13. 第一印象って大事だよね
トリセツを開きながら、気絶してる彼女の扱いについて、改めて考える。
ひとまず助けはしたけど、こちら側に誘っても素直に来てくれるかは分からない。無理に取り込んだとしても、恨みを買っていればそのうち裏切られ危険に晒される。
だからといって、このまま返してもダンジョンの場所がバレ、中のモンスターも枯渇してるとなれば、好機と捉え攻められたら、今度こそニャディーの元まで冒険者が来てしまう。ニャディーもクロも強いが、集団で攻撃されたら負けてしまうかもしれない。
答えの出ないまま頭を抱えていると。
「ん……ここは……。あ、そうか死んじゃったんだな。死後の世界ってこんな感じなのか」
ムクリと体を起こし、勘違いをしたエコレの独り言が聞こえた。
「どうも、おはよう。ここはまだ死後の世界じゃないよ。気絶してた所を運んできたんだ」
アニメに出てくる知能キャラの様に、本を片手にクールに行きたかったが、読んでた本が大きすぎて、閉じる際にバタン!と重めの音がなり、エコレの肩が少し跳ね上がった。そのまま振り向いた彼女と目が合う。
「た、助けていただき、ありがとうございます。まさかダンジョンから救出してくれる人が居るなんて……」
「ん?あぁ、ここはダンジョンの中だよ。俺は小林翔護、このダンジョンに住ませてもらってるんだ」
今まで洞窟で戦って居たのに、起きたら木の家で寝てたとなればそう思うのも無理はない。
「しょ、しょーごさんはダンジョンに住んでるんですか……あ、私はエコレと言います。私たちが最初の発見者じゃなかったんですね。だからモンスターも少ないし、宝箱もなかったのか……」
もっと驚きや質問があると思ったが、勝手に納得してすんなりと、ダンジョンに住んでる事を受け止められてしまった。襲われるよりは良かったが、身構えていたのがアホらしくなる。
まぁ、もちろん武器は取り上げてあるし、自分の足元にはゴブリンをシバく時に使った棒が置いてあるので、襲われてもニャディーが助けに来てくれる時間稼ぎくらいならできるが。
「た、助けていただいて、こんな事を言うのもなんですが……少しの間、お邪魔させてもらってもいいですか?」
言いずらそうに、口を開けては閉じてを繰り返してから、申し訳なさそうにそう告げる。
ダンジョン側に無理に誘うのも、ダンジョンの戦力が整う前に帰られるのも、両方避けたかった身としては、向こうから居座りたいと言われれば、それに越したことはない。
「理由を聞いてもいいかな?」
相手の求めているのが分かれば、より裏切られる確率も減るので、すぐに返事をせずに聞いてみる。
「そ、それは――」
彼女の昔の話を聞き少し同情してしまう。山賊に地元を襲われ、逃げた先の街では人に恵まれず。終いにはダンジョンに置いていかれ……元の世界でも嫌な人はそこそこいたが、そこまで殺伐とした世の中ではなかった。
何はともあれ話を聞く限り、人に疲れて半ば自暴自棄になってるだけで、裏切る理由も無さそうだし、仲間に加わって貰ってもいいと思う。
「だってさニャディー、クロ。害は無さそうだし、一緒に住んでもいいかな?」
「いいにゃよー。」
ガチャリと扉が開き、外で待っていてくれた2人が中へ入り込む。
「え?!だれ?! え??!グファ・ベア?!!」
現れた猫耳少女と、さっきまで戦っていたグファ・ベアに咄嗟に身構える。武器は取り上げられているので、通用しないであろうファイティングポーズだ。
「やぁ、にゃーはニャルディアだにゃ。このダンジョンのマスターだにゃ」
「こっちはクロ。さっきまで殺り合ってた仲だし、すぐにとは言わないけど、同じダンジョンの仲間として上手くやってこ!」
クロは喋れないので、代わりに紹介をする。
エコレの身構えに対して、クロもさっきまで戦っていた手前、警戒を露わにし少し唸ると、後ろで小さな悲鳴がきこえた。
「な、なんでモンスターがここに?!」
一触即発の雰囲気にニャディーはクロを、自分はエコレをなだめ、少し時間を置いてから改めて説明をする。
混乱させないよう、ニャディーとクロに外で待っててもらったが、意味がなかったようだ。
「落ち着いてきたかな?さっきここに住んでるって言ったじゃん?」
落ち着かせるために出したお茶が冷める頃、聞く体制になったので話を続ける。
「い、言いましたけど。てっきり流れの冒険者が住み着いてるのかと……ダンジョン側だなんて思いませんよ」
言われてみれば、ダンジョンに住んでると言われたら、住み込みで攻略してると思うのが一般的で、ダンジョンの運営側なんて思いもしないだろ。
それならすぐに受け止められたのも納得出来る。
「少し思い違いは合ったけど、改めてどうする?こちら側に来れば衣食住は保証するよ、冒険者と戦う事になるかもしれないけど」
少し下を向いた後、意を決したように話し出す。
「……やっぱり、ここに住ませてください」
◆◆◆
新しい仲間が増えて嬉しい所だが、素直に喜んでは居られない。ゴブリンの反乱で少なくなったモンスターが、さらに倒されて少なくなってしまった。手持ちのDPも新しいサーチアイを買い、エコレを置き去りにした冒険者もまだ生きていてるらしく、DPが入らず資産が底を尽きかけていた。
資産とは現金だけでなく車や家、株やゲーム機などお金になりそうな物を全てを資産として見るのだが、ダンジョンも同じでモンスターも立派な資産だ。
「さすがにモンスターが少なすぎて、ダンジョンの赤字が凄いな……他のダンジョンはどうやって稼いでるんだ?」
「みんなお宝で冒険者を誘って、倒して稼いでるにゃよ。やっぱ冒険者を倒すのが、1番手っ取り早く稼げるにゃ」
「じゃ、じゃぁこれからお宝を置いて、冒険者を呼び込む感じですか?」
やはり冒険者を呼び込むのが主流の様だが、個人的にはあまりいいとは言えない。冒険者に仲間意識を持っているとか、死んで欲しくない訳ではなく、普通にハイリスクでコストも高いからだ。
倒した時のリターンは大きいみたいだが、冒険者だってみんながみんな馬鹿じゃない。死なないように無理はしないし、情報を持ち帰られれば対策も取られる。
それにもし倒せないほど強い冒険者が来れば、それでゲームオーバーだ。せめてこの周辺の冒険者に、攻略出来ない程のダンジョンにしてからでないと、いくらリターンが良くてもリスクが見合っていないと思う。
「しょーごは慎重だにゃ。にゃーだってそんなホイホイやられないにゃ!」
自信があるのはいい事だが、世の中そう言ってるやつが真っ先にやられるのだ。
「そ、それならこれからどうするんですか?」
モンスターが増えるのを待っていても、2日程で手持ちのDPが尽きてしまうため、流暢に待っていられない。それに忘れてはいけないのが、あと5ヶ月で30万DPを稼がなければならないのだ。
しかし、DPを得る方法は限られている。ダンジョンの中で生き物が倒された時がメインで、生きてる内は少ししかDPを得られない。よくある物語のように外貨をDPに変換はできないのだ。
「とりあえず、今出来る事と言えば……外に出稼ぎに行くか」
「そ、それなら私も行きます。少しならこのダンジョンの周りも探索してたので、もしかしたら力になれるかもしれないです」
「じゃぁ途中まで一緒に行くにゃ!」
ニャディーも末鬼に話があるようなので、一緒に降りていく。ニャディーは下に降りるほどデバフがかかるが、「身体が重いだけだから大丈夫だにゃ!」と元気そうだったので、気持ちが悪くなるとかは無いようだ。クロも一緒に行きたがっていたが、肩に貰った傷が癒えるまで待機中だ。
「これまではにゃーが居たから襲われなかったけど、この先は気をつけるにゃよー!この階は末鬼に話しを付けて、襲われないように交渉してみるにゃ!」
「ありがとね!こっちもちょっくら稼いでくるよ」
草原エリアでニャディーと分かれ、さらに上へと登っていく。ゴブリンも全く姿を見せず、なんの苦労もなく1階へたどり着いた。
この世界に来て初めての外に、少しワクワクしながらダンジョンの入口をくぐった。
1日の生産DP : 120
1日の維持費用DP : 170
残り : 約180DP
エピソードタイトルはつけた方が良いみたいなので、時間ある時に付けていきます




