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すみません、また体調を崩していました
「お、なんだあれ?」
「なんか粗末な家っぽいっすね」
次の階段を探していると、森からぬけてすぐの所に木で組み立てられた、小さな家のような物が密集していた。
三角形に組み立てられただけの家は、所々穴があいてその穴から、数匹のゴブリンが見え隠れする。
「ゴブリンの遭遇率も高くなってたし、もしかしたらゴブリンの集落かもな」
「聞いた話によると、そーゆーちょっと変わった場所に宝箱がありやすいみたいっすよ」
「さ、さすがにゴブリンでも囲まれると、危なくないですか?ホブゴブリンも居るかもですし……」
「ほんとにエコレはビビりだな。ゴブリン何て数十匹居ようが変わらないわ!ホブゴブリンもゴブリンに毛が生えた程度だろ」
ダンとゲイスはそのまま無警戒に、ずんずんと突き進んでいく。道中ゴブリンに襲われるが、出てくるのはただのゴブリンだけで、難なく撃退していく。
「見事になんもないっすね」
ゴブリンの小さな家を1個1個見ていくが、宝箱やアイテムらしい物は見つからない。あるのは腐った果実と突きうさぎの骨くらいだ。
悪態をつきながら集落を後にし、次の階へ続く階段をさがしに歩き始めると、さっきの集落よりも立派な集落がみえてきた。外側は木で作られた柵に覆われ、中に見える建物は先程の集落にあった三角形の家のような物とは違い、1番粗末な家でもしっかりと家の形を保っている。
壁は穴だらけで、雨風はそこまで防げそうに無いが、屋根には草を干した物を被せ光を遮断している。実際ダンジョンの中では雨は降らず、風も心地よい程度なので光さえ防げればそれだけで良い休憩場になる。
光を遮断するだけの粗末な木の家も多いが、その家よりも一回り大きく、何かの骨を装飾している家もいくつかある。しかし中でも目を引くのは、集落の中央にある家だ。土で作られた壁になにかの模様や彫刻が施され、骨の装飾もほかの家より多くあしらわれている。
それに家だけではなく、見張りにホブゴブリンが待機しているのも、さっきの集落との格の違いが見てとれる。
「流石にあれはヤバイっすよ。見つからないように引き返しましょ」
「よ、良かった。これで帰りましょう。危ない感じがピリピリします」
「……いや、少しだけ様子を見よう」
「え?!」
帰る流れを断ち切り、ダンに視線が集まる。
「お前らはバカだろ。こんなに発展してるんだ、この場所にボスが居て階段を守ってるに決まってるだろ。こんなに広いエリアならボスを誘い出して、倒さずに階段へ逃げ切る事だってできる」
「なるほど、さすがダンくん!ボスを倒さず先に奥に行けるんですね!」
「それで奥の階にある宝箱を開ければ、ここのボスなんて今より楽に倒せる。いい物も手に入り、ボスも楽に倒せるなんて一石二鳥だろ」
「えぇ、まだ一回も宝箱見つけられてないんですよ?この先見つけられない事だってあります!それに階段だってここにあるかどうか不確定じゃないですか!一旦帰りましょうよ」
「ならエコレだけ帰ればいいだろ。前衛が居なくて帰れるならな」
「……え?!」
耳を疑うような暴論に一瞬何を言われたのか、脳が理解するのを拒んだ。
「そうだぞ!安全な後ろから撃ってるだけで、危険な前衛の意見に逆らうなんて!」
「よし、ゲイスいくぞ。もちろんだが、今回エコレの報酬は無しだからな」
どんどんと続く暴論に異を唱えられずにいると、そのまま剣士2人はゴブリンのボスをおびき出す作戦を立てるため、2人で少し離れたところに陣取る。
「ま、待って。私も行きます……」
いくらモンスターの少ないダンジョンだったとしても、流石に前衛無しでは無事に帰れる気がせず、渋々2人の後を追いかけた。
無策に突っ込んで行っても、イタズラに危険を増やすだけなのでまず作戦を立てる。作戦と言っても複雑なことは無く、ただ火矢で集落を燃やすだけだ。
見たところ中央の立派な家以外は、全て木や草でできているので1つ2つ燃やすだけで、大変な事になるだろう。
矢がもったいないと、最初は松明で燃やそうとしていたが、燃やす前に見つかってしまっては、向こうも必至で阻止しに来て、火をつける所ではなくなってしまうと、何とか説得して火矢を使わせてもらう事になった。
「セイッ!」
火矢が赤い軌道を残しながら、草で作られた屋根にささる。
狙い通りに屋根は燃え広がり、ゴブリン達は慌ただしく火を消そうとしている。しかし一度付いてしまった火はそう簡単に鎮火せず、水場も近くにない状態ではただ勢いを増す炎に呆然とするばかりだ。
騒ぎを聞きつけ、中央の立派な家から骨のネックレスを首につけ、杖を持ったゴブリンが急いで魔法を使い、水を生成している。しかし、あっという間に大きくなった炎は少しの水をものともせず、手をつけられないほど成長していた。
「よし、上位種も消化に行ったし、俺らも行くぞ!」
「ダンくん、良いのがあったら分けてくださいね」
3人は火元となった家の反対側から集落に新入し、一直線に中央の家に忍び込んだ。
やはりと言うべきか、中はそこまで良い造りではなく、所詮はゴブリンと言った所で広い部屋が2つあるだけだった。
片方は草が敷かれていてベットのようで、もう片方は肉や果実などの食料庫であった。
「は?!宝箱もなければ階段も無いだと?!」
「ヤバイっすよ、放った火が思ったより広がってます!」
「とりあえず逃げましょう!」
無風のダンジョンであっても、巨大になった炎が上昇気流を生み出し、舞い上げられた火の粉が遠くの家にも飛び火し、村全体が炎で覆われていった。
3人は収穫もないまま逃げ出す。しかし逃げ出していたのは自分だけでは無い。
「お前達か。お前達が火を放ったんだな」
逃げるのに必死で、周りのゴブリンを気にする余裕は無く、ただ襲ってきたゴブリンを切り伏せ、火の手から逃げていると、同じように逃げ出していた上位種ゴブリンの近くに来てしまっていたようだ。
周りには数多くのホブゴブリンが守っており、静かに、しかし確かな怒気を含んだ声でそう問いかけてくる。
「お、俺らじゃねえ!」
「シラを切るか!貴様ら以外誰がいる!《ウィンドカッター》」
見えない刃が1番近くに居たダンに襲いかかる。
皮で作られていた防具はパックリと割れ、防具の切れ目がじわりと赤く染まる
「過ぎたことは、もう戻らん。ならばせめて憂さ晴らしくらいは引き受けよ。あのもの達を捉えるのだ!」
「うお!」「ぐぉお!」
返事をして一斉にこちらへ向かってくるホブゴブリン。
動きは早くはないが、ゴブリンより大きく1太刀で倒せる相手ではない。囲まれればそのまま突破出来ずやられてしまうだろう。
「魔法は致命傷にはならない!とりあえず逃げろ!」
ダンが叫ぶやいなや、3人とも一目散に踵を返した。装備を着ていてもホブゴブリンとの差は着実に広がり、追われる恐怖はあるものの、足の速さでは勝っているので心に少し余裕があった。
しかし、背中越しに強い衝撃を受け、転びそうになるのを何とか耐える。衝撃は鈍い音と共に何度もやってくる。
衝撃の答えはすぐにわかった。狙いがハズレ横に飛んでくるのは小ぶりな石だった。
足では勝てないと判断したホブゴブリンが、石を投げつけてくる。その中で上位種も先程の魔法を使い攻撃してくるが、背負っているバックが攻撃を受け止めてくれ、今回の成果と引き換えに無事逃げることができた。
上位種のゴブリンは遠くなっていく3人の背中を睨み、部下に石を投げるのを辞めさせる。
「逃がしたか……悔しいな」
「ぐおおぉお」
「もう良い、追いかけても奴らは捕まらん。」
「ぐあぐぉ」
「ハハ、鎮火に魔力を使い切らなくてもきっと結果は変わらんよ。それにあの方向は次の階層だ、兄貴達すら戻れなかった所だ……一旦戻るぞ、縄を準備しけ」
上位種はそのまま追うのをやめ、黒くまだ熱気を放っている集落へ帰っていった。
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