人情の価値
技術がもっともっと進歩したら、マイヘリコプターもできるはず。
この世界、何かが狂ってるよ。
世の中は確かに便利になった。気軽に世界中のヒトと触れ合うことができる。
でも、そんなのどうせ0と1の世界でしかない。画像も動画も色と光の集結体でしかない。
ヒトはやっぱりヒトとのぬくもりで育っていくべきだよ…
これが中学の時の僕のスピーチ。思いっきり笑われた。
僕は一人ぼっちだったから、世界中のヒトとなんか触れ合ってなんかいない。
ヒトとのぬくもりなんて知らない。
「お前はきっと、とてもやさしい心をもっているんだろうなあ」
スピーチをした日の放課後、先生に言われた言葉だ。
「この便利な世界は、人間の心をデータ化してしまった」
「機械の知能にはめこめば、それは人間の心を得ることもできるかもしれない」
「でも、それで機械は人間になれるのか?答えはNOだ」
「斬新な発想ができるようになったとしても、友達を作れるようになったとしてもだ」
「『これが人情か』と理解はするにせよ、それによって嬉しくなるということはないだろう」
「『これが憎悪か』と理解しても、機械が攻撃することは許されない…それでは人間になったとは言えない」
「愚かであることも、欠けていることも、人間を人間たらしめる理由なのだ」
「機械が優れたる存在であることは、人間がそれより劣っているという理由にはならない」
「だから、その心を持って…生き続けなさい。TG-3」
ホログラムの先生の映像はそこで途切れた。