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遅くなりました。
サーチアイで10階の様子を見ていたところ、ゴブリンの上位種の集まりを目撃し、興味本位で話を盗み聞きしていたらどうやらダンジョンマスター(ニャディー)を狙っている事が判明した。
「ごめんニャディー。DPの事しか考えてなくて、結果的にゴブリンの反乱を巻き起こすことになっちゃって……」
「にゃはは、大丈夫だにゃ。ヤツらはすぐに調子に乗るからしょうがないにゃ。それに配給を止めてた事で恨まれても逆恨みだから気にしないにゃ」
ニャディーは気にしてなさそうだが、反乱の原因を作ってしまった事実は後ろめたさがあり、自己満足だとしても何かで償いをしたいが……
「あ、今回しょーごはお留守番だにゃ。見た感じゴブリンの上位種は役職持ちのホブゴブリンだにゃ。しょーごじゃDランクのモンスターは荷が重いにゃ」
どうやら、ただのホブゴブリンならいい勝負ができるけど、役職持ちだとランクが上がって戦闘力もひと回り強くなる。あのコモドランもD級になるがコモドランは奇襲が厄介なだけで、戦闘力で言えばホブゴブリンの方が強いらしい。
前線に立ったところで、足止めくらいにしかならず、時間を稼いでも逃げる場所がないので、無駄死にになるだけだ。
「それと、もしかしたらしばらくお風呂には入れなくなるにゃ。ゴブリン達がお風呂の魔法具や木で作った日用品を を見つけると、興味本位でいじって壊したり持ってかれたりする事があるんだにゃ。もし壊されたら替えがガチャで出るまでお預けになるかもにゃ」
それは……何としても阻止したいが、自分で戦いに行っても無駄死になるだけで、どうしたものか……
「あ、こんな作戦とかはどう?」
ニャディーにちょっとした作戦を伝える。
「ほかに作戦もないし、試しにやってみるにゃ。」
戦力にはならないが、少ない知恵を絞り出すくらいならできるので、そっちの方で頑張ろう。
◆◆◆
「もう少しダ、もう少しでボス部屋ダ!引き続きでかトカゲに気をつけロ!」
「おめぇ達にはでかトカゲは倒せねぇ!松明をしっかり持っとけ!俺と長鬼が相手をする!」
上位種ゴブリンの長鬼、次鬼を筆頭に2つの集落が13階を順調に進軍していた。数えるのも億劫になるほどのゴブリンが階層を埋めつくし、松明を掲げゆっくりと確実に迫ってくる。
大量のゴブリンと松明で、捕食者のコモドランすら逃げていく。しかしゴブリンだからと舐めてかかり近づいてく個体も少なからず居たが、下っ端ゴブリンが足止めし上位種ゴブリンが確実に仕留めていく。
逃げたコモドランも階層を埋め尽くすゴブリンにより見つけだされ、不安要素を無くすため討伐されていく。
「末鬼の情報じゃぁ、15階の報告をしたゴブリンが1匹も居ねぇらしい!15階に行って帰ってきたヤツが居ねぇって事だ!つまり15階にボスがいるって事になる!」
「これで14階に突入ダ!15階までもう少シ、気を引き締めヨ!」
そこまで広くない13階を突破し、14階にゴブリンが入ってくる。
「いってぇ!なんだこりゃ、石だらけじゃねーか!おめぇーらも気をつけろよ!」
薄暗い洞窟の中、見渡す限りに拳大の大きさの石がゴロゴロと転がっている。靴を履いていないゴブリン達にとっては躓くだけでも脅威になり、慎重に進むことを余儀なくされる。
石をどかしながら、または避けながらゆっくりと14階を探索する。14階の探索も中盤に差し掛かる頃、突然腹の底まで響く重低音の鳴き声が洞窟全体にコダマする。
上位種ゴブリンは耐えれたが、進化していないただのゴブリンに耐えられるほどの心はなく、そのおぞましい声にやられたゴブリンがパニックに陥る。
足元への注意が散漫になり、石で足を滑らす者。自分だけは助かろうと、前の仲間を押し倒し逃げようとする者。
倒れ、倒された者が更に周りのゴブリンを押し倒し、ドミノのように崩れ落ちていく。
倒れた者の上をさらに倒れたゴブリンが乗り、その上を踏み越えるゴブリンに躓くゴブリン。下敷きになったゴブリンは起きる隙さえなく、その重みに耐えられず事切れていった。
松明を持っているゴブリンも例に漏れず、巻き込まれるように押し倒され、その弾みで松明の灯りが消える。
ダンジョンに再び薄暗さが訪れ、待ってましたと言わんばかりに暗闇からコモドランが奇襲をかける。
「クッソ!どけぇ!うっとおしい!」
「じゃまダ!シッ!」
押し倒された次鬼は力任せに、のしかかるゴブリンを吹き飛ばし、ゴブリンの波を華麗に避けた長鬼は、勢いそのままに奇襲してきたコモドランに拳を突き刺す。
本来硬い鱗に覆われたコモドランに、ゴブリンの拳など全く効かないはすが、長鬼の拳が鱗を砕きながら深々と突き刺さる。
「次鬼、無事だったカ」
「アニキこそ無事でよかった!しかしこりゃひでぇ事になったな」
見渡す限り折り重なったゴブリンの山、運良く逃げられたがコモドランに奇襲されている者。襲われない為に密集していたのが裏目にでて、悲惨な現状となっていた。
しかし、それでもまだ生き残っているゴブリンは数多く、最初の半分近く残っている。
「だいぶ減っちまったが、まぁいいだろう。いくぞおめーら!」
ついて来れない仲間など必要ないと言いたげに、倒れた仲間に目もくれず歩き出す。14階はそこまで広くないのであっという間に15階への階段にたどり着く。
「ふむ、階段の隣と少し後ろの方に部屋があるガ、どうするカ……」
「迷う事はねぇ、どうせヌシってのを倒せば、俺たちのもんになるんだからよぉ」
「まぁ、それもそうカ、15階へ進むゾ!」
「おうよ!……いや、ちょっと待ってくれ。部屋の奥からいい匂いが!間違いねぇ、昔よく食ってたメシの匂いだ!」
「おイ!勝手に行くナ!」
次鬼は血相を変え、階段横の部屋に飛び込んでいった。
長鬼もあとを追いかけたが、部屋に入る直前で入口に大きな岩が転がってきて、行く手を阻む。
「これだかラ、あの馬鹿ハ!少し時間かかるガ、岩壊すから下がってロ」
「その岩も高かったから、それは勘弁して欲しいにゃー」
長鬼が振り返ると、小柄で真っ赤な髪の女の子がそこにいた。
「誰だダ……もしや貴様がヌシってやつカ」
「ヌシかは分からないけど、このダンジョンのマスターをやってるにゃ」
「そうカ……皆の者、掛かレ!!」
長鬼がほかのゴブリンに司令を出すが、シーンと静まり誰も動こうとはせず、長鬼の言葉だけが反響していた。
驚き振り返る長鬼だが、視界にはゴブリンが1匹も居なかった。
「なぜダ?!」
「君達はお宝に目がにゃいもんね。ほら、あそこに皆いるにゃよ」
長鬼からは見えずらくなった、階段近くのもう1つの部屋に灯りが付いていて、部屋の中から魔道具やちょっとした宝石が照らされていた。中にはガラクタもあったが、そんな事はお構い無しにゴブリン達は目の色を変えて、部屋に引き込まれていった。
「これで1体1だにゃ。ほかのゴブリンが居ても別に良かったけど、面倒だし楽なのに越したことはにゃいからね」
「おのレ、舐めおっテ。我1人でも十分ダ!」
言い終わるや否や、長鬼がニャディーに飛び掛り戦いの火蓋が切られた。
ニャディーが戦う少し前、お風呂場に来ていた翔護は薄暗い部屋の中で息を殺して待っていた。
「大丈夫、大丈夫、ただのゴブリンだ。クロも上手くやったみたいだし、俺も頑張らないと。」
コモドラン以来の実戦で、心臓が聞こえるくらいに脈打っていた。
「それにせっかく作り終わったお風呂の用品を持ってかれてたまるか。あれ作るのにコソコソ10階まで行って木を調達してやっと完成したのに……。うし、覚悟を決めろ翔護!」
自分に喝をいれ、部屋にカンテラや松明の明かりを灯し、ゴブリンをおびき出す。
程なくして大量のゴブリンがわらわらと押し寄せる足音が聞こえ、新調した槍を握り直した。
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