12
とある小さな村に1人の娘が産まれた。
村は王都から遠く、発展している訳ではなかったが、幸い出てくるモンスターも弱く、貧しいながらにも村人みんなで工夫や、助け合いをして幸せな時間を過ごしていた。
何度目かの春を越え、体が大きくなってきたら大人達と一緒に狩りに行き、幼馴染の男の子達ともよく遊ぶ活発な子になった。
それからさらに時を重ね、一人で森に行き狩りをするようになった。幼馴染の男の子は冒険者になると意気込んでいたので、そろそろ大きな街に向かうかもしれない。
最近は不作で毎日のように狩りへ出向く。しかしいつもと同じ森のはずが、何故か動物が少なく、鳥の声も気持ち静かに聞こえた。
不穏な空気に胸騒ぎを覚え、一旦村へ戻ることにした。
村に近づくにつれ、いつもよりも騒がしくなっている村に違和感が増し、足取りも早くなる。
森が途切れ開けた視界には映ったのは、見たことない顔ぶれの人が武器を持ち、村の人たちが農具で応戦している所だった。
「お父さん!」
自分の父親がやられそうになっているのを見つけ、反射的に弓を射る。急だった事もあり罪悪感に潰されることもなく人を射抜いた。
「おぉ、ありがとう!無事だったか!流れの山賊が降りてきたんだ。危ないから森へ避難してなさい!」
有無を言わさない気迫で、少女を森へ追いやる。普通なら家に居ろと言うだろうが、今や小さい村の中はどこも危険である。逃げ場のない家に隠れていても、見つかればそこで終わりだ。それなら魔物も出るが、普段から狩りに出ている森の方が逃げる事もでき安全だ。
言われるがまま森の方へ走っていく。後ろから山賊の声が聞こえたが、振り返らずに奥へ奥へと進んでいく。
いつの間にか耳に届くのは自分の吐く息の音だけになり、そこでやっと走るのを止めた。
どうにか山賊は撒いたが、まだ近くにいる気がして、息を殺し目立たない所へ隠れる。疲れきった体に、緊張の糸がほどけいつの間にか眠りについていた。
起きた時には日が登り始める頃だった。もう山賊も居なくなってると思い村に帰ると、確かに山賊はいなくなっていた。
しかし、山賊だけでなく村の人も見当たらず、不気味な静けさだけが残っていた。
家に着き扉を開けると、父親が眠っていた。布団を真っ赤に染め、一目で手遅れだと分かる顔色で。
それから村の中を調べたが生きてる人はおらず、何故あの時一緒に戦わなかったのか、1人逃げ出してしまった自己嫌悪と、親を無くした喪失感が頭の中を掻き回し、ただ呆然と村を後にしていた。
歩きなのでそこそこの時間はかかったが、無事都市に着き、冒険者登録をする。もしかしたら幼馴染が自分と同じで生き残っているかもと思い、なりたがっていた冒険者になれば、いずれ会えると淡い期待を抱いての事だ。
しかし冒険者になっても上手くいかず、よく知らない新人をパーティーに入る所は少なかった。せっかく入ったパーティーもリーダーから体を求められ、断ると翌日から様々な噂を立てられた。都市にいるのが辛くなり、逃げるように別の街へ向かった。
新しい街ではすぐにパーティーに入れたが、運良く見つけた新しいダンジョンに向かう事になった。それが最後のダンジョン攻略になるとも知らず。
◆◆◆
「んー、クロの実戦経験にちょうど良いかもにゃ」
時は少し遡り、冒険者3人組がゴブリンの居る10階層を越え、13階を探索している姿を見ながら、ニャディーが隣で呟く。
最初の方で撃ち抜かれてしまったサーチアイだが、ガチャで出たものなので替えなど無く、しばらく監視できていない状態が続いた。
ニャディーにとってサーチアイの映像はただの暇つぶしで、ここまで来たら戦い、来なければそれはそれで良いというスタンスだったが、情報の大切さを教えまくり、やっとサーチアイをDPで召喚してくれた。
前回と同じだとまたバレてまうので、今回のは気配を消すのが得意なタイプだ。それだけでは無く映像を投映できて数人で見れる様になった。その分DPも高く、残しておいたポイントを全て使い切ってしまったが、それだけ情報は大切だ。
その甲斐あってか新しいサーチアイで3人を見つけても攻撃されることはなく、監視できていた。
3人の力量も把握でき、クロなら勝てそうだと判断したニャディーが、冒険者がオークに殺られる前に実戦を積ませるためクロを送り込む。
しばらくしてクロと冒険者達の戦闘が始まった。最初は良かったが、後半の逃走劇は見るに堪えないものだった。
仲間に裏切られ置き去りにされるのは、小説なんかではよくある展開だが、実際目の前で繰り広げられると気分の良いものではない。
可哀想で助けたいとは思うが、今はダンジョン側の人間で冒険者とは敵対関係だ。下手に助けてもダンジョンに害しか出ないだろう。だからと言って直ぐに割り切るほど薄情にはなれなかった。これ以上見ていられなくなり席を離れようと立ち上がる。
「……助けてもいいにゃよ。」
まさか、敵対関係の相手を助けてもいいとは思わず、ニャディーの方をむく。
「しょーごも同じ人間だからこうなるとは思ってたにゃ。でも見逃すなら今後を含めて3人までにゃ。下手に見逃しても後で痛い目を見るにゃ」
余程顔に出ていたのか、気を利かせてくれたニャディーが、そんな提案を持ちかけてきてくれた。
「ありがとうニャディー。そんなに顔に出てたかな……最初の冒険者がもっと悪そうなら、気にせず見捨てられたんだけどね。さすがに皆を助けたいと言うほど、周りが見えていない訳じゃないさ」
それに目の前で殺られるのを見なければ、少しはメンタルも守られるだろう。
それからクロに待ったをかけてもらい、仕留めるのを止めてもらう。
「それで、あの子はどうするんだにゃ?このままほっておいてもせっかく助けた命が危ないにゃよ。こちら側に引き込むのもリスクが大きいにゃ、そもそも本人が了承するかも分からにゃいけど」
ダンジョン側に来るということは、人類を敵に回すという事だ。いくら命を助けたと言っても、助けてくれと頼まれた訳でもないし、人によっては死ぬよりも嫌な展開になってしまう。
「それならまず、俺が行ってこようと思ってるよ」
「それにゃらにゃーが途中まで着いてくにゃ。数は少ないけど、オークに会ったら危ないにゃ。」
怪我を負ったクロを迎えるついでに、ニャディーがオークの居る15階を護衛してくれる。冒険者達が戦ったのが14階だったので、もう少し行くとオークとエンカウントしていたかもしれない。
「あれ?気絶してる?まぁ命の危機に晒されたから無理もないか」
14階に着くと、階段の手前ら辺で横になってる姿が見えた。近寄ってみても目が覚めず、息も静かなので胸が少し上下してなければ死んでる様に見える。
コモドランが来たら守れないので、一旦17階に引き返す。本当は17階層に招く予定はなかったが、恩を着せれば少しでもダンジョン側に付いてくれるかもと前向きに考え、武器を回収しながら気絶しているエコレを17階層へ連れていく。
最初は14階で話そうと、階段の手前でニャディーと別れたが、17階に引き返すため待っててくれたニャディーとクロと並んで帰る。
そのままニャディーが許可をくれ、小屋とベットを少しの間貸してもらい、ダンジョンのトリセツの続きを読みながら時間を潰し、目が覚めるのを待った。
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