第1章 14話 ツートップ
評価やお気に入り登録ありがとうございます。
10/20の小説を読もう ジャンル別ランキングで
日別 ファンタジージャンルでのランキング 57位に入りました。
ただただ驚いています。ありがとうございます。これからも頑張ります!
2度目の廃墟探索に来た。いつも通りオレは暗視ゴーグルのマテルを使う。クロは闇族のため暗闇でも問題ないようだ。ミミは猫ということもあり暗くても大丈夫らしいのだが、はっきりは見えないようなので暗視ゴーグルのマテルをかけた。今回は明るい場所で効果が切れるように工夫をしてある。最初は驚いていたが、オレの使うマテルは独自に開発したものが多いと説明し納得してもらった。
とりあえずミミの能力を把握するため、低階層で魔物を倒させる。中型犬ぐらいの芋虫の魔物に街で買ったショートソードを使い攻撃を加えている。猫特有の動きとでも言うか、1撃離脱なのだが動きがしなやかで流れるような動きをしている。ものの数秒で魔物を倒した。
「ミミは魔物と戦ったことがあるの?」
「私の住んでいた村は魔物が多い地域にあったにゃ。物心付くころから魔物との戦い方を教わるにゃ。奴隷になってからも戦闘奴隷として廃墟に来たこともあるにゃ」
「そっか。じゃあここらの魔物は問題なさそうだね。もう少し降りたところで、オレの戦う練習してもいいかな?」
「ユウ様、私たちは従者。主人の意見に従うまでです。都度私たちに確認をとらずとも命令をしていただければ従います」
クロは執事として主人の行動や意見を尊重してくれるが、俺としては仲間として相談をしたりアドバイスをもらったりする関係が好ましい。
「クロ、そしてミミ、僕は君たち二人を従者として頼りにしている。しかし、良い相談相手、そしてパートナーやチームメイトとしてお互いに言いたいことを言える関係を築きたいと思っている。主人だからといって遠慮せずにいやなことはいや、おかしなことは文句の1つでも言ってほしい。だからそこまで肩張らずにいこう!」
「ミミはそれでもいいにゃ。ご主人様が威張り散らすにゃら私は命令されても聞かないにゃ。前の主人はそうだったにゃ。信頼できる相手でにゃければ従いたくないにゃ。ユウ様のことは信頼できそうにゃ」
ミミは猫耳をピコピコさせながら堂々と話している。オレの奴隷になってすぐは、ぜんぜん目も合わせてくれないし、興味なさそうな感じだったが、ご飯を食べたあたりから結構打ち解けてきていると思う。まぁ前の主人のこともあるし人族によい感情を抱かないだろう。少しずつ信頼してもらえるように頑張ろう。
「っくくく。ユウ様らしいですな。ミミ!私たちはとても運がいい。ご主人様としてこれほどまで執事やメイドを信頼してくださる方は珍しい。私たちとしても誇らしいことであります。しかし主人と従者としての線引きは必要ですので対等とはいきませんが、堅苦しくならないよう勤めさせていただきます。ではせっかくですので1つ意見を述べさせていただくこととすれば、ユウ様も主人としての威厳を持っていただけますようお願い致します」
クロの奴め、早速言ってくれた。でもこんな風にいってもらえるほうが自分の欠点やよくない態度などを見直せるからいいと思う。
「わかったよ。人前では主人と従者に見えるよう「主人の威厳」を出せるよう頑張るよ」
そんな会話をしながら階段を下り、下の階層に進んでいく。前回は地下10階まで進んできたはずだ。ここらは人と同じかそれ以上の大きさの魔物が出てくるため、一人で戦うよりチームで戦うほうが効率がいい。連携をうまくできるよう練習をしよう。
「前回はオレの武器を使いこなす練習として極力一人で戦ってきたけど、今回は連携をうまくするためにみんなで戦闘していきたいと思うんだ。クロ、ミミ、俺の動きにおかしな点があったらいってくれ。修正する。」
「「わかりました(にゃ)」」
それから出てくる魔物をそれぞれの動きを確認するように倒してゆく。一人で戦ったときより短い時間で倒せるのはやはり人数がいるためであろう。二人からいろいろとアドバイスをもらい、複数人で戦うときの連携を確認していく。20回程度戦闘をこなすうちに2人から注意や支持を受けることなく戦えるようになった。
「ご主人様はのみこみが良いようです。剣の扱いもだいぶ慣れてこられていますし、連携も良くなっております。マテルの使うタイミングも及第点でしょう。」
「ユウ様は今まで戦闘経験が本当にないのかにゃ?」
ミミは思った以上にオレが動けていたことに驚いているようだ。普通奴隷を所有する人族は奴隷に戦闘を行わせ自分は後ろで見ているだけのため、自らが戦闘に出てくることはまずないらしい。
オレも本当はそうしたいけど、それじゃ現場を知らない上司みたいになって言いたいことだけ言ってみんなを困らせるだけだしね。自分の身は自分で守る。できれば従者の身も守れるぐらいの主人になりたいとは思う。
この世界に来て、超人のような体を手に入れているので多少「死」に対して恐怖心が薄くなっていることもある。足元をすくわれないように今のうちに自分の実力を上げておきたいのも本音だ。
「つい先日まで剣を握ったこともなかったよ。でも自分の身を守ることもできない主人にはなりたくないし、できればみんなを守れるぐらいの強さは身につけたいからね。二人には足手まといかもしれないけど、もう少し付き合ってもらいたい」
「主人を守るのも従者の役目・・・ですが、主人が強ければ従者はそれだけで2つの意味で安心できます。1つは主人に見守られているという安堵、もう一つは戦闘時に主人を気にせずとも自分の動きができるということです。こう思えるかどうかにより大きな差になります。私もそのために従者になる前に力をぶつけさせていただきました」
そうだったのか。クロがはじめに襲ってきたときは、ただ単により強いものに従うとか、認めたものにしか従わないとかそういうことだと思っていたけど、それ以外にそんな意味もあったのね。なんか責任重大だな。やっぱりできるだけ技術を身につけよう。
「そっか、頼りない主人だとそれだけで不安になりそうだしね。それじゃあもう少し下の階層に移動して続けさせてね。」
その後少しずつ階層を下げて今は地下20階ぐらいまで下がってきた。ここらまでくると魔物のほかに悪魔?幽霊?のようなものが出てきている。違いは物理攻撃が効かない。剣で切ってもすり抜けてしまう。相手はマテルを使って攻撃してくるのでこちらもマテルを使で攻撃し倒している。
「ユウ様後ろにまたゴーストがいます!お気をつけください。」
「この半透明なのは攻撃がきかにゃいから、私じゃにゃにもできにゃいにゃ・・・」
「あぁ~やっぱりミミはマテルが使えないのか?」
ゴーストが近くに出てきてもミミはゴーストではなく離れている魔物を相手にしていたがその理由がわかった。
「そうにゃ。今まで使おうとしたけれどできなかったにゃ」
ミミの耳がペタンとして悲しそうな表情をしている。うん。これはかわいいわ。クロもその表情をちらちら見ている。顔がにやけてポンコツ執事になってる。
「そっか。ミミ、マテルを使えるようになりたいかい?」
「使いたいにゃ。ここから下の階層だとマテルがにゃいと何もできなそうだにゃ」
とりあえず、サン(雷)のマテルを数発放ち、近くにいるゴーストを一掃する。
「周りには特に魔物や悪魔がいないようだから、ミミがマテルを使えるように練習してみよう」
ガレム村で子供たちに神秘の力を取り出す方法をレクチャーしたようにミミにもやり方を教えてみる。オレの見込みではミミも相当量の神秘の力はあるが、取り出せないだけだと思う。ミミは目を閉じ自分の中にある力を見つけようとしている。
「・・・だめだにゃ。やっぱりわからないにゃ・・・」
クロが落ち込んでいるミミを励ましている。クロも神秘の力を取り出せるようになるのに2年かかったらしい。えっ?!2年?村の子供だって数分~数時間でわかるようになった子もいるんだぞ?種族間の違いか?それとも個人的な違いか?
どうすればいいか考える。神秘の力を感じることができないなら、逆に引っ張り出して本人が感覚をつかめるようにできないか?とりあえず試してみるか。
「ミミ、神秘の力がお腹の下のほうで感じることができないんだよね?」
「そうだにゃ。わからないにゃ」
「それじゃあ、初めてやるからどうなるかわからないけど、試しにちょっとやってみたいことがあるんだけれど・・・いいかな?」
「いいにゃ。お願いするにゃ」
「ユウ様、どのようなことをやられるのですか?」
「ん?あぁミミの神秘の力をオレが引っ張り出して本人が感じ取ることができるようにできないかと思ってね。物は試しだからやるだけやってみよう」
ミミの右手を両手でつかんでオレの神秘の力を流し込んでいく。
「にゃんか右手から体の中に入ってきた感じがするにゃ。暖かいにゃ」
お!神秘の力のことはわかるようだ。じゃあ引っ張り出すことができればその後は意外とすんなりいきそうだな。
そのまま神秘の力をミミの体の中を通してお腹の下の方へ進めていく。耳がふにゃりとしてもじもじしている。くすぐったいようだ。それを見てクロももじもじしている。
「おい!このポンコツが!お前は気持ち悪いからもじもじするな」
「?!あqwせdrftgyふじこlp!!」
だめだこいつ。今ならタタでも倒せそうだな。ミミのことになると、ここまでポンコツになるとは思わなかった。
そのままオレの神秘の力を、ミミの神秘の力があるところまで進めていく。俺が流し込んでいる力は特に感覚はないのだが、なんとなくミミの神秘の力に触れたような気がした。
「ふーん。ミミの神秘の力は黄色い色をしてるね。オレは白い色をしているんだけど個人的にそれぞれ色があるのかな?それじゃあ引っ張り出すから自分でその感覚をつかんでみてね」
「わっわっわかったたたたにゃ」
ミミはくすぐったそうにしている。尻尾をぴんと伸ばしてどうにかこらえているようだがへっぴり腰になっている。
ポンコツ執事は・・・おい!何で鼻血がでてるんだよ。
「クロ、鼻血。あと、お前は終わるまで後ろを向いてろ!」
「そっそんな・・・わかりました。私には刺激が強すぎるようです。後ろを向いておきます」
何の刺激だか良くわからないが、このままだとポンコツ執事が変態執事になりそうなので釘を刺しておく。
ミミの黄色い神秘の力を、オレの白い神秘の力でゆっくりと掴んで引っ張っていく。後は右手までゆっくり引っ張る。
「あっ!なんか出てきたにゃ。これが私のシンピのチカラにゃの?お腹の中に川があってそこからにゃがれてきてるみたい」
「そう!それだよ!力の川があってその中から神秘の力を引っ張り出す感じ。今右手まで力が出てきたでしょ?後はどんなマテルを使うかイメージをしてから力を放つんだ」
ミミは少し考えてから右手を前に出し、壁に向かって「えい!」とマテルを放つ。するとフィアのマテル(炎のマテル)が飛んでいき壁が燃えた。
「やったにゃ!マテルを使えたにゃ!今までどんなに練習してもできなかったのに、こんなに早くできるにゃんて!ユウ様はすごいにゃ!」
「よかったね!ミミもマテル使いになれたし、下の階層でも対応できることになる!二人とも万能な従者だ!オレも嬉しいよ」
「ユウ様。ちなみに私の神秘の力はどんな色でしょうか?」
「クロの色か。それじゃあ神秘の力を右手に集めて俺と握手してみて」
クロと握手をしてオレの神秘の力でクロの神秘の力を探ってみる。
「・・・これか。もう手を離していいよ。クロの色は濃い青、藍色って感じだな」
「青・・・黒ではなかったのですね。ちょっと複雑な気分ですね」
「まぁこれば別に種族とか関係なく、個人の色みたいだから、個性みたいなものじゃないかな?」
今まで他の人の神秘の力を自分の神秘の力で感じ取ることがなかったが、一度色を確認すると、気配を感じるときに神秘の力の色もわかるようだ。知らない力はすべて色がないが、今は濃い青と黄色の力が近くにあるのがわかる。ある意味レーダーで個人識別できる感じだな。仲間の位置把握にはいいかもしれない。
それからクロとミミ二人に知っているマテルのイメージを説明し練習してもらった。階層も下げて25階までいたがここらまでくると人がくることがないらしく、宝石などがちらほら落ちていることがあった。俺が持っているものより純度は低いが一応拾っておく。
魔物は毒をもっているものが出てきたり、悪魔も動きが早いものが出てきたたが、マテルの練習ということでクロとミミが二人で戦っている。まだミミはまだマテルを放つまで時間がかかっているが、その間はクロがけん制のマテルを放ち敵を近づけさせないようにしている。
しかし、本当に二人とも有能だ。オレが戦わなくてもほとんど倒してしまうため、オレは素材集めを担当している、宝石を売ってかなりお金には余裕があるが、何があるかわからないのでとりあえず拾って売ろうと思う。
オレの無限リュックにミミが興味を持ったが、無限リュックのことを隠すわけにもいかないので二人には話してある。
クロは3人のときより、ミミと二人のときのほうがやる気が高い。ミミはマテルを放つまでまだ時間がかかるため、クロがフォローをしてうまく立ち回っているようだ。なんか腑に落ちないが本人がやる気なので突っ込まないでおこう。
本日は地下25階の探索をして引き返すことにした。これ以上地下に行くなら野営したほうがいいかもしれない。次からは野営も考えて探索することにしよう。