えない。球体はなんとなくうっすら見えるがはっきりとは見えない。普通は密閉されていれば酸素がなくなり火は消えるはずだが、神秘の力で包んだ場合は消えずに燃え続けている。
今日はどのぐらい持つのか実験をするため、いくつか神秘の力の量を変えた火の玉を作って中に浮かせておこう。
そして次に土のマテルで風呂の浴槽を作る。簡単な四角い形だが怪我しないように角を丸くし、そして中で座ったらちょうど肩まで浸かれるような高さに調整する。
次に浴槽にお湯を入れる。これは浴槽の端にライオンのような顔を作り、その口の中に火と水のマテルをそれぞれ神秘の力で固定する。お湯は火と水のマテルに供給する力のバランスを調整することで出せることは実験済みだ。どこかの国の人魚ライオンのようだが、口からお湯を出し湯船を満たしてゆく。
実はここはまだ辺境の荒野に入ってすぐのところのため、魔物や人などの生き物の気配が少ない。今はオレたちの気配と虫や小動物などのとても小さな気配だけだ。周囲の確認を終え、2m程度の壁をマテルで作り出し、着替えが見えないようにした。
「やっとのことで風呂に入れる!!」
服を脱ぎ捨て、早速風呂に入る。
「あ゛~」
思わず声が出てしまう。なぜか風呂に入るときって声出ちゃうんだよね。夢にまで見た風呂にやっと入れた。
・・・やっぱ風呂は最高だ。体の芯から温まるし疲れが取れる。
ライオンの頭はマテルで首を伸ばしシャワーの代わりにすることもできる。今日は全身洗おう。以前に街で購入した植物性の石鹸らしきものを使ってみる。立ち上がり顔・頭・体を石鹸で洗っていく。洗い流すとちょっと頭はゴワゴワするが今までに比べたら雲泥の差ですっきりした。この石鹸何でできてるんだろう?
また湯船に浸かり空を見上げてこれからのことを考える。先ほどの火の玉が浮かび星空と幻想的な空間を作っている。
村づくりをはじめようとしているが、いろいろ大変だと思う。はじめのうちはオレが街や他の村まで買出しに行ってもいいかな。本気で走れば数時間で往復できるだろう。不足するものもあるし、自給自足できるようになるまではつなげなければならない。みんなと相談しながらやるしかないな。
そんなことを考えながら風呂を上がり、風呂を元に戻して焚き火の前に戻る。今回はオレ一人だったが、今後はみんなにも入ってもらおう。疲れを取るにも良いし清潔にしていれば病気にもかかりにくくなるだろうしね。
うっすらと日が出てきて明るくなってきたころ、火の玉はすべて消えてなくなっていた。結構長持ちする。使い方によっては光の玉の代わりとして使えるな。
そんな評価をしていると、各馬車から起きた人が出てきた。
「おはよ!!」
最初に出てきたのは今日も元気なフーとリン。犬族の双子だ。
「おはよう。顔を洗うなら水を出すよ。」
「お願いしま~す。あれ?ユウにいちゃんなんか綺麗になってる。水浴びでもしたの?」
「ちょっとね。今日の夜にでもみんなにも教えてあげるね。それじゃ水出すよ」
マテルを使い水を出す。すると他の家族も出てきてそれぞれ桶などに水を入れて顔を洗い始めた。
今日の朝ごはんはハムのような肉の燻製にパン、そして昨日の残りの野菜スープだ。
「ユウ様、今日はどのようにいたしますか」
クロが今日の予定を聞いてくる。
「今、辺境の荒野に入ってすぐなんだけど。一番魔物や他の生き物の気配が少なくなるところなんだよね。ここらの近くで村を作る立地がいい場所があればいいとおもうんだけど・・・少し周辺を調査してみたいと思うんだ。」
「この辺に魔物がすくにゃいのは、厄介な魔物の住処があるからにゃ。普段は土のにゃかにいるけど、雨が降ると出てきて周りの生き物をパクリとたべちゃうにゃ。」
ん?雨に出てきてパクリとする生き物って・・・オレが知ってる限りではかえるぐらいだな。
「それは廃墟の中で倒した事のあるポイズントードみたいな生き物?」
「そうにゃ。ロックトードっていうにゃ。ポイズントードより小さいけど硬くてすばしっこいにゃ。人ぐらいなら食べられちゃうにゃ。」
かえるに食べられるのはいやだな。さすがに全部駆除するにも手間がかかりすぎるから少し移動したほうが良いかもしれない。
「それなら、ここからあっちの方向に行ったところに森の切れ目があるのだが、その周辺はどうだろうか?森の中に入れば川もあり、川上にたどっていくと湖もある。大きな街道からはだいぶ中に入るため魔物は出るかもしれないが、ロックトードはないはずだ。柵を作れば対応できると思うぞ。」
ヴァンスさんが案を出してくれた。森の近くで川もあればいろいろと活用できそうだ。湖も見てみたい。柵はもともと作ろうとしていたし、それで解決しそうなら良いかもしれない。
「それじゃ、まずヴァンスさんの話にあった場所を確認しに行こう。」
街を出てずっと南に進んでいたが、西に進路を変える。ヴァンスさんに何で川があることなどを知っているのか聞いたところ、定期的に辺境の荒野の境目を調査するらしいのだが、調査時に魔物に襲われ無我夢中で逃げたときに、この川まで逃げてきたため場所を覚えていたらしい。
1時間ぐらい馬車を進めると森が見えてきた。森は辺境の荒野と境目になっているようだ。馬車を降り、クロを連れて二人で森の中に入っていく。
「あれが話しにあった川でしょうか?」
「そうだねずっと西のほうから流れてきて、緩やかに南方向に曲がって行ってるね。湖は遠いのかな?」
川は森の中に500m程度入ったところにあった。川幅は20mぐらいありなかなか大きな川だ。水量も結構あり、水も綺麗だ。水場があるため近くに生き物の気配がするから、狩をすることもできるだろう。
「湖の近くも良いですが、ここからまだだいぶ奥になりそうです。あまり奥になると森が深くなり魔物も多くなるかと思います」
「そうだね。この川の周辺ぐらいが限界かな・・・よしここをまず開墾して土地を確保しよう!」
その後馬車の元に戻り見てきた内容を説明した。
「それではこの先の川の周辺を開墾し村にしていくということですね。私たちも全力でお手伝いします」
カイルさんが力強く宣言しやる気満々だ。
「期待していますよ。でも怪我には気をつけてくださいね。ではみんな、川まで馬車が通れるように雑草を撤去していこう!木も何本かは取ってしまおう!」
「承知いたしました」「わかった」「お手伝いします」
クロ、ヴァンスさん、カイルさんに手伝ってもらう。
「ミミはお母さん方と馬車の周辺でご飯の用意しておいてね。力仕事をしたらおなか減っちゃうだろうからさ」
「わかったにゃ」
それからオレとクロは土のマテルで土をやわらかくし、雑草や雑木をヴァンスさんとカイルさんが撤去していく。大きな木は根の周りをやわらかくして倒してから、ウィンドカッターで枝を撤去し丸太にして道の横に置いておく。
1時間ごとに休憩し夕方までに半分ぐらいの道のりを馬車が2台通れるぐらいの道を作った。雑草などを撤去した後の地面は土のマテルで石のように固く固めておいた。これで草も生えないだろう。
「お疲れ様でした」
奥さん方と子供たち、そしてミミがご飯をみんなに配る。今日の晩御飯は野菜とロッコ肉の炒め物と麦飯のようなご飯だ。この世界でも米に近い形で穀物がある。リスカというらしい。結構ぱさぱさな感じなのでチャーハンなどに向いていそうな穀物だ。
オレはみんなにクリークのマテルをかけてご飯を食べ始めた。
「このペースで行けば明日で川まで道をつなげられるな。あと川の周辺もきれいにして、とりあえず家が3件、物置のようなものも作れるように少し広めに整地してしまおう」
「そのぐらいならあと2日でできそうですね。そしたら馬車を川の近くに移しましょう」
「それにしてもユウ様、クロ様お二方ともマテュリスなのですか?あれほどのマテルをあんなに使っていてお疲れの様子がないなんて」
「私はユウ様に神秘の力を分け与えてもらいながらやっていたので持ったのですよ。一人の力では今日の半分も持ちませんよ」
「ではユウ様は相当お力があるマテュリス様なんですね」
カイルさんがずいぶん興味を持って聞いてきている。
「いや、マテュリスではないですよ。マテル自体も使えるようになったのはついこの間なんです。ただ、人より神秘の力の総量が多いので今回のような作業も続けてできるんですよ。でもあまり他では言わないでくださいね」
「そうなのですか。でもそれだけのマテルを使いこなせればマテュリス様にもなれるのにもったいない」
「僕は国や街に仕える気がないのですよ。自分で好きに生きていろんなところに行って、好きに振舞って、自由に生きるそんな生活に憧れています。なので堅苦しい肩書きはいらないんですよ」
これは本心だ。別に地位は要らない。地位を得るとその分行動は制限される。それがいやなのだ。
今日は皆さんにお風呂を堪能してもらいましょう。
そういってマテルで昨日と同じように風呂を作る。ただ今回は男性用と女性用2つに分け、大きさも大きくしている。
「湯浴みは貴族が行うと聞いた事ありますが、お風呂とはどんなものなのですか?」
「お風呂はお湯の中にゆっくり使って体の疲れを取る方法です。シャワーというものもありますので体の汚れを落としてゆっくり浸かります」
風呂を知ってるものがいないため、いろいろ説明をする。女性人はミミがなんとなく理解したようなので石鹸を渡す。
「では男性人は私と一緒に入っていただき、同じようにしていただければ大丈夫です」
みんな服を脱ぎ、まず湯を浴びて湯船に浸かる。そしてオレが最初に頭からつま先まで全身を洗いシャワーで洗い流す。他の面々も見よう見真似でやっているが大体理解できたようだ。みんな体を洗い終わり湯船に浸かる。
「ユウ様、このお風呂というものは格別です。体の疲れが抜けていくようです」
「そうだろ!俺が入りたかった理由がこれでわかったろ?」
女性人は子供たちと一緒だが、みんなでキャッキャウフフしてるみたいだ。
「クロ、実は俺の国には成人した男女で一緒に風呂に入る「混浴」という文化もあったんだ。まぁなかなか裸ではやらないけどね」
「?!そっそんな文化が!それなら私もミミと・・・いかん!そんな姿で一緒に風呂など!はうっ・・・」
クロがオーバーヒートしてしまったようだ。まぁ十分温まったし、他の二人も満足したようだ。クロを湯船から上げて綺麗にした風呂の周りの石の床の上に転がしておこう。
風呂も終わり全員に大絶賛だった。男性陣はさすがに疲れているようなので、今日は女性陣に夜の番を任せる。何かあったら直ぐ起こすように言ってあるので大丈夫だろう。
明日は道を完成させ、家を立てるための広場を作ろう。




