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バランの秘密兵器、空飛ぶ戦艦!

迫る脅威に対抗すべくバランが動く!


 「チャララーンチャラチャラチャララーン♪ それではご覧いただこう・・・」


 「いやはや、宇宙人というものは恐ろしいですなぁ!」

 

 「首領様、我々はこの世界を守らなくてはいけません!」


 「やっぱ、悪の侵略者から世界を守るのがヒーローだよな!」



 ああ、DVDの山に紛れ込んでたんですねぇ、と首領は3人が見ているドキュメンタリー構成のバラエティ番組の画面を見てため息をついた。

 ファンタジー世界の住人が宇宙人を怖がる。

 なかなかシュールな光景である。


 「UFOなんて、この世界じゃなんかのモンスターでしょうに」そうは思ってもこう盛り上がられると水を差すことも出来ない首領なのであった。



 「おやつ出来ましたよ~♪」

 影武者が持ってきたホットケーキに話題は一気にそれる。

 「俺、ホイップクリームとチョコソース!」

 「我輩は蜂蜜とバターで!」

 「餡子とヨーグルトでいってみます!」


 「首領様はどうなさいます?」


 「メープルシロップでお願いします。」


 

 ◆

 ◆



 「しぎゃああ、しぎゃあああー!」

 元気に叫び声をあげるキラートマトに「元気なモノですねぇ」と頬を緩めながら、首領は如雨露で水を撒く。

 秘密基地の外は元々は鬱蒼とした森だったのだが、男爵に促されるまま通販で購入した野菜の種を撒き、それを魔改造した結果がこの光景である。

 トマトが叫び、ナスが猛り、キュウリや大根が走り回る。

 トウモロコシは下手に近付くと種をマシンガンの様に飛ばしてくるので収穫が出来ない。

 拠点防御用に使用するしかないだろう。

 畑の獣害対策にいいかもしれない。


 「こうして見ると『魔』改造とは良く言ったものですねぇ・・・。」


 スパゲティには魔改造は施すまい、そう思う首領であった。

 どこかの自称・宗教団体に正当性を与えかねない。


 この魔改造野菜たち、腹立たしいことに味はいいのだ。

 舌の肥えた女神が絶賛するほどに。


 その後、実態がバレて思い切り殴られた事を思い出し、頭をさする首領。

 

 「ここにいらしたのですか首領! やはり空飛ぶ円盤の脅威に対抗するには我輩たちも空を飛ぶ乗り物が必要なのではないかと!」

 「首領! やっぱかっけえ戦闘機作ろうぜ、戦闘機! ロボットにガキーンって変形する様なヤツ!」

 「妹やエミリアも空は飛べますが、UFOや宇宙人と戦うとなると不安です。ここはドラゴンかワイバーンかグリフォンでも改造すべきではないかと!」


 「まだ、UFOネタを引きずってたんですか・・・?」という内心のため息を隠しつつ、首領は自身の配下たちに顔を向けた。


 「金を出せばクレムリン宮殿すら引っ張ってくるような爺さんの知り合いはいませんから、兵器は買えませんよ? 民用のものでもアパートのドアを通りませんからこちらに持ち込めません。こちらの世界の乗り物って馬車か船くらいですよね? 改造しても空は飛ばないんじゃ?」


 「お、船、空中戦艦作ろうぜ! 空中戦艦!」

 「ほほお、空飛ぶ船ですか、面白そうですな!」

 「大空を飛ぶ船、ロマンですね、首領様!」


 こうして、「UFOに対抗するため」船を買いに海まで行く事になった首領たちであった。



 ◆

 ◆



 「はあ、実に綺麗な海ですねぇ!」

 「向こうとは大違いだな!」

 「中級なり立ての頃のサファギン相手以来ですかねぇ。」

 「海洋生物と人間で魔改造するとどうなるか興味深いところですねぇ。」


 首領たちは船の入手という目的で港町へとやってきていた。

 船の入手とは言っても魔改造のベースであるだけなので、現役バリバリの船を買う必要は無い。

 廃船上等、極端なことを言えば沈没船だろうと構わない。

 どっかの宇宙戦艦だってそうだし。


 漁村と貿易港を併設した様な港町。

 獲れたての魚介を使った屋台で買った焼き魚に持ってきた醤油をかけて食べる首領。


 「あ、首領ズリィ! 俺にも醤油!」

 「我輩、マヨネーズが欲しいところですなぁ!」

 「揚げ物にはやはりソースですよね、首領様!」


 首領が魔改造した鞄は、それぞれの部分が秘密基地の冷蔵庫やら倉庫やらと繋がっている。

 言われるままに調味料を取り出す首領だが、気付けば周囲に人だかりが。


 「この黒いのどこで売ってるの!?」

 「このトロトロのも旨いな!」

 「あー、持って行くなよ、俺まだ使ってねえぞ!」

 

 海外どころか異世界でも通用するキッ○ーマンやキューPは凄いなぁ、と思う首領であった。

 特にキッ○ーマンは海外に醤油を売るために、海外で日本料理店を出す人間を積極的に支援したりしたなんて話もある。


 「ウチの会社もこうしてこの世界に進出してることですし、その内来るかもしれませんねぇキッ○ーマンの人も・・・。」


 


 ◆

 ◆



 「うわぁ、如何にもな人ですねぇ」と、その海の男を見て首領は呟いた。


 もしゃもしゃの髪と髭、片目にはアイパッチ、片手、片足は義手に義足。

 キャラ盛り過ぎだろ、と言いたくなる姿をしている。

 「おお、海賊だ、海賊」などとランスビートルは目を輝かせているが・・・。


 「ワシの船は売らんぞ!」


 船(?)と疑問形を付けたくなる状態の船の側で酒をかっくらって居る。

 アルコール臭と体臭で正直臭い。

 風上に置けないヤツである。


 「しかしですねぇ、正直、乗組員も居なければ、船の状態も悪い。売ろうと思っても売れない状態としか我輩には見えないのですけれど。」

 「あのクラーケンのヤツをぶちのめすまではワシの船は誰にも渡さん!」

 「クラーケン相手だと、この船が万全で腕利きの乗組員を揃えても難しいんじゃないですか。ただでさえ海のモンスターは厄介なのに。」

 「たとえ刺し違えててでも倒してやる!」

 「いや、おっさん、無理だろ! 怪獣を一般人が倒そうとするようなもんだって! 首領もなんか言ってやってよ!」

 「おっさんじゃねえ、ワシのことは船長と呼べ!」


 せっかくやって来たこの町であったが、生憎と都合のいい船の売り物は無かった。

 そんな中「まあ、売ってくれねえだろうけどな!」と港で働く男たちに教えてもらったのが、この船の話だったのだ。


 

 「じゃあ、こうしましょう。まずはこの船をそのクラーケンと戦えるように改造する。そうしたら、私たちが協力してこの船でクラーケンを倒す。倒し終わったらこの船を譲っていただく・・・もちろん船の御代はお支払いしますよ?」

 「な、何を言ってやがる、クラーケンだぞ、相手は?」

 「おお、流石首領様! 実にいい考えです!」

 「飛べるように改造すればクラーケン相手でも安全ですなぁ。」

 「お、バトルか! 首領、初っ端から楽しそうじゃん!」


 珍しく首領の思いつきに皆が流されるといった形で、こうして対クラーケンのバトルが決定したのであった。



 ◆

 ◆



 「こ、これがワシの船・・・だと?」


 「レールガン、パルスレーザー、対空・対艦ミサイル、捕鯨砲を参考にした対モンスター用投銛射出機、飛行時にも使用する水中翼で高速航行も可能です! これならクラーケンどころか怪獣とだって戦えますよ!」

 誇らしげに胸を張る首領。


 他の面々は既に乗り込んではあちこち見たり触ったりしている。


 「首領、首領、このボタンなに?」

 「こんなに大きくしかも硬いガラスですか・・・。」

 「首領様、これって『じはんき』ってヤツですよね?」


 「なんなんだ、この光ってるヤツは?」

 「あー、それはソナーですね。海中に居るモノが分かります。」


 「風も潮も関係無しに進みやがるのか?」

 「そういう風に改造しましたからねぇ。」


 「一人で動かせる・・・だと?」

 「武装はそれぞれ別の人間が動かさないといけませんけどね。航行するだけなら一人でも出来ますよ。」


 常識外れの船に船長は煤けていたが、空を飛んで見せると文字通り腰を抜かした。


 「スゲェ、スゲェ! 流石首領。やっぱ空飛ぶ船はカッコいいよな!」

 「首領様、飛んでますよ、空を!」

 「空の上というのは寒いのですなぁ・・・我輩、中に入ってます。」


 「これが・・・ワシの・・・船・・・だと?」

 


 ◆

 ◆



 クラーケン探査のため、ソナーを使うために飛行モードから航海モードにチェンジした空中戦艦。


 「そう言えば、この船の名前ってなんですか?」

 「ナーガ・オブ・トリニダート号だ。」

 「長い名前ですねぇ、じゃあ略称ナガトで!」

 「空中戦艦ナガトか、いいな、首領!」

 「ナガトですか、いい名前です首領様!」

 「ふむ確か、首領様の世界の戦艦にそういう名前のものがありましたな。」


 うやむやの内に勢いで改名も済んだ。


 「たぶん、この影がクラーケンだと思うんですが、どうやって引っ張り出しましょうか?」

 「アイツはこの辺は自分の縄張りだと思ってやがる、なにもしなくても向こうから来やがるよ!」


 返事を聞いた首領たちはテキパキと準備を進める。


 「どの程度の強さか分かりませんからねぇ、念のため、いつでも飛行出来る体制は取っておいて、様子見を兼ねてレールガンで一発いっておきますか? 今回は船長の復讐戦ですからねぇ、砲手は船長にお願いしましょう。ここが照準、中に合わせてこのボタンを押すと発射です。」

 「お、おう!」

 「いいなあ、あとで俺にも撃たせて、俺にも!」


 悠々と近付いてくるクラーケン。

 「意外と泳ぐの速いですねぇ」と呑気な首領。

 「くそっ、あいつのせいで・・・おい、まだ撃っちゃダメか!?」と憎しみで震えつつボタンに指をかける船長。


 「あんま近寄らせるのもなんですが、離れ過ぎても死体の回収面倒そうですよね。沈んじゃうと回収のしようがないですし。」

 「すぐには沈まないと我輩は思うのですが。」

 「じゃあ、撃っちゃって平気ですかね、単純な生き物そうだし、生命力も強そうですし・・・じゃあ、船長さん撃っちゃってください!」


 「みんなの、あいつらの恨み・・・食らいやがれっ!」


 「おお、即死じゃないですね、流石クラーケン。」

 「え?」

 「首領様、あの足一本焼いて食べてみましょう!」

 「あ、あの?」

 「我輩も研究サンプルにいただきたいですな!」

 「いや、待て・・・。」

 「どうかしました?」


 「なんで、こんなあっさりとアイツが死に掛けてるんだよ!」

 「警戒してたより随分弱かったですね、弱いと見せかけて変身残してるなんてことも無さそうですし。」


 レールガンの一発で、体の大部分を吹き飛ばされ、無事な所と言えば足くらい。後は原型を留めていない。

 それでもかろうじてではあるものの死んで居ないところが凄い。


 「ワシの、あいつ等の仇が・・・。」


 「あー、首領! あれ、サメだよね! 食いに来たのかな?」

 「早めに回収しないとあっという間になくなりそうですね。」

 「弱れば餌ですか、海の王者も哀れですね。」


 「な、なんだと! てめええ、それはワシの獲物だ! 手を出すんじゃねぇ、このサメどもがぁっ!!」

 言うなり銛を咥えて海に飛び込む船長。


 「ちょ、あ、無茶ですよ、あの人。」

 「このままじゃ死んじゃうよ、あのおっさん。」

 「ソードウルフ・・・は難しそうですね、ランスビートル、助けにいってあげて下さい。」

 「分かった、ついでにサメ捕ってくる!」

 「じゃあ、私たちはクラーケンに近付いて回収しましょうか。」


 首領たちは船を動かし、クラーケンへと近付いて行った。



 ◆

 ◆


 銛を打ち込まれ、引きずり上げられたボロボロのクラーケンの死骸。

 ランスビートルが船長の救助がてら獲ってきたサメの死体もある。


 その横では船長が死に掛けていた。

 サメに体のあちこちを齧られ、クラーケンに近い状態になっている。

 

 「仇も討った、もうワシは十分だ・・・。」

 「いや、これじゃ、見殺しにして船を盗ったみたいになっちゃうじゃないですか! 評判なんて落とすのは簡単でも回復するのは至難の業なんですよ!? 戦闘員にするのもなんですし、死体とアイテムと人間、サメと銛と船長で『魔改造』 ハープーン・シャーク!」

 「な、なんだ、これは! ワシは一体・・・手も足も目もあるだと! 力も全盛期以上、いったい、これは!」

 「海の生き物とでも問題なく改造出来ましたねぇ、首領様。出来ればクラーケンの方とやったら面白かったと思うのですが?」

 「いや、流石に仇と思ってた相手と合成するのはマズいでしょう?」


 死に掛けた船長は首領の手で怪人として復活した。

 

 「なあなあ、影武者さんフカヒレ作れるかな? 俺食った事ないんだよね。」


 流れをすっかり無視したランスビートルはサメの尾をつつきながらそんな事を言っていた。



 ◆

 ◆



 ハープーンシャークとして復活した船長。

 「ワシのことはキャプテン・シャークとお呼び下さい。この船はお預かりいたしましょう!」と張り切りだした。

 船員も集めたが、歳が行って無理が利かなくなった者と、経験も体力もまだまだ足りない若者のみ。

 首領が戦闘員に改造することとなった。


 「いいか! お前ら、お前らの命は偉大なるバラン首領様のものだ!」

 「「「「はいっ!」」」

 「見ろ! この素晴らしい船を! 空中戦艦ナガト、その名の通り、空をも飛べる!」

 「「「おおお~!!!」」」

 「お前らはこれからこの船に乗って、バランのために戦うのだ!」

 「「「はいっ!!!!」」」


 なんか勢いでトンでも無い事になっちゃいましたねぇ、とキャプテンたちのノリについていけずにため息をつく首領。


 空中戦艦で秘密基地に帰り、急遽格納庫まで作ることになった首領が「ふーん、まあ、そこそこね。私用の豪華で華麗で美しい船も作りなさい!」との女神の無茶振りに再び港町に戻るハメになるとは、この時の首領には思いも寄らぬことであった。



 

ついに凶悪な兵器と新たな戦力を獲得したバラン

海と空までその手中に!?

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