第1章 18話 終わりと始まり
これで第1章は終わりです。
興味を持って読み始めてくださった方ありがとうございます。これからもユウたちの成長を気長に見守ってください。
会場に着くと、野次馬やアライルを含めた人族貴族、そして奴隷商のバルバリーも来ていた。
周りを見渡すと処刑台の横に犬族の家族が入れられている檻がある。間に合ったようだ。
犬族の父親が檻の中から引っ張り出され、アライルが近づいて罪状を述べているが・・・これまたでたらめなことを並べやがって!。
ヴァンスさんに合図があったらフードを取るように指示をしてクロと一緒に処刑台前に歩みを進めた。
「これはこれはアライル様、今日はまたずいぶんと騒がしいですな。」
「何だお前は?ちょっと待てよ。お前はこの前盗賊に襲われた時、金目当てに盗賊を捕まえたやつだったな。何のようだ?」
「いや。実は私は行商人でして、人手に困っているのでこの奴隷を処刑するなら私に譲ってもらえないかと思いましてね。」
「ふん。これは私へ反逆したものを処罰するのだ。母親と子供は売ってもいいがこの男はそうはいかん。それに奴隷は奴隷商に売る事となっている。奴隷商以上の金額を払うなら考えてもいいが、お前に払えるのか?」
「私は父親も含めて購入したいのです。お金は心配ありません。別にアライル様の損にはならないと思いますが・・・。処刑されるような罪人を買うものなど物好きしかおりません。私はちょっと変わった品を扱うため、そのような奴隷でも問題ないのです。」
「なんといわれようと譲らん。それともお前も俺に歯向かうつもりなのか?」
「いえいえ。そんなつもりはありません。」
ここでオレは一歩アライルに近づき耳元でささやいた。
(しかし、アライル様も人が悪い。低級貴族の娘を襲ったあげく、脅していることや、辺境の荒野で子供達を攫って奴隷とし、暴行を加えていることは罪に問われないのでしょうか?)
「きっきさま!!なっななんのことだ!勝手な言いがかりをつけおって!」
(いや、いいんですよ。アライル様が雇っていた、ヴォルーダは私が捕まえたんですよ。それにその他のこともしらを切るなら、あちらのあの者にここで証言させてもいいのです)
そういい、オレはヴァンスさんに手を上げて合図をする。するとヴァンスさんがフードを取り顔を出す。
「!!!!ヴァ、ヴァンス!どういうことだ!恩をあだで返すつもりか?!」
「恩?何を持って恩というのでしょうか?私の妻の治療ですか?」
「そうだ!私のお抱えの医者に見てもらっただろう!お前の給料じゃ見てもらうことすらかなわないような高額な医者だ」
「高額な医者だろうが毒を盛られていればいつまで経っても治らないはずです。だれが仕向けたかここで私が証言してもいいのです。その他についても私が知りうることをここで証言するつもりです。それでもよろしいか!」
「っっっぐっ!あのやぶ医者め!失敗したな!ヴァンス!お前の妻はオレの悪口を言ったからこらしめてやったのさ。どいつもこいつも俺の邪魔をしやがって!お前ら全員オレの奴隷として一生這いつくばっていりゃいいものを!」
あちゃ~馬鹿が切れちゃったよ。ここまで話のできないやつだとは思わなかった。
「まずはお前からだ!」
剣を抜き犬族の父親を切り捨てる。避けることもできず肩から袈裟懸けで切られているが剣の腕がいまいちなのかまだ息があるようだ。
「クロ!」
「わかりました。」
アライルに向かってクロが突進しスティックで剣を遠くに弾き飛ばした。
その間にオレは犬族の父親の元に行き抱きかかえ、アライルから距離をとる。そして治癒のマテルを使い数秒で傷を癒す。すると貴族の私兵が乱入してきた。
オレも剣を抜き、殺さないように注意しながら気を失わせる。クロはアライルの相手をやめ、犬族の家族を檻から出し父親の元に連れて行ったようだ。それを見た民衆が興奮して騒ぎに加わり、すさまじい乱闘に発展する。やはり人族貴族に対する不満が爆発したようだ。
ヴァンスさんも剣を抜き、かつての部下と剣を交えている。申し訳ないがここは時間をかけるわけには行かないので後ろから兵士の頭を叩いて気を失わせる。
「ヴァンスさんは犬族の家族を連れてミミの元に行ってください。」
「承知した!」
ヴァンスさんを見送る暇もなく兵士が襲ってくるので都度気を失わせアライルのところまで進む。クロは市民が怪我をしないよう気を失わせているようだ。
「アライル!これがお前に対する市民の憎しみだ。オレは人族の貴族が嫌いだ!特にお前のような豚野郎が嫌いなんだ!穏便に済まそうとしたがこんな大事になっちまうし馬鹿もいいところだ!」
オレも興奮と怒りで何を言っているかよくわからなくなっているが、とりあえずアライルをどうにかしなくちゃいけない。
「おっお前のせいだ!お前は極刑だ!ここで殺してやる!」
「いい加減にしろ・・・」
トーンを落とし一言いい、力強く踏み込み瞬時にアライルの後ろに移動する。そして後ろから首に剣を押し付けて話しかける
「死にたいのか?この場は俺が引いてやる。しかしお前はこれからの人生反省をして生きろ」
そういうと神秘の力をアライルの中に流し込み、ソリアさんから取り出し隔離しておいた黒いドロドロを取り出し、アライルの神秘の力の流れの真ん中に設置する。これで死ぬことはないが病弱になり、今までのような悪事をする体力はなくなるだろう。
そしてサースティのところに移動する。一番身なりがよく兵士を回りに配置していたのですぐわかった。瞬時に移動したため兵士も対応できていない。
「お前は息子の悪行を見過ごしすぎだ。見てみろこれがお前達貴族に対する不満だ。兵士の中にも不満があるものがいるだろう。ここままだと寝首をかかれるぞ。」
「わしはなっなにも、なにもしらん。」
「それならいい。犬族の奴隷や元隊長のことは探すな。もし追っ手がかかったことがわかったら、すぐにでも復讐しに来るぞ。息子にも言い聞かせろ」
ドスの聞いた声で脅したのでサースティは声も出ずにただうなずくだけだった。
「クロ!引き上げるぞ!」
「承知いたしました。」
クロと二人で乱闘場を走って切り抜けようとしたところバルバリーさんに引き止められた。
「ユウ殿!!これはどういうわけだ?胸糞悪い貴族がおとなしくなるのは願ったりだが、奴隷を買いそびれた。それにうちの私兵も何人か使い物にならない。奴隷を連れて行くならちゃんと対価を払ってもらおう。」
バルバリーさんは商売根性がすさまじいな。だからこの辺で一番の奴隷商なんだろう。
「わかりました。それでは現金ではありませんが、こちらをお譲り致しましょう。」
「ん?何だこれは?・・・家の権利書じゃないか!!これだとつりが出せんぞ」
「いいですよ。もうこの町に済む気はないですし人族貴族にはほとほとあきれました。どこかでゆっくり暮らします。」
そんな会話をしている間にも、クロが襲い掛かってきた市民や兵士を無力化していく
「そうか・・・街を出るか。あの猫族のむすめはどうしている?」
「今はいいチームメイトです。メイドとして有能な従者ですよ」
「そうか。なついたか。わかったこの権利書は受け取ろう。ただ釣りの変わりにこれをもっていけ!」
そういうとバルバリーさんが何かを投げてよこした。小さな箱だ。何かわからないがもらっておこう。
「ユウ様そろそろ」
「わかった。それではバルバリーさん、お元気で」
「お前もな」
そういうと人ごみを切り抜け街の南門を抜ける。門を出て道なりに進み、分かれ道のところに馬車が3台停まっていた。
「お疲れ様にゃ、うまく行ったかにゃ?」
「ミミもお疲れさま。うーん。うまく行ったような行かなかったような・・・まぁどうにかなるさ!」
「ユウ様大丈夫ですよ。あのおびえよう、サースティはアライルのいいなりだったようですが、アライルももう悪事を働ける体ではないでしょう。親の力でも抑えられると思います。」
「本当に良かった。オレは冷や汗をかいたぜ!犬族の父親が切られたが、ユウ殿が治癒をしたのか?いくらなんでも治癒のスピードが速すぎる。マテュリスでもあそこまで早くはないぞ・・・」
「まぁそこらはいずれお話します。今日はとりあえず進めるところまで進んでゆっくり休みましょう。」
それから馬車3台に分かれて辺境の荒野に向けて進んだ。他の街に行くことも考えたが、人族ではなくても貴族がいるところはさすがに疲れたので少し考えようとおもう。
何度か休憩を取りながら進んだ。犬族の家族は父親がカイルさん、奥さんがメイさん、双子のお兄ちゃんがフー、妹がリンという。そして日が暮れる前に今日の野営の場所を確保し馬車を止めた。
「本当にありがとうございました。家族共々心から感謝しております。命があっただけでもよかったです。今後は奴隷として一生尽くしますので家族散り散りにしないでいただけませんでしょうか?」
「カイルさん勘違いしてるみたいですが、別に奴隷として買ったわけじゃないんですよ。あれは適当ないいわけです。ヴァンスさんの家族もカイルさんの家族も安全な土地まで行ったら自由ですよ。」
「ちょっと待ってください。それじゃあなぜ私達家族を助けてくれたんですか?」
「うーん。ヴァンスさんが助けたいといったのが発端ですが、最終的には人族貴族が嫌いだったからかもしれませんね」
「ユウ殿、私達家族はユウ殿に尽力できるならずっと付いて行かせてください。妻とも話し、家族が助けられた恩を少しでも返せるならそうしたいと決断しました。」
「それなら私達家族もそうです。命を助けていただいた恩は一生かけても返しきれませんが、私達家族にできることがあれば尽力いたします。」
「別にそこまで恩を返すとか気にしないでください。オレも深く考えずにただ助けたいと思っただけなんですよ。実際俺達ものこれからどうすればいいか決めてないんですよね。」
これは本音だ。このまま辺境の荒野に行って、とりあえずオーク族の村に行くのもいいし、他の場所に向かうのもありだし・・・
「ユウ様、今後のことを悩んでいらっしゃるのでしょうか?もし決まらないのであれば、私が闇族の住処をまた作成いたしましょうか?」
「それも考えたんだけどね。廃墟ができるとまた金儲けを考えてる人族が集まりそうじゃん。それはいずれまた同じことになりそう。どうしたものかね」
「ユウ様が自分で街を作ればいいにゃ。」
「?!これはまたぶっ飛んだこといってくれる。オレはそんな才能ないよ。自分の作るってどうすればいいかもわからん。それにオレそういうの向いてなさそうだしね」
「そうでもにゃいにゃ。私はユウ様が治める街にゃら住んでみたいにゃ。」
「それは面白いですね。私達もサポートするので「自分の街」を作るのはどうでしょうか?はじめは村で自給自足、いずれ人口を増やし街に。あまり大きくせず住む住人は悪いことをすれば追放とすれば管理しやすいかもしれませんね。」
「私達もその街に住まわせていただけないでしょうか?村づくりから力を尽くします。」
「それじゃあまずはみんなで村を作るにゃ。頑張るにゃ」
「ちょっと勝手に!・・・まぁ今考えられる案だとそれが一番理想だよね。たぶんぐだぐだで頼りないと思うけど力を合わせて集落から頑張ってみるか!」
「おー!!」「おう!」
そんな軽い流れで、こんな知らない世界で街づくりをすることとなってしまった。
なんだかんだでやっと街づくりが始まります。序章が長過ぎだって突っ込まれそうですね。その都度思いついたネタを入れていくとどうしても長くなってしまいます。今後もよろしくお願いいたします。