4話
本編の第二章の三話目です。
俺たちTueeeeな要素が多分に入ります。
では、どうぞ。
「食らいやがれっ!」
ヒュンヒュンヒュン。
強盗一味の杖の先から一斉に放たれた光の矢。杖ノーマルスキルの『バレット』だ。
その射撃を、俺たちはあっさりとサイドステップで回避する。
「俺が最初に突っ込む。ミーシャはその後ろからサポートを。ジェームスとアヤヤは、牽制と支援射撃を頼む」
俺はそう言い残すと、ロングステップで一気に相手との距離を詰めると、同時にコンボを発動させる。狙いは杖持ち強盗の護衛に残っている、剣持ち強盗だ。
発動コンボは<中段斬り⇒下段斬り>の二段。パーティ戦なのでダメージ優先コンボよりも、手早く終わってダウンが取れるコンボを選択する。
剣持ち強盗は、一段目の『中段斬り』は、なんとか盾で防いだみたいだったが、その後の『下段斬り』に反応しきれなかったらしく、あっさりと強制ダウンを食らう。
「ちっ、このクソがぁっ」
杖持ち強盗の三人が、俺に向かってバレットをぶつけようとする。
だけど、無駄だな。この戦いに参加してるのは俺だけじゃないんだから。
「そうはいかねぇよ、虫けらども」
「やらせませんっ」
ジェームスとアヤヤが、強盗一味に向かって弓矢と杖のコンボ射撃で弾幕を張っていく。強盗たちは、やむなく弾幕回避のためにバレットの発動を諦めて、ステップで回避するが――。
「食らいなさいっ」
「な、いつの間にっ!?」
杖持ち強盗の一人がステップで回避した先には、すでに石斧を振り回す態勢のミーシャがいた。
「てぇりゃゃぁぁぁああぁぁぁ」
「うわぁぁぁああああぁぁっっ」
ミーシャが使ったのは<斧振り回し⇒片刃切り上げ⇒切り下ろし>の三連コンボ。
元々攻撃威力の高い両手武器の斧。二段目がクリティカルになったためか、直撃を受けた強盗は、一瞬で全HPの八割以上を削られ、瀕死の状態になった。
「ちくしょう。このクソアマっ、死にやがれよぉっ」
さらにミーシャのコンボ後の硬直目がけて、もう一人の剣持ち強盗が斬りかかる。だけど、そうはさせない。
俺は今自分のいる場所から、『上段斬り』に似たフォームで剣を振った。
フィィイイイン。
上段斬りの態勢になっていた強盗に向かって、俺の剣の先から生じた、三日月型の白っぽいエフェクトが飛ぶ。
中型剣スキル100で手に入る、エキストラスキルのスラッシュだ。
これは剣撃の衝撃波を飛ばす、ロングレンジ攻撃。威力自体は『中段斬り』程度か。
エキストラスキルはTPの消費があるため乱射することはできないが、それでも遠距離からの攻撃ができるというのは、やっぱり大きい。
「ぐわぁっ。な、なんだっ!?」
スラッシュは、ミーシャに斬りかかろうとしていた強盗に直撃した。当然ミーシャへの『上段斬り』は、ノックバック硬直により強制的にキャンセルされる。
俺はここからさらにロングステップで相手との距離を詰めて、<中段斬り⇒上段斬り⇒突き>のコンボにつなげた。一気に六割近くのダメージを奪い、さらに強制ダウンさせる。
俺はコンボ終了後に、連続でバックステップをして距離を取ることも忘れない。
これがパーティ戦が始まって、わずか十数秒での攻防だった。
四人パーティVS五人パーティ。
始めは人数でいえば、俺らの方が少なかった。だけど一巡りの攻防の後、その戦力差は事実上、四対三と、完全にくつがえっている。
「な、なんなんだよ、コイツ等!? めっちゃ上手いぞ」
「ぜ、全部コンボで決めてきやがる」
「キャンベル周辺の連中と、腕が違いすぎるだろ!?」
強盗一味に動揺が走る。
これまでコイツ等は、あまり対戦に縁のない連中を中心に強盗プレイを続けてきたんだろう。だけど、今回ばかりは運が悪かったと思うぞ。
俺らはこのゲームでは、モブ狩りやレベル上げ以上に、対戦をやりまくってきたんだから。
「さて。わざわざ回復の隙をやる気もないしな。さっさとケリをつけようぜ」
その後の戦闘は、俺たちTUEEEEEな感じの蹂躙戦となった。
強盗一味の全員が、いつ死んでもおかしくない危険域である八割前後までHPを失っている。俺たちは、ミーシャがバレットを軽くかすっただけで、後は全員が無傷だ。
「ふぅ。勝てましたね」
「ああ、全然楽勝だったな。もう少し手こずるかと思ったけど」
実際、今回の戦いは初パーティ戦というには、あまりにも呆気ないほどの楽勝ぶりだった。
もちろんここまで一方的な展開になったのにはいくつかの理由がある。その最大の理由は、なんと言っても、強盗一味のプレイヤーとしての実力不足だろう。
コンボが安定しないため、ベーシックスキルでの移動、弾幕張り、攻撃威力の拡大などができない。俺たちはコンボを駆使して複数回行動するのに、強盗一味は一回スキルを使うごとに硬直するのでは、攻撃の手数から言っても、俺らに勝てるわけがなかった。
ミーシャいわく――。
「複数回攻撃が可能な大魔王様四人を相手に、一回攻撃しかできないザコ五人が挑んでも勝てるわけないでしょうに」
――なのだとか。
言い得て妙だとは思うが……なんだか最近、ミーシャの性格が変わってきた気がする。特にさっきの斧コンボの時に至っては、奇声を上げていた気がするんだが?
それはさておき。
今は強盗一味の処分を決める場面なのだが――。
強盗一味は、所持金はおろか、武器防具や回復アイテムなどといった道具の全てを奪い、文字通り身ぐるみ剥いでフィールドに放り出すことになった。
一応、HPだけは完全回復させてやったが。
「こ、こんなんでどうしろつーんだよっ!?」
「武器なしじゃ、スキルもなにも使えねーじゃねーか!?」
必死に訴えかける強盗一味。
俺たちは別に、二度としない、俺たちに関わらないっていうなら放免してもよかった。だけど、襲われていた老人二人組の方が、まったくもって容赦なかった。
「これがあんたたちが、やろうとしたことだよっ!?」
「自業自得じゃよ。因果応報とはよく言ったものじゃ。この温情判決がイヤなら、今すぐここで死んでもらうぞい」
がっはっは、と笑う老人二人組。
逆に顔を蒼ざめさせて、ダラダラと汗を流しているのは絶賛土下座中の強盗一味。どうでもいいが、冷や汗まで再現するんだな。このVR世界は……。
とまあ、それはともかく。
コイツ等は強盗の常習犯だったらしく、かなりの量のアイテムを持っていた。もちろんそれらのアイテムは、俺らと二人の老人との間で分け合う戦利品だ。
だけど、よくよく考えると、俺らもコイツ等相手に十分強盗ちっくなことをやってるのか?
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「それにしても助かったぞい」
「ホントだよ。あんな連中みたいなのもいるかと思えば、あんたたちみたいな若い子もいる。まだまだ世の中捨てたもんじゃないってことかね」
身ぐるみ剥いだ強盗一味を、適当に街道沿いの平原で放り出した後。俺たちと、老人二人組は改めて自己紹介をすることにした。
「ワシはフツ。日本枠での参加じゃ。一次職は『鍛冶師』じゃな」
「アタシはパラケル。同じく日本枠での参加だよ。一次職は『錬金術師』だね」
この二人は現実世界ではリタイア済みの夫婦で、日本枠の中でも二百五十組しか当選数のない二人券を当てて『機械仕掛けの箱庭』のβテストに参加したのだとか。
フツさんとパラケルさんの自己紹介が終わると、今度は俺たちも自己紹介をしていくのだが、わがパーティのナルシーが自己紹介する時だけは、どうにもいたたまれない気分になる。
「あんたたちも大変だね。昔なら帝国海軍で十年も無償奉仕させれば、その子の性根もなんとか治せたかもしれないけどさ」
「昔はこういう子を矯正するには、帝国陸軍にでも放り込めば良かったんだがの」
……えーと、ジェームスの厨二病矯正について、いきなりすごい意見がでてきました。
今は2050年。徴兵して軍隊の中で鍛えるとか、俺らの世代どころか、俺らの祖父母の世代でさえ過去の遺物とされてた発想だぞ!?
……というか、そもそもこの人たち何歳なの?
「さて。それじゃあ自己紹介はこれくらいにしようかの。後の戦利品の分配や、こまかい情報交換なんかはボルンの街でしようかの」
「そうですね。今からでも夕方までには到着できるでしょうし。そのあたりは、今日の夜、ゆっくりとやりましょうか」
こうして俺たちは一行の頭数を六人に増やし、一路、ボルンの街へと歩き始めた。




