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ダンジョンコンサルタント  作者: 栁屋 なぎ


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2/17

1.出会い

「ニャニャニャ?!なんでニンゲンが召喚されるんだにゃ?!これが俗に言う大当たりって奴かにゃ!」


目が眩むほど強烈な電車のライトと迫り来る死の恐怖に目を瞑って(つむ)いたが、訪れるはずの衝撃や痛みは来なく、目を瞑っていても分かった光を感じなくなり、恐る恐る目を開ける。


そこには、晴れた空に背の低い草が生える草原が広がり、少し離れた場所に木で造られた小屋が建っていた。


「…………ここは……?電車に轢かれたはずじゃ……

あぁ、これが死後の世界ってやつか」


「おぃ!お前はニンゲンかにゃ?人型のモンスターだったりするのかにゃ?」


急に自分のいる場所が変わり、呆然(ぼうぜん)としていると……


「無視は良くないにゃ!ていっ!」


背中に衝撃を受け、前のめりにコケる。

周りは草が生えてるが、自分の足元周辺だけ石でできており、受け身を取った手のひらがジーンとする。


「ニャーの話し、聞いてるかにゃ?

あ、もしかして言葉通じなかったり、喋れなかったりするのかにゃ?人型なのに知能は低いゴブリンタイプかにゃ……」


背後で随分な事を言われているが、状況が飲み込めていなくて話を聞いていなかった自分が悪いので、しょうがない。


「あぁ、すみません。少し自分の状況を飲み込めていなくて、頭の中で整理していたのもので…… 」


振り返りながら立ち上がると、目の前には小柄な少女が立っていた。

ただ、普通の少女ではなく、ルビーのような綺麗な赤い髪の毛を腰辺りまで降ろし、頭にはぴょんとケモノミミが顔を出していた。


「うわぁっ?!」


画面越しでしか見たことの無いケモノミミに驚き声を上げる。


「人の顔を見てビックリするなんて、失礼なやつだ!

まぁ私は寛大(かんだい)だから、さっきの無視といい大目に見といてやるニャ。

それで、君は何なんだニャ?モンスター?」


まだ人間を辞めたつもりは無いので、人間のままだと思うが、当たり前すぎる事を聞かれ、逆に不安になり頭や腕、肩周りを探ってみる。


やはり角や羽など無く、腕も一般的な男性の腕をしていた。


「えぇーっと、僕は人間だと思うんだけど、あなたは?」


「やっぱり人間かニャ……

私はニャルディア、ここのダンジョンマスターをしてるニャ!これからよろしくニャ!」


「え、えぇよろしくお願いします?」


差し出された手を条件反射で握り返す。


「いゃー久しぶりの会話はいいですにゃぁ!!」


握った手をブンブンと振り回して、大きな目をキラキラさせ覗き込んでくる。

背が小さいので上目遣いになるのがあざと可愛い。


「あのーニャルディアさん?ここは何処なんでしょうか」


目の前のケモ耳の女の子(ニャルディア)から日本ではないとは思うが……


「気軽にニャディーでいいにゃ、ここはにゃーのダンジョンの生活スペースだにゃ、下級ランダム召喚(ノーマルガチャ)で君が呼ばれたんだにゃ!意思疎通ができるのは初めてだから嬉しいにゃ!」


どうやら異世界召喚されたらしい。

こーゆーのは王様の前で聖女が担当するものだと思ったが、まさかのダンジョンの中でガチャ召喚らしい。

しかも下級……


改めて足元を見てみれば、どつかれてコケた時はただの石の上としか思わなかったが、うっすらと魔法陣のようなものが書かれていた。


「そういえばまだ名前を聞いてないにゃ、名前はあるかにゃ?なければニャーがつけてあげるにゃ」


「あぁすみません、まだ名乗ってなかったですね僕の名前は……翔護(しょうご)です」


漫画でよく見るような記憶が無いとかはなく、普通にこれまでの事や苗字も思い出せたが、苗字アリは貴族だと思われる事もあるから名前だけ名乗る。


「しょーごか!しょーごは話しにくそうな喋り方をするにゃ!もっと気楽に喋ってくれた方が嬉しいにゃ!」


敬語の事だろうか?日本人として初対面の人に馴れ馴れしく話すのは失礼という文化が、ニャルディアには会わなかったのだろう。

本人が敬語は無しと言うんだし、きっと失礼にはならないと思う。


「分かった、これからはこの喋り方で行くね」


「良い感じだにゃ!今日は出会いを祝ってパーティーだにゃ!色々話も聞きたいしとりあえず付いてくるにゃ!」


鼻歌混じりに小屋に向かうニャディーの後を追う。

こちらも色々聞きたかったので丁度いい機会だと思う。


小屋の中に入ると、新築の木のいい匂いが鼻をくすめる。

外から見た通り広くは無く、リビングに椅子と机が置かれていて、奥にはちょっとしたキッチンがあるだけだった。


「何回か下級ランダム召喚(ノーマルガチャ)をしたけど、ほとんどがガラクタだったし、たまたま出たモンスターも知能が低い奴しか出なかったから、こうして誰かを家に入れるのは初めてだにゃ」


そう言いながら木製の椅子に腰をかける。

自分だけ立ってるのも変なので、ニャディーの向かいの椅子に座る。

ふとニャディーの方に視線を向けると、手に淡い光が集まっていた。


「今日は奮発して高級ミルクにゃ!しょーごも飲むにゃ!」


あっという間に光が収まり、手の中には白い液体が入ったコップが握られていた。


「い、今のは?」


「ん?あぁ、ただの召喚(コール)だにゃ、自分が実際に見た事ある物を呼び出せるダンジョン魔法の1つにゃ他にも制限はあるけど、大体の物は見れば呼び出せるにゃ!

それより、先に乾杯にゃ!」


ミルクと言っていたが、少し身構えてしまう。

地球でも住む国が違えば味の好みや衛生環境が違うのだ。

海外旅行に行き、現地の水を飲んで謎の腹痛で1ヶ月間苦しんだ思い出が呼び起こされる……


一瞬躊躇ったが、ここまで来たなら腹を括り、差し出されたコップを貰い、ニャディーのコップにコツンとぶつけ、中の物を飲み込む。


「うっまぁ……」


口の中に広がる自然の甘さ、それでいてあとを引かないスッキリした飲み心地。

まるで牧場の牛乳を飲んでいるような美味しさだ。


正直心のどこかで、食に関して見下していた。

美味しいものが身近にあり、今も尚職人や品種改良でより美味しいものを追求している国の舌を満たせるのかと。


しかし、そんな心配は杞憂(きゆう)だった。

これなら十分元の世界でも通用する味だ。


「にゃフフ 美味しいでしょ!ニャーもそんな頻繁には飲めないけど、好きなんだにゃ!

ご飯も用意するから待ってるにゃ 召喚(コール)


するとテーブルの空いてる所に淡い光が集まり、すぐに光の中から料理が現れ、美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。


どれもこれも見た事ない料理だが、ニャディーに勧められ口をつけると、やはり全部が美味しかった。


「なぁニャディー、召喚(コール)は無制限に誰でも使えるのか?」


お腹がだいぶ膨れたところで、疑問だった事を聞いてみる。


召喚(コール)DP(ダンジョンポイント)を消費するにゃよ、他にも見慣れた物しかダメとか色々ルールはあるにゃ

他の人が使えるかは、やった事ないから分からないにゃ!」


まぁ、なんでも無制限に召喚できたらバランス崩壊もいい所だ……

それからダンジョンの事を色々と聞いてみた。

まとめてみるとこんな感じだ。


・ダンジョン魔法とは、ダンジョンの中限定で使える魔法で、魔力ではなくDP(ダンジョンポイント)を消費する。

召喚(コール)以外にも、鑑定などあるらしい。


・DPはダンジョン内で生物が死亡すると、強さに比例して貰える。

微量だがモンスターも魔力を発しているので、量と質に応じて毎日少しづつ貰える。

ただしモンスターが多すぎると、食事にかかるコストが高くマイナスになる。


・このダンジョンは30階で、あと30日ほどで冒険者が入れるようになる。


・ダンジョンマスターが死亡すると、ダンジョンは消滅して冒険者は外に排出され、中のモンスターは消滅するらしい。


他にもいろいろ話したが、とりあえずこんな感じだ。

ニャディーがやられると、自分も死んでしまうので死守せねば……


「何で今は人間が入って来なくて、30日くらいで入ってくるの?」


「にゃーも詳しくは知らないけど、ダンジョンの神様が入口を隠してくれてるみたいだにゃ

それより、にゃー以外がDPを使えるか試してみるにゃ 」


そう言い終わる前にニャディーが俺の手を取る。

すると暖かいような、肝が冷えるような不思議な感覚が腕を伝って流れ込んでくる。


「上手く行ったみたいだにゃ、にゃーのDPが減ってるからしょーごの方に行ったはずだにゃ!

視界の端ら辺になにか数字が見えないかにゃ?」


ニャディーに言われて初めて、100という数字が浮かんでるのがわかる。


「あぁ、確かに100って数字が見える。」


「後は実際に見た事ある物をイメージして、召喚(コール)って言えば出てくるにゃ!」


言われたようにある程度想像して、召喚(コール)と唱えると、机の上に光が集まり瞬く間にいちごのショートケーキが姿を現した。


「見た事ないものだにゃ、スンスン……いい匂い」


「食べれるものだから、気にせず食べてみて」


言い終わる前にニャディーがショートケーキを頬張っていた。


「美味いにゃ!こんなに美味しいものは初めてニャ!これに高級ミルクを合わせたら……」


1人大興奮しながら召喚(コール)を唱え、ミルクのおかわりをグイッと飲んでいた。


「だはぁぁーー!!」


おっさんの風呂上がりの1杯を彷彿(ほうふつ)とさせる飲み方をし、目をトロンとさせている。


ちょっと引く光景だが、ニャディーが好きそうな物をチョイスしたので、お気に召したなら選んだかいがあるものだ。


「もっと欲しいにゃ!早くよこすにゃ!」


「わかった!わかったから落ち着け!もうDPが無いからまた分けて欲しい」


「にゃ?!あれ1個で100も使ったのかにゃ?!

100あったら10回ガチャが回せるのに?!

……まぁ確かにあの美味しさなら、納得ができるにゃ……」


ガチャ1回が10DPらしい、 っと言うことはガチャで召喚された俺はショートケーキの10分の1の価値という事になってしまう……

やめよう、これ以上深く考えると立ち直れなくなってしまう……


「むむむ、しょうがない!こうなったら奥の手にゃよ!!」


ニャディーが空中の何も無いところを見つめながら手を動かしている。

きっとニャディーにしか見えない何かがあるのだろう。

傍から見ると、とてもアホっぽい……


「よし!これで追加の1,000DPにゃ!

200渡すからしょーごも一緒に食べるにゃ!」


勝手に手を握られ、暖かいような肝が冷えるような感覚が手を伝う。

そのまま手を握った状態で、早くくれ早くくれと手をブンブンさせられる。


すぐ召喚するからと、無理やり手を引き離すと、宙から1枚の紙がペラペラと舞い降りてきた。



【借金明細書】

ニャディー様 : 985,000 DP



シンプルイズベスト、とってもわかりやすい。


「借金してるじゃねーか!!」

最後まで見ていただきありがとうございます。

面白い、続きが気になると思ったら、ブクマ、高評価よろしくお願いします。

執筆の励みになります


本日後1話投稿します

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