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「まず、ダンジョンを縮めるぞ」
元の世界でも家賃は悩みの種だった。
少しいいと思った所だと格段に値段が高くなるし、良さげな所はそもそも借りられていたりする。
「にゃ?そしたらすぐに冒険者がここまで来ちゃうにゃ、それに20階以下は半人前だと思われて恥ずかしいにゃ……」
「5階以降はモンスターも多くないし変わらんよ、ゴブリンだけ詰めてもすぐ突破されるし、維持費に見合ってない。
それにくだらない見栄は捨てときな、最新と見栄は高くつくってのが相場だからな」
「そんな事初めて聞いたにゃ」
とりあえず、今の草原が30階なので道中の15階~30階を潰していく。
ニャディーがぬぬぬと唸っていると、すこしの振動と、遠くの方で重たいものが崩れる音がしてくる。
10秒くらいですぐに静かになり、階層の収縮が終わったようだ。
「さぁ、終わったにゃ。広げるのはあんなに大変なのに、無くなるのは一瞬にゃ……」
借金で拡張したから楽だったでしょうが!っと言いたくなる気持ちを飲み込みむ。
ひとまずこれで使ってなかった15階分の維持費が無くなった。
「次は13.14階にモンスターを放つよ」
放つモンスターは予め決めてあり、『コモドラン』と言う洞窟内に生息する、大型犬ほど大きいトカゲ型のモンスターだ。
比較的大人しいが、モンスターはモンスターなのでたまに襲ってくるし、ゴブリンなど弱いモンスターを捕食する。
こいつを放つことによって、15階(今の草原エリア)にゴブリンが来るのを防ぎ、14階に来たゴブリンを勝手に倒しDPに変えてくれる。
こいつが増えすぎて溢れ出すようになれば、それはその時考えよう……
草原エリアの入口には、暖かいくらいの熱を発してるカイロ石なる物を敷き詰めてたので、熱を嫌がるコモドランは草原エリアに来ない仕掛けになっている。
さっきのモンスターの知識もそうだが、ニャディーに色々聴きまくってたら、ダンジョンのトリセツだと本を渡された。
ただ、分厚さが尋常ではない。
六法全書くらいあんじゃないかと思うほど分厚く、もはや鈍器と呼んでいいくらいの物だった。
流石に全部は読めていないが、流しで目を通しておいた。
「どんどん行くぞー」
気を取り直して次はゴブリンエリアのテコ入れを行う。
何故か食事を召喚しているみたいだが、ゴブリンは雑食なので、木の実を付けるタイプの木を植えとけば何とかなる。
「流石ににゃーもそれくらい試したにゃ、でも洞窟だと全然育たないし、食糧になるほど実らなかったにゃ」
確かに洞窟ではそもそも木が育ちにくい、だから洞窟を変えればいいのだ。
「洞窟に縛られなくてもいいんだぞ、ちょうどココみたいな草原にすればいい。」
「にゃ?!外観の変更は凄い高いにゃ!ココだって生活するから悩みに悩んで変えたんだにゃ、空にもうすっからかんにゃよ」
「ふふふ……ニャディ、借金なんて物は1度してしまえば2度目も変わらんのだ!追加の借金だ!」
ニャディーをさらに借金まみれにする。
それだけ聞くとクズ男みたいだが、資金が無ければ何も出来ないので、借りられる内はどんどんと借りていく。
しくしく言いながら宙を操作しているニャディーには頑張ってもらいたい。
『借入額が上限に達しました。1度返済をしてからまたお越しください。』
ちょうど借金が1,000,000DPになったタイミングで明細書と一緒に上限の通知が送られてきた。
「これで借金は出来なくなったけど、環境は整えられそうだな」
早速10階を草原にして、広さも小学校程の広さからだいぶ広くした。
どれくらいかは分からないが、端から端まで歩いたら半日くらいかかるだろう。
広さを調節した後は、食糧になる木の実を付ける木を植える。
木の実だけだと心もとないので、角の生えたウサギのモンスター『突きウサギ』と、狂ったように突進ばっかりしてくる『クレイジーボア』配置する。
これでゴブリンが突きウサギやクレイジーボアを倒したり、倒されたりする事で勝手にDPが入ってくるサイクルが出来上がった。
ちなみに倒されたモンスターや冒険者は数分でダンジョンに吸収される。
掃除や感染症の心配がないのはありがたいことだ。
あとは5階付近に溜まってるゴブリンを10階に呼び寄せるために、道中の階層にキノコを適当に植えておく。
これで食べ物を探しに来たゴブリンが、キノコにつられてどんどん10階層に住み着く魂胆だ。
5階を草原にしなかったのは、入口と近すぎて冒険者が来る時にゴブリンの数が揃わないと思ったからだ。
多少めんどくさくても10階に食物連鎖のサイクルを作り、5階からゴブリンの移住を促した方が何かと都合がいい。
「よし、これでとりあえずゴブリンの移動待ちかな」
残り5千ポイント程残し、一旦様子見をする。
残りのポイントでモンスターを召喚して、投資に回したいが、使い切ってしまったら何かあった時になんの対処も出来なくなってしまうので、使いたい気持ちをグッと我慢する。
「色々ありがとにゃー、一段落ついたら今度はなんかやるにゃ?」
「とくに予定は無いかな。ゴブリンが移動してこないと何も出来ないしね。」
「なら、しょーごの特訓でもするにゃ。多分今のしょーごじゃゴブリンにも負けるにゃ」
あの雑魚の代名詞であるゴブリン以下の戦力らしい。
見た目は小さいく、腕も細い奴らに負ける想像はできないが、魔法がある世界だし見た目は当てにならないのかもしれない。
普通にゴブリン以下なのはショックだ……
「あ、もちろん1対1ならしょーごの方が強いにゃ。ただ、ゴブリンは基本5体くらいの集団で襲ってくるから、そうなったら負ける可能性もあるって話にゃ!」
ニャディーがフォローをしてくれる。
タイマンならゴブリンに勝てるみたいなので、少しショックが和らいだ。
まぁ喧嘩もろくにしないし、剣道などの武術とも無縁の生活を送っていたので、この世界では弱者もいいところだ。
「特訓って言ったってどうすればいい?素振りでもやってればマシになるかな?」
「それはニャーが相手してあげるにゃ、ほいっ前にガチャで出た棒にゃ」
ケモ耳が付いてる時点で獣人だと思うが、こんなちっちゃい女の子相手に棒を振り回すのは気が引ける。
「来ないのかにゃ?あ、まさかちっちゃいからって舐めてるかにゃ。しょーごの攻撃なんて当たるわけないにゃ」
にゃはははと小馬鹿に笑ってくるニャディーに少しムスッとする。
完全に油断してる所を、えいっと棒で突き刺す。
しかし、ヌルッと必要最低限の動きで躱されてしまう。
「ゴブリンに毛が生えたくらいだにゃ。そんなんじゃかすりもしないから、どんどんと来るにゃ!」
小突く程度の力だったとはいえ、簡単に躱されてしまったので実力差は歴然らしい。
どんどんと攻めていくが、何回やっても当たらず、こちらを小馬鹿にしながら避けていく。
元々運動をする方ではなかったので、すぐに息が上がってしまった。
ニャディーの方は息を切らすことなく、いつも通り平然としていた。
「いや……マジで……当たらない……」
明日は筋肉痛確定だと思いながら、息を整えていく。
「ダンジョンのモンスターは構わず襲ってくるから、少しでも力を付けるにゃ、これからは毎日ニャーとの特訓の時間を作るにゃ!」
久しぶりに全力で体を動かし、いい汗をかけたが明日から毎日あると思うと気が滅入。
まぁ、モンスターが蔓延る世界に来てしまったから、強くなれる稽古はありがたい。
武術なんて知らないし、自己練習と教えて貰うのでは成長スピードが段違いだ。
それによくある転生モノでは、すぐに冒険者になってモンスターと戦っているが、一歩間違えれば死んでしまうような死闘は出来れば経験したくない。
少しづつでも安全に強くなって行ければいいのだ。
借金 : 1,000,000DP
1日の生産DP : 130
1日の維持費用DP : 150
残り : 約5千DP
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