第1章 16話 ミッション
今日(10/22)の日別総合ランキングで12位になっていました。
びっくりして思わず戻るボタンを押してしまいましたw
評価や意見ありがとうございます。もうすぐ1章は終わり終わる予定です。
家を購入してから受け渡しまでの3日間はオレはあまり行動せずにゆっくりしたいと思っている。一つはまた変な奴等に絡まれるのが面倒くさいこと。もう1つは今までばたばたと行動してきたため少し休憩しようと思ったためだ。二人の従者には休暇を取るように進めてみる。
「ここまで自由にさせていただいてよろしいのでしょうか?私の知る限りでは従者はよほどな事がないと休暇を取りません。主人に許可をもらえればいただけますが・・・それにこれほどのお給金など・・・」
「私もこんなにもらっていいのかにゃ?奴隷だから普通はお使い以外にお金をもたせてもらえにゃいにゃ。休みもにゃいにゃ。ありえにゃいにゃ」
オレは二人に家を引き取るまで自由にするよう話をし、二人の活躍からすると少ないがお金を渡した。オレもサラリーマンのときは週に1日休めるかどうかだったが、休みが待ち遠しかった。休みを挟むほうが仕事の効率が良くなると聞いたことがある。
「いいよ。二人にはお世話になってるし、俺の気持ちだと思って自由にしてきていいよ。買い物してもいいし、買い食いしてもいいし、使わなかった分は持ってていいよ。好きに使ってね」
そういって一人銀貨1枚を渡した。資金はかなりあるし、廃墟内でかなり稼いだから二人の取り分だってあっていいと思う。
「お金が足りなかったら遠慮なく言ってね。相談には乗るよ」
「ありがとうございます。それではミミ、ありがたく頂き自由にさせていただこう。ただユウ様にご迷惑かけないように行動しましょう」
「わかったにゃ。ユウ様ありがとにゃ」
二人から感謝の言葉を聞いて俺も満足をしている。しかし二人ともどこにも行こうとしない。
「あれ?どこにも行かないの?」
「いや、こういうことが初めてだったもので、いざ何かしようとしても思い浮かばないのです」
「私もどうすればいいかわからないにゃ」
そうか。いつも主人の後について回っているから自分で何かしたいかすぐには思いつかないのだろう。
「あ!それなら今日は二人でデートでもしてきたら?」
「でっでっデートなんてそんなご褒美はむにゃむにゃ・・・」
あらら。後ろのほうはむにゃむにゃしか聞こえない。本当にむにゃむにゃって言う人初めてみたわ。ここぞというところでポンコツ執事め!
「デートってどんなことにゃ?クロさんは知ってるかにゃ?」
「でっでっデートとととは、男性と女性で仲むつまじく買い物や食事をすることで、こっこっこっ恋人や好意を抱いているかたと行うことが多いらしいと聞いた人がいたらしいです」
最後のころ文脈がおかしくなってるぞ!なんかからかいがいがあるな。
「そうそう。今日はクロとミミで一緒に二人で食事したり買い物したりしてみたら?ミミもクロにほしいものとか言ったら買ってくれるかもよ?」
「私は行ってもいいにゃ。クロさんもいいかにゃ?」
「バッチこい! 私に不可能はない」
なんかクロが瞳孔開いちゃってるようなギラギラした目でミミに返事をしている。やばい。興奮しすぎだな。それにバッチこいってよくそんな言葉しってるな。それとも翻訳能力の誤訳か?
なんだかんだで二人を落ち着かせデートに送り出した。オレは一人でゆっくりとしよう。。
明後日には家が手に入るんだよね。やりたいことはいっぱいある。自分の家だから住みやすいようにいろいろ手を加えよう。
家を持ったらやりたいこと
①風呂を作って入りたい
②料理を作りたい(日本料理的な何か)
③釣りとか読書とか趣味的なことをゆっくりやりたい。
④思う存分眠りたい
まぁやりたいことといっても意外と平凡なことが多いかもしれない。風呂は譲れない。地球では休みの日や出張の時にいろいろなスーパー銭湯や温泉に入りに行くのが楽しみだった。ミストサウナや塩サウナが好きで、1回の入浴でサウナと水風呂を3往復以上はしていた。
やっぱり日本人は湯船につかることが大切だよね。実際に水はマテルで出せるし、お湯にするのもできると思う。後は湯船を土のマテルでうまく作れればいいかな。
以前この街に移動する際、土のマテルでフィギアを作っていた合間に風呂も作ってみようと試行錯誤をして、石の密度を上げ、表面を加工することで大理石のような石を作り出せることが分かった。これで足をぶつけてもケガをしないように角を取り、排水の穴と蓋を作れば風呂ができる。
風呂についていろいろと想像をしていたところに、部屋の扉をノックする音がした。
「は~い。どなたでしょうか?」
ドアに近づきながら話しかけたが返事がない。気配はそう大きな気配じゃないから危険はなさそうだが・・・開けるか?ドアを10㎝ぐらい開けて様子を見てみる。
「行商人のユウ殿であろうか?私はこの街の筆頭貴族サースティ様の私兵だった、ヴァンスと申す。以前にご子息のアライル様と盗賊に襲われていたところを助けていただいた」
「あ!ヴァンスさんじゃないですか。お久しぶりです。ここで話しててもなんですから、どうぞ中に入ってください」
「すっすまない。いきなりの訪問許されよ」
ヴァンスさんを部屋に招いた後、宿の手伝いの子に1バルを渡しお茶を持ってきてもらうようお願いする。この世界ではチップを渡す文化があり、特に手伝いや小間使いの子供には1バルを渡すのがマナーのようだ。
「それで、わざわざ私のところを訪れたのは何か御用があるのですか?」
「そうなのだ。以前に助けてもらい、本来ならこちらが恩を返す番なのだが、どうしても私だけでは解決できそうにない問題があり…。ユウ殿の腕を見込んで助けていただきたい」
「ヴァンスさんでも解決できない問題が僕に解決できるかあかりませんが、お話を聞きましょう」
「助かる。事の発端はアライル様のわがままからだったのだ。自分の従者や私兵には人族しか採用しない、言わば人族主義の強い方であり他の種族を見下すようなところがあったのだが、先日急に西側の街を視察したいと言い出した。さすがに危険だといったのだが聞き入れず向かわれてしまったのだ。そして視察中にぶつかってきた犬族の双子の兄妹を奴隷にして労働の刑にする言い出した」
おいおいぶつかっただけで処罰とはそれはまたずいぶんと物騒なこと言ってるな。
「それだけでもとんでもないことを言っているのだが、そこに謝りに入った母親も死ぬまで重労働の刑にすると言い出し、反抗した父親はその場で切り捨てろと命令してきた」
・・・オレはアライルが大嫌いだな。再確認できた。アライルだけではなく人族の貴族が嫌いなのかもしれないが・・・
「私は断った。いくらなんでもただぶつかった双子とその家族をここまで無下に扱うことはできないと。しかしそれがいけなかった。怒りの矛先が私に向かい、隊長職を解任、東地区の家は取り上げられ西地区に住むか、街を出ていくよう命令された。私は街を出ていくことも考えたが、私の妻の体が弱く他の街まで行く体力がないので今は安い宿に部屋を借りている。」
とばっちりを受けてそこまでやられちゃったのか。努力して隊長職に就いたのだろうけど、たった一言で転落しちゃったんだな。こんな有能な人を切ることは何も考えてないとしか思えない。個人的にはいい人なので助けてやりたいが・・・。
「しかし私の家族のことは私が何とかする!それよりあの犬族の家族が不憫でならぬのだ。私にも同じぐらいの年の子供がいるので自分に重ねてしまっているのもあるが、常々アライル様の行動には疑問があり、今回のことで私も目が覚めた。こんなのは間違っている。あの家族をどうにかして助け出してやりたいが私一人ではどうすることもできない。無理を承知で頼みに来たのだ。あの家族を助けることが出来たら、私はあなたの奴隷でも小間使いでもする。協力をしていただけないだろうか?」
人族としては初めていい人と思える人にあったかもしれない。感情に流されているわけではないが犬族の家族は助けだしてやりたい。ヴァンスさんの家族も心配だしここは一肌脱ぐことにしよう。
「ヴァンスさん、わかりました。私に何ができるかわかりませんが、協力をいたします。ただし条件があります」
「なんでしょう。なんでもお聞きいたします」
「1つはヴァンスさんに何かがあれば家族が路頭に迷います。奴隷になるとかそういうことはなしとしましょう。2つめは私の命令に従ってください。この二つを守ってくだされば協力します」
「わかりました。こんな一方的なお願いなのに気を遣わせてしまって・・・申し訳ない」
「いいですよ。私はヴァンスさんの真っ直ぐな気持ちに突き動かされたのです。それでは作戦会議といたしましょう。その家族が捕えられている場所と刑の執行がいつになるかはわかりますか?」
「刑の執行は明日の昼と聞いています。現在は街の東側にある警備隊の牢屋に全員捕えられています。まずは父親の処刑、その後奴隷商がほかの家族を買い取り、連れていくこととなります」
明日の執行なら今夜、もしくは処刑執行直前に助け出すのがいいかな?夜なら暗闇に紛れてどうにかできるかな?でも助け出した後が問題だよな。どうしようかな?
「今日は従者2人が出ていますので夜また来ていただけますか?その時に本格的な作戦会議としましょう。大丈夫です。助け出しますよ」
「わかりました。では一度家族のもとに帰ります。日が落ちたころにまたこちらに来ます。それではよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げて部屋を出ていくヴァンスさんを見送りながら作戦を考えてみる。
助け出すのはどうにでもなると思う。ただ助け出した後どうするかだな。一つは廃墟内にある闇族の住処に隠れることだな。ただ外に出たとたんに見つかってしまう。
次は街を出ることだな。次の街までの旅費ぐらいは出しても問題ないが、追手がかかったらひとたまりもない。
そんなことを考えながら時間を過ごしていると昼過ぎごろにクロとミミが帰ってきた。
「ただいま戻りました。」「帰ってきたにゃ」
「お帰り~早かったね。もっとゆっくりして来てもよかったんだよ」
「充実した時間をありがとうございました。私十分有意義な時間を過ごさせていただきました」
「お昼に軽いものを食べたにゃ。ユウ様もお腹すいてると思って買ってきたにゃ」
ミミの手にはロッコ肉の串焼きとサンドイッチがあった。自由時間といったのにオレのことを心配してくれてるなんて嬉しいじゃないか!
「ありがとう。うまそうだね。丁度小腹が減ってきたんだ、早速食べさせてもらうよ」
そんなことを言いながらミミの頭をなでる。やはりクロが少し反応したが見慣れてきたようだ。
「クロもありがとう。わざわざ買ってきてくれるとは思ってなかったよ。でも丁度良かった。二人に相談したいことが出来たんだよね」
買ってきてもらった物を食べながら、二人にヴァンスさんから聞いた話を話した。
「その話なら噂に聞きました。なんでも人族貴族に歯向かった犬族が処刑されると。このことだったのですね。それにしても理不尽な話です」
「許せにゃいにゃ!!私の親も人族貴族にやられたにゃ。私もその時に奴隷ににゃったにゃ。今はユウ様にお仕えできて幸せにゃ。その犬族の家族は助け出したいにゃ」
「そうだよな。二人もそう思うだろ。だから助け出してやりたいと思うんだけど、助けた後ってどうすればいいと思う?」
「難しい問題です。今回の元凶であるアライルのことをどうにかしなければ今後も犠牲者が増えますし、犬族の家族も不安でしょう。ただ、人族貴族は横のつながりが強いため手を出すと後々仕返しをしてくるでしょう」
「やっぱり元をどうにかしないとならないけど手を出すと後が怖いよな」
「はい。以前に鱗人貴族に人族貴族が手を上げたため、鱗人貴族が怒り人族貴族を殴り飛ばしました。すると人族貴族はほかの貴族も含めて私兵を集め鱗人族の村を襲い、鱗人貴族を周りから追い詰めていったと聞きます。それから人族貴族には手を出すなというのが共通の認識になっております」
「そっか。じゃあ下手に犬族の家族を助け出すのは危険なのかな?夜のうちに助け出しちゃおうかと思ったんだけど」
「それは後から大ごとになるかもしれませんね。それであれば奴隷として買い上げてはどうでしょうか?」
「お金で解決することかな?それなら楽でいいんだけど、アライルはそれで納得するかな?」
「納得させればいいではないのですか?周りからは処刑されそうだった奴隷を買い上げる物好きな商人とでも思われるかもしれませんが、本人には絡まれたら厄介な相手と思わせ、関わりたくなくなるような演技でもしてみればいいのではいでしょうか?」
「クロ、オレの演技力を過大評価してないか?演劇なんて小学校のころにやった「ごんぎつね」ぐらいだぞ!」
「ごんぎつねが何かはわかりかねますが、アライルの悪行はいくつか知っております。同じ人族貴族でも疎ましく思っている方もいるようですし、親のサースティ様でさえ手におえないと考えているようですので、うまくいくかと思います」
そうか。同じ人族からも煙たがられているならうまくいくかもしれない。
「ユウ様にゃらできるにゃ。出来にゃかったとしてもみんなで逃げ出せばいいにゃ。この街に留まる理由はにゃいにゃ。馬車でも用意すればヴァンスさんの奥さんも連れていけるにゃ」
そうだな。いざとなったらまた荒野に逃げて行ってもいいし、初めからこの街に留まる理由はない。ヴァンスさんや犬族の家族のことを考えすぎていたようだ。追ってきても一緒に逃げていればどうにかできるし、人があまり来ない土地まで逃げればそこで生活はできるだろう。
「では念のため逃げる準備を二人でしてくれるか?内容は、俺たちと2家族が当分飲み食いできる食料と生活用品、馬車3台とその他もろもろを買い込んでくれ。クロは後でアライルの悪行を教えてくれ。夜はヴァンスさんも来るからそれまでに準備を済ませておきたい」
「わかりました。」「買い出しに行ってくるにゃ」
なんかゆっくりするはずがどんどん忙しくなってる。明日の作戦実行まで時間ないし、やれることはやっておこう!