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01.登校

今日、私は晴れて高校生となった。


学校は白鷺ヶ丘高校。


都内郊外にある中高一貫校。


『文武両道』の教育理念の元、全てのクラスが進学クラス。学力が落ちると部活に参加できなくなってしまう。しかし、この学校のすごいところは高校の教育システムが大学みたいなもので、自分の専攻したいものを受けるというもの。


私は白鷺の制服に袖を通す。

白のブラザーに下はネイビーとシンプルで可愛い。

ネクタイとリボンは選択できて、私は両方欲しいから両方買ってもらった。



「今日は…どっちにしようかな〜」



莉央は必死に鏡の前でネクタイとリボン…どちらにするのかを見比べる。


「今日は初日だし、可愛いリボンにしよう!」


そうして部屋を出て食卓に向かう前に身支度を整える。全ての準備を終え、ご飯を食べる。


「いただきます」



「優斗!俺のチーズ取るなよ」



「だって…食べたかったんだもん」



「新しいのもらえばいいだろう!なんでいっつも俺のばっかり取るんだよ」



「真斗!お兄ちゃんなんだから優斗に優しくしなさい」



私には3つ下の弟と8つ下の弟がいる。


途中で2人喧嘩して、お母さんに叱られてたのも日常茶飯事。



「ごちそうさま」



「あっ、莉央!」



食べ終えた食器を片付けようと立ち上がると母親は、思い出したかのように嬉しそうに声をかける。



「何、お母さん?」



(始まった)




「この間ね。ポストにシューティングっていう芸能事務所からのCM出演依頼が来たのよ!どうかしら?」



「お母さん、今日初登校だよ?授業にもついていけるかわからないし、ダンス部だって全国レベルだからついていけるかわからないからパスで。ごめんね」



「…あ!莉央!!」



莉央は食器を下げて早々に洗面所に逃げる。

莉央のお母さんは、その様子を見て残念そうにする。

それを見かねた父親が声をかける。



「…お母さん、莉央もやらないとは言ってないんだからそんなに凹まないで。またタイミングみて聴いてみよう」



「そうね…ありがとうあなた」



父のフォローに母は元気を取り戻す。



私の親は私を芸能人にしたい。

一度だけ子役としてドラマに出たことがある。

その時の一時的な栄光に母は味をしめて、

度々、オーディションやら出演依頼、事務所に勝手に履歴書を送ったりしている。


お母さんは嫌いじゃない。

でも私はそれよりももっと欲しい夢がある。


歯磨きを終えるとインターフォンがなる。


「あ!来た!」


インターフォンに急いで出る莉央。


「今行くね!」


鞄を持って玄関先で身なりを見て整える。


「よし」


扉を開けると2人の男が並んで待っていた。


「おはよう、莉央」


「…おはよう」


「おはよう。慧、陽翔!」



そう2人は幼馴染の篠宮慧と夏目陽翔。

夏目は元気に莉央に挨拶するが、慧はどこか眠そう。


莉央は慧の腕に腕を絡める。



「…ねぇ、莉央…歩きにくい」



だるそうに答える慧。

体格的にも嫌なら振り解くこともできるのにそれはしない慧。嬉しそうにくっつく莉央をみて「全く…」と小さなため息をつく慧。



「でも、慧ってなんだかんだ言って莉央に甘いよな!」


「…うるさい、陽翔」


「ごめん」と軽く謝りながらも笑う夏目と、なんだかんだ自分に優しい彼氏の慧にまんざらでもない表情する莉央。


「莉央…その顔、うざい」



「え!?なんで!!?」



まるで、アニメのキャラクターみたいなギョッとする莉央の反応にツボる慧。



「アハハハハ」



「今笑うとこあった??ねぇ陽翔!今のは慧が悪いよね」



酷いことを言った慧が突然笑ったことにプンプンと怒る莉央。それを見かねた夏目は優しくフォローをする。



「莉央の反応が可愛くて笑ってるだと思うよ」



「それって褒めてるの?貶してるの?」



しばらく歩き、駅に着く。

駅に乗るためのエスカレーターは必ず後ろに慧くんが立ってくれる。これは中学からそう。

電車に乗りこむと私を壁側にして前に慧くんが立つ。

そして、その隣に夏目が並ぶ。


一度私が中学時代、1人で帰っていると痴漢にあったことを伝えたらそれから一緒に帰ったり、気を遣ってくれる。


私の彼は「好き」とかはほぼ言わないけどこういう小さな気遣いができるかっこいい彼なんです。


そして出る時は必ず手を握ってくれる。

どうしてか聞いたら「莉央、1人にしたら危なっかしいから」とそっぽむいていたけど耳が真っ赤だった。


そんなちょっと意地悪で、不器用な優しさを持つ彼_____篠宮慧に私、水瀬莉央は恋してしまった。




そんな私にはひとつだけ夢がある。



【慧くんのお嫁さんになること】



彼に告白したら、半分驚き、半分呆れた顔で

「はいはい」と恋人関係になった。


誰かに聞かれたら笑われるかもしれない。

バカにされるかもしれない。

それでも私にとって彼の隣に立ち続けたいと、支えたいと思ってしまったのだ。


(だから何があろうとも、私はぜっっっっっっったい芸能界には入らない)



心の中で静かに決意を固める莉央。

電車を降りて、みんなで話ながら歩くこと10分。

学校が見えてきた。

それにあたり、莉央に不安が押し寄せてくる。



「…どうしよう…クラス違ったら…」


慧は細身で長身、容姿が整っていて、クールな雰囲気を醸し出しているため

近づきにくいがとてもモテる。

本人は全然気にしていない様子だが本当に彼女としては気が気じゃない。


「それは運だから、諦めな莉央……ッ」



夏目は莉央に対して笑いながら答える。

それに莉央は静かに小突く。



「はぁ」



2人のやりとりをみて、呆れるようにため息をつく慧。

そして、莉央の様子を見かねて声をかける。



「…クラス一緒になっても、結局必須教科以外は自分たちの受けたい教科をうけるから、ほとんど別行動じゃん」


「そうだけど……(一緒にいたいんだもん)」


慧の言葉にしょぼんと肩を落とす莉央。

横目でみた慧がわずかにため息をついてから続ける。


「……だから、お昼とか…休憩時間とか…登下校とか一緒なら別にいいじゃん」



照れくさそうに早口で前を向いたまま話す慧。

慧の言葉に嬉しくて満面の笑みになる莉央。


「うん!ありがとう!慧くん」



「コラー、そこのバカップル~、勝手に2人の世界に浸るなぁ~」



莉央は嬉しいことがあると、昔の慧くん呼びに戻る。

それは、小学生高学年くらいからの莉央の癖。


心底幸せそうな顔の莉央と、莉央に対してツンデレを発動している慧に夏目が茶化す。


「うるさい、陽翔」


今度は慧に小突かれる夏目。

それに対して3人で笑っていると校門前に見知った人が声をかける。


「相変わらずだね、仲良しトリオ」


「あっ!奏音ちゃん」


小坂 奏音。

莉央の親友で明るく、裏表のなく、誰とでも仲良くなれる子。

ダンスレッスンで莉央と仲良くなり、それからずっと仲良くしている。



「おっは~、りおっち」


「おっはー」


莉央が慧の横をスッと離れて奏音のもとに向かう。

慧は楽しそうに話す莉央の様子に少しイラっとする。


「おやおや、もしかして、嫉妬してる?慧」


「………」


夏目にいじられても図星をつかれ、何も言えない慧。

でも何も言わないのも負けた気がしてポツリと言葉が漏れる。



「別に______莉央、先いくから」


スッと行こうとすると慧に慌てる莉央。



「あっ…待って、慧くん。奏音ちゃんも陽翔も早く!」



急いで慧の横に向かう莉央。

気にしていないそぶりをしている慧だが、莉央が横に来ることで若干口角があがる。その様子を遅れて追いかける奏音と夏目が小声で話す。


「本当、あそこなんだかんだ両思いだよね」


「そうだね、昔から。慧は莉央のこと大切にしてたからね」


「もう少し素直になればいいのに」


「まぁね…でも…莉央はありのままの慧が好きだから」



夏目は小さい時の2人を思い出しながら答える。

それについて奏音も「そうなんだ」と温かい目線を送る。


4人でクラスを確認する。


「やったぁぁぁ!みんな一緒だ」


子どものように喜ぶ莉央と奏音。

同じクラスで内心ホッとする慧。

3人の様子を見守る夏目。


そんな4人のことを遠くから眺めている男が一人。


「やっと…見つけた。水瀬 莉央。絶対手に入れる」


男の手には分厚いノートと幼い水瀬莉央の写真があった。


読んでくださりありがとうございます。

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